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第9回(最終回)カディス

ピューパからビッグ・ドライフライまで

渋谷直人=解説

ドライフライで魚が釣れない時、釣り人の心には迷いが生じるもの。最も気になるのが、やはりフライがマッチしているのかどうかではないか? そんな時、信頼できるパイロットフライがあるかどうかは重要。最終回となる今回は汎用性の高い「カディス」をピックアップ。
この記事は2017年6月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
渋谷 直人(しぶや・なおと)
1971年生まれ。秋田県湯沢市在住。地元の伝統工芸である漆塗りの職人として生活しながら、自ら作り上げたバンブーロッドでヤマメを追い求めている。
●公式ホームページ www.kawatsura.com/

ドライフライの定番

フライフィッシャーにとって、パラシュートパターンとともに絶大な信頼を得ているのがカディスだろう。逆にいえばパラシュートとカディスのアラカルトがあれば、水面の釣りがほぼ成立してしまうくらい強力なフライだ。

代表的なカディスパターンは、多数の方々が信頼しているエルクヘア・カディスである。これはカディスにも見えるし、テレストリアルやガの仲間のようにも見える。大雑把にいえば「虫らしい」万能フライである。

それにくわえ、カディスは水面に絡んで年中ハッチしているくらい種類が豊富で、しかも圧倒的に数が多い。ダムや洪水にも負けない生命力がある。まるで水辺から湧いてくるように感じてしまう。

個別の種に限定すれば、それなりの増減があるにせよ、カディス類のいない川は見たことがない。そうなると幼虫の時期から魚たちが食わない理由はなく、常に主食になっているのだと思う。それらを模したフライで、釣れないはずがない。

僕が十代のころ、東北でフライを始めてからは、カディスパターンに依存していたシーズンもあった。現在でもその重要性に気づかされることは、しばしばである。今回は、そんなカディスについて解説したい。

カディスに欠かせないCDC

カディス類を模したパターンは、ダウンウイングなので、シャンクに対してフラットな形状にマテリアルを巻く。そのため投射性がよいのが特徴だ。このことを最大限に利用したのがCDCカディスである。
CDCカディス
フック:TMC112Y #11~19
ボディー:スーパーファインダブ・グレー
ハックル:コックネック・ミディアムダン
ウイング:CDC・スポッテッドダン
羽虫のほとんどをカバーしてくれる万能パターン。巻きやすく投射性能にも優れる。きわどいポイントでも安心して投げられるフライだ。吸い込むような捕食が多いイワナがガバッと出てくれ、巻き返しやボサ下のポイントでも効果的


ボディーは何でもよくて、僕の場合はグレー系を多用している。キャスト時の回転を防ぐためパーマハックルにはせず、順巻きでハックルを巻き、上下をカットしてサイドのみファイバーを残す。その上にCDCを乗せるのだが、これは2〜4枚を背中合わせにして、フラットに留める。

ただそれだけのパターンだが、カディスのアダルトやその他の羽虫(メイフライのダンやガ、チョウなど)が食われている時には、サイズを合わせるだけで使える万能フライである。

CDCはエルクヘアよりも耐久性があり、数多くの魚を釣ることができる。しかしCDCで魚を釣った後、復活させるのが難しいと考える方も多くいるようだ。だがヌメリを水で洗い流したうえで、吸水タオルやティッシュなどで水分を完全に拭き取ってあげてから、ドライシェイクスプレーなどのフロータントを付けるだけで簡単に復活する。

いきなりマテリアルの話が続いてしまったが、ここまでCDCについて説明したのには、カディスパターンにおいてとても重要だからだ。というのも、僕の場合はどのカディスパターンにCDCを使用しているほどなのだ。

エルクヘア・カディスについても、僕の場合はアンダーウイングとしてCDCを挟み込んでいる。エルクヘアの透過性の少なさは、やはりそれなりの効果を感じる。特に大ものには好まれる気がしている。
エルクヘア・カディス
フック:TMC112Y #7~13
ボディー:ピーコックハール・ブリーチ
ハックル:コックネック・スペックルドバジャー
ウイング:CDC・ダン、エルクヘア・ナチュラル
エルクヘアは、ブリーチは弱いので使わない。ナチュラルの白っぽいものが視認性がよく、耐久性も優れる。羽虫だけではなく、バッタ類などテレストリアルとして使っても効果があり、大型のパターンは夏以降の大ものねらいでの出番が多い


夏以降にバッタが増えてくると特によいようで、ラバーレッグなどを付けてもよかった。ただ、ラバーレッグがちぎれても効果には差があまりないようで、近年はトラブル防止のため付けないようになった。

