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ささきつりぐ

忍野ノート2022

VOL.10 6月26日

佐々木岳大=文と写真
本格的な夏の到来が感じられる残雪のほとんどなくなった富士山

《Profile》

佐々木 岳大(ささき・たけひろ) 1974年生まれ。神奈川県南足柄市在住。ホームグラウンドは地元の丹沢など。C&Fデザイン社に勤務。マッチング・ザ・ハッチの釣りのほか、ドライフライ、ニンフを使った小渓流の釣りも得意としている。
 

関東甲信越の梅雨明け宣言が出される直前、川辺の草木が一気に背を伸ばした忍野に釣行しました。
常に視界に入るわずらわしいメマトイや、吸血されるとやっかいなブユなど、嫌な虫が出はじめているので、これからの釣行を考えている方は対策が必要かもしれません。

フォームビートル

標高が高く、気温も湿度も低い忍野ですが、この日は炎天下と呼ぶにふさわしい気候でした。
釣り開始は17時頃で、[忍野フィッシングマップ:旧金田一への入口]から入渓し、ギラギラとした陽射しの中でライズするマスを見ていたら、夏の定番フライ「フォームビートル」を試してみたくなりました。


対岸にあたる左岸際でいくつかのマスが散発なライズをしているので、#17に巻いた小さなフォームビートルで、下流のマスから順番に頭を叩くようにアプローチすることにします。
フォームビートルが明らかに効いているときは、着水した瞬間に反応を得られることが普通なので、反応が得られなかった場合は2投連続のアプローチをせず、ローテーションで次のマスを狙う作戦でいきます。

ビートルの効く時間帯を外してしまっている都合もあるのか? なかなか反応が得られませんが、1投ごとに狙うマスを変えているうちに、ようやく1尾のマスを手にすることができました。しかし実は、釣れたマスはミスキャストで少しショートし、マスのわずか後方に落ちたフォームビートルを反転して追い食いしてくれました。

今シーズン初のビートルの釣りだったので忘れていましたが、マスの視界から外れている場所にフライを叩き付けることが効果的な場合も多々あるので、たとえミスキャストでも、着水と同時にサオを立てて合わせられるように油断しないことも、この釣りの重要な点と言えるかもしれません。

忍野の夏に欠かせないフォームビートル。着水と同時に飛び出ることが多々あるので心の準備が大切

フライ交換が功を奏す

フォームビートルで1尾釣ることができて満足したので、もう少し釣れそうなフライに交換することにします。
目立つのは捕獲して確認はしていないのですが、遠目で姿カタチから推測するにフタオ系のスピナーや、小さなブラックカディスが水面付近を騒がせています。しかし私的に気になる本命は、マスの常食となることが多い、時折飛んでくるアカマダラです。

ダンパターンでも釣れそうな気はするのですが、おもいっきり流芯をまたいで釣っているので、少しでもドラッグヘッジ機能の高いフライをと考え、半沈系のパラシュートパターン「クリンクハマースペシャルのアカマダラ風#22」を選択しました。

アカマダラ風クリンクハマースペシャル#22で、たびたびロッドが曲がった

ここまでフライ交換が功を奏した例も記憶がないのですが、たまたま時合いだったのでしょうか?
難しく考えずに、ナチュラルドリフトに徹する意識さえもっていれば、忘れた頃に釣れるような状態が続きます。忍野では充分な成功ともいえる状態を堪能し「ひと通りのライズを釣ったので…」という、何とも恰好の良い理由でポイントを移動します。

大きくはないが、偽物を見破る選球眼は確かなニジマス

目につく大型種

右岸側から左岸に移動するため、[忍野フィッシングマップ:ポイント写真30]の橋を渡っていると、かなり大きなメイフライのスピナーが群飛しているのが目に入りました。
確認はしていませんが、おそらくフタオ系のスピナーだと思われます。

まとまった流下はどの時間帯になるのかな?なんてことを考えていると、淡黄の大型メイフライが目の前に飛んできたので捕獲してみるとフタスジモンカゲロウのダンでした。
昨シーズンの救世主的なハッチで、イミテーション・パターンで救われることも少なくありませんでしたが、今のところ今年はまだ不発です。

フタオ系メイフライスピナーの群飛。木々の覆いかぶさった場所でよく見られる

昨シーズンのハッチの目玉、フタスジモンカゲロウも安定して視界に入るようになってきた

結果オーライ?

