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第11回 エルクヘアのウイング 編

定番のウイングに安定感を

嶋崎 了=解説

エルクヘア・カディスに代表されるような、エルクヘアを使ったダウンウイング。今回は、ハックルを巻き込まず、しっかりとヘアを固定するワンポイント・テクニックを紹介します。

嶋崎了(しまざき・りょう)
1965年生まれ。江戸川区在住。フライ歴35年。
渓流を中心に、本流、湖もオールラウンドに楽しんでいる。
ティムコ社フライ用品開発担当として、『TMCバイス』、『TMCアジャスタブルマグネットボビン』、『Jストリーム』シリーズなど主要製品を数多く手がける。


Q マテリアルの選び方、取り扱いの注意点などあれば教えてください。

A 毛の真っすぐなものを選びます。


ウイングに使うエルクアは、カーブしていない真っ直ぐなものを選びましょう。フライサイズにより、ヘアの長さも2種類くらい持っていたほうがベターでしょう。
ヘアはなるべく毛の真っすぐなものを選びたい。ちなみに左がブル(オス)エルク、右がカウ(メス)エルク。オスのほうが毛が長く、その癖も強い傾向にある

Q フックに留める際に注意すべき点を教えてください。

A ヘアは付けすぎ注意。浮力はハックルで調整します。


まず、長さに関してです。エルクヘア・カディスのようなウイングに使用する場合は、通常のバランスであればアイからフックベンドまでの長さの、約1.2~1.3倍を目安にします。

一方ボリューム(量)は、付けすぎると重たくなるので注意してください。
浮力の高いヘアでも、付けすぎは浮力を損なう原因。長さはフックベンドにややかかるくらいが目安。ちなみに、こちらはブル(オス)エルクを使用

誤解されている方も多いので書き加えておきたいのですが、中空構造で浮力のあるエルクヘアも、たくさん乗せれば、重量が増え、沈みやすくなってしまいます。

特にエルクヘア・カディスは、元々は水面を軽やかに走り回るトビケラをイミテートして作られたパターンです。浮力に関しては、エルクの量よりもハックルの長さや密度で調整した方がベターでしょう。

水面をフラッタリングさせたければ短めのハックルを密に巻き、安定してナチュラルドリフトさせたいのであれば、長めのハックルをある程度間隔を開けて巻いています。

Q エルクヘア・カディスにあるようなウイングをきれいに留めるコツを教えてください。

A 下地をすっきりさせ、ハックルを巻き込まないようにします。


この点についても、ヘアがカーブしていない、真っ直ぐな素材を選ぶことが大切ですね。

失敗例として、ウイングを留める際にハックルを一緒に巻き込んでしまうケースをよく見かけます。原因はエルクヘアを留める際に、(ウイングを保持する)左手の指でハックルを一緒に抑え込んでしまうからです。

巻き込みを回避するための最も簡単な方法は、固定位置を決めたエルクヘアの先端部をつまんで作業することです。
ウイングのやや先端側を持てば、このようにスレッドを掛ける位置がよく見える

まずは緩めのテンションでヘアの束をまとめるように、シャンク上でスレッドを1~2回ほど掛ける

次に先端を抑えていた指を離し、ヘッド部のエルクヘアがずれないように抑え、徐々に強くスレッドを締め込んでウイングを固定する

指を放すとこのような状態に。この後はスレッドでヘッドの形を微調整すればOK
余りをカットして完成

こうすることで、アイ側にスペースを作ることができ、巻いたハックルを潰さずにエルクヘアを取り付けることができます。

また、事前にハックルをアイのギリギリまで巻かないようにしておくことも重要です。留める位置はスレッドだけの状態になっているのがベスト。しっかりと、そして簡単に留めるためにも、この下処理は必須です。 ウイングを取り付ける箇所は、なるべくスレッドだけにしておきたい。余分なマテリアルが付いていると、ヘアの束を乗せた時に影響が出ることも


次回
【隔週連載】嶋崎了のフライタイイング基礎知識
第12回「ピーコックボディー編」は
2018年1月15日(月)公開予定です。

2018/1/1

つり人社の刊行物
初歩からのフライタイイング
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本書は、これからフライタイイングを始めようとする人に向けた入門書です。 解説と実演は、初心者の方へのレクチャー経験が豊富な、東京のフライショップ「ハーミット」店主の稲見一郎さんにお願いしました。 掲載したフライパターンは、タイイングの基礎が…
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最新号 2023年12月号 Early Autumn

【特集】尖ってるドライフライ

今号では、編集部が「面白いな」と感じた渓流用のドライフライのタイイングと考え方を紹介します。取り上げるのは、パラシュートスパイダー、エルクファンタジィ、丹沢スペシャル、マジックバレット、里見パラシュート、ヨッパラ、特殊部隊の7本です。これらを並べてみると、みなさん気にかけているのは、耐久性、浮力の持続性だけでなく、「誘い」であることがわかります。水面の流れより遅く流れる、フライそのものが揺れる、マテリアルが揺れる、などさまざまですが、いわゆるナチュラルドリフト以上の効果を明確にねらっているものがほとんど。来シーズンに向け、ぜひ参考にしてください。
またウォルト&ウィニー・デッティ、ハリー&エルシー・ダービーに関するフライタイイングの歴史、そして、『The Curtis Creek Manifesto』(日本ではご存知、『フライフィッシング教書』として翻訳されています)の作者、シェリン・アンダーソンについても取り上げています。


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