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WILD LIFE

忍野ノート2022

VOL.09 6月5日

佐々木岳大=文と写真
夕方、ライズで沸いたS字のバンク際

《Profile》

佐々木 岳大(ささき・たけひろ) 1974年生まれ。神奈川県南足柄市在住。ホームグラウンドは地元の丹沢など。C&Fデザイン社に勤務。マッチング・ザ・ハッチの釣りのほか、ドライフライ、ニンフを使った小渓流の釣りも得意としている。
 

どこに行っても心地よさを感じずにはいられない最高の季節、釣友と渓流釣りを満喫した帰りに忍野に立ち寄りました。[忍野フィッシングマップ:ポイント写真16]通称:S字を釣りたいと言う釣友の誘いに便乗し、まっすぐS字に向けて歩くと、残念ながら人影が…。
しかし近づいていくと、当連載でお馴染みの釣友・大塚さんでした!


聞けば、ものすごいライズの中、いくつかはキャッチできたものの、なかなか手強く疲労困憊のご様子です。何でも、小さなマルツツトビケラがストマックからたくさん出てはくるものの、簡単ではないと…。ポイントをシェアさせてもらいますが、嫌な予感しかしません!

特大から極小まで

フリーストーンで岩魚釣りを満喫した帰りに寄った都合で、リーダーの先に結ばれているティペットは、長さこそ十分なものの太さは5Ⅹです。
グラブフックの#20に巻かれたⅩカディスに結んでみれば、ティペットの存在感は抜群で、はたしてこのまま押し通すのが吉とでるか凶とでるか…?

暗くなるにつれてライズは激しくなっていったが…

大きく川が蛇行する通称:S字は、手前の流れが容赦なくフライラインを引っ張り、対岸をドラグフリーでドリフトさせるのが非常に難しいポイントです。とは言え、捕食物の情報も貰っているし、太いとはいえ十分な長さのティペットが結ばれていることもあり、「まぁ、イブニングだしね」と楽観的にプレゼンテーションを繰り返します。

何投かすると、すぐにドリフトしているXカディスの下にマスが浮かびあがり、しばらく一緒に流れ下ってから口をあけるのが見えました。「よーし!」と声にだして竿を立てると、アレっ…?
かすりもせず、何の手ごたえも得られません…。

じつは…、このような失態を何度も繰り返すこと30分、「よしっ!」の大安売りで、どんどん場所を荒らしてしまいました…。S字は頭上に木が張り出しているので、空がひらけたポイントに比べて暗くなるのが早く、気持ちばかりが焦りだします。
ポイント移動が頭によぎり始めた頃、対岸に引っ掛かっている障害物スレスレでライズしていたニジマスが激しくフライに反応し、ようやく魚の重みがロッドに伝わってきました!

ようやく釣れたニジマスの捕食物。幅広いサイズの様々な流下物を捕食していた

大塚さんにランディングしてもらいストマックを確認してみると、「うわぁー…」、巨大なメイフライのスピナーや、大小さまざまなストーンフライ3種、ホソバマダラのスピナーにマルツツトビケラと思われるマイクロ・カディスがぐっちゃり…。

フックサイズにすれば、ロングシャンクの#8から、レギュラーシャンクの#22まで、実に多彩な捕食内容です。主食がマイクロ・カディスであることは間違いないのですが、ある意味、ドリフトさえできればフライはどんなものでも可能性があると考えることもでき、初心者もベテランも関係なく、流れに立ってさえいれば思わぬチャンスがあるという部分が、実にフライフィッシング的です。

放流まもない魚体だったが、苦労しただけに嬉しい!

吉とでた5Ⅹ

S字が暗くなり、小さなドライフライを目で追うのがツラくなったので、空いているポイントを探しながら下流に歩き、[忍野フィッシングマップ:ポイント写真19]通称:自衛隊橋で再びライズの前に立つことができました。

明るい!
時間が巻き戻って、まるで1日に2回のイブニングライズを楽しめるような、得した気分です。
暗闇がせまってきていて、焦る気持ちからポイントの写真を撮影を忘れましたが(失礼!)、明らかにS字とはライズの様子が異なります。ライズポイントが近いこともあり、さきほど釣れた20番のⅩカディスを流すと、マスがフライを見にくる様子がよく見えるのですが、明らかにフライを見極めてUターンしていきます。

その時、釣友がヒゲナガの大きなフライを結んだ状態で現れたので試して貰いますが、やはり反応はしても完全に咥えさせるところまではいきません。これは極小のヒメカゲロウやクシゲマダラなどが怪しそうだと推測し、フライをオレンジの目印をもった22番のシンプルなパラシュートフライに結びかえることにしました。

一撃です!
極小のフライを捕食するのに、そんなに激しく出なくても…と思わずにはいられないほどの勢いでフライを咥えてくれました。結果的に、サイズこそ40cm台前半だったのですが、抜群にコンディションの良いニジマスで、リールから何度もラインを引き出します。

強烈な引きで、スレ掛かりを疑うほどにロッドを絞りましたが、何とかいなしてランディングネットですくうことができました!「5Ⅹでよかった~」、「6Ⅹだったら、ヤラれてたかも?」と思わずにはいられない、ヒヤヒヤのファイトを堪能させてもらいました。

#22のフライで釣れた好ファイター!光量の足りない画像ですがご容赦を

さて、すっかり日も暮れてしまいましたが、携帯電話のライトを頼りに捕食物の確認です。
「小っちぇー…」。
出てきたのは、アカマダラやエラブタのイマージャーやシャック、そして今年初のクシゲマダラです。
濃褐色で全体的に黒っぽく、流下に気がつきにくい小さなメイフライですが、忍野のイブニングでは重要種となることも多いので、フライボックスには必ずそのイミテーションフライを入れておくようにしています。
S字でのライズ攻略とは真逆に、サイズ合わせが正しくないとまず釣れない、このパターンも実にフライフィッシング的だと感じながら帰路につくこととしました。

暗闇のなか、こんな小さな流下だけを選んで捕食する。実にフライフィッシング的!

【使用タックル】

ロッド:Epic 476-Reference 7’6” #4
リール:Epic Backcountry Reel 3/4
ライン:DT-4
リーダー:7ft 4X
ティペット:フロロカーボン 5X
フライ:Xカディス#20, パラシュート#22など

2022/7/4

つり人社の刊行物
初歩からのフライタイイング
初歩からのフライタイイング 2,750円(税込) A4変型判148ページ
本書は、これからフライタイイングを始めようとする人に向けた入門書です。 解説と実演は、初心者の方へのレクチャー経験が豊富な、東京のフライショップ「ハーミット」店主の稲見一郎さんにお願いしました。 掲載したフライパターンは、タイイングの基礎が…
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最新号 2024年6月号 Early Summer

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今号はエキスパートたちのベスト/バッグの中身を見させていただきました。みなさんそれぞれに工夫や思い入れが詰まっており、参考になるアイテムや収納法がきっといくつか見つかるはずです。

「タイトループ」セクションはアメリカン・フライタイイングの今をスコット・サンチェスさんに語っていただいております。ジグフックをドライに使う、小型化するフォームフライなど、最先端の情報を教えていただきました。

前号からお伝えしておりますが、今年度、小誌は創刊35周年を迎えております。読者の皆様とスポンサー企業様のおかげでここまで続けることができました。ありがとうございます!


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