それでも大ヤマメを釣った数は、黒虫フライに次ぐ多さである。今でも夏以降は試してみるローテーションの1つである。

サイズは大きいほどよいと思うが、ヤマメのサイズに対して大きすぎるとフッキングがよくない。エルクヘアは素材自体、それなりの硬さがあるせいだろう。自分がねらうアベレージサイズがくわえられる範囲で大きめのものを使うと、その川における大ものねらいにもちょうどよいと思う。実際には#7〜11がヤマメには適している。

アピール力を高めるために

そして近年重要視しているのが、北海道用のヒゲナガパターンである。もちろん大きなエルクヘア・カディスでもよいのだが、エルクヘアには長さに限度があるし、色がグレーに変わった根元部分を留めると強度が極端に落ちる。

そのような試行錯誤から生まれたのが、下のネズミのような形をしたヒゲナガフライである。北海道では春が短く冬から一気に夏に入ってしまう。そのため短い期間にいっせいにハッチしてくるため、本州のように種ごとに順を追ってハッチするイメージはない。

そして昼も夜も関係なく虫が出てくるのが、6〜8月だ。大きな体の個体ほど高カロリーを求めるのは当然で、羽虫ではヒゲナガカワトビケラが魅力的な補食対象になるのだ。
ヒゲナガ
フック:TMC760SP #4~6
テイル:カーフテイル
ボディー:マシュマロファイバー
レッグ:パートリッジ・ブラウンバック
ウイング:CDC・ダン、カーフテイル
ボディーにマシュマロファイバーを7~8段順番に巻き留めることで、大きく太いシルエットを作る。同時に投げやすさも兼ね備えた北海道ニジマス用ヒゲナガパターン。北海道では日中でもヒゲナガが水面を走り回るせいか、大型ニジマスはこのパターンによく反応してくれた


本州以南ではヒゲナガは夜のハッチなりやすく、日中に釣りの対象になりにくいが、北海道では一転して盛期のパイロットフライになる。

最初は#6程度のエルクヘア・カディスだったが、どうもそれでは存在感があまりなく、大ものの反応を得にくいことが分かってきた。その後サイズを#2〜4に変えたら、反応もよくなり、大ものがフライに襲い掛かるようになった。
ヒゲナガパターンに飛び出した北海道のニジマス

しかし、フックサイズを上げすぎるとハリが刺さりにくくなり、バラシが増えてしまう。僕はライズを待つよりは叩き上がるスタイルが好きなため、一日中振り続けることを考えると竹ザオなら#4ロッドが限界だ。それ以上だと、重くて疲れてしまう。

#4タックルでのバランスとしては3Xティペットくらいが限界で、それ以上の太さだとサオの破損にもつながりかねない。それらすべてのバランスを考えるなら、フックサイズは#4〜6までとなる。その範囲で、魚へのアピール力を高めるしかないと考えた。

これはパラシュートフライにおけるオーバードレッシングと一緒で、フックの存在感を消すことができる。また#6程度あれば70㎝クラスのニジマスでもしっかりフッキングできるはずだ。ようはフックのシャンク全体にウイングを被せていくイメージである。

このようにドレッシングすることで、フックサイズの倍くらいのボリュームを簡単に作ることができる。またすべてのマテリアルをフラットに付けるため、空気抵抗が少ない。さらに壊れそうなマテリアルをほぼなくした完成形が、現在のパターンである。

現状では専用といえるフックがないが、細めのウエットフライフックのなかから選ぶか、バスバグ用のフックに巻くのがベターだろう。

シマトビケラに注目

これらのカディスとは別に、ライズフィッシングの最重要種になっているのがシマトビケラだ。いわゆるシナモンカディスである。春にはカゲロウ類に混じってダラダラと長い間ハッチして、時おり偏食対象になり得るくらいの大量流下がある。
シマトビ・CDCカディス
フック:TMC112Y #11~13
ボディー:スーパーファインダブ・ライトオリーブ
ソラックス:ヘアズマスク・ブラウン
レッグ:コック・デ・レオン
ウイング:CDC・タン
ほとんどのカディスはグレーで問題ないが、このシマトビケラだけは数も多く、そればかり捕食するケースもあるので、本物に近いシナモン色のフライを用意。アダルトのみ捕食されることもあり、そういった場面に遭遇したらこのフライを結ぶ。フラッタリングも効果的なことがある


特にオオクママダラカゲロウ前後からオオマダラカゲロウのころまでがハッチのピークになる。それらカゲロウ類のハッチの狭間が、食われやすい時期になる。

ただ僕のイメージでは、東北でシマトビの重要性は感じたことはない。雪代のない川での重要種だという印象がある。鬼怒川と川辺川では釣りに絡むイメージが強い。

残念ながら釣りのパターン解明には至っていないが、シマトビケラは数が多い。天候や時間帯を問わずにハッチすることがあり、そのイメージは強く残ってしまう。結果的に、シマトビケラを模したフライがないと釣れない気がしてしまう。

