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がまかつフライフックストーリー

VOL.01 新スタンダード、R19

FlyFisher編集部=写真と文


今シーズン、がまかつから新フック、R19がリリースされる。
同社フックの特徴のひとつ「リテイナーベンド」の最新型、そしてスタンダードと位置付けるデザインだ。
フックデザイナーである松井伯吉さんと、テスターを務める岡本哲也さんに開発経緯をうかがった。


●協力:がまかつ

《Profile》
松井伯吉(まつい・おさきち) 1949年生まれ。愛知県豊橋市在住。フライショップF.A.I.S店主。がまかつフックのデザインを30年ほど手がけている。このほか、ロッドデザインとビルディング、ランディングネット製作など多くを手がける「タックルデザイナー」。

岡本哲也(おかもと・てつや) 1958年生まれ。東京都中野区在住。がまかつフィールドテスター。2006年から同社のフック開発をサポートしている。東京在住にも関わらず、シーズン中はほとんど東北で釣りまくっている。フライ歴40年以上。



「これはえらいことになった」


—— 松井さんがフックをデザインするようになったきっかけを教えてください。

松井 あるところから「がまかつさんがデザイナーを探しているよ」という話を聞いて、思わず「やりたい」と言ってしまったことが始まりです(笑)。それがもう30年くらい前の話だと思います。

—— そもそもフックのデザインをやってみたいという気持ちはあったのですか?

松井 最初にその話を聞いた時に、「やりたい!」ってとっさに言ったように覚えてますが、そんなに深くは考えてはいなかったと思います(笑)。当時ロッド作りがめちゃくちゃ忙しかったですし、しかも具体的に何かフックに関する案があったわけでもなかったんです。でも何か知らないけどやってみたいと思った。

その後、何らかのプレゼンをしてくれと言われたので、文章を書いてがまかつさんに渡したんです。そしたら「あなたに決まったよ」という連絡があって……、これはえらいことになったなと(笑)。そこから、本格的にどうしようかっていうのを考え始めました(笑)。

—— プレゼン資料にはどんなことを書かれたのですか?

松井 それまで「こういう形のハリがほしい」っていうのも1個だけあったのですが、それだけです。それがのちに「C12」になります。当時がまかつさんにはカーブドシャンクがなかったので、それだけはほしいなと思っていました。


C12。フックデザイナーとしてのキャリアをスタートさせる際、すでに頭の中にあったのがこの形。さまざまなバリエーションも生まれた人気フック。※サイズ表記は実際と異なります


松井 でもそれを自分で作るとかデザインするっていう感覚ではなくて、「がまかつでもこういうものがあったらいいな」って思っていた程度だったので。

でも文章に何かもっともらしいことを書かなきゃいけないじゃないですか。そこで、まだあの当時バーブレスっていう意識はあまりなかったのですが、これから絶対バーブレスになるべきだと思っていたので、つらつらとバーブレスでいくべきだということを主張しました。当時は自分もバーブレスを使っていなかったですけどね(笑)。


松井伯吉さん。フックデザイナーだけでなく、ロッド、ランディングネットやルースニング用のマーカー、ライン、リールまでさまざまなモノをデザインしてきた。様式にとらわれず、実践に即したものづくりを続けている


リテイナーベンドの誕生


—— まずはカーブドシャンクとバーブレスが基本線だと。

松井 そうですね。僕が関わってから初めての製品が、「C12」、「R10-B」と「C13-K」。3つ同時に発売されました。


リテイナーベンドの出発点。R10-B。ゲイプの一番深いところが、シャンク近くに設定されている。魚の口に刺さっている部分をできるだけ長くとることでバーブレスのホールディング性能を高めるアイデア。一晩で思いついた。※サイズ表記は実際と異なります



キール用としてデザインされたC13-K。このフックの開発背景などは今後紹介していくが、初期松井デザインのフックがいかに野心的だったかが見て取れる。※サイズ表記は実際と異なります


とくに印象に残っているのはR10-Bで、「リテイナーベンド」っていうベンドの名前をつけてもらったのですが、それが後々のがまかつのフライフックの特徴として生かしていこうというふうに考えるようになりました。

