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海人スタイル奄美

忍野ノート2022

VOL.07 5月2日

佐々木岳大=文と写真
新緑が眩しい「旧金田一橋」のスプリングクリークらしい穏やかな流れ

《Profile》
佐々木 岳大(ささき・たけひろ) 1974年生まれ。神奈川県南足柄市在住。ホームグラウンドは地元の丹沢など。C&Fデザイン社に勤務。マッチング・ザ・ハッチの釣りのほか、ドライフライ、ニンフを使った小渓流の釣りも得意としている。
 

飛び石連休の中日、道路状況を確認して渋滞もなさそうなので、昼食後ゆっくりとした時間に忍野へ出かけることにしました。道路が混んでいないので、釣場もきっと人が少ないだろうと思って現場に到着すると…、そんなに甘くはありませんでした!
考えることは、みんな一緒ですね…。


VS ヤマメ

[忍野フィッシングマップ:金田一の赤い橋跡]の少し上流、右岸側を下流に向けて歩くと、スプリングクリークらしい流速のおそい水面に、ライズリングが広がっているのが見えました。
歩みをとめてしばらく見ていると、川底付近に黒っぽく見えるたくさんのニジマスの魚影のなかに、白っぽく見える2尾のヤマメが、高い位置に定位して捕食行動を繰り返しています。水面に綺麗に口をだしてライズしているので、キャスティングスペースの確保できる下流まで歩いてチャレンジしてみることにします。
パイロットフライとして、ここ最近のあたりフライ、20番のコンパラダンを6Xに結びました。

「距離をとって魚に気付かれてなければ、意外と簡単に食うもんなんだよなぁ~」とブツブツ言いながら、開放的な流れを下流から上流にアップクロスで気持ちよくラインを伸ばしてプレゼンテーションすること数投…、労せずにマスからのコンタクトを得られたのですが…。
フッキングと同時にビョンビョン跳ねまわるマスの正体は…、どうやら間違いなくニジマスのようです。嬉しくない訳ではないのですが、狙っていたヤマメのすぐ横だったので、あきらかに警戒されてしまったようで、ライズが沈黙してしまいました。

ポイントを休ませる意味でも、ニジマスの捕食物を確認して間をとることにすると…、やっぱり!エラブタがたくさん捕食されていました。

ヤマメを狙っていたら釣れてしまったニジマスのストマックは、ハッチの続いていたエラブタが主体だった

捕食物を確認したり、飛んでくる水生昆虫を観察したりして、再びヤマメがライズするのを待ちますが、なかなか元の定位置に戻ってきません。どうやら想像以上に警戒されてしまったようです。それでも30分ほどすると元の定位置で時折ライズが確認できるようになり、そのまましばらく様子を見ていると、ライズの間隔が安定しはじめました。魚の視界にフライが入って反応が得られない場合は、無駄にキャストして警戒心をこれ以上高めないよう、プレゼンテーションの「間」に注意しながら攻略を試みます。

対岸の際でライズするヤマメの手前をドリフトさせると、先ほどのようにニジマスが先にフライを咥えてしまう可能性が高まるので、魚の奥にキャストしスラックを作りながら手間に引き戻してレーンにフライをのせる作戦で、ようやく下流側でライズしていた方のヤマメを手にすることができました。
捕食物を確認すると、ニジマスのストマックでは確認されなかったアカマダラもポツポツ…。たしかに、少し前から水面から飛び立つアカマダラが目立つようになってきたとは感じていたので、納得のストマック内容です。

さて次の1尾に挑戦です。
上流側のヤマメの方がライズ頻度が高いので、たぶん簡単に釣れるでしょう

1尾目のヤマメは綺麗な色の体側が特徴的だった
おそい流速、スレたヤマメ、最初に得た反応でしくじると途端に難易度が増す
忍野ではめずらしい、ヒラタカゲロウも捕食されていた
風に乗って飛んできたアカマダラカゲロウ、そろそろ無視できない羽化量

時間による捕食内容の違い

残念ながら、安易に釣れるだろうと言う予想は、見事に裏切られました。このヤマメは思わせぶりな態度をとりますが、まったく口を開きません!
比較的左右に大きく動きながら、フライを流すとスッと寄ってきては、ビタッと急停止してフライを見極め本物だけを捕食します…。

これぞ忍野!といったヤマメの行動ではありますが、熱くなってしまい、作戦も何もなく、我を忘れてフライを投げまくります!
偶然ではありますが、たまたま動きまわっているヤマメの頭の上に、フライがヒラヒラと落下するタイミングが一致してくれたので、ポコンっと小さくジャンプするようなフォームで釣れてくれました。

さっそく