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FLOWING LIKE A RIVER 番外編

「JAZZ & FLY FISHING」という北欧のジャズバンドを発見!

FlyFisher編集部=文と写真

思わぬ出会い



つり人社のある神保町、御茶ノ水周辺。古書店のひしめく街として有名ですが、御茶ノ水は大通りの両側に楽器店が多く立ち並ぶ街でもあります。

そして楽器店だけでなく、中古レコード店も多く点在しています。2018年に閉店してしまいましたが、マニアックな音源を多数扱うレンタルCD店「ジャニス」も神保町にありました。

私(担当T)は休憩時間を利用して、ろくに昼食も食べずにそれらの古書店、楽器店、中古レコ屋でのディグを日課としているのですが、そんなところ、先日こんな出会いがありました。


「JAZZ & FLY FISHING」・・・・・・?

某レコ屋、ワゴンの550円セールの中に埋もれておりました。
まさかここで「FLY FISHING」の文字を見るとは思わず、即ライズ。

反射神経は恐ろしいもので、どんな時にもこの字面には反応してしまいます。

直感ですが、「まさかおれと同じフロンティア(フライ×音楽)に挑んでいる酔狂なやつがいたのか? しかも日本でも流通するようなCDの体裁でリリースするなんて・・・・・・」と、「“そんな雰囲気のジャズを集めたコンピレーション・アルバム” なんじゃないか」と勝手に思っていたら、違いました。

「JAZZ & FLY FISHING」という名前の北欧出身4人組バンドの『SLOW WALKING WATER』というアルバムでした。

曲名に注目! 一曲も比較的短く聴きやすいです

なんだなんだ、と思い早速聴いてみたら、これが絶妙に最近の私のツボでした。

メンバーは4人で、ギター、ピアノ、ベース、ドラムのシンプルな編成(曲によってはホーンが入るものもあり)。

各パートの奏法や音作りはたしかにジャズっぽいのですが、曲はいわゆる伝統的なジャズの形式にとらわれず、どちらかというとフュージョンやジャムバンドっぽい印象を受けました。

バッキングを上物(ギターとピアノ)で交代しながら、ソロを各パートで回していく構成の曲が多いです。

インタールード(曲と曲のつなぎ)的な曲も入っており、アルバム全体の構成も凝っているのがうかがえます。

インストですが、おそらく一発録りと思われる曲中にメンバーのかけ声が入っていたり、レコーディング時の生々しさにも溢れています。

そしてなんと言ってもメロディー、それと同居する遊び心のあるリズムが素晴らしいです。

バンドのバックボーンをほとんど知らずに書いているので、このCDとの偶然の出会いに興奮している部分もありますが、贔屓目なしに、これからも聴き続ける1枚になるだろうと言い切れます。

クレジットもこんなです

いろいろ調べているとなんと奇しくも今年(2020年)にニューアルバムがリリースされているではありませんか!

そちらは未チェックですが是非聴いてみたいですね。


そして、YouTubeチャンネルを発見!


YouTubeで検索してみると、公式チャンネルがありました。

スタジオでのセッション動画だけでなく、なんとかなり熱の入ったフライフィッシングの動画も多くアップされていました。

2020年9月現在、公開動画は77本。
チャンネル登録者数は4410人!

釣行動画ではライズシーンを冒頭に持ってきてみたり、指にとまったメイフライをとらえるカットを盛り込むなど、編集も私たちのツボをとらえていて、思わずニヤリとしてしまいます。

<JAZZ & FLY FISHING-On YouTube Channel>

1カポ、ハーモニクス。アイデアに富んだ演奏です

What a f×××!

上の動画の左に映っているギタリストが、この釣行動画では主役のようです。
恐らくバンドのメンバーで間違いないでしょう。

「出たのに乗らない」が続いたり、後ろの木に引っ掛けたり。そんなところにどこか親近感を覚えてしまいます。


さかのぼってみると、チャンネル開設は2010年で、本作のリリースと同じ年でした。

初めのころはホームビデオのようなインディーズ臭満々な動画が多いです。

スタジオでのレコーディングドキュメンタリーかと思いきや、フライロッドを持ち込む姿が・・・・・・アレ、合間にキャスティングで遊んでるじゃないですか!


