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忍野ノート2020

VOL.10 9月20日

佐々木岳大=写真と文
秋は大型魚を目にする機会がグッと増える。今までどこにいたのだろうか……?

忍草漁協管轄の桂川、通称「忍野」エリアのようすをレポートします。

《Profile》
佐々木 岳大(ささき・たけひろ)
1974年生まれ。神奈川県南足柄市在住。ホームグラウンドは地元の丹沢など。C&Fデザイン社に勤務。マッチング・ザ・ハッチの釣りのほか、ドライフライ、ニンフを使った小渓流の釣りも得意としている。




長くはない区間への圧倒的な放流量で、忍野には「管理釣場的」なフィールドとしての側面もあると思っています。

ゆえに、ビギナーからベテランまでが、さまざまなスタイルで楽しむことのできるフィールドとして人気を集めているとも考えられます。

しかし、今までどこにいたの? と思わずにはいられない、コンディションのよい神出鬼没な大型魚と対峙するチャンスがあるのも、また忍野の側面と言えるかもしれません。

大型魚とのやりとりは慎重に! かつ強引に……、でもやっぱり慎重に!

こころがまえ

幸運にも忍野で大型魚を発見できた際、「深場のベタ底」というのが私の経験ではもっとも多いシチュエーションだと思います。

真夏の日中、ビートルやフタスジモンカゲロウなどのフライで釣れたり、夕刻のヒゲナガカワトビケラで釣果に恵まれたことがないわけではありません。

しかし、もっとも多い状況は、超ヘビーウエイトニンフの沈下速度がものをいうような深場のベタ底であり、このような状況では、投げるのにも苦労するほどの重量のフライを持っているかどうかが結果を左右すると思っています。

もし忍野で大型魚を手にしたいと思うのであれば、予期できない大型魚との対峙に備えた準備を、あらゆる面で怠らないことが大事であると自分に言い聞かせています。

ティペットも、ドライフライを釣りの中心として考えているフライフィッシャーの平均は7Xくらいではないかと予想しますが、サイトニンフィングや大型ドライフライを使用する機会も多い私は、3Xから6Xのフロロカーボン・ティペットを常用しています。

すさまじいスピードで抵抗を見せたファイター、納得の尾ビレ

失敗

と、ここまで準備の重要性を説いておきながら、忍野フィッシングマップ:ポイント写真26で恵まれた予期せぬチャンスに、私は大きな失敗をすることに……。

今シーズンずっと同じエリアにいて、自分でも数度釣っている40cmほどのイワナのライズをからかっていると、足もとの深場に良型のレッドバンド鮮やかなニジマスが定位していることに気がつきました。

かなり深く、フライを口元まで沈めるのに苦労しそうだと判断した私は、4Xのティペットを4ftほど足し、超ヘビーウェイトのビーズヘッド・ヘアズイヤー#12を沈めてみますが、魚の少し上流の地形が複雑で、フライが浮き上がってしまいます。

ここで私は、サイズは50cmあるかないかと判断し、沈下速度を優先するため5Xのティペットを6ftほど結び、重たく沈下の妨げになる要素の少ない赤黒のツートーン・ゼブラミッジ#12を結びました。

リーダーシステムも何も無視し「沈下させることだけ」を考えていますので、どこに飛んでいくかは神のみぞ知るといった状態です。


後頭部への一撃をくらったりしながら、なんとか理想的な位置にフライを落とすことができ、マスの口元どストライクで流れたフライは、鮮明に思いかえすことのできるほどに大きく開けられた口に吸いこまれました。

水底でグネグネと身をクネらせながら、フッキングに違和感を覚えたのか? 上流に向けていた頭をひるがえして下流を向くと、とんでもないスピードで走り下り、高いジャンプを見せ激しい水飛沫をあげて着水! ………と同時に我にかえりました。

思っていたより、だいぶデカい……。

あきらかにサイズを見誤りました!

下流にある、大きく曲がっていて流速のある瀬に入られたら、追いかけることができないので100%敗北決定です。

時に引っ張り合いの力くらべをしないように注意したりしながら、頭を常に上流に向けるように誘導し、なんとかランディングに成功したニジマスは60cmを少しこえるサイズでした。

長さもさることながら、体高が素晴らしく、忍野での思い出に残る1尾を手にする幸運に恵まれました。



使用タックル

ロッド:R.L.Winston PURE 7’6” #4
リール:Bauer RX-1
ライン:DT-#4
リーダー:7ft 4X
ティペット:フロロカーボン 4~5X
フライ:ビーズヘッド・ヘアズイヤー#12、ツートーン・ゼブラミッジ#12

2020/10/27

つり人社の刊行物
瀬戸際の渓魚たち 増補版 西日本編
瀬戸際の渓魚たち 増補版 西日本編 本体2,500円+税 A5判カラー256ページ
1998年刊行の幻の名著が2020年の視点も加筆されて、復刊です。 フィッシングライターとして現在も活躍する佐藤成史さんのライフワーク、人間の活動などにより生息場所を狭められる渓流魚たちを追いかけ写真に収めた貴重な記録。 インターネット前夜…
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最新号 2020年12月号 Mid Autumn

特集
共鳴するウエットフライ
エキスパートが実践していること

 今号の特集はウエットフライ。十人十色、という言葉がこれほどマッチするフライフィッシングはないかもしれません。エキスパートたちには「この釣りを始めたきっかけ」から、今実践しているテクニックまで、さまざまな質問をぶつけてみました。すると、実は似たような釣り方をしていることも少なくない、ということに気づかされました。
 先般22年ぶりの復刊となった、佐藤成史さん著『瀬戸際の渓魚たち』。Special Topicsと題しまして、阿武隈高地の天然イワナについて現状を取材してきました。日本列島形成の背景をもとに浮かび上がってきたのは、イワナたちの「山越え」という仮説。人類の営みと比べたら気の遠くなるような時間をかけて脈々と受け継がれてきたイワナたちの「血」。そんな歴史を感じることのできる幸福と、現状への警鐘があぶり出されています。
 巻末の長編特集は、来日も幾度となく果たし、「フライキャスティング」に大変革をもたらしたといってよい、メル・クリーガーさんを紹介しています。メルさんをよく知る5名に、知られざる側面を含めた彼の功績、人となりを語ってもらいました。
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