LOGIN

第3回 黒虫フライ

大きな魚は大きな虫が好き?

渋谷直人=解説

シーズンを通じて渋谷直人さんが信頼を置いて結ぶパターンを、それができるまでのエピソードを全9回でお届け。今回は、尺ヤマメにこそ使いたい大型テレストリアルを解説。
この記事は2017年1月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
渋谷 直人(しぶや・なおと)
1971年生まれ。秋田県湯沢市在住。地元の伝統工芸である漆塗りの職人として生活しながら、自ら作り上げたバンブーロッドでヤマメを追い求めている。
●公式ホームページ www.kawatsura.com/

大ものに効く大型甲虫パターン

数年前に地元の役内川が、尺ヤマメで沸いたことがあった。僕もちょっとしたプールで、ドバンッというでかいライズを目撃してしまった。たしか7月初めのことだったと思う。バッタかトンボを食ったのだと想像して、『ラバーレッグ・カディス』を投じてみたが、反応はなかった。もちろんスパイダーも試したし、5回くらいはフライを替えたと思う。

ライズは1回だけだったので、気まぐれなものだと思って諦めた。後ろ髪を引かれる思いで釣り上がっていくと、途中にあった大石裏の反転流で、大きい甲虫が2匹も浮いているのを見てしまった。その時はコガネムかゴミムシだろうと思って正確な種類は分からなかったが、後で調べてみるとキマワリという甲虫だった。

丸く黒光りするボディーに、不自然なくらい長い足が特徴的だった。それを見て、あのすごいライズを見せた魚は、もしやこれを食っているのでは?と考えた。さっそく、家に帰って#9の212TRに、巨大なピーコックパラシュートを巻いてみた。

ハックルはダイドブラックにして、艶のある感じをイメージした。ボディーはシンプルに、ピーコックハールの長いやつを5〜6本巻いてボリュームを出した。投げにくそうだったが、あのライズの主はどうしても釣りたかったし、フライを3本用意して次の日にも本流を叩き上がってみた。
最初に作った『黒虫フライ』原型。TMC212TRの#9に、ピーコックのぼってりしたボディー。ハックルは長い足をイメージした。これも効果的だったが、さらなる大ものを求めて改良していった

投げにくくても使いたい

使ってみるとこのフライは、想像どおり投げにくいし、少し回転もした。というわけで問題はあったのだが、9寸〜尺ヤマメがボンボン食ってきたのである。ストマックを取ろうとしたが、内容物が大きすぎてスポイトでは吸い出せず、判明しなかった。

だがこの反応のよさからして、ねらいは的中したのだと感じた。そこで僕は満を持して、昨日のライズの場所に向かうことにした。試しに『ラバーレッグ・カディス』をもう一度流して釣り上がった後に、『黒虫フライ』に結び替えて釣り下ってみた。
ハックルの直径は56㎜。死んだ甲虫類が流れているようすをイメージ。大きなシルエットはフックの存在感を消してくれる。空気抵抗が大きいため、キャスティングは力強さと精度が要求される

この辺りだったな……。記憶にある沈み石の上に、フライが差し掛かった時だった。デロンと銀ピカの大ヤマメがフライを食ってきた。「やった!」そう思った瞬間、あのフッと手応えがなくなる嫌な感覚が……。

ダウンで大ものを掛けた時にありがちな、アワセ切れである。35㎝は優に超えていたのが見えただけに、ショックは大きかった。

だがその後、この『黒虫フライ』は多くの尺ヤマメをもたらしてくれた。結果的には、貴重な経験ができたシーズンになった。雨が多く水量豊富で大増水も何度かあったのが、キマワリが大量に流下した原因かもしれない。
黒虫フライ
●フック……TMC212TR #9
●スレッド……8/0ダークブラウンなど
●ポスト……エアロドライウィング・FLピンク
●ボディー……ピーコックハール、ピーコックソード
●ハックル……コックネック・ブラック
タイイング動画はこちら

その後の年も、このフライは水量が多めの時の本流ヤマメに対して圧倒的な実績を維持している。現在の『黒虫フライ』は、さらにボディーの存在感を出すためにピーコックソードを横に張り出すように取り付けている。

ハックルはさらに長いファイバーのものを選んで、6回転ほどの厚巻きに仕上げているのが今のパターンである。投げにくいのは仕方ないが、大ものを引き出す力はさらに増したと感じている。 厚く巻いたハックルで水面に浮くように作っている、現在の『黒虫フライ』。ピーコックソードのきらめきなどが、大型魚を誘うのかもしれない

『黒虫フライ』をデロンと一撃で丸呑みしてきた、37・5㎝のメス。ストマックを確認しようとしたところ、大きい虫らしく、なかなか出てこない。結局ポンプでは吸い出せなかったが、丸呑みしたフライを外そうとしたら、バッタの脚がノドの奥から出ていた。フライが合致するかしないかはともかく、このサイズのヤマメがドライでねらって釣れるということが、この経験でもはっきりしたように思う

『黒虫フライ』を作るきかっけになったキマワリ。比べてみると、ボリュームが近いことが分かる

2018/3/16

つり人社の刊行物
FlyFisher 30 Years
FlyFisher 30 Years 本体1,800円+税 AB判144P
AB判全カラー144P/創刊号の判形を再現! 表紙は、FlyFisher 創刊号(1988年)が目印! 過去へのバックキャストと、未来へのフォワードキャストでつなぐ 美しいループを皆様の元へ。 『FlyFisher』から30周年の感謝の気持…

最新号 2018年12月号 Fall

特集は「あの尺ヤマメを逃した理由」。
間違いなくドライフライをくわえたかに見えたのに、痛恨のすっぽ抜け……。誰もが一度はそんな経験をしているはずですが、その理由ははっきりしないことがほとんどです。今回はエキスパートたちが、これまで見聞きしてきたバラシの要因を考察。また、カメラがはっきりとらえたすっぽ抜けの瞬間を解析します。来シーズンに悔しい思いをしなくてすむために、じっくり読んでみてください。
そのほか、秋も楽しめる北海道の釣り場紹介も掲載。さらにぺゾンのバンブーロッドについても、たっぷり誌面を使って掘り下げています。
[ 詳細はこちらから ]

 

NOW LOADING