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ささきつりぐ

スカジットタクティクス入門│第4回

スカジットタクティクスを全9回でお伝えしていく

文・写真=仲野靖

利き手を無理なく使って釣りに集中

釣り場で最も大切なことは、言うまでもなく「釣りそのものに集中」すること。目の前の流れのどこに魚が潜んでいそうなスポットがあるのか?どのような角度でラインを落とせば効果的なスイングが始められそうか?さらには魚がヒットしたあとどう対処すればミスが防げるか?それらに集中して初めて魚にフライが届く。ところが、特にウエットフライやストリーマーを駆使する釣りにおいて、押しも強い流れに立った場合、多くの人は好むと好まざるとにかかわらず、キャストそのものに労力を費やしてしまうのが実際のところだろう。

スカジットキャストが非常に実践的といえるのは、たとえばこうした点においても、無理なく釣りに集中できる要素が多く含まれているからだ。

たとえばこのキャストではどんな場面でも、「上手と下手を逆にして投げる」といったことは必要としない。そうせずとも、基本の7ステップスを釣り場のシチュエーションに応じて調整すれば、十分にパワーと正確性のあるキャストができる。それを端的に示す例が、今回紹介する右利きの人がバックスペースのない右岸側を釣り下るケースだ。

一般的に右利きの人にとって、キャストがより難しいのは右岸側(下流を向いて右側の岸)になる。これは利き手側のオープンスペースがより狭くなるためで、特に背後に障害物が迫っている場合はキャストのパワーや正確性が劣りやすくなる。しかし、このキャストでは周囲の状況に応じて「レギュラーサイド(自分の利き手側)」と「リバースサイド(利き手の反対側)」のスペースをうまく使い分けることで、ストレスを感じずにフライをクロス方向に打ち返すことができる。

その際、実際のキャスティングの動きはいくつかの方法を自分の好みで選択できるが、ここでは「レギュラーサイドでのダブルスペイ」と「リバースサイドでのペリーポーク」という2つの実例をまず紹介しよう。次回からは、それぞれのキャストの中に含まれるアンカーの置き方や障害物をかわすための細かな調整のポイントについてもフォローする。

 

 

右岸の釣り下りにおける実践的なキャスト① レギュラーサイドのダブルスペイ

レギュラーサイドのダブルスペイ

スカジットキャストでは、どんな場面でもベースとなる動きは前回までに紹介した「基本の7ステップス」になる。そのうえで、川でのキャスト自体は「ペリーポーク」「Cスペイ」「ダブルスペイ」の3タイプを使い分けるが、ここではまず右岸におけるレギュラーサイドのダブルスペイを紹介する。

 

flyfisher photo

1、バックスペースは全体的にヤブが茂っている。その中でなるべくスムーズにフライをクロス方向に打ち返したいという状況。まず下流側に流し終えたラインを、下手を低い位置に保持したままロッドを起こすようにして上流側に運ぶ。

 

flyfisher photo

2、フライが自分の正面あたりに着水するように力加減を調整。なお、ここは底石が滑りやすく、かつ川幅いっぱいに水が流れているので身体に掛かる水圧も大きい。そうした中で実際にはこのあとのキャストの動作に備え、体重は川側に傾けている。

 

flyfisher photo

3、ラインを上流側にセットしたら、ロッドを低い位置から動かし始めてスイープに入る。この時、実際はセットの段階でロッドティップを自分の横よりもやや後ろ側まで回し込み、ラインのセット位置をあらかじめ岸寄りにしておくことで、スイープの距離をより長く取れるようにしている。

 

flyfisher photo

4、スイープの後半はキャストの方向を川に対して90度方向(クロス)に設定したうえで、岸方向へラインを回し込みすぎず、かつDループの膨らみが最小限になるように45度のスラストを行なってそのままターンオーバーへ移行。感覚的にはスラストを自分の身体の後ろではなく、川の下流側の横方向に向けて行なうようになる。

 

※この続きは、月額700円+税で有料メンバー登録するとご覧いただけます。

2024/6/17

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最新号 2024年12月号 Early Autumn

【特集】マスのきもち

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