当時、バーブレスって言っておきながら自分では「バレやすい」っていうイメージからバーブレスを使っていなかった(笑)。じゃあバレにくくするためにはどうしたらいいかっていうのを考えたら、何もアイデアが浮かばないぞと(笑)。

でもある日、布団に潜って考えてたら、単純に「ハリの奥まで、シャンクの付け根まで刺さるようにすればいい」と思ったんです。そうすればバレにくいものになるんじゃないかと。で次の日起きてすぐに紙と鉛筆を用意してイメージを残した。そこからリテイナーが生まれたんです。

正直に言うと、一番始めのリテイナーは「こういうものだ」っていうのは僕が示したのですが、最後のデザインはがまかつがやったんです。というのも、自分の中のイメージをハリの形にまとめられなかったんです。

—— ハリの形にまとめるとはどういうことですか?

松井 フライフック、という一般的なイメージがあるじゃないですか。でもこのリテイナーベンドはそれとは全然違ったので、どうしても自分の頭の中ではフライフックとしてまとまらなかったんです。自分で考えておきながらですが(笑)。

だからR10-Bは本当に悩みました。画期的といえば画期的なんだけど、それまでのフライフックとあまりにも違いますから。だけどフライフックは当時他社さんが圧倒的に優勢で、みんなにこっちを向いてもらえるようにするには、ある意味最適かなとも思ったんです。「がまかつがなにか面白いことやり始めたぞ」って思ってもらえるかもってね。ベンドの考え方自体に間違いはないと思っていましたし。

当時は自分でも飲み込めていなかったのですが、今は自信があります。R17くらいから、リテイナーベンドをデザインするのにやっと自信が出てきた。熟成してきたといっていいかもしれません。


リテイナーベンドの発展型、R17-3FT。「ニューリテイナーベンド」呼ばれる形。3Xファインワイヤ、ナノスムースコートと、フライフックとして突き抜けた仕様。※サイズ表記は実際と異なります


でもR10-Bはフライフックとしてはおかしいと思うんですよね。変な話、ほかのメーカーさんだったら出してくれなかったんじゃないかな。その点がまかつは分からないから(笑)。とくに当時の担当者さんなんて「フライはあんたに全部任せた」っていう人だったんで、もうへっちゃらで出しちゃったんです(笑)。

―― 無知だからこそ強い、みたいなことがあったかもしれませんね(笑)。

松井 テスターの谷々(和彦)君も岡本君もそうですが、いわゆる釣り人としてうまい人って、今あるフックで「ここがもうちょっとこうなったほうがいい」っていう考えが当然あるわけですよね。でもそれって、商品になった時に違いが分かりにくいんです。

がまかつは、小さなことをウジウジやるんじゃなくて、どーんと違うものを出さないと意味がないという思いもあったんです。だからあえて水生昆虫の形からフックのヒントを得るということもしていません。

—— がまかつさんは、「松井さんの言うことは分かるけど、こんな形はさすがに無理」みたいなことは言ってこないのですか?

松井 いや、それはありません。逆にできないものはないって言ってくれています。それはすごいことなんだと思います。ティアドロップ型のアイ(R16-2HBV)とか、C15-B(廃盤)のかぎ状になったシャンクとか。


R16-2HBV。バーチカルアイ、しかもラウンドではなくティアドロップ型。大きめのアイに結んだティペットの位置をずらさないためのアイデア。※サイズ表記は実際と異なります


シャンクがクランクしたC15-B。岡本哲也さんのアイデアを具現化した


岡本 がまかつからは最初に「こんなの無理だよねっていう考えは、絶対に取っ払ってくれ」と言われました。そうじゃないと、もしかしたらいいアイデアだったかもしれないものが、テスターさんやデザイナーさんの「さすがに無理だろう」っていう忖度で消されてしまうって。だから全部出してくれって言われています。


フックをテストするということ


—— 岡本さんは、いつから松井さんと一緒にやるようになったのですか?

岡本 R10-Bは発売後にテストして意見を求められました。それがちょうど23、24年前ですね。

松井 ただ僕の場合恵まれているなと思うのは、テスターさんですよね。岡本君も谷々君も本当にいいテスターだと思う。岡本君より谷々君のほうがテスター歴は長いんですけどね。


岡本哲也さん。フックだけでなく、ラインも#1と、道具立てすべてが軽い。岡本哲也さんの動画「もっと軽く!#1という選択」はこちら


—— テスターさんとの間にはどういうやり取りが行なわれているのですか?

