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忍野ノート2022

VOL.03 3月27日

佐々木岳大=文と写真
おおいに苦戦した日の午後、この1尾に救われた!

《Profile》
佐々木 岳大(ささき・たけひろ) 1974年生まれ。神奈川県南足柄市在住。ホームグラウンドは地元の丹沢など。C&Fデザイン社に勤務。マッチング・ザ・ハッチの釣りのほか、ドライフライ、ニンフを使った小渓流の釣りも得意としている。
 

関東の平地では早咲きの桜が葉桜となり、ようやく花を咲かせはじめた染井吉野が楽しめる季節になりました。
しかし、気温こそ例年より高いものの、富士山からの吹き降ろしの風はまだ冷たく、忍野に本格的な春が到来するのはまだ先のようです。
この日は今にも降り出しそうな曇天に、前回同様に良いハッチがあるだろう…、と勝手に思い込んで泣きをみることに…。

ツキに見放される

前回よい思いをしたポイントに向かいたい気持ちをグッとこらえ、他のポイントの様子を確認するため、正午過ぎに自衛隊橋から入渓し、様子をうかがいながら上流へ歩を進めました。
[忍野フィッシングマップ:ポイント写真16]通称S字と呼ばれるポイントの下流、やや流速のある流れで、上下左右大きく移動しながらライズを繰り返すマスを発見です。


このポイントで、唯一定期的なライズを繰り返していたマスのライズリング

このマスが手強かった…。
ライズするマスの様子をうかがいながら、ときおり視界に入る水生昆虫を気にしていると、もっとも頻繁に見るのはガガンボ、そして捕まえて確認はしていませんがオナシカワゲラと思われるストーンフライ。
マスはあきらかに水面上の流下物を捕食することもあるのですが、おおむね水面直下の流下物を捕食することが多い様子で、その比率は3:7くらい。
水面上の何かを捕食する様子が見てとれることもあり、ドライフライも食べるだろう?という勝手な決めつけで、10種類以上のドライフライを投じますがナカナカテゴワイです。
取り急ぎ捕食物のヒントが欲しかったので、同じポイントのベタ底に定位している良いサイズのニジマスの口元まで、#16のゼブラミッジを一気に沈めてフライを口にかけるも、首振り一撃で外されてしまいました…。

使い古しのヨレヨレで恐縮ですが#19のタップス。ちなみにハックルはヘンではなく、あえてコックを使用

ここで冷静になり、そもそもドライフライで釣れるだろう?という考えが甘いのではないか…と思い直しました。
ここは激戦区・忍野で、この「釣れるだろう?」という思い込みで、釣りに変化を与えず、なんど失敗してきたことか!
フライボックスの中から、水面直下を流す想定でタイイングした#19のタップスをフロロカーボンの6Xに結んでキャストし、先ほどまで投げていたドライフライの流れ方をイメージしてマスを観察していると…一撃!
水面付近まで浮いてきて口を大きく開けたので、瞬間的な合わせをくれましたが、マスが違和感を感じて吐きだすほうが微妙にはやく、カツッというわずかな手応えだけでフッキングまで持ち込むことができませんでした。
次のチャンスも期待できない、最悪の結末です…。
ほんの数センチ下の層を流すだけで、ここまで如実に反応が違うものかという楽しい気持ちと、バラシの連続で、なんかヤバそうな雰囲気になってきた危機感をヒシヒシと感じながら、すがる思いで[忍野フィッシングマップ:ポイント写真26]へ大きく移動することにしました。

決定打に欠ける理由

大きく下流域に移動し、ポイントの様子を伺いますが、目を疑うほどに静かな水面に絶望します…。
いったい先週の賑わいはどこに行ってしまったのでしょうか?
実はこのポイントに移動する途中、[忍野フィッシングマップ:ポイント写真17]で良いサイズのマスをふくむ2尾のバラシを追加していたので、あきらかに自分がドツボにハマっているという実感が強く、久しぶりに釣果のない忍野釣行になるかもしれないと弱気な気持ちになりました。
この状況ではむやみにキャストして場を荒らすのは得策ではなさそうなので、風にのって飛んでくる水生昆虫を観察しながら、じっくりとチャンスを待つことにしました。

腰をおろし、水面付近を低空飛行する虫を捕まえてみるとガガンボだった

30分ほど腰をおろしてポイントをあたためていると、イブニングが近づくにつれて、少しずつガガンボを中心として虫っ気が感じられるようになってきました。(飛んでいるからといって、流下しているかどうかは別問題)
ライズはあいかわらず20分に1回ほどの散発ものですが、水中で何かを捕食する頻度は確実に高まっている様子です。
イブニングでマスの興味をひくハッチがおこることに期待しつつ、このまま静かに日が暮れてしまうのではないかと言う思いもあり、このポイントでもっとも水深のない位置で1度だけライズしたニジマスがもっともドライフライに反応させやすいと考え、次のライズで正確な位置を確認し、フライを投げてみることに決めました。

今年は季節が読み切れない。先週に引き続き、今週も初夏の風物詩フタスジモンカゲロウの姿が…

随分と長い時間次のライズを待ち、ようやくマスの定位置に検討をつけることができました。
やや足場の高い位置にポジションをずらし、マスの正確な位置を確認すると、ニジマスの赤い体側が確認できます。
何を捕食したかまでは確認できませんでしたが、もっとも目につくガガンボで1投だけしてみて、反応が得られなければ2投目はしないと決めてフライをダウンで送り込んでみました。
視界に確実に入っているであろう位置にフライが差し掛かっても、ニジマスはピクリとも反応するそぶりがありません…。
いったん下流まで流しきって次のチャンスを待とうと思っていると、急に胸鰭を広げたニジマスが下流に反転しフライを追いかけだし、ダバン!という印象でフライに襲いかかりました。
今日1日、さんざんバラシ続けた記憶が強く残っていたので、口に刺すという意識で確信をもって竿を立て、30cm台後半、良いコンディションのニジマスをネットに入れることに成功しました。
やっと釣れたという気持ちのほうが強い1尾ですが、素直に嬉しい思いでいっぱいです。

苦労して手にした1尾。釣果はゼロとイチでは気分が違うのだ!
釣りづらい理由でもあり、釣りやすい理由でもある捕食内容。マスが偏食するような決定的な流下はないが、さまざまなフライで釣れる可能性があるとも考えられる内容

さて、ストマックポンプを使用し、待望の捕食物の確認です。
なぜか大量の藻の中から出てきた捕食物は、大小ストーンフライ・ニンフのシャック、アセルスにケースドカディスと、次の1尾を釣るフライを決定づける参考にはしづらい内容です。
偏食傾向にないので、決定的なフライを選定することができません。
ある意味、どんなフライでも釣れる可能性があると、前向きに考えることもできますが…。
釣れていてもおかしくなかったいくつかのマスをバラシてしまい、墓穴を掘りまくった釣行ではありましたが、厳しい釣りになってしまった要因になんとなくでも見当をつけることができたので良かった…と言うことにしておきます!


[ 使用タックル ]

ロッド:Epic FastglassⅡ 7’6” #4
リール:Hardy Perfectト 2 7/8”
ライン:DT-4
リーダー:7ft 4X
ティペット:フロロカーボン 6X
フライ:BWOスタンダードフライ#18,ゼブラミッジ#16,CDCガガンボ#18など


2022/4/29

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