第5回 タイイングシザーズ編
嶋崎了のフライタイイング基礎知識
嶋崎 了=解説 嶋崎了(しまざき・りょう)1965年生まれ。江戸川区在住。フライ歴35年。 渓流を中心に、本流、湖もオールラウンドに楽しんでいる。 ティムコ社フライ用品開発担当として、TMCバイス、Jストリームシリーズなど主要製品を数多く手がける。
マテリアルをカットするうえで欠かせないのがシザーズ。使用シーンによって使い分けることもあるようですが、ショップの棚にもたくさん並ぶシザーズは、それぞれ何が違うのでしょうか?
Q タイイングシザーズはどう選べばよいでしょうか。
A まずはしっかりとした切れ味が重要です。安価すぎるものはおすすめしません。
シザーズは安いものから、1万円を超えるものまで値段はピンキリです。もちろんマテリアルをちゃんとカットできればどんなシザーズでも問題ないのですが、これはお店で試し切りをしてみるわけにもいきません。
そこでひとつの目安として、中価格帯(1000~2000円前後)のものであれば、ストレスなく使えると思います。素材の主流はステンレス。錆びにくく手入れの必要も少ないのが特徴です。
素材の主流はステンレス。切れ味も持続しやすい
Q シザーズの形状は好みで選んでよいのでしょうか。
A 好みで構いません。初めに選ぶのであれば小さすぎないストレートのブレードがおすすめです。
形状で気になるのはアームホールの大きさと、ブレードの長さ・形。アームホールに関しては手の大きさ、指の太さは人それぞれなので、自分に合いそうなものを選べばよいでしょう。
アームホールの形もさまざま。自分の手に合うサイズ感で選べばよい
ブレードについては、以前はかなり小さいタイプもたくさんありましたが、最近ではある程度の長さがあるものが主流です。細かい部分は先端でカットすればよいので、まったく不自由はありません。
標準的な長さのブレードを持つシザーズ(ストレートブレード)。細かい部分のカットは先端を使う
またブレードがカーブしているタイプもあり、こちらも好みで構いませんが、人によってはストレートに比べれば使用にやや慣れが必要になるかもしれません。
このような独特の形状のシザーズもある。使いやすいかどうかは、人それぞれに意見が分かれるところでもある
Q マテリアルによって使い分けは必要ですか?
A マテリアルごとに刃を当てる箇所を変えれば、1本でも充分対応できます。
安いツールではないので、最初から何本も用意して使い分けるわけにもいきません。私もほとんどの場合1本のシザーズで対応していますが、切る場所を変えています。
たとえば、フェザーなど柔らかいマテリアルはブレードの先端部分でカットします。一方、ハックルのストークやワイヤなどの硬いものを切る場合は、ブレードの根元を使います。
刃の繊細な先端部分で硬いものを頻繁にカットしていると、やはり切れ味が落ちるのは早いでしょう。何となく先端で切りたくないなと思うものがあれば、迷わずにブレードの根元を使いたいところです。
中指をアームホールに入れた持ち方は多くの人が採用しているのでは。ブレードを安定させるために人差し指を添えることも
細かい作業でさらに安定感を得るためには、薬指をアームホールに入れて、中指をアームホールの外側に添えてやるとよい。ブレードの先端部分を使う際にもおすすめの持ち方
Q 取り扱いで注意すべきことはありますか?
A 落とすのはNGです。
ハサミの刃は繊細な作りです。形が歪んでしまえば当然切れ味にも影響するので、机の上から落とす、などのアクシデントは絶対避けたいですね。
ちなみに、ステンレス製のシザーズは自分で研いで使うことはほとんどありません。美容師向けのハサミをタイイングシザーズとしてデザインした高価格帯のものには、鋼やタングステンを使っているものもあります。
シザーズのブレードはとても繊細。歪ませないように保管にも気を遣いたい
これらは砥いで使うことを前提に作られていますが、ステンレス製のものは、使っていてストレスがあったり、切れ味が悪くなったなどの違和感を覚えたりすれば、新調のサインです。
次回
【隔週連載】嶋崎了のフライタイイング基礎知識
第6回「ダビング材編」は
2017年10月23日(月)公開予定です。
【隔週連載】嶋崎了のフライタイイング基礎知識
第6回「ダビング材編」は
2017年10月23日(月)公開予定です。
2017/10/9