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忍野ノート2020

VOL.05 7月11日

佐々木岳大=文と写真


忍草漁協管轄の桂川、通称「忍野」エリアのようすをレポートします。


《Profile》
佐々木 岳大(ささき・たけひろ)
1974年生まれ。神奈川県南足柄市在住。ホームグラウンドは地元の丹沢など。C&Fデザイン社に勤務。マッチング・ザ・ハッチの釣りのほか、ドライフライ、ニンフを使った小渓流の釣りも得意としている。




忍野における藻の存在


忍野の流れを古くから知るフライフィッシャーなら、かつては水面より上まで成長することもあった、バイカモをはじめとする藻の存在に苦しめられた記憶をお持ちではないだろうか?

流れに押された藻が水面に引きおこすヨレやうねりは、着水直後からフライを右に左に大きく揺さぶり、ナチュラルドリフトなど絶対に不可能だという絶望感を持たずにはいられないポイントも少なくなかった。

しかし、この藻こそがエサとなる水生昆虫の供給源となり、隠れ家にもなることで、忍野のマスを育んでいたのは紛れもない事実だったと思う。

砂の問題



近年、忍野の藻は激減した。

忍野に自生していた藻は本来、川底の溶岩帯にガッチリと根を張ることで大きく成長し、川底を覆いつくしていたと言っても大袈裟でないほどに繁殖していた。

しかし近年、砂の流入量が排砂を上回ることで、忍野は見事な「砂っ川」へと変貌してしまった。

藻は本来の川底である溶岩帯まで根を届けることができず、少しの増水で砂と一緒に流出して自生できなくなってしまったのだ。

藻の流出は水生昆虫の生息にも大きく影響し、その生息数は明らかに減少傾向にあると感じられる。

しかし今回は、そんなマスの生息環境としては悪化してしまった川底の環境に適応し、忍野のマスの捕食物として重要度が高まっているのではないかと予想される水生昆虫に注目して、釣りをしてみることにした。

フタスジモンカゲロウ



フタスジダン。よく観察すると、水際のあちこちで姿を確認できる

フタスジモンカゲロウのニンフは砂地に生息する。

忍野の川底の環境が悪化する以前から多く生息していたが、目につくわりに捕食シーンを見かける機会が少なく、忍野フリークのあいだでは「あまり捕食されていない水生昆虫」として認識されていたと思う。

特にダンは、綺麗にレーンにのった状態で、マスのうえでパタパタと羽ばたいても無視されることすら珍しい光景ではなかった。

ニンフやイマージャー、シャックなどは頻繁にストマックから出てくるのだが、やはり流下量と比較すると、あまり積極的には捕食されていない印象であることに変わりはない。

ところが、ここ数年で少しようすが変わってきているように感じている。

流下するダンを捕食するシーンを見る機会が増えているような気がするのである。

ダンの釣りを検証


コンパラダンやフォームパターン、ツーフェザーフライなどを用意した

テールとアブドメンを持ち上げたまま流れるツーフェザーフライは、軽量で投げやすく、何よりよく釣れる!

何種類かのダンパターンを巻いて出かけた日は、つづく長梅雨の影響で最悪のコンディション。

検証にはやや微妙な気もするが、ダメならダメでそれも釣りと思うことにする。

上流部の漁協駐車場に車をとめて下流に向けて歩き出すが、過去に経験がないほどに魚影は見当たらず、足元はグチャグチャ。

濁りもあり、歩き続けるうちに臼久保橋(通称:自衛隊橋)にだいぶ近いところまできてしまった。

自衛隊橋護岸上のストレートを見ながら歩を進めると、そこを釣っていたフライフィッシャーが移動するところだったので、何気なく流れをのぞき込むと、ようやくライズを繰り返すマスを見つけることができた。

良型のヤマメが何尾も流芯とその向こうで捕食活動を繰り返し、ときどき左右に大きく動き、かなり広い範囲の流下物を気にしているようすがうかがえる。

忍野では、増水時にヤマメが水面付近に定位して、いわゆる「浮いた状態」になる。

これは忍野に放たれたほかのマスとは異なる、ヤマメという魚の性質なのだと思っている。

しかし、このような悪条件の中、このライズポイントを釣っていたフライフィッシャーがなぜ移動したのか?

