忍野ノート2022
VOL.01 3月15,16日
佐々木岳大=文と写真 放流魚主体の釣場であることを否定はしないが、夢のあるマスがいることを知るフライフィッシャーの忍野詣が今年もはじまった。私の1尾目は将来を期待せずにはいられない美しいニジマス《Profile》
佐々木 岳大(ささき・たけひろ) 1974年生まれ。神奈川県南足柄市在住。ホームグラウンドは地元の丹沢など。C&Fデザイン社に勤務。マッチング・ザ・ハッチの釣りのほか、ドライフライ、ニンフを使った小渓流の釣りも得意としている。
佐々木 岳大(ささき・たけひろ) 1974年生まれ。神奈川県南足柄市在住。ホームグラウンドは地元の丹沢など。C&Fデザイン社に勤務。マッチング・ザ・ハッチの釣りのほか、ドライフライ、ニンフを使った小渓流の釣りも得意としている。
空席の理由
3月15日、友人の釣りをサポートしに解禁日の忍野を訪れました。忍野の解禁といえば、例年、富士山の冷たい吹き降ろしの風に凍えてロッドを振るのが普通ですが、今年は到着した9時で車の気温は18℃と表示されています。[忍野フィッシングマップ:旧金田一]で友人2名と合流し、魚を探しながら暖かい忍野の流れを下流へ歩きます。しかし、魚影の見られるポイントにはすでにフライフィッシャーの姿が…。友人の山崎さん(左)と久保田さん(右)。魚影の濃いポイントにひと気がないと思ったら右利きにはアプローチの難しいポイントだった
通称:旧富士急ホテル前に掛かる橋を渡り、左岸を上流にむけ歩きますが、やはり主なポイントにはフライフィッシャーが立ちならんでいます。
これは上流まで歩いて空いているポイントを探すようだなと思いながら、[忍野フィッシングマップ:水族館裏]の高い護岸上を通りかかると、大きな沈み石の頭にいくつかの魚影があり、最大は40㎝を超えるコンディションの良さそうなニジマスも確認できます。
なぜかフライフィッシャーの姿もなく、どうしようかと3人でポイントを観察して相談しているときに、ふと気が付きました。
どうやら、アップストリームでしかアプローチできないポイントにもかかわらず、右利きのキャスターの障害となる、雑木の生い茂った護岸が上流を向いて右側にある都合で、アプローチが困難なのでひと気がないのだなと…。
そうであれば、作戦は決まりです。
友人の山崎さんはレフティーなので、このポイントで気持ちよくラインを伸ばしてアプローチできます。
ポイントまで7~8m下流の位置まで距離を縮め、マスの上流1mに#18のビーズド・フェザントテールニンフを落とし、ストライクは高い護岸の上で、マスの挙動が丸見えの私が指示することにします。
1投目はややショートで、ニンフはマスの少し下流に落ちました。
距離感を山崎さんに伝えた2投目は完璧で、マスの1m上流にニンフが着水すると同時に、ポイントにいた4~5尾のマスが一斉にフライに反応し襲いかかりました。(びっくりした!)
左利き有利のポイントで、コンディションの良いマスがリールからラインを引き出す
残念ながら最初にフライを捉えたのは小型のマスでしたが、大きな声で「喰った!」と山崎さんにストライクを伝えます。
同時に竿が立てられ、その場でイヤイヤしたマスが身をひるがえして下流に疾走し、山崎さんのリールからラインを引き出します。
無事にランディングネットに収まったのは、コンディションの良い、黒点が少ない特徴的なマスでした。
そうそうに良い結果が出せ、良い気分!大満足です!
山崎さんのストライクがビシッ!と決まって手にした、解禁1尾目のマス。毎年のことながら、いいものです!
ライズを誘発するハッチ
解禁日はライズする魚の前に立つことができませんでしたが、実は今回の釣行は泊まりの2日間で、夜は解禁日の釣りを肴にお酒を楽しみました。この席には、解禁日を別のポイントで楽しんだ知人もいて、正午前後に[忍野フィッシングマップ:旧金田一]でライズあり、良型を手にしたという情報を貰いました。
翌日、前日に素晴らしい解禁気分を満喫した山崎さんが、情報をもとに旧金田一でライズを待ちます。
正午が近くなるにつれ、水面から中型種のメイフライがあらわれては、春の少し強めの風で対岸へ飛ばされていきます。
風の止んだタイミングで、頭上に飛翔しているメイフライを捕虫網で捕獲し確認してみると、オオクママダラカゲロウのダンでサイズは#12相当。
何匹か捕獲してみると、なかにはやや小ぶりな#14に近い個体も見受けられます。
捕獲したオオクマのダン。大きなウイングや短いテール、マダラカゲロウのイミテーション・フライを巻く際の参考に記憶しておきたいプロポーション
しばらくすると散発ながらライズが見受けられ、山崎さんがオオクマのフライを用意していなかったので、私のフライボックスを見渡します。
スパークルダンとクリップルダンのパターンを見つけ、彼が選択したのはクリップルダン。
ディアヘアのスパイクを持った羽化途中のイミテーションで、フックサイズこそ#14ですが、ボリューム感を持ったフライでフックサイズよりも大きく見えます。(ただのオーバードレッシングで、決して狙ったわけではありませんが!)
結果オーライ?#14のフックに巻かれたオーバードレッシングなオオクマ・クリップル
ハッチの正体をオオクマに特定できたので、ライズを待ちつつ、流下を意識しながら水面を観察します。
水面から1匹飛び立つオオクマの姿が確認できると、直後にパタパタと数匹が飛び立ち、5分ほど沈黙して、また同時多発的にダンの姿が確認できます。
短時間で波のあるハッチを繰り返しているような羽化で、山崎さんはライズ直後にフライを即速射できる地点のライズに狙いを定めます。
しばらく待ち、そのポイントで小さなライズが起こった直後すかさずキャストすると、ほんの少しだけドリフトしたフライが消えるように吸い込まれました。
しっかりと一拍置いてから山崎さんの竿が立てられると、上流にむかって一瞬でラインが引き出され、落ち込みに入られると同時にラインブレイク…。
残念ながらキャッチまでは到りませんでしたが、背びれをだしながら、大きな波紋をだして疾走していた様子から察するに、かなりの良型だったようで本当に残念です!
ラインブレイク直後の山崎さん。悔しいはずだが、なぜか顔は楽しそう
解禁から2日間を川で過ごしただけの個人的な印象ではありますが、今シーズンはここ数年ではオオクママダラカゲロウの羽化量が多いような気がしています。
#12~#14ほどのオオクマパターンと、フライサイズにマッチした5X以上のティペットを忘れずに準備して次に備えたいと思います。
ライズを探して歩いていると、忍野常連の松村さんが良型のニジマスをキャッチしているところだった。なんと63cm、お見事!
[ 使用タックル ]
ロッド:R.L.Winston AIR2 8’6” #3
リール:Hardy Bougle 3’
ライン:DT-4F
リーダー:10ft 5X
ティペット:フロロカーボン 6X
フライ:ゼブラミッジ#16
2022/4/18