ライズを探して歩き、[忍野フィッシングマップ:ポイント写真26]付近で、なかなか良い感じのライズを発見しました。
この位置からアプローチできるポイントとしては最下流、上から垂れてきている樹の大きな枝が水面に接し、そこに溜まっているゴミの頭で頻繁にライズしています。白っぽく見える魚体が、流下物に鋭く反応し、ライズリングは魅力的としか言いようがありません!

ゴミ溜まりの頭で頻繁にライズしていたのはヤマメ。忍野では頻繁にライズしているマスこそ難しかったりする

ポイントを変えると当たり毛バリが異なることも珍しくない忍野ではありますが、直感的に結んだままになっているフライでいけそうな気がしたので、このまま勝負することにします。
ダウンでフライを送りこむアプローチなのですが、思ったよりも魚の口元に吸い込まれていく流れが見つかりません。

何度も「アレっ?」という不本意なプレゼンテーションで魚の手前を流してしまいましたが、ようやく正しいレーンにのった最初のドリフトで、「反応しないかぁー!」と思ったタイミングで急に身をひるがえして反応し、こちらの腕がビクッ!と反応したタイミングで定位置に戻っていってしまいました…。「これはいいトコ流れるなぁー」と思っていると、定位置1m前くらいでスッとレーンの変わってしまう、簡単なようで難易度の高い流れだっただけにガッカリです。

とは言え、他の場所でもライズが始まった夕方のプライムタイムだったこともあり、しばらく粘ったすえに、何とかフライを口にしてもらうことができました。口を開いてスッ!と吸い込む瞬間に、こちらの呼吸も止まってしまうような緊張感のある合わせをくれると同時に、パニックで激しいローリングをし、「ヤマメだ、イエーイ!」と思ったら急にテンションを感じなくなってしまいバレてしました…。

やっと食わせることができたが、この直後にバラした…

「もう!」とひとこと悪態をついて、フライをケアしようとティペットを手繰りよせると、フックが伸びています…。おそらくバラしたヤマメと言うよりは、前のポイントでそれなりの数を釣っていたので、たまたまこのタイミングで伸びてしまったのだとは思うのですが、よりによって…としか言いようのない気分です。

友人が少し下流で釣りあげたマスのストマック。置かれたフックは22番

日も暮れてきたので納竿とし車に戻ると、少し下流を釣っていた漁協組合員のWさんがいました。いい釣りをしたとのことで、情報交換していると、「クシゲマダラのスピナーの偏食だったね」と…。
「え?そうなの?」と、採取したストマックを見せてもらうと確かに…。ただ偶然、自分の結んでいたフライとサイズもカラーもぴったり…。はなはだ不本意ではありますが、たくさん釣れて楽しい思いができたので、結果オーライでヨシ!とします。


【使用タックル】

ロッド:Epic 586Gグラフェン 8’6” #5 6pcs
リール:Epic Backcountry Reel 3/4
ライン:Epic Glassline WF-5F
リーダー:10ft 4X
ティペット:フロロカーボン 6X
フライ:フォームビートル#17, アカマダラ風クリンクハマースペシャル#22など


2022/8/5

最新号 2024年6月号 Early Summer

【特集】拝見! ベストorバッグの中身

今号はエキスパートたちのベスト/バッグの中身を見させていただきました。みなさんそれぞれに工夫や思い入れが詰まっており、参考になるアイテムや収納法がきっといくつか見つかるはずです。

「タイトループ」セクションはアメリカン・フライタイイングの今をスコット・サンチェスさんに語っていただいております。ジグフックをドライに使う、小型化するフォームフライなど、最先端の情報を教えていただきました。

前号からお伝えしておりますが、今年度、小誌は創刊35周年を迎えております。読者の皆様とスポンサー企業様のおかげでここまで続けることができました。ありがとうございます!


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