ここは手前の流れが上流に向かって大きく巻いていて、流芯の流れは速く、ドライフライを上手にドリフトさせるのが難しいうえに、相手はスレっからしのヤマメで難易度が抜群に高いからだろう。

一見簡単そうな流れに見えるのだが・・・・・・

過去に何度も苦渋を飲まされた経験から、1投目、少なくとも数投で結果を出さないと、どんどん難しくなっていくことは容易に想像がつきます。

そして最大の問題は、「フタスジモンカゲロウのダンの釣りを検証する」という目的に妥協しないよう、私はフライパッチに刺したフタスジパターンしか持っておらず、ティペットも4Xのみという、何の意味もない漢気で臨まなくてはいけません……(汗)。

まずは、増水で平水時と微妙に異なる流れをバブルレーンで確認します。

そして7~8尾ほど確認できる魚影の中から、最初のターゲットを見定めようとじっくりと見ていると、おや? 1尾だけ流芯より手前でライズしていて、しかもニジマスっぽい……。

即決です。

なんのプライドも見栄もなく、もっとも選球眼の甘そうなニジマスからねらうことにします。

太さこそ4Xながら、こざかしくも長~いティペットにツーフェザーフライを結び、重くならないように慎重に薄く念入りなドレッシングをほどこしました。

ドリフトではなく、フライの空気抵抗を利用して、ゆ~っくりと魚の口もとに落とすプレゼンテーションで食わせる作戦でいこうと思います。

まずはマスに関係のない場所で数度、高い位置に向かって投げるパイルキャストの確認をして緊張のファーストキャスト……、完璧です! 着水と同時に激しくフライをくわえた若いニジマスに鼻高々な自分が恥ずかしいのですが、釣れれば素直に嬉しいものです。

#12に巻いたフタスジパターンを丸飲みにしたニジマス

さて、調子にのった勢いのまま、次は本命のヤマメをねらいます。

群れの先頭でライズする最も大きそうなヤマメへ、ニジマス同様、高い位置から鼻先にフライを落としてやると、いくらも流れないうちにスッとフライに近づいて、何の躊躇もなくフライをくわえました。

しかし、どう見ても完全に口のなかに消えたフライは、何の手ごたえもないまま、綺麗にスッポ抜けてしまいました。

しかもよくないことに、驚いたヤマメが身をひるがえした際の「ゴポンッッ‼」という音で、プール中の魚は大パニックです……。

このときはじめて、先頭でライズしていたヤマメが、思ったよりも大きかったことを認識しました!

しばらくフライを投げずにようすを見ていましたが、このヤマメはフライの入れられない場所で、完全に警戒心を高めてしまいました……残念!

その後、流下していたフタスジモンカゲロウのダンを捕食するシーンも何度か見られ、1投してはフライを見切られるたびに、投げるのを辞める作戦を繰り返し、何尾かのヤマメを手にすることができました。

でも最後はやっぱり、熱くなって、投げに投げまくってしまうという……反省!

間をとりながら、騙し騙し釣ったヤマメ

大型フライのドラッグヘッジ効果などを改めて実感できる釣りにはなりましたが、もう少しよい条件でも検証を続け、フタスジモンカゲロウの釣りの可能性を今後も探ってみたいと思います。

使用タックル


ロッド:R.L.Winston Pure 5’9” #4
リール:Bauer RX-1
ライン:Scientific Anglers J-Stream DT-4
リーダー:6ft 4X
ティペット:フロロカーボン4X 7ft
フライ:ツーフェザーフライ#12

2020/8/3

つり人社の刊行物
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瀬戸際の渓魚たち 増補版 西日本編 本体2,500円+税 A5判カラー256ページ
1998年刊行の幻の名著が2020年の視点も加筆されて、復刊です。 フィッシングライターとして現在も活躍する佐藤成史さんのライフワーク、人間の活動などにより生息場所を狭められる渓流魚たちを追いかけ写真に収めた貴重な記録。 インターネット前夜…
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最新号 2020年12月号 Mid Autumn

特集
共鳴するウエットフライ
エキスパートが実践していること

 今号の特集はウエットフライ。十人十色、という言葉がこれほどマッチするフライフィッシングはないかもしれません。エキスパートたちには「この釣りを始めたきっかけ」から、今実践しているテクニックまで、さまざまな質問をぶつけてみました。すると、実は似たような釣り方をしていることも少なくない、ということに気づかされました。
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