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海人スタイル奄美

忍野ノート2022

VOL.02 3月21日

佐々木岳大=文と写真
解禁直後には見られなかった安定したライズが嬉しい!

《Profile》
佐々木 岳大(ささき・たけひろ) 1974年生まれ。神奈川県南足柄市在住。ホームグラウンドは地元の丹沢など。C&Fデザイン社に勤務。マッチング・ザ・ハッチの釣りのほか、ドライフライ、ニンフを使った小渓流の釣りも得意としている。
 

三寒四温

解禁日の朝に18℃あった気温も、今回は14:00頃で車の気温は6℃…。
「寒暖差で風邪をひいた」と、知り合いの地元漁協組合員もボヤいていました。
時折吹く、強い富士山の吹き降ろしは冷たく、ある意味これが解禁直後の例年の忍野といえるかもしれません。
家庭の野暮用で出発が正午過ぎとなり、解禁2日目にハッチに遭遇したオオクママダラカゲロウの羽化は、時間的に絶望カナ?と思いながらも忍野へ車を走らせます。
もはや急ぐ必要もないと割り切り、前述の地元漁協組合員のお宅にお邪魔し、ゆっくりとお茶を頂いていたら現場到着[忍野フィッシングマップ:ポイント写真27]は14:00頃になってしまいました…。


コンパラダンとスパークルダン

完全に出遅れ、ライズの釣りは期待できなさそうだと思っていたのですが、ポイントは貸切で、ライズも数分に1回ではありますが一定の位置で確認できます。
だいぶ離れた位置から様子を確認していたのですが、それでも目視できるサイズのメイフライが時折パタパタと翅を動かしながら流下してきてはバサリ…。
薄茶のボディーに黄色味がかった支脈のはっきりとしたウイング、間違いなくオオクママダラカゲロウが流下しています!
水面を流れるダンが捕食されているシーンを、繰り返し目視で確認しているわけですから難しく考える必要はありません。
12番の茶色いコンパラダンを結び、一番手前のライズに何度かフライを投じると、必要以上に派手なライズフォームで飛び出してきたニジマスが竿を絞り込んでくれます。

30cmほどのニジマスでもコンディションが良ければ引きは侮れない

続けて2尾目を狙います。
オオクマのダンを捕食しているのは確認できましたが、ちょっと苦戦しつつ、見に来ては引き返す行動を何度か繰り返しているうちに、ようやくフライを口にしてくれました。
ストマックを確認すると、やはりいくつかのオオクマのダンが捕食されています。
何度かコンパラダンを拒絶する行動をとったのはドラッグが原因だったのかと思い、ストマックをガラス瓶にピンセットで移し替えている際、妙にシャックが多いことが気になりました…。
あらためてじっくりと観察してみると、「シャック自体を捕食したとみられる形態のシャック」と、羽化途中のダンがシャックを引きずっていた瞬間をとらえられ、「胃の中でシャックが分離したと推測できる形態」の2種類があると感じました。
釣っていたポイントの流れが複雑で、ドラッグを回避するのに苦労していたこともあって、シャックが付いたフライのドラッグヘッジ効果にすがりたい気持ちもあり、フライをコンパラダンからスパークルダンにローテーションすることにしました。

ニジマスから吸い出されたストマックの内容。シャックの形態に注目して欲しい
Z-lonのシャックを引きずったオオクマ仕様のスパークルダン#12

1キャスト1フィッシュとまではいきませんが、3投連続ヒットなどの奇跡的状況もあり、1時間足らずの時間でツ抜けし、これ以上ないほどに良い気分です。
途中、いくつかストマックを抜いて捕食物の調査をおこないましたが、シャックを引きずっていないダンを偏食している個体や、ウイングの抜けきっていない羽化途中のショートウイングイマージャーを偏食している個体なども見られ、オオクマだけでもフライフィッシングの奥深さを感じずにはいられない体験でした。

かけた瞬間、見事なジャンプを何度も見せてくれたニジマス
上顎ガッチリ。外れる理由が見当たらない
完全に抜けきったダンだけを捕食していたニジマス。捕食ステージは個体ごとに違いがみられた
リー・ウルフが言った通り、1度釣って殺してしまうには、あまりに惜しい存在

対象魚による捕食の違い

この日、1尾だけ釣れたヤマメのストマックは興味深い内容でした。

オオクマも捕食してくれていたから釣れたとしか思えないヤマメのストマック

数尾のニジマスから抜いたストマックからは確認できなかった、エラブタマダラカゲロウが複数捕食されていました。
コカゲロウはニジマスのストマックからも少量確認できましたが、エラブタマダラは一切確認することができませんでした。
ヤマメが定位していた、バンクすれすれの前後で釣れたニジマスからも捕食は確認できなかったことからも、私は魚種による捕食性の違いではないかと考えています。
年々重要度の増しているエラブタマダラですが、昨年に引き続き、ボトムカットしたグリフィスナットがエラブタマダラのハッチに本当に効くのか検証することを、個人的には非常に楽しみにしています。

日当たりのわるい、陰になった暗いバンク際から引きずりだしたヤマメ。サビの残った体色が特徴的

季節のはやさ

今年は例年になく季節の(ハッチの)進行がはやいかもしれません。
オオクママダラしかり、エラブタマダラしかりですが、私は今回の釣行でフタスジモンカゲロウの流下と、その捕食シーンを目撃しました。
例年、晩春から初夏にかけてハッチすると思われる水生昆虫のイミテーションフライを、今シーズンはやめに用意した方がいいかもしれません。


[ 使用タックル ]

ロッド:R.L.Winston AIR2 8’6” #3
リール:Hardy Bougle 3”
ライン:DT-4
リーダー:10ft 5X
ティペット:フロロカーボン 5X
フライ:コンパラダン#12 スパークルダン#12

2022/4/18

つり人社の刊行物
初歩からのフライタイイング
初歩からのフライタイイング 2,750円(税込) A4変型判148ページ
本書は、これからフライタイイングを始めようとする人に向けた入門書です。 解説と実演は、初心者の方へのレクチャー経験が豊富な、東京のフライショップ「ハーミット」店主の稲見一郎さんにお願いしました。 掲載したフライパターンは、タイイングの基礎が…
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最新号 2023年12月号 Early Autumn

【特集】尖ってるドライフライ

今号では、編集部が「面白いな」と感じた渓流用のドライフライのタイイングと考え方を紹介します。取り上げるのは、パラシュートスパイダー、エルクファンタジィ、丹沢スペシャル、マジックバレット、里見パラシュート、ヨッパラ、特殊部隊の7本です。これらを並べてみると、みなさん気にかけているのは、耐久性、浮力の持続性だけでなく、「誘い」であることがわかります。水面の流れより遅く流れる、フライそのものが揺れる、マテリアルが揺れる、などさまざまですが、いわゆるナチュラルドリフト以上の効果を明確にねらっているものがほとんど。来シーズンに向け、ぜひ参考にしてください。
またウォルト&ウィニー・デッティ、ハリー&エルシー・ダービーに関するフライタイイングの歴史、そして、『The Curtis Creek Manifesto』(日本ではご存知、『フライフィッシング教書』として翻訳されています)の作者、シェリン・アンダーソンについても取り上げています。


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