岡本 たとえば、今回のR19だと、松井さんから「今度のハリはこんな形でいこうと思っているんだけどどう思う?」から始まりました。

デザイン画がFAXで送られてくるのですが、松井さんはいつも「カッコいいかカッコ悪いか」の感想をまず聞きたがるんですよ。でも、確かにそれは大事だなと思います。


R19の出発点はここから。松井さん手書きのデザイン。これを図面に落とし込んでいく。機能を追求しながらも「かっこいいか悪いか」にもこだわった


松井 カッコよさってみんな簡単に言いますけど、それはやっぱり全体のバランスだと思うんですよ。だけど、「バランス」っていう言葉で表現しちゃうと、具体的にはどういうことかっていう話にもなってきちゃうから、ちょっと面倒なので、僕は単純に「カッコいい」って言ってるんです(笑)。

岡本 で、今回もやっぱり「どう、カッコいい?」の問いかけがあるんですよ。それで「松井さんこれはちょっとぱっと見カッコ悪いです」みたいなやり取りをまずはしました。

その間松井さんはがまかつとも図面のやりとりをしていて、もとのデザインと設計図を比べて、「ちょっとイメージが違う」って言ったり。

松井 これは今回何度やったか。最初はどうしても僕のイメージにならなかったんです。こんなにやり直したハリはないですよ。3〜4年、いやもっとかかってるかもしれません。


がまかつのスタンダード、R19


R19-1FT。R10-Bと比べると明らかなように、リテイナーベンドは維持しつつ、グッと「スタンダードな」印象になった


—— R19はベンドが一番膨らんだ部分がそれまでのモデルほど上じゃありませんね。

松井 そうなんです。リテイナーベンドの定義として、ベンドの一番膨らんだ部分がベンドの中心より上にある、ということがあるのですが、R19はこの部分がこれまでより少し降りてきて、一般的なフックの印象に近づきました。


松井さんが担当者に送ったリテイナーベントの定義。松井さんが考える、バーブレスフックのホールディング力を高める要素でもある


岡本 でも、最初の試作品はゲイプ幅がこれはちょっと狭いだろうと、見てすぐに思いましたよ。バイスに挟んだ瞬間にポイントが上に向きすぎていると感じました。だからすぐ松井さんに電話して、「こっちで勝手に広げてみて、それも巻いてテストしますよ」って。そしたら松井さんも「フッキングは問題ないんだけど、見た目ちょっと狭いと思うんだよ」って言ってましたよね。

僕はテスターの仕事って、魚の言い分をデザインする側や作る側に伝えるっていう役目だと考えています。松井さんはフックの見た目にこだわりますけど、僕は1000尾、2000尾と掛けてみて、「松井さん、魚はこう言っています」と(笑)。魚の代弁者じゃないけど、そういうつもりで機能面をテストしています。


これが試作品のR19。ポイントがより上を向いている


岡本さんが自分で曲げ直した試作品。完成形はこのハリと上のものの中間くらいに落ち着いた


松井 今度は開いたらどうなるんだ、実際にはまずいかもしれない、とか言って、また新しい試作を作ると時間がかかっちゃうから、ペンチでいろんな形に開いてもらって。それで釣ってもらいました。岡本君も谷々君も、シーズン中ならすぐやってくれるので。あとは、どこまで開こうかっていうのを、それは見た目のカッコよさも含めて判断してやってもらいました。

—— そもそもR19というのはどういうハリなのでしょう?

松井 がまかつのリテイナーベンドの中心になるハリ、という位置づけです。リテイナーベンドはそのほかにバリエーションがいろいろあるわけですけど、今となってはバリエーションが先に発売されていた、という感じになりました。今までのものが枝葉、R19が幹と考えています。

—— その幹たる所以はどういう点なのですか?

松井 まず、単純にフライフックとして皆に受け入れられやすい形状であるということ。フライフックのイメージから外れていない。でもリテイナーベンドである、ということですね。


もう一度R19のデザインを見てみる。このフックの開発はリテイナーとスタンダードなゲイプとの落とし所を見つける、という作業でもあった


—— ベンドの後半からポイントに向かって角度が付いてますね。なにか理由があるのですか?