どうも割合で言ったらフライフィッシングの動画のほうが多く、編集も凝っているように見えますが・・・・・・


いやいや、しっかり(?)このセッションはなかなか白熱。スリリングで熱くなります。

ギターはレギュラーのチューニングではなく恐らくドロップDでのプレイ。
オルガンは左手でベースラインを弾きながら、右手でソロパートを弾く高度なテクニック。

曲のテーマに戻る時のアイコンタクトなどを見ると、慣れているなあという印象です。

ほかにもフラメンコ調のセッションをやってみたりと、音楽的な教養も深いことがうかがえます。

なにより、どの演奏もアイデアに溢れていて素晴らしい!


個人的に一番好きだったのがこれ。歌モノのアルバムも出してほしいです

こちらは初春のライズねらい。氷が融けて落水するハプニングシーンもありますが、最後は良型のブラウントラウトを手にします

これだけでなく、シートラウトや渓流域での釣りなど、バラエティーに富んでいて、フライフィッシングでもとことん全力で遊んでいるようすが垣間見えます。

ちなみに動画のBGMとして流れているのはどれも彼らの楽曲。


いったい、何者?


彼らの出自はCDのクレジットに少しだけ書かれていました。

「フライフィッシャーによるジャズバンドを始めよう」

2008年、見ず知らずの男2人がヘルシンキのパブで出会い、意気投合。

何杯か飲み交わしたのち、レコーディングだけでなく、このプロジェクトのドキュメンタリー映像を作ろう! ということもその場で決まりました。

2009年夏、バンドはスカンジナビア地域でツアーをスタートし、そこに映像制作チームも同行。

何千マイルも移動し、何千という蚊に食われ、何千回も笑ったあと、ツアーの模様を収めた映像作品「SEASON1」は生まれました。

そして本アルバムは、2010年3月にヘルシンキのスタジオでレコーディングされました。

JAZZ & FLY FISHINGは、ジャズカルテットであり、フィルムプロジェクトであり、私たちの夢が叶ったものでもあります。

ということでした。

以前、この連載で「ジャズ×フライフィッシング」のプレイリストを公開しましたが、その際の選曲いただいた方の言葉を思い出しました。

「フライフィッシングとジャズ、両方とも伝統のある文化ですが、ある一定の様式の上に釣り人/プレイヤーが独自のスタイルを築いている。様式美と創造(タイイングやジャズのアドリブ)の合体に魅力があると思います」。

恐らく初めに出会った2人も、両者のそんな魅力を肌感覚で分かっていたのではないでしょうか。

本気で熱中しているからこそ息が合い、心に響く音楽、映像が作れるのだと思います。

遠く離れた異郷の地での出来事ですが、彼らの作る世界に少しだけ触れ、身近に感じることができました。

しかしなんという奇縁だったのでしょうか。デジタル全盛の時代、こんなふうに出会えたことがなにより嬉しいです! 

<「ジャズ編」フライフィッシングプレイリストはこちら!>

2020/9/8

つり人社の刊行物
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瀬戸際の渓魚たち 増補版 西日本編 本体2,500円+税 A5判カラー256ページ
1998年刊行の幻の名著が2020年の視点も加筆されて、復刊です。 フィッシングライターとして現在も活躍する佐藤成史さんのライフワーク、人間の活動などにより生息場所を狭められる渓流魚たちを追いかけ写真に収めた貴重な記録。 インターネット前夜…
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最新号 2020年12月号 Mid Autumn

特集
共鳴するウエットフライ
エキスパートが実践していること

 今号の特集はウエットフライ。十人十色、という言葉がこれほどマッチするフライフィッシングはないかもしれません。エキスパートたちには「この釣りを始めたきっかけ」から、今実践しているテクニックまで、さまざまな質問をぶつけてみました。すると、実は似たような釣り方をしていることも少なくない、ということに気づかされました。
 先般22年ぶりの復刊となった、佐藤成史さん著『瀬戸際の渓魚たち』。Special Topicsと題しまして、阿武隈高地の天然イワナについて現状を取材してきました。日本列島形成の背景をもとに浮かび上がってきたのは、イワナたちの「山越え」という仮説。人類の営みと比べたら気の遠くなるような時間をかけて脈々と受け継がれてきたイワナたちの「血」。そんな歴史を感じることのできる幸福と、現状への警鐘があぶり出されています。
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