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忍野ノート2023

VOL.10 7月30日

佐々木岳大=文と写真

難易度の高い忍野のヤマメを攻略してリリースに成功

《Profile》

佐々木 岳大(ささき・たけひろ) 1974年生まれ。神奈川県南足柄市在住。ホームグラウンドは地元の丹沢など。C&Fデザイン社に勤務。マッチング・ザ・ハッチの釣りのほか、ドライフライ、ニンフを使った小渓流の釣りも得意としている。
 


前回、[忍野フィッシングマップ:ポイント写真17]通称:護岸上のストレートを釣った際、群れの先頭でもっとも高い頻度でライズを繰り返していたヤマメは、フライを喰わせることはできたが、掛かりが浅かったようでキャッチには至らなかった。

約2週間が経過し、根拠はないが、何となくまた同じ場所で同じようにライズを繰り返しているような気がして、ふたたび護岸上のストレートに向かった。

護岸の上から上流S字方向を見る。前回同様に多数のライズが確認できる

ライズしているレーンも比較的広く、ヤマメは左右30cmくらいの幅を流れてくる流下物を積極的に捕食している。一見「いただきライズ」に見えるこのライズを、想像以上に簡単ではないイメージを持たれているフライフィッシャーも多いのではないかと思うが、最初にしくじらなければ比較的あっけなく釣れる場合も多々ある。

逆に、最初のイタい失敗が最後まで苦戦の原因になるケースも考えられるが、そんな時には「間」をうまく取ることで、極力マスのプレッシャーを下げながら攻略を試みるのがよいと思っている。

私が最初に選んだフライは「ファーアント」。
ダビングでアントのシェイプを作り、くびれにハックルを1回転だけ巻き付けたシンプルなパターンである。ファーアントを選択した根拠は、ぽっかりと水面に浮くパターンよりも、水面直下を流れるパターンの方が許容されるドリフトの幅が広いと考えた。

浮く要素もほとんどなく、沈下していく要素もほとんどないファーアントのようなパターンは、魚がしっかりと見えている状況の忍野では欠かせないサイトフィッシング用のパターンだと思っている。浮かせようと思っても浮かせるのが難しく、沈めようと思っても沈めるのが難しいようなパターンは、難しいライズを攻略するカギになることが考えられるので、私は季節ごとのそのようなパターンを常にフライボックスに入れておくようにしている。

ファーアントは水分を含んだ際にファイナルインチに入ればいいので、ヘビーワイヤーのフックに巻く必要性は感じていない

水をかき混ぜるようなヤマメ特有のローリング

最初のひとのしを凌ぐまでは油断できない

やりました!この日は魚を水から上げるのが酷な外気温。ネットの中で失礼

アントとビートル (ビートル編)

立ち位置からアプローチ可能なライズをひと通り釣り、同じ位置から対岸のバンク際、魚影は見えないが時おり起こる散発なライズに狙いを変えることにする。
このシチュエーションではフライに視認性が必要なので、フライを夏の忍野の大定番「フォームビートル」に結び変えた。

フォームビートルに使用するフォームは「オープンセルフォーム」が私的こだわり

フォームビートルは、対岸のバンク際にいるマスをねらう際に使いやすいパターンとして重宝している。シェルバックとしてかぶせたフォームに適度な重量があり、空気抵抗も少ないため、着水時の着水音にマスが反応しやすい。

時にはターゲットから遠く離れた場所へのミスキャストにも反応することがあるほどだから、マスは着水音の方向に、意思とは無関係に反応してしまっているように感じることさえある。

プレゼンテーションに苦労する嫌な場所で散発なライズをしていたヤマメ

この日は着水と同時に鋭く反応するものの、なかなかフッキングまでは持ちこめずに苦労した。障害物が複雑に張り出している対岸のバンク、ライズ地点よりも奥、対岸ギリギリにフライが落ちれば高確率でフライを咥えてくれるのだが、これがなかなか容易ではない…。

ティペットを短く詰めれば簡単なのだが、それでは着水後に「食わせの間」を作ることが難しくなる。
忍野用のリーダーシステムは、ターンオーバー性能が良いだけでも、ドリフト性能が良いだけでも充分ではなく、常にそのバランスが要求されフライフィッシャーの悩みは尽きない。

このポイントではリーダーを詰めるのではなく、最初に結んだ#13のフォームビートルを、#17にサイズダウンさせることで投げやすくし、数尾のマスをバンクから引き出すことに成功できた。

フォームビートルでバンク際を攻めるなら太めのティペットが直進性もあって使いやすい

着水と同時に躍り出たニジマス

大きなフォームビートルを丸のみしていた小さなヤマメ

「水生昆虫の羽化とマスのライズ」。
忍野は「これぞフライフィッシング!」といえるような、マッチ・ザ・ハッチの釣りを体験できるフィールドである。
マスを目視し、投じたフライへの反応を見て、フライを口にさせるまでの一喜一憂を楽しんでみてはいかがだろうか?

毛鉤メモ:ファーアント


忍野ではこの手のシンプルなフライが抜群に効く

夏の水面直下攻略で、もっとも多用するパターンがファーアントかもしれない。
忍野では#16~#22くらいまでを使用するが、もっとも多様するのは#20で、次いで#18を結ぶことが多い。


2024/2/13

最新号 2024年6月号 Early Summer

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今号はエキスパートたちのベスト/バッグの中身を見させていただきました。みなさんそれぞれに工夫や思い入れが詰まっており、参考になるアイテムや収納法がきっといくつか見つかるはずです。

「タイトループ」セクションはアメリカン・フライタイイングの今をスコット・サンチェスさんに語っていただいております。ジグフックをドライに使う、小型化するフォームフライなど、最先端の情報を教えていただきました。

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