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LIFE IS FLY FISHING

第六話 毎日が釣り曜日

阪東幸成=写真と文

ヘンリーズ・レイクを見下ろす丘の中腹にあるコテージを1ヶ月間借りた。

ひたすらフライフィッシングだけをするつもりが、日本から来た友人やアメリカ人の友人たちが出たり入ったりして、ガイド役や通訳役やドライバー役やらで、あれやこれやとバタバタと賑やかな日がつづいた。

料理の上手な友人のD井さんが連日、朝食に目玉焼きとベーコン、ランチにはサンドウィッチ、ディナーにもあれこれと趣向を凝らしてくれるものだから、いつもの年とは逆に太ってしまった。

同様に釣りをつづけて実感したのが、鱒たちの連日の飽食ぶりで、ひと月間にわたし以上にでっぷりと太った。ギャラティンで40センチ前後の魚を#3バンブーで掛けると、結構ハラハラドキドキ感を愉しめる。


ひと月過ごしたコテージを引き払ってからは、いつものキャンプ&モーテルの組み合わせパターンに戻った。

昨夜三日ぶりにモーテルにチェックインして、シャワーを浴び、ベッドの上で寝た。

キャンプ用のパスタやレトルトは余っていたけれども、夕食はスーパーへ行ってフライドチキンとフルーツ盛り合わせに缶入り白ワインをおごった。

D井さんのディナーと比べるといかにも貧相ではあったが、3日間のキャンプの後のわたしの眼には合計10ドルちょっとのディナーが贅沢に映った。


「ひと月間も毎日釣りつづけて飽きないか?」と問われたら「飽きるどころか、ぜんぜん足りない」と答える。

ひと月連続して釣りつづけてみて実感するが、川は毎日驚くほど状況がちがう。毎日別なパズルが目の前に提示されてくるから、ついついのめり込んでしまい、飽きている暇がないのだ。

とはいうものの還暦の身体に疲れが溜まってきているのは事実で、今日はモーテルの部屋でまったりとしているのだが(もちろんイブニングは行くとしても)、疲れているのはマジソンの鱒たちも同様だ。

このひと月間、文字通り朝から晩まで、世界中から集まってくる釣り人たちに虐められすぎて、公園外のマジソン(ロウワー・マジソン)の魚たちの姿は痛々しい。大きさの割に引かず、すぐに寄ってくる魚も多い。

魚たちが可哀想だからといってフライフィッシングをやめるかというとそうもいかない。

やめるわけにはいかない。

せいぜいマジソンの魚たちを来年までそっとしておいてあげるくらいのことしかできない。

だからといってわたしが魚たちに親切かというと、そんなはずもない。他の川に行って別の魚を釣るだけのことである。




《Profile》
阪東幸成(ばんどう・ゆきなり)
アウトドア・ライター。バンブーロッドにのめりこみ、1999年に『アメリカの竹竿職人たち』(フライの雑誌社刊)を著す。2017年にふらい人書房を立ち上げ、以降『ウルトラライト・イエローストーン』『釣り人の理由』など、自身の著作を中心に出版活動を行なっている。最新刊は『ライフ・イズ・フライフィッシング シーズン1』。



ふらい人書房ホームページ
www.flybito.net

2019/7/25

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