松井 特に機能的な意味はないんです(笑)。ただ、ストレートポイントであるということ。がまかつのフックはほとんどストレートポイントとしてデザインしています。カーブドポイントよりもパワーがダイレクトに伝わり、刺さりやすいと考えているからです。

そして、ポイントの延長線上とアイの延長線上が交わるところがそのハリが刺さる場所ということになるじゃないですか。フックポイントが外を向いていれば、それだけフックが動かないとモノに刺さらない、という理屈になります。ただ、フッキングの動作は大きいので、ゲイプが開いていても刺さります。広げたほうが魚の口を拾いやすいですし、ここは実はある程度デザイナーの意思でやれます。

R19の試作はもうちょっとポイントが閉じていて、これはこれで調子がよかったんですが、岡本君と谷々君と相談して、かっこいい感じのところでバレも考えて決めました。

—— 結構自由にデザインできるものなのですか?

松井 釣りバリの理論的なことはいろいろありますし、それを理解してもいますけれど、僕の中ではそれほど気にしていないというか、それほど下敷きにはしていません。とにかく実釣と見た目で決めていく、というところがあります。フライフックって、実際には使う人によって、ナチュラルドリフトの技術や合わせの強さ、使っているティペットやロッドの種類など、計算できないファクターがたくさんありますからね。

今回の場合は、リテイナーを特別な形に見えないように、普通っぽくしていくということが大きかったです。新しいがまかつのフックのスタンダードにしたいという意識がありましたから。その中で、日本の渓流用と決めて、ワイヤの太さもがまかつ基準の1Xファインにしました。

R17は世界初のナノスムースコート(フッ素樹脂コーティング。くわしくはこちらを参照してください)されたフライフックということもあって、軸もギリギリまで細くして、とにかく刺さるというイメージを全体に押し出しました。逆にR18は太い軸で作りました。

そしてR19はその中間で、普通にどんな人にも安心して使ってもらえる太さということで1Xファインにしました。あ、この軸の太さって絶対的な基準があるわけじゃなくて、メーカーごとに決めているんです。だからここで1Xファインといっても、他メーカーさんの1Xファインとは微妙に太さが違うんですよ。


ナノスムースという革命


—— ナノスムースコートはフックをデザインするうえで影響がありましたか?

松井 ナノスムースにすることによって、貫通力は40%アップしたそうです。物事の性能を一度に40%もアップさせるなんてことは、とんでもないことですよね。僕はこの革命に立ち会えたことを喜びだって思ってるんです。

とにかくフッ素系コーティングっていうやつは、僕らが今手にできる一番摩擦抵抗の少ない素材なので、極端なことを言うと、あれ以上刺さりようがない。ハリの角度とか形状とかいろいろあるけど、表面処理加工としてはあれ以上のものは今のところ見つかっていないんですよ。

40%抵抗値の大きい太さのハリにナノスムースかけても細軸と同じような貫通力が得られるということになるので、本来なら太い軸に対して一番効果が出るんですよ。細いのはナノスムースかけてなくてもそれなりに刺さりやすいわけですから。

もっと言うと、形なんて多少どうでもいいかもしれませんよね。フッキングが悪くてもいいからとにかくカッコいいフック出して、ナノスムースかけちゃえばそれでいいんじゃないか、と思うこともありますよ(笑)。だって刺さっちゃうんですから。デザイナーとしてはかなり楽になったなと。もちろんホールディング性能とかはまた別な問題なのでまだまだ頭は使わなくちゃいけませんが。

—— 刺さりがよくてバーブレス、となればその逆に抜けやすいとも言えそうですが……。

松井 リテイナーベンドで解決していると思っています。口の中に刺さっている部分が長いということで。

もちろん理論的にはナノスムースにすることでバレる率は上がるかもしれません。ですが、それを上回るフッキング率を得られればよい、とも考えています。

実際には随分前から、ほかの既存のフック、C12とかでナノスムースのテストはしていたんです。はじめは岡本君たちもこれはバレるって言ってたんです。僕としてはそれが気に入らなかった。だったらバレないフック作ってやろうと(笑)。「刺さりはいい」ってみんな口をそろえて言うんだけど、でも外れやすいっていう話になるんで。

岡本さんによるフライ作例「ピー玉」



でもここで、面白いことに気づいたんです。これはテスターさんの能力を疑うわけじゃないんだけど、ダメだっていうものをしばらく使ってもらっていると、みんななにも文句を言わなくなるんです(笑)。

岡本 (笑)。それは扱いに慣れてくるっていうことじゃないですか?

