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がまかつフライフックストーリー

VOL.05 細軸、縦アイ、プードル

FlyFisher編集部=写真と文

がまかつフックデザイナー松井伯吉さんとテスター陣が語る本シリーズ。
第5回は縦アイ、細軸、極端なぶら下がり構造、バーブレス、と非常に特徴的な『C14-BV』について語っていただいた。


●協力:がまかつ

《Profile》
松井伯吉(まつい・おさきち) 1949年生まれ。愛知県豊橋市在住。フライショップF.A.I.S店主。がまかつフックのデザインを30年ほど手がけている。このほか、ロッドデザインとビルディング、ランディングネット製作など多くを手がける「タックルデザイナー」。

岡本哲也(おかもと・てつや) 1958年生まれ。東京都中野区在住。がまかつフィールドテスター。2006年から同社のフック開発をサポートしている。東京在住にも関わらず、シーズン中はほとんど東北で釣りまくっている。フライ歴40年以上。



—— 『C14-BV』は独特な形とコンセプトを持っていますね。

松井 そうですね。このフックはあるフライパターンのために生まれたという感じなんです。

カーブドシャンクなのかワイドキャップゲイプなのか、カテゴライズしにくい特徴的なデザインの『C14-BV』


実は僕が使うドライフライって当時、全部谷々(和彦)君に巻いてもらっていたんです。岡本君がテスターにちょうど加わるくらいの時だよね。

その頃よく使っていたのはアントパターンで、お腹と胸の部分をピーコックで巻いたものでした。真ん中がくびれていてそこにパラシュートハックルが巻かれているっていうものばっかりだったんです。『C12』でそれを巻いていたわけ。

当時はそればっかり使っていたので、谷々君に何本もお願いするのが申し訳なくなってきて、手を抜いてあげようと思って、前の胸のピーコックはいらないから、後ろのアブドメンのほうのピーコックだけ巻いてくれればいいからって言ってたら、彼も何か感じたらしくて、ボディーを上げ下げし始めたんです。

そしてやっているうちに、パラシュートのハックル部とボディーの球の部分をできるだけ離したほうがいいようだ、となってきて、もうちょっと真下に沈むようなハリがほしい、ということになったんです。

テスター、谷々和彦さん考案の「プードル」。パラシュートハックルの下にピーコックの球を取り付けた。このフライのコンセプトを具現化するために『C14-BV』は生まれた


だけど、コンセプトは分かるんだけどフックの形としてはなかなか落とし込めなかったんです。ただ実際、ハックルとボディーを離すことが本当に有効なのかっていうことを確かめるためにも、なにか試作のフックがほしいじゃないですか。

そこでアユバリの中からイメージに近い形を見つけて、これにアイを付けたのが『C14-BV』の始まりです。テストなのではじめからパラシュートしか巻かないつもりでしたから、ハックルに邪魔されずにティペットを通せるように縦アイを指定しました。

だからこれは僕はある意味デザインしてないですし、テスト用にワンサイズだけ作ったので、最初はそのまま世に出すつもりもまったくありませんでした。でも僕らだけでそれを何年使ったかな、5、6年使ったんじゃないかな?

岡本 はじめの2、3年なんか僕にも言わないでやってましたよ。

松井 というのは、試作で作った本数がなくなっちゃったんですよ(笑)。

こちらは岡本哲也さんの手による「プードル」


—— それは最初から完成形だったんですか?

松井 そうですね。そして実際これはいけるぞと思いましたし、ほかのサイズも欲しかったので(笑)、これを製品化してくださいとお願いしました。

岡本 確かによく釣れますしね。

松井 プードルっていうネーミングも相当考えましたよ。候補はいっぱいあったんだけど、本当はプードルのあのヘアスタイルってコンチネンタルカットとかっていうらしいんです。だけど、プードルのほうが分かりやすいなと思って。

でも、これはフックの形よりも、球状のものが水面直下を流れてくるというコンセプトのほうが受け入れられたんだと思っています。

—— ひとつのスタイルとして定着しました。

松井 うん。あのころ、丸いものに随分反応するんだっていうのは、特に管理釣り場なんかだと極端に分かります。ニジマスは特に。

岡本 あと、あのフックを使ってみて、細軸で軽いということが魚からしたらこれだけ吸い込みやすいのかと驚きました。人間にとってはたった0.1gでも、魚からしたら重いということですからね。

岡本さんの「スルーライトダン」。透けるエクステンドボディーというコンセプトで考案された。『C14-BV』の軽さも非常に重要だとのこと


瀬の中でプードルがヤマメに吸い込まれて消えていくというのは本当に衝撃的でした。僕はそれ以来、タイイングにしても何にしても、オーバーにやりすぎたらいけないと思っています。

谷々和彦さんの派生パターン

こちらも谷々さんのパターン。オーバーサイズのハックルは水面でなびき魚を誘う。浮くためのハックルは別に巻かれている


『C14-BV』が出て、プードルが出て、プードルに付随するようなパターンが出て、僕はそれをきっかけにフロータントをどうフライにつけるかっていうことも考えるようになりました。浮かせたいところだけにつける。逆に球には舐めるくらいがいいっていうね。少ないマテリアルでちゃんと浮かせなきゃいけないし、そういったことを考えさせられたきっかけになったハリでもあります。

松井 また『C14-BV』はあれだけ細いのに、丈夫なんですよね。強度がある。デザインからくるものなのか、アユバリっていうのがすごいのかは分からないけど。まあデザインからくる強度っていうのも考えなきゃいけないなと思っています。

2020/6/30

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そして、フライは最終的に美しいに越したことはありません。
これら無限の要素を取り入れて、自分で創造できるからこそフライタイイングは楽しいものです。
今号では佐々木岳大さんにドライフライの基礎を、嶋崎了さんにCDCの失敗しない扱い方を、中根淳一さんにキールフライのアイデアを、筒井裕作さんにホットグルーの使い方を教えていただきました。

また、中央アフリカ、ガボンでのターポンフィッシングの釣行レポートやポータブル魚道に関するインタビューなどもお届けします。


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