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#1 「さらば本流アマゴン」

解禁日こそ尺のチャンス?

遠藤岳雄、喜久川英仁=文・写真

大ものを釣る法則というのがあるのだろうか? 2人の中堅フライフィッシャーが思いつきで始めた「大もの」しばりの釣行プラン。シーズンを通じてヤマメ、アマゴ、イワナの尺上だけをねらい続ける、ちょっと異色のドキュメンタリー。
この記事は2013年6月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
遠藤 岳雄(えんどう・たかお)
1969年生まれ。静岡県裾野市在住。狩野川や富士川の釣りに詳しく、本流域のライズをねらった釣りを得意としている。ドライフライに限らず、ニンフやウエットフライを使った釣りでも数々の大ものを手にしている。
喜久川 英仁(きくかわ・ひでひと)
1969年生まれ。神奈川県海老名市在住。狩野川や桂川をホームグラウンドに、シーズン中は尺ヤマメ、尺アマゴにねらいを絞った釣りに通う。グラスロッドを使った釣りも好き。

「尺上縛り」開始。

釣行回数を問われれば「週に7日!」なんて言っていた日々は遠い昔の話。釣りのマンネリ化が進み、緊張感が年々薄まりつつあることに恐怖感を覚え、自らに喝を入れるためにもこの釣りを始めた頃のような熱いものを再確認してみたくなった。

そこで思いついたのが「大もの縛り」。真剣にデカいヤツだけねらってみたらどうだろうか……。そんな構想を相棒のキクちゃんにそれとなく持ちかけてみると、彼も同じ気持ちだったのかノリノリで即答してくれた。

たしかに大もの相手ならどれだけの場数を踏んだとしても、身震いするほどの興奮がその都度やってくるはず。尺超えのヤマメ、アマゴ、イワナは昔も今も釣り人にとってはひとつの勲章である。

そして冬の間、僕らは尺上ねらいの年間プランを立てようと仕事以上に精を出していた。2人の共通意見は、大ものを釣るなら一にも二にも、まずは実績。

ようするに、そこに尺オーバーが泳いでいなければ話が始まらないからだ。有望河川をいくつか絞り込んだあと、次は釣れた季節やポイント、天候や水量にハッチの状況や使ったフライなど、こまめに検証を重ねた。
まずは、何といっても実績のあるフィールドを選ぶことが尺への近道といえる

シーズンオフの雨天は……

解禁直後のライズは大チャンスでもある。約半年の間、人為的なプレッシャーを受けることなくおおらかにライズを繰り返していた里川や本流域のヤマメやアマゴは、まことにフレッシュであり全くスレていないからだ。

そんな渓魚のライズを事前にチェックしておけば、早い話が解禁日なら早いモン勝ちで釣れることが多い。

まずは下見から。解禁の数週間前から大ものが潜んでいそうな中・下流域を中心に時間の許す限り、時に橋や土手の上から、またある時には河原を彷徨いながらライズを捜した。
解禁直後はフライへの反応もそれほどシビアではないので、視認性やドリフト性能を重視して選ぶ

午前中の早い時間と午後の遅い時間は特にガガンボとフタバコカゲロウを意識した

広大な本流でライズを見つけるには、悪天候の日がよい。意外と思われるかもしれないが、凍えるような寒さと雨の日は、絶好の下見日和といえる。

意を決して傘を片手にアシの茂る河原を突破し、目指すポイントへ向かうと、ウエーダーを履いていないズボンはズブ濡れ。靴はグチョグチョ、おまけにヘンな植物の種を大量にお土産として付けて帰ることになるので注意が必要だが、ライズに出会える確率はぐっと高まる。

晴天だと何も起こらないポイントでも、雨天時には状況が一変していることも多い。そしてある雨の日、僕はズブ濡れになりながら1尾の素晴らしいアマゴを見つけることに成功した。

