忍野ノート2025
VOL.2 3月20日
佐々木岳大=文と写真- 1
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解禁日、積雪を警戒し早めに帰宅の途についた判断は正しかったようだ。地元漁協組合員の話では、解禁日となった3月15日の夜、そして今回の釣行前日となる3月19日にも降雪があったようだ。私は防寒靴で足もとを固めていたので問題はなかったが、川岸ではくるぶしの上まで埋まるほどの積雪があった。
忍野堰堤再挑戦…ならず!
忍野到着は午後2時過ぎ。ポイントは[忍野フィッシングマップ:ポイント写真34]通称:忍野堰堤。さすがに解禁日にバラした良型が中4日で再びライズするとは思えなかったが、それでも確認せずにはいられない。解禁早々から気になるマスに出会えたことを幸運に思う。しかし青空が広がり気温が上昇したこの日、流れは雪代まじりで鉛色に濁っていた。未練がましく土手の上を行ったり来たりしてみたが単発のライズすら見当たらない。


雪代の影響か虫っ気も感じられない。ハッチがなければ当然ライズが起こる理由はない。時刻もすでに午後3時を回っている。釣果を望むのであればゆっくりと構えているほどの時間もないと判断し移動することにした。
フラッシュバック
解禁日にようすを確認できなかった[忍野フィッシングマップ:旧金田一]に向かうと、ポイントに釣り人の姿がない。濁りで魚影は確認できないが、このポイントの左岸は深いアンダーカットバンクが続き、まったくマスがいない状況は経験上想像できない。

やはりこのポイントでもハッチもライズも見られない。濁りの中でもアピールすると考え、ウイングケースにフラッシュ素材を巻き留めた14番のフラッシュバックフェザントテイルを、自作のヤーンインジケーターに吊るすリグでニンフィングを試みることにする。
棚下1m弱で上流へ向けて数投すると、すぐにフライの流れている層が浅く感じられた。いったんフライをカットし、ブラックニッケルのビーズヘッドが通されたショップバックニンフに結び替える。ビーズヘッドだけではなく、シャンクにもレッドワイヤの巻かれたこのフライは、見た目以上に重く素早い沈下が期待できる。ショップバックのアイには50cmほどのティペットをもう1本結んだ。フラッシュバックフェザントテイルを、このティペットに再度結び直しダブルニンフのリグを組むことにする。


インジケーターからフライまでの間にイトフケがなくなった手応えを感じていると、小さなアタリが頻発するようになった。しかしアワセをくれてもハリ掛かりしないため、アタリなのか、ストラクチャーなどにフライが触れたのか判断ができない。インジケーターは吊るされた2本のニンフを支え浮いているが、必要以上に浮きすぎているようにも思えた。小型の携帯シザースで、ヤーンのボリュームを半分ほどにトリミングすることにした。

結果的にインジケーターへのアタリが知らせてくれていたのは小さなニジマスからのアタリだったようだ。1尾がハリにかかると、まったく同じようなサイズ/コンディションのニジマスが連続して釣れだした。ただし釣れたマスの口辺に刺さるフライはすべてフラッシュバックで、インジケーターに吊るすニンフパターンとして、個人的には実績の高いショップバックがまったく不発というのはなぜだろうか?つぎの1尾もフラッシュバックで釣れたら捕食物を確認しようと決めた。

ハッチがなくても、流下がないとは限らない。マスの捕食物からは複数のアセルスが確認された。サイズはやや小振りで色の濃さや透明感にバラつきが見られる。シーズンオフの思いつきで巻いた、数種のダビング材やフラッシュ材などをブレンドしたアセルスのウエイテッドパターンを思い出して試してみることにした。

当たりフライのフラッシュバックフェザントテイルをアセルスパターンに結び替えた。フライを1本交換しただけで、ほかはまったく同じシステム。しかし、フライ交換後は上のショップバックにもアタリが出始めたことは興味深い。よほど釣場のコンディションとフラッシュバックがマッチしていたのだろう。
ニンフィングには、ようすをうかがいながら細かい微調整を繰り返すことで、より釣れるシステムを模索していく楽しみがある。釣れないシステムで釣り続けても、あまりよいことはない。夕暮がせまり気温も下がってきたが、なかなか帰る気になれないでいるのは、再び結んだフラッシュバックへの反応が途切れないからだ。
「水生昆虫の羽化とマスのライズ」
忍野は「これぞフライフィッシング!」といえるような、マッチ・ザ・ハッチの釣りを体験できるフィールドである。
マスを目視し、投じたフライへの反応を見て、フライを口にさせるまでの一喜一憂を楽しんでみてはいかがだろうか?
毛鈎メモ: アセルス(ミックスダビング)

当然ながら、ニンフィングでも流下に合わせたフライセレクトは有効的だ。実際の流下物よりもアピール力を持ったパターンが炸裂することも少なくないのだが、マスの警戒心が高まれば嫌われることが増えてくる。使い分けが解決策となる以上、ニンフでもバリエーションを多く持つことで釣りを有利にすることができる。
サイズやシェイプ、カラーのほかに、重さのバリエーションを用意しておくとよいだろう。アセルスパターンをフライボックスに忍ばせているアングラーは多くないと予想されるが、忍野では水中で何を捕食しているかわからないマスのご機嫌をお伺いするのに重宝する。
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2025/5/9