第10回スタンダードドライのウイング編
代表的な素材が作るウイングスタイル
嶋崎 了=解説
今回は、スタンダード・ドライフライで使われているウイング形状を紹介。ライトケイヒルやロイヤルコーチマンなど、往年のパターンに採用されているウイングの特徴を見てみます。

1965年生まれ。江戸川区在住。フライ歴35年。
渓流を中心に、本流、湖もオールラウンドに楽しんでいる。
ティムコ社フライ用品開発担当として、『TMCバイス』、『TMCアジャスタブルマグネットボビン』、『Jストリーム』シリーズなど主要製品を数多く手がける。
Q スタンダードパターンの代表的なウイングと、それぞれの特徴を教えてください。
A クイルや獣毛系のウイングが使われますが、それぞれフライのバランスを高めるためには、やはり欠かせないパーツです。
代表的なものはダッククイルのホワイトカラー、レモンウッドダック、カーフテイル、ディアヘア、そしてハックルティップなどです。
スタンダードフライのウイングの目的は雰囲気だけではありません。視認性、イミテートのリアルさ、フライのバランス、そして回転防止などです。もちろんウイングがなくても魚は釣れますが、やはり使いにくいフライになると思います。
パラシュートとスタンダードパターンにおいて、タイイングの難易度に関しては、慣れてしまえばそれほど変わらないと思います。
必要性からいえば、パラシュートパターンだけでも釣りには困りませんが、スタンダードパターンのよさを知れば知るほど、フライフィッシングの面白さが増すはずです。以下に代表的なスタイルを紹介します。
バンチウイング
取り付けが簡単で、メイフライの羽をリアルに表現できます。重量も軽く、ライトなスタンダードフライに向いています。代表的なパターンではレモンウッドダックやマラードダックを使った「ライトケイヒル」、「クイルゴードン」などがあります。


クイルウイング
取り付けの難度は最も高いウイングといえますが、特にホワイトカラーのクイルウイングは視認性や耐久性、そして見た目の美しさでは群を抜いていると思います。代表的なものはやはりロイヤルコーチマンでしょう。グレーのダッククイルも使用したフライもありますが、虫っぽさが効果的に表現できる一方、やはりホワイトに比べて視認性は劣ります。



カーフテイル
タイイングには多少コツが必要ですが、クイルウイングに比べれば容易で、慣れれば簡単に取り付けられるマテリアルです。よくある失敗例は、マテリアルを付けすぎて、フライ自体が重たくなってしまうことですね。カーフテイルは縮れぐあいの個体差が激しい素材です。実際に使用して自分の好みに合ったものを捜してみましょう。
うまく取り付けられれば耐久性、視認性がよく、性能面でも安定しています。ウイング材として優秀な素材ですが、BSE問題により現在では入手が困難になっています。特に白いカーフテイルが店頭にあれば、価格も安価なので迷わず購入をおすすめします。



ディアヘア系ウイング
獣毛をウイングに用いるウルフパターンやハンピーなどに代表されるディアヘアですが、取り付けは比較的簡単です。耐久性も高いのですが、ナチュラルカラーのために視認性はよいとはいえません。カーフテイル同様、マテリアルの付けすぎには注意が必要です。ヘアの質感など個体差が激しいマテリアルなので、フライサイズや目的によりヘアの太さには注意したいですね。
また中空率も異なり、高いものは軽くて浮力もよいのですが、巻いた時にフレアしがちです。こちらもやはり実際に使ってみて判断することになります。



ハックルティップ
タイイングが比較的簡単で、特にホワイトカラーなどのものは視認性もよく、バランスのまとまりもよくなります。しかし使う部位によっては、耐久性に乏しく、1尾釣ったら切れてしまうこともあります。基本的にウイングのサイズを決める時に、長めの場合はコックネックを、短めの場合はヘンネックを使っています。
このウイングの形状的に、キャスト中に回転しやすいというデメリットもありますが、スペントパターンなど、虫のシルエットを表現しやすいという面もあります。



※作例のフライはホワイトカラーのハックルティップを使用
次回
【隔週連載】嶋崎了のフライタイイング基礎知識
第11回「エルクヘアのダウンウイング編」は
2018年1月1日(月)公開予定です。
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2017/12/18