LOGIN
TACKLE SHOP DUSK

第1回 ターキークイル

色合いの意味と、使いどころ

岩崎 徹=解説

ウエットフライのウイングに多用されるターキークイル。今回は、その模様の秘密を探ります。飼育されている鳥と、現在輸入が難しくなっているワイルド(野生の)ターキー。その違いについて解説します。

岩崎 徹(いわさき・とおる)
1948年生まれ。タイイングマテリアルを取り扱う「キャナル」代表。羽根や獣毛など、希少種も含めて、これまでに数々のマテリアルを取り扱ってきた経験を持つ。各素材の効果的な利用方法はもちろん、世界のマテリアル事情にも詳しい。


飼育段階で色が変わるターキークイル

Q ターキークイルの色味のバラツキには、どんな背景がありますか?

基本的に、同じターキーでも野生の鳥と飼育されている鳥では、羽根の色合いが違います。

モットルド模様の羽根は基本的に野生の鳥、ワイルドターキーになります。しかしモットルドクイルなどは、現在残念ながら入荷が非常に困難です。鳥インフルエンザという問題があって、健康証明書がないと日本に輸入ができないんです。
現在では貴重なワイルドターキーのモットルド模様のフェザー

こちらも同じく野生のターキーのフェザー。上の写真のフェザーに比べて、やや白っぽいタイプ

ですが、飼っている鳥でないと健康かどうかの判断ができないので、輸入できのるのは、必然的に飼育されている鳥になってしまうんですよ。

飼育されたものは、皆さんよくみる白黒のまだら模様がメインなんです。
飼育されているターキーのフェザー。こちらは色の濃いタイプだが、そのなかでも模様はさまざま

これを長いこと飼っていると、最終的に真っ白になってしまいます。食用になる鳥というのは、ニワトリでもそうですが、白い羽根のほうが、清潔感があって好まれるんです。

ただ茶色から白になる過程で、グレーとかシルバーとか、変わった色が出ることがあるんです。ややモットルドの変形というか、白黒まだらというか。さらには、ほぼ黒のものやシルバー、白っぽいグレーまであるわけです。
同じく飼育されたターキーの、白いフェザー。飼われている時間が長いほど羽根が白くなるという

ちなみに1羽をみても、そこからとれる羽根の色はさまざま。羽根の色が変わる各段階の鳥が飼育されているわけですが、セカンダリーだけでなく、プライマリークイルも色が変化していきます。

濃い薄いという差は当然ありますけど、色の質的なものは似ています。他の個体に比べて、同じ鳥からとれる羽根は模様の形、ガラというのは大体似たようなものになります。
飼育されたターキーのフェザーを拡大

フェザーの濃淡で好みの色をカバーできる

Q 羽根の色は数種類用意しておいたほうがよいのでしょうか?

ターキークイルを使うのは、ウエットフライのウイングが多いと思います。モットルド、ブラウンモットルドなどはよく使われますが、これも明るい色からダークなものまであるんですよね。
モットルドカラーのワイルドターキー・クイル

しかし実際使う時は、羽根の一部分だけを切り出してフックに留めるので、フライにした際にはそこまで大きな差はないかと思います。フェザーレベルで好みの色がなくても、濃淡部分を利用することで、フライの仕上がりはカバーできなくはないといえます。

さらにいえば、この代用がピーコックになります。今、ブラウンの濃いタイプの入荷がわりと少ないので、その代わりとして、ピーコックを使う人も多いですね。

ファイバーの“厚み”に注目する

Q ファイバーの長い羽根の、先端部分を使うのもアリでしょうか?

大きさを見てみても、大小結構差があるんですよね。大きくて長いものまでさまざまですが、ウエットフライのウイングとしては、それほど大きくないもののほうが使いやすいと思います。
こちらもワイルドターキー2本。個体によってサイズも色合いもさまざま

それは“厚み”に関係があります。羽軸に近い部分は厚みがあって、だんだん先端にいくにしたがって薄くなるんです。ファイバーの短いものはこのテーパーがきつくなるんですよね。

スレッドを掛ける時に、ある程度この厚みがないと、シワが寄りやすいんです。だから長いものの先端を無理して使うと、薄い紙を縛り付けているような感じになり、シワを生む原因になります。

したがって、あまり大きなサイズの羽根を使うのはおすすめしませんね。サーモンフライのように大きなサイズのフックに巻くのであれば問題ありませんが、やはりフックサイズに合わせて羽根のサイズも変えたほうがきれいなフライが巻けます。そういった意味で、通常のウエットであれば、それほど大きくないものが使いやすいでしょう。
こちらが、ファイバーの断面。この先端にかけて細くなるテーパーの付いた厚みが、スレッドを掛けた際に綺麗にウイングを留めるキーになる

ちなみに2番フックくらいまではセカンダリークイルが使えますが、より大きなサーモンフライを巻くのであれば、ターキーテイルを使うことが多いと思います。

また、プライマリークイルはウイング材としては使いませんが、バイオットがメインになるでしょう。

ターキークイルにはいろんな模様があるので、この差を知ると、もっとタイイングが楽しくなるはずです。いまだに見たことのないような模様に出会うことがありますから。

次回
【隔週連載】タイイングマテリアル目利き図鑑
第2回「ターキーテイル」は
2017年12月26日(火)公開予定です。

2017/12/13

つり人社の刊行物
磯釣りスペシャルMAGAZINE Vol.03
磯釣りスペシャルMAGAZINE Vol.03 1,980円(税込) A4変型判132ページ
【特集1】引き出しを増やしあらゆる状況に対応するために… グレに効く1000%ウキ活用術 【特集2】各地の傾向と対策、特選ポイントを公開 冬こそアツいデカバン石鯛 ねらったところへ仕掛けを飛ばし、潮をとらえてグレの口もとへサシエを届け、釣り…
TACKLE SHOP DUSK
つり人社の刊行物
磯釣りスペシャルMAGAZINE Vol.03
磯釣りスペシャルMAGAZINE Vol.03 1,980円(税込) A4変型判132ページ
【特集1】引き出しを増やしあらゆる状況に対応するために… グレに効く1000%ウキ活用術 【特集2】各地の傾向と対策、特選ポイントを公開 冬こそアツいデカバン石鯛 ねらったところへ仕掛けを飛ばし、潮をとらえてグレの口もとへサシエを届け、釣り…
TACKLE SHOP DUSK

最新号 2024年12月号 Early Autumn

【特集】マスのきもち

朱鞠内湖のイトウ、渓流のヤマメ、イワナ、忍野のニジマス、九頭竜川サクラマス本流のニジマス、中禅寺湖のブラウントラウトなど、それぞれのエキスパートたちに「マスのきもち」についてインタビュー。

色がわかるのか、釣られた記憶はいつ頃忘れるのか、など私たちのターゲットについての習性考察していただきました。

また、特別編として、プロタイヤーの備前貢さんにご自身の経験を、魚類の研究に携わる、棟方有宗さんと高橋宏司さんに科学的な見地から文章をいただいています。

みなさんの情熱が溢れてしまい、今号は16ページ増でお届けします。

「タイトループ」セクションでは国内のグラスロッド・メーカーへの工房を取材。製作者たちのこだわりをインタビューしています。


Amazon 楽天ブックス ヨドバシ.com

 

NOW LOADING