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忍野ノート2023

VOL.9 7月17日

佐々木岳大=文と写真

夏空の忍野。臼久保橋(通称:自衛隊橋)から上流を臨む

《Profile》

佐々木 岳大(ささき・たけひろ) 1974年生まれ。神奈川県南足柄市在住。ホームグラウンドは地元の丹沢など。C&Fデザイン社に勤務。マッチング・ザ・ハッチの釣りのほか、ドライフライ、ニンフを使った小渓流の釣りも得意としている。
 

気温が30℃を超えた「海の日」の忍野。
3連休最終日で、快晴にも関わらず釣り人の姿がまばらなのは、あまりの暑さによる影響だろうか?
陽当たりの良い場所では、立っているだけでも滝のように汗が流れる「海の日」にふさわしい陽気で、海抜900mを超える場所とは思えない酷暑だ!

スレヤマメ


[忍野フィッシングマップ:ポイント写真17]通称:護岸上のストレートでは、観察するまでもなく、ライズを繰り返す魚が数多く見られる。どうやらヤマメが放流されたようで、久しぶりの賑やかな水面が嬉しい。

ポイント全景。ライズは明らかに日陰でしかおこらない

水面付近に定位していて目視で確認できる魚が数尾いて、特別ライズ頻度の高い魚は見当たらないが、どの魚も定期的にはライズが見られる状況。ごくごく稀にフタスジモンカゲロウが水面から飛び立つ姿が見られるが、ライズ頻度ほどのまとまったハッチではないことは明白である。

今頃の季節、ビートルやアントなどの陸生昆虫が効くのは重々承知なのだが、ライズのようすから大きな流下物を捕食しているように思えない気がした。
そこで「雑多な小さい流下物」を捕食していると仮定し、#20のグリフィスナットを小さな結束のデイビー・ノットを使って6Xのティペットに結んだ。

取り込み寸前、特有のローリングでフックを外そうとするヤマメの抵抗

ライズの主はヤマメで、流すフライを積極的に追う…、追いはするが簡単には口にしてくれないところが、実に忍野的な状況で楽しい。フライを見切ったあと、逃げ去ることもなく元の定位置に戻っては再びライズを繰り返す忍野のスレきったヤマメは「どうすれば綺麗に流れ、口を使わせることができるのか?」試行錯誤して学ぶには格好の好敵手である。

フライを落とす位置やスラックの量、足元のフライラインを落とす位置を探りながら、徐々にドリフトの精度を高めていき、数尾のヤマメを釣ることができた。

しなやかなティップのロッドがヤマメのローリングをうまくいなしてくれた

釣れたヤマメのストマックを見る限り、特定種の水生昆虫がライズを引き起こすほど流下しているようすは見られない。ヒゲナガからミッジ、特大から極小までの各種シャックが主体で、どのヤマメからも一定数アントの捕食が認められた。

フライは最初に結んだグリフィスナットのままだが、ハックルをボトムカットし、低く浮かせているこのフライが効いているように思えてフライ交換せずに釣り続けることにした。

ヤマメの捕食物一例。たくさん食べられているが、身になるものは少ない印象…

グリフィスナット

数尾の釣果を得て、[忍野フィッシングマップ:S字]に移動することにした。
場荒れもしたが、何よりも暑すぎてこちらも参ってしまいそうなので、自分も日陰になるS字で涼を求めた形である。

最奥の日陰を求めて移動することにした

木陰に入ると涼しく感じられるほどで、日向と日陰の体感温度の違いに驚く。
水分を補給しポイントを観察すると、先ほどまでいた護岸上のストレート同様に、ライズは完全に日陰の対岸バンク際に集中して起きている。

対岸が長いアンダーカットバンクになっているS字のポイント

対岸のバンク際をナチュラルドリフトさせるためには、ダウンクロスでライズしているレーンにフライ先行で流し込むのがよいと判断した。

ライズ地点までの距離+αのフライラインをリールから引き出し、大きくスラックを作ってライズ地点の上流にフライを置く。その後、スタックメンディングを繰り返してフライを送り込むが、チュラルドリフトを得るための肝となるのが「リーダーとティペット、そしてフライラインまでがフライと同じレーンに乗っている」状態を作りだすことである。

つまり、ライズに向けてフライからフライラインまでを、上流から一直線に流し込むということなのだが、距離があるとこれが言うほど簡単ではない…。どんなに経験を積んでも百発百中になるわけではないと思うので、雑なピックアップなどで不用意な警戒心を与えないように配慮しながら「ドリフトの練習」をしているつもりで腕を磨いてみることにしている。

この日は何度か理想のドリフトが決まり、このポイントでも数尾のマスを手にすることができた。
護岸上のストレートとあわせると10尾前後の魚を釣ることができたが、ニジマスは1尾だけで後はすべてヤマメによる釣果だった。

圧倒的にニジマスの放流割合が高い忍野では、あまりあることではないので、通い慣れた忍野ではあるが、少し新鮮な気分の釣りを堪能することができた。

この日のニジマスはこの1尾のみ

「水生昆虫の羽化とマスのライズ」。
忍野は「これぞフライフィッシング!」といえるような、マッチ・ザ・ハッチの釣りを体験できるフィールドである。
マスを目視し、投じたフライへの反応を見て、フライを口にさせるまでの一喜一憂を楽しんでみてはいかがだろうか?

放流の面影残る魚体ではあるが、ヤマメはゲーム性の高いライズでフライフィッシャーを楽しませてくれる

毛鉤メモ:グリフィスナット

ただのグリフィスナットだが、個人的なこだわりを盛り込んである

フックとスレッド以外には、ピーコックハールとグリズリーのハックルだけというシンプルなパターン。
私が忍野で使用する際は、ボトム側のハックルをVカットする前提でタイイングしたグリフィスナットを結ぶ機会が多い。

具体的には、気持ち長めのハックルを、下地のピーコックハールが多少は見える程度に高密度のハックリングしてある。かつ、ダウンクロスで長い距離ドリフトせる場合の浮力を少しでもかせぐため、フックアイ直前は、スタンダードパターンように2〜3回転を狭い範囲に集中してハックリングしてある。

小さくてシンプルなこのようなパターンこそ、少しの違いが使い勝手に大きく影響すると思っている。
パターンに盛り込みたい機能を明確にし、タイイングに反映させて改良を繰り返すことは、フライタイイングの本質的な楽しみだと思っている。


2023/11/20

最新号 2024年6月号 Early Summer

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