忍野ノート2021
VOL.01 3月27日
佐々木岳大=文と写真 風景:取材前日の夕方に降雪があった忍野の流れ。年によってはGW明けに降雪があった事例もあるので注意が必要。忍草漁協管轄の桂川、通称「忍野」エリアのようすをレポートします。
《Profile》
佐々木 岳大(ささき・たけひろ)
1974年生まれ。神奈川県南足柄市在住。ホームグラウンドは地元の丹沢など。C&Fデザイン社に勤務。マッチング・ザ・ハッチの釣りのほか、ドライフライ、ニンフを使った小渓流の釣りも得意としている。
佐々木 岳大(ささき・たけひろ)
1974年生まれ。神奈川県南足柄市在住。ホームグラウンドは地元の丹沢など。C&Fデザイン社に勤務。マッチング・ザ・ハッチの釣りのほか、ドライフライ、ニンフを使った小渓流の釣りも得意としている。
ストーンフライとグリフィスナット
緊急事態宣言が解除された翌日の3月23日(火)、フライフィッシャー本誌で別件の取材があり忍野を訪れました。
水生昆虫の検証を目的とした取材で、捕虫網をもって1日川辺に立っていましたが、水面から飛び立つ姿を見ることができたのはストーンフライとガガンボ。
特定の時間でまとまった羽化が見られたガガンボに対し、ストーンフライはこれといったピークがなく、日中ダラダラと羽化している印象でした。
この時、水を張ったバットに捕らえたストーンフライのアダルトを浮かべて観察した際、ああらためて「ストーンフライのレッグがつくる水面のくぼみ」が気になりました。
レッグが水面に接している部分に注目してほしい
私は水生昆虫の観察をおこなった翌日、いくつかのグリフィスナットをタイイング。
サイズは16番と18番の2サイズで、ボトムカットでの使用を前提とし、気持ち密なハックリングで仕上げました。
ストーンフライの特徴的な大きいウイングもない、ただ水面への干渉の仕方だけを意識した簡単なフライですが、流れのゆるい忍野では、このようなシンプルなアプローチの方が効果的だった経験が過去にいくつもあります。
釣行日は地元で桜が美しく咲いたタイミングで、あちこち寄り道をした事情もあり、【忍野フィッシングマップ:ポイント写真03】に到着したのは14:30頃。
漁協の駐車場がある、通称:「江戸屋の堰堤」下流では多くのフライフィッシャーが熱心に竿を振っていますが、堰堤の上にはなぜかフライフィッシャーの姿が見られません。
少々嫌な予感もしましたが、ダメもとで様子を見にいってみると、なるほど……。
上流の禁漁区から下ってきたと思われる、コンディションの良い大型魚が水底に数尾見えていて、近づくとパニックをおこしてしまいます。
しかし、せっかくの貸切ポイントなので、自分もゆったりと定位して腰を落ちつけ観察してみることにしてみました。
ゆったりとした流れに定位する山女魚、想像通りの選球眼をもつ好敵手
大型魚の群れが定位する場所の数メートル下流で、水辺から少し後方に下がった位置でロッドをつなぎ、マスのようすをうかがいながら準備をすすめます。
鱒はほんの数分で元の定位置にもどりはじめましたが、まだ落ち着きはなく、水底まで沈む重量のフライを投じれば、再びパニックをおこすことが予想できる状態です。
ポイントは貸切なので、慌てる必要はありません。
群れが落ち着きを取り戻すのを待ち、少し遠目にウエイテッドフライを投じ、長くドリフトさせる戦略でいこうと考えていました。
しかし、大型魚に気を取られて視界に入らなかったのか?突然1尾のヤマメが目の前を横切ったかと思うと、対岸に寄り添うように定位しました……。
安全に持ち運べ、現場で使いやすい先端の鋭いハサミの携帯をオススメする
ほんの数分ようすをうかがっていると、パタパタと翅を動かしながら流れている流下物をリラックスした様子で捕食し、5分程の間に同じように2度ライズしました。
水面で翅を動かしているとメイフライのようにも見えますが、水面から飛び立つと特徴的な4枚翅であることがよくわかるので、捕食されているのはストーンフライで間違いなさそうです。
事前に準備してある、ライトパターンを意識したグリフィスナットを試すのに、またとないチャンスが訪れたことに興奮し、6Xのティペットにフライを結び、ハックルの下側を気持ちV字状になるようにていねいにトリミングしました。
フロータントで丁寧に処理し、足元の水面できちんと任意の姿勢(ここでは爪先立ちのような姿勢)で浮くかを確認して、ヤマメがもう1度ライズをした直後にフライを入れてみます。
ヤマメより向こう側のバンク際を流したかったのですが、少し距離が足らず手前を流れてしまった1投目は見向きもされません。
2投目はもう少し上流側の流れにフライを落とし、流れにのせて送り込むプレゼンテーションを試みると、フライはうまく対岸に沿う流れに乗り、定位するヤマメより対岸側をうまく流れてくれました。
できすぎです!
本物を捕食したときと同じように、リラックスしたようすで、しっかりとフライを咥えました。
ストーンフライのハッチを攻略するために、ライトパターンを意識して準備したフライが、思惑通りに機能してくれるという、フライフィッシングらしい楽しさを堪能できた1尾でした。
口片に刺さったグリフィスナットが嬉しい!
ストマックの内容も、予想取りストーンフライ
この日は運にも恵まれ、快進撃が続きました。
釣れたヤマメを撮影したり、ストマックの内容を確認するために、護岸上から川と同じ高さにある陸地にあがっていると、何と先ほどの大鱒の群れのなかの1尾がライズをはじめました。
群れの定位する位置からは視界に入らない位置にいたつもりではいたのですが、どうやらマスに気配をさとられていたようです……。
ヤマメをすぐにリリースし、新しい同じフライを結び、再びトリミングをほどこし、低い立ち位置からライズ地点へフライを投じると……。
1投目でゴボッ‼という激しい捕食音をたてて、見事に釣れてしまいました。
フッキングと同時にバッキングまで引き出されてしまいましたが、奇跡的にフックを外されることもなく足元に寄せることができたのは、ヒレの欠損もない推定50cmオーバーのニジマスでした。
撮影前逃亡されてしまったので、「推定」ではありますが……。
しかし、3投で2尾の釣果には大満足です。
また機会があれば、グリフィスナットをはじめとするパーマーフライの可能性を追求したいと思える、新しい楽しみを貰った釣行となりました。
ストマックの内容は、ここから何を読み解くかが重要
[ 使用タックル ]
ロッド:R.L.Winston Pure 7’00” #3
リール:Bauer RX1
ライン:Epic Glass Line DT-4F
リーダー:7ft 4x
ティペット:フロロカーボン6X
フライ:グリフィスナット#18(ハックル下部をV字状にトリミングして使用)
2021/4/19