それでも春のハッチは、僕の釣りにとって都合がよい時間帯に集中してくれるため、遠征したくなるほど魅力的だ。朝早くにも出ないし、夕方を過ぎるとあまり見られなくなる。僕は夏でも朝8時から始め、夕方6時前には川から上がるスタイルがほとんどだ。

シマトビケラは水面羽化で、ナチュラルドリフトしながらピューパが流下してくる。そこから抜け出そうとして、虫がモゾモゾと振動した瞬間が、補食のきっかけになりやすいようだ。水面下のナチュラルドリフトに対してのライズとしては、スプラッシュになりやすい。

午前中にシマトビがちらほら見えてスプラッシュライズが起きたら、僕の場合は迷わずフローティングピューパを結ぶ。ライズポイントに対して少し上流に立てるなら、そこからダウンクロス気味にキャストする。
シマトビ・フローティングピューパ
フック:TMC212TR #11~13
ボディー:シールズファー・ライトグリーン
リブ:ゴールドワイヤ
レッグ:パートリッジ・ブラウンバック
ソラックス:ヘアズマスク・ブラウン
ウイング:CDC・タン
メスはグリーンが透けて見えるため、魚からも見やすいのかもしれない。釣りでは少しドラッグを掛けながら、ダウンクロスの釣りをすると効果的。ナチュラルドリフトで出なかった場合は試してみるとよい。ライズの1mほど上流で、メンディングでフライの向きを上流に変えるとよい。フライ先行になるために有利で、わずかな動きがライズを誘発してくれることが多い。そのため一発で決まることもある


ただし、基本的には無理にフライを動かすことはない。通常は自然に流すことを優先する。何投もして、しつこく流すのが食わせるコツだ。

ちなみに、こういった釣りのコツは、その他のフライでも当てはまることが多い。よく釣る人ほど無意識に行なっているようだ。
シマトビ・スペント
フック:TMC212TR #13
ボディー:ピーコックハール・ブリーチ
ウイング:CDC・タン
インジケーター:CDC・スポッテッドダン
数多くハッチする種ということは、当然同時に産卵もあるわけで、死んで流下する時期も重なる。それしか見えないのにアダルトもピューパも食わないで静かにライズしている場合は、スペントで出ることが多い。グレースペントでも対応できるが、翅先の感じが開いていたほうが本物に近い

動かせないなら……

正確な知識がないのでよく分からないが、シマトビケラはポンポン跳ねながら産卵しているのだろうか? ハッチなのか産卵なのかは分からないが、水面をポンポン跳ねながら流下してくる個体が少なくない。

またこれを偏食しているヤマメもよく見る。アダルトであるのは間違いないので、そのパターンを結んでねらうが、なかなか食ってくれないのが普通だ。長ザオでフライを吊り下げて釣るくらいしか、同じ動きを演出できないので、フライロッドでは無理がある。

しかしタイミングを合わせ、確実に捕食レーンを流すことでチャンスもある。スペントパターンを投じてみるのも、目先を変えることになって奏功する。

現在のところ、フライ自体の動きまでは演出できないのが現実なので、そこを嘆いても仕方がない。それ以外の方法でいかにして魚に口を使わせるかが、釣り人の腕の見せ所である。またフライの創意工夫が尽きないのも、この釣りの面白さだ。

色が捕食スイッチに?

もう1種、シマトビでも春先に出るコガタシマトビケラもライズの対象になる。そんな場面に、10年ほど前の鬼怒川で遭遇した。これもやはりスプラッシュライズで判断しやすく、ユスリカのハッチの後の水面でガガンボが見えない場合はすぐに疑うべきカディスである。

これもほとんどの場合ピューパが食われているため、これに関しては#15〜17のフローティングピューパのみ用意している。
コガタシマトビ・フローティングピューパ
フック:TMC212TR #15~17
ボディー:シールズファー・濃緑
リブ:ゴールドワイヤ
ソラックス:ヘアズマスク・ブラウン
ウイング:CDC・ダークタン
ピューパは濃い緑が特徴的で、サイズとこの色が重要。特徴としてはシマトビよりも鮮やかな濃いグリーンのボディーで、小さな濃いグリーンが補食スイッチになっているのかもしれない


魚は虫のメスが抱卵したシルエットや色には、敏感なのかもしれない。よりカロリーの高いものを食いたいと思うのは本能的なものだろうが、魚が多いと人と同じように偏屈な個体も現われる。

特に放流魚などは、その傾向が強いようだ。シャックなどが食われるのも、放流魚でよく見られる傾向だと思う。個人的にはワイルドな魚に対してシャックパターンは用意していない。

2018/6/20

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