第3回 ターキーマラブー

ストリーマーのテイルの定番マテリアル

岩崎 徹=解説

ストリーマーを筆頭に、多くのフライパターンに使われるマラブー。しかし現在主流となっている「ターキーマラブー」は、実は代用品だとか。フェザーの大小の特徴や、使いどころなども解説します。

岩崎 徹(いわさき・とおる)
1948年生まれ。タイイングマテリアルを取り扱う「キャナル」代表。羽根や獣毛など、希少種も含めて、これまでに数々のマテリアルを取り扱ってきた経験を持つ。各素材の効果的な利用方法はもちろん、世界のマテリアル事情にも詳しい。


フェザーの大小を使い分ける

マラブーにはどんな種類がありますか?

マラブーというのは、本来ターキーではなく、マラブーストークというアフリカハゲコウの下半身の毛なのです。ターキーのものがそれに近いので、今ではマラブーといえばターキーのものが定着しましたね。だから、マラブーというのはもともと鳥の名前なんです。
左/こちらがオリジナルのマラブーを持つ、アフリカハゲコウ。足の付け根よりお尻側、尾にかけてのフサフサした部分(下尾筒)がマラブー
右/下尾筒のフェザーのアップ。ターキーやニワトリのマラブーとの大きな違いは、ストークのすぐ近くからフリューが密に生えたファイバーが伸びていることだという。他のマラブーに比べて、やや軽い印象を受ける


今では素材の名前として、ターキーだけでなく、チキンマラブー(チカブー)とか、いろんな鳥の羽根があります。

ターキーでも比較的小さめのフェザーが糸で束ねてあるタイプがありますが、これらはストラングドとかウーリーバガーマラブーと呼ばれます。何が違うかというと、こうしたマラブーは“生えかけ”のフェザーなんです。

鳥というのは年に一回換羽、つまり羽根が生え変わるタイミングがあります。だいたい夏に抜けて、秋から冬にかけて新しい羽根に変わります。その時にまだ生えかけの時期があるわけです。それを集めたのがストラングドのような短いマラブーのようです。

もちろん、これが伸びれば通常のマラブーになります。なので、大きい羽根の先端部分と思っていただいても構いません。ただし、小さい羽根には下側のファイバーがありません。
マラブーの大小。右のフェザーが伸びれば、左のようなサイズになる

先端部分というのはファイバーが細くて長く、柔らかい。しかもまだ傷が少ないので、なおさらしなやかです。使い道としては、とりわけファイバー全体を使ったフライに適しています。

個人的には、ハックルに巻いたり、大きめのウーリーバガーのテイルに使ったりするなどの用途にも向いているのではないかと思っています。

ただ、ウーリーバガー系のストリーマーに小さすぎるマラブーを合わせると、ファイバーのテーパーがきつく、その仕上がりがみすぼらしくまってしまうことも少なくありません。

逆に先端が太いファイバーのほうが、水の抵抗を受けてよく動くんですね。ストリーマーのテイルには、よく大きいマラブーの下側のファイバーを使いなさい、といわれるのはそうした理由だと思います。このように、使い方によってフェザーの大小を使い分けるのがよいでしょう。
こちらはストリーマーのテイルに使われることが多い、大きめのフェザー。中間から下側にかけてのファイバーは、特に先端部が太い

ストラングドマラブーの先端部分は、ファイバーが細く、柔らかくてしなやかなものが多い。ファイバーのテーパーも強く、それを利用して使ってみるのもあり

ナチュラルカラーのマラブーは貴重

マラブーには本当に幅広いカラーがありますよね?

そもそもこれは七面鳥(ターキー)の腰の下の毛です。お腹の下というか、足に近い胴体の部分です。こうした羽根はターキーだけでなく、クジャクとかいろんな鳥に生えています。

一般的には白いものが多く出回っているのですが、これは漂白されているから白くなっているんです。マテリアル業者だけではなく、アクセサリー業界などでも圧倒的に白の需要が多いらしいですね。これは、重ねていろいろな色に染められるからです。
チャートリュースとタンカラーのストラングドフェザー。いずれももとはブリーチした真っ白のフェザーから染められる

実際ほとんど目にすることはありませんが、模様のある飼われた鳥だと、マラブーにも柄とか色が入っています。モットルドマラブーやシルバースペックルドなど、やや模様の入ったマラブーもありますが、いずれも入手は難しいのが現状です。そのため、キャナルとしては「ゼブラマラブー」という縞模様を入れたマラブーを作りました。

ストラングド裏話

マラブーはタイイング以外にも需要があるのですね?

ところで、糸で束ねられたストラングドは、私たちが仕入れた時点で、束ねられた状態になっています。他の業界の用途で、おそらく束にして使う需要があるんじゃないでしょうか?
糸で束ねられたストラングドマラブー。よく目にするが、多くのマラブーはこんな感じで入荷されるという

先端の柔らかいところなんかは、ボンボンにして、リンゴの受粉などにも使うそうです。耳かきなんかにもついていることもありますよね。あれもマラブーです。ちなみに、ウチで扱っているのは全てボア用として採取されたものなんですよ。

そして、その束の状態をこちらで染色していきます。取り扱っているマテリアルでは、マラブーが色の数が最も多いかもしれませんね。

これは主に管理釣り場で釣る方たちの需要が背景にあります。そうしたフライフィッシャーの方の要望を聞いていると、どんどん色が増えていってします(笑)。「微妙な色の違いで釣果が変わる」という方も少なくありません。


好みのフェザーは人それぞれ

どのようなファイバーが「よく動く」のでしょうか?

マラブーは奥が深いマテリアルです。僕らが品質的に高いと思えるものが、よくないとおっしゃる方もいらっしゃいますし……。

羽根として見た場合、「大きくてフワフワした柔らかいものがいい」とします。しかし、そうではなくて羽根の中間から先端にターキーフラットのようなものが付いているのもあります。
こちらはフリューもたっぷりとある、大きくて柔らかいフェザー。いわゆるグレードが高いマラブーといえる

そうした羽根は下のほうのファイバーが太くて短いんですよ。それが気に入っている人もいます。1本1本のファイバーが太いからよく動くんでしょうね。ところが、そうしたマラブーは私たちからすればグレードが低いものなんですよね(笑)。

使う方もいろいろこだわりがあります。そのため、マラブーに関しては一概に「これがよい」ということは難しいですね。逆にいえば、同じ1枚の羽根からでも、いろんな特性を持ったファイバーが取れる面白さがあります。

次回
【隔週連載】タイイングマテリアル目利き図鑑
第4回「エルクヘア」は
2017年1月22日(月)公開予定です。

2018/1/8

最新号 2018年3月号 Early Spring

まだまだ寒さの厳しい日が続きます。外に出て本格的に魚と遊べるのは、もう少し先。というわけで今号では、暖かい室内で道具を愛でる特集を組みました。 表紙を飾るのは、100年以上も前に作られたフライリール。ほかにもバンブーロッドの名品、エーベル・リールの物語、筆者愛用の品々と、その背後に隠された物語などを紹介しています。 道具にこだわるのは、フライフィッシャーの楽しみのひとつ。うっかりハマると抜け出せない、玩物喪志の幸福を味わう一冊です。 また、今号では名手たちのフライボックスの一部を原寸大で掲載。春の解禁前、ご自身のボックスも、これらを真似て埋めてみてはいかがでしょうか。 ほかにもオレゴン在住のフライフィッシャーからのレポートや、刈田敏三さんが紹介する“ちょっとヘン”な水生昆虫の話など、今号も盛りだくさんの内容でお届けします。
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