松井 そう。使いこなしちゃうんです。なにか道具に欠陥があったとしても、腕でカバーしちゃうわけですから、そのうち何も言わなくなるんです(笑)。上手な人ほどそういう傾向があります。僕から見ていて、「あなたたちは、フックは実はなんでもいいんじゃないの?」って(笑)。

—— (笑)。それは製品のテストとしてはどうなんですか?

松井 これはある程度の期間、使ってもらうことも大事なのかもしれないな、と思っています。みなさんに慣れていただくというか。

岡本 ナノスムースに関して、刺さりやすいっていうことは想定よりも早くハリが立つということでもありますよね。だから、逆に皮一枚でフッキングことが増えるので、身切れすることもあると思っています。逆にナノスムースがかかっていないハリだったら、この皮一枚で刺さらなくて、すっぽぬ抜けてくるということなんだと思います。だから、合わせはワンテンポ遅らせて、がっつり掛ける。そうやってフッキングを調整するなどのアジャストは必要かもしれません。

松井 すっぽ抜けるということは、もちろんドラッグがかかっていたり、浮いているフライの周りのティペットの形だったりも影響するので、一概にフックのせいだとは言い切れない部分もあると思います。

—— ナノスムースのフックをタイイングするコツはありますか?

岡本 僕がやってるのは、下巻きを開始する時点でシャンクの巻く部分にボドキンでジェル状の瞬間接着剤を一回でぴゅっと着けることですね。下巻きした時点で一回固まっちゃうから、そのあとマテリアルがズレることはほとんどありません。

—— なぜジェル状を使うのでしょうか?

岡本 フライを軽くしたいからです。液状だと染み込んでしまってフライが重くなると思っています。スレッドの回転数も極力少なくしたいので、ところどころにジェル状の瞬間接着剤をスレッドに着けています。それで本来だったら5~6回巻くところを3回にするとか。

やはりフライは軽く作りたいんですね。魚の吸い込みやすさを考えたら、軽いフックのほうがよいですから。ダビングの量にしても、重さを意識しないと軽いハリの意味がなくなっちゃいますから。

—— 新しいR19は少し軸が太いじゃないですか。岡本流に繊細に巻くと、マテリアルの分量は微妙に変わってきますか?

岡本 ほとんど同じですが、浮かせるべきところ、たとえばCDCだったり、パラシュートのハックルだったりは1回転多くします。釣りをしていてこの違いが厳密に分かるか疑問に思う方もいるかもしれませんが、これだけでも明らかに浮力の持ちが違ってきます。

もちろんフロータントをどうつけるかでフライ自体が変わります。あとはピックアップの際の水を切る、水面からフライ自体を離す動作も意識してほしいんですよ。いくらパラシュートのハックルをたくさん巻いても、注意せずに使っていると、どんどんどんどん水を含んでいきます。パラシュートハックルの量が多いっていうことはファイバーの量が多いから、そのすき間に水を含みやすくなってしまう。結果重くなって沈みやすくなってしまう。だから流し終わって、ピックアップする際には、ていねいに、そして次のフォルスキャストで水を切ることを意識しています。

魚にとってより少ないエネルギーで効率よく食うっていうことを考えたら、ギリギリ浮いている、だけど持続性もあるっていうのが理想だと思います。

—— 現時点で、まだ実現していない新しいフックのデザインアイデアはどれくらいあるのですか?

松井 もう既に画が描けているデザインが少なくとも3つはあります。それがいつ製品化するのかはまだわかりません。でもその間にはほかのものも描けるだろうし、自分の中でほしいものが出てくるかもしれないから。そしたらまた新しいのが描けると思います。



次回は2020年3月下旬公開予定。松井さんがこれまでデザインしてきた各モデルについて岡本さんと語ります。



2020/2/28

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