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第8回 ポーラーベア

現在は輸入禁止。自然界のフラッシャブー

岩崎 徹=解説

ストリーマーのウイングなどに使われることの多いポーラーベア。現在では輸入が禁止されているので、やがては貴重な素材になってしまうヘアマテリアルの、特徴について紹介します。

岩崎 徹(いわさき・とおる)
1948年生まれ。タイイングマテリアルを取り扱う「キャナル」代表。羽根や獣毛など、希少種も含めて、これまでに数々のマテリアルを取り扱ってきた経験を持つ。各素材の効果的な利用方法はもちろん、世界のマテリアル事情にも詳しい。

ポーラーベアとは、どんなマテリアルですか?

ポーラーベアはホッキョクグマ(シロクマ)の毛です。絶滅の危険性も危惧されており、ワシントン条約でほぼ輸入が途絶えている状況です。

現在は、バブル期にラグとして日本に入ってきたものが、マテリアルとして出回っているような状況ですね。これからの輸入は不可能に近いので、国内の流通はいずれなくなってしまうと思われます。とはいえ、今はフライマテリアル以外の利用方法はほとんどないようですので、すぐに消えてしまうことはないと思いますが……。

ちなみに、以前輸入が可能だった時に仕入れていた先としては、カナダかフィンランドですね。いずれにせよ今後は貴重なマテリアルになるでしょう。
現在は輸入ができないホッキョクグマの毛。透明感のあるヘアが特徴

どのような使い方がありますか?

ストリーマーのウイングがメインですが、最近ではアンダーファーをダビング材として使う場合も多いようですね。

ヘアは中空構造で浮力があるので、ドライフライにも使うことはできると思います。また、いろいろな色に染めやすいのも、このマテリアルの強みですね。

最近では、本流で使うフライとして「イントゥルーダー」に人気が出たタイミングで、使用マテリアルの一つであるポーラーベアもかなり売れました。
アンダーファーはダビング材としても使用可能

ポーラーベアは染色しやすく、さまざまなカラーが出回っている

部位によって違いはありますか?

首のほうが毛は短く、お腹のほうは長いですね。体の中央のほうが、密度があって毛先が揃っていますので、使いやすいといえるかもしれませんね。

お腹に近いほど毛の長さがまばらになります。一番毛が長いのは脇の下と後ろ足の内側。つまり体を丸めた時に隙間となる場所は、長い毛でカバーされているんですね。
毛足の長いポーラーベア。なるべく長さが揃っているものが望ましい

そうした長いヘアは、使い道があるとすればソルトウオーターのフライだと思います。染めてもきれいですし、きらめきもあるから、”ナチュラルのフラッシャブー”といえるかもしれませんね。

また、季節によっても違いがあるようで、冬毛のほうが、密度があり、夏毛から生え変わった直後のタイミングのほうが痛みもありません。ちなみにメスのほうが、夏でも毛が短くなりにくいようです。


次回
【隔週連載】タイイングマテリアル目利き図鑑
第9回「バックテイル」は
2017年4月16日(月)公開予定です。

2018/4/4

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初歩からのフライタイイング 2,750円(税込) A4変型判148ページ
本書は、これからフライタイイングを始めようとする人に向けた入門書です。 解説と実演は、初心者の方へのレクチャー経験が豊富な、東京のフライショップ「ハーミット」店主の稲見一郎さんにお願いしました。 掲載したフライパターンは、タイイングの基礎が…
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最新号 2023年12月号 Early Autumn

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今号では、編集部が「面白いな」と感じた渓流用のドライフライのタイイングと考え方を紹介します。取り上げるのは、パラシュートスパイダー、エルクファンタジィ、丹沢スペシャル、マジックバレット、里見パラシュート、ヨッパラ、特殊部隊の7本です。これらを並べてみると、みなさん気にかけているのは、耐久性、浮力の持続性だけでなく、「誘い」であることがわかります。水面の流れより遅く流れる、フライそのものが揺れる、マテリアルが揺れる、などさまざまですが、いわゆるナチュラルドリフト以上の効果を明確にねらっているものがほとんど。来シーズンに向け、ぜひ参考にしてください。
またウォルト&ウィニー・デッティ、ハリー&エルシー・ダービーに関するフライタイイングの歴史、そして、『The Curtis Creek Manifesto』(日本ではご存知、『フライフィッシング教書』として翻訳されています)の作者、シェリン・アンダーソンについても取り上げています。


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