ファーストフィッシュ

「漢気じゃんけん、じゃんけんポ~ンッ!」
荒涼とした河原に2人の叫び声だけが響き渡る。その奇声に驚いたのか、バババババーッと流れにいたカモたちが一斉に飛び立ち静寂が破られた。

(くっそ~)
心の中だけで叫びながら、引きつった笑みを浮かべ、相棒のキクちゃんに目の前のライズを譲ることにした。

この日は僕らにとってシーズンの幕開けであり、目前で繰り返されるライズは今年の初ターゲットでもあり、じゃんけんはそれを先にねらうための勝負であった。どちらが先にライズを見つけようと、じゃんけんで釣る権利を決めるのが僕らのルールである。
オフのあいだに良型のいる場所をチェックしておき、解禁日に直行するのである

目の前の流れではとてもイージーそうなライズが、モクン、モクンと繰り返されている。キクちゃんは意気揚々と鼻歌混じりでロッドにラインを通し、今シーズン最初のリーダーにティペットを継ぎ足してフライを結び始めた。

「エンちゃん、フライはこれでいいかな?」とルンルン調で聞いてくる。

(スカせ、バラせ)
平静を装いながらもライズに向けて石でも投げてやろうかと本気で考える。それもそのはず、このライズはオフの間に雨の中ズブ濡れになりながらやっと見つけた、とっておきの魚であって、ほとんど釣ったものと思っていた。

何日も通って観察しているうちに、情まで移ってきて、つけた名前が「アマゴン」。それはそれは食欲旺盛でエサが少ないにもかかわらず、なかなかのグラマラスボディーの持ち主。開幕前には1㎜でも早く大きくなれって応援していたくらいだ。

それを直前のじゃんけんによって阻まれるとは……。しかも過去に2度同じケースで負けていることから、今回は勝者が敗者に権利を譲る「漢気じゃんけん」方式を採用したら、見事に勝ってしまうという不始末……なんとも悔やみきれない。

この時キクちゃんがフライボックスから取り出したのは、#16のダニーマであった。しかし、普通のとはちょっと違ってポストには真っ黒なCDCが恥ずかしいくらいぼってりと取り付けてある。

目の前のポイントは、特に曇天時になると河原の灰色が映り込み、水面が真っ白に反射し、ナチュラルやホワイトのポストでは見づらいのだ。だから真っ黒。抑えるところをしっかり押さえているところがまた悔しさを倍増させる。
本流&曇天とくれば、外せないのが黒いポスト。CDCを多めにつけて現場で適宜調整するのがよい。写真のフライはアマゴンを……いや、尺アマゴを見事に引き出した黒ポストのダニーマ

そしていよいよ相棒のキャストによって僕らのシーズンが幕を開けようとしていた。1投目。メジャーリングしてピックアップ。2投目……手前の石にラインが絡まり回収……そして3投目。ライズレーンにしっかりと乗ったフライがゆっくりと流れていく。

(アマゴン、出ちゃダメだ!)

ライズしていたあたりにフライが差し掛かった瞬間、ゆっくりと影が浮上してきた。
(ダメだ……それはニセモノなんだぁ~!!)
ジュボッとフライが吸い込まれ、ビシッとアワセも決まった。
(あぁぁ~)

僕は平静を装いながら声を掛ける。
「ちょ、ちょっといいサイズかな?」
「……」
「聞いてんの?」
「うん……まぁまぁかな? でもそんなに大きくないよ」
そう言いながらもロッドは結構しなっている。
「何遊んでんの? 早く寄せなよ」
(ここで外れてくれたらいいのに、ていうかバレちまえ!)

「あれ? ちょっと大きいかも?」
「ええー!?」
(やっぱりアマゴンだったのか……)
「だってなかなか寄ってこないんだよな~!?」
そんなやり取りの後、バサッとネットですくった魚を見て2人で驚いた。

「もしかしてイったか??」
「測ってみる?」
「うん?」
「どう?」
「30.5cm」
「え~~!!」
(そんなにデカかったのかよ~!?)

呆気にとられながらも、とりあえずカメラを取り出して記念撮影。相棒が撮影に精を出している間に、僕はこっそり2匹目のドジョウを捜した。
解禁日に出会ったツマグロシラメ系尺アマゴ。この姿を見るほどに、やはり下見は欠かせないと改めて実感!

すると、何ということか、先ほどと同じ流れにモコッと水面から頭が出たのを発見! しかもさっきよりデカイかも!?
(ひょっとしたらこっちがアマゴンか!?)

のんびりと笑顔で写真なんぞ撮っているキクちゃんを放置して、音を立てずにその場を離れ、タックルをセットするのももどかしいので彼のロッドを黙って借り、フライも脱ぎ捨ててあったベストからこっそり同じものを拝借し、今シーズン初のライズと対峙した。
アマゴンがキクちゃんの手に。見つけたライズを奪われ、釣られ、写真まで撮らされるとは……

1投目……メジャーリングしてピックアップ。2投目……手前に流しすぎてピックアップ。3投目……しっかりとレーンに乗ってゆっくり流れる真っ黒なポスト。

そこにアマゴが下からスーッと浮上してきて、パックリとフライをくわえた。ジュボジュボッとド派手な水飛沫が上がり、「デ、デカー」と思わずが声が出る。
掛けた瞬間、こっちがアマゴンかと思ったが……

「おおーいいんじゃないエンちゃんー」
いつの間にか後ろに立って見学している。
(あ!? 見つかった)

ほどなくしてネットに収まったアマゴを見て僕らはふたたび驚いた。
「……」
メジャーをあてる。
「……」
「エンちゃん? どうなの?」
「なに? 3cmも足りないー!それって全然シャクガミじゃないね!」
「……」
「うーん、もうちょっと魚を横にしたら大きく写るかな~。」(くっ、お前だけは絶対に許さん)


ヤツは大好きなチョコレートをかじりながら嫌味な一言。
(やっぱりお前だけはゼッテー許さん!)
来年は一人で来ようと心に決めた。

Road to SHAKU
「解禁日は尺日和!」
およそ半年近く人的プレッシャーから解放されていた渓魚たちは、解禁日はまだ気が緩んでいる状態。シーズン中にはなかなか姿を見せない大ものがこの時期はライズしているケースが多い。オフのあいだに良型のいる場所をチェックしておくことは非常に重要。そうすれば解禁日にポイント選びで迷うこともないはず。今回僕らがオフのうちに行なっていたライズ捜しの方法を以下に列記してみたので、少しでも参考になればと思う。
●オフの良型ライズ捜しは解禁2週間前から(下記の条件が理由のため、ある程度余裕を持ったスケジュールがオススメ)
●下見は天気の悪い日が吉(極寒の雨の日こそライズ遭遇率は高い。コレホント!)
●双眼鏡と偏光グラスは必需品(本流域は広く、川からある程度離れた道路からでも捜せるため)
●ーにも二にも実績のある河川を(そこには確実に尺上が泳いでいると思われる河川やエリアに的を絞ることが重要)

2018/2/28

最新号 2018年6月号 Spring

日ごとに緑が濃くなっていく春。本格的に活動を始めるのは、魚だけではありません。
ぽかぽか陽気とライズに誘われて、私たちも釣り旅をしたくなる季節になりました。
今号では、大人のための釣り旅プランを紹介。京都の穴場渓流を釣り、台湾では夜市巡りの後でマハシールをねらう。
さらに石川では、日本酒と魚に酔う旅を……。+αの楽しみがあるプランを、いくつか紹介します。
そして盛期に入る今、やっぱり手にしたいのは大型魚。東北の尺ヤマメ、
中禅寺湖のドライゲーム、そして北海道・朱鞠内湖のイトウ釣行記を、たっぷりの写真で掲載しています。
ほかにもオレゴン在住のフライフィッシャーからのレポート第2弾、
刈田敏三さんが記録した4~6月の水生昆虫データなど、今号も盛りだくさんの内容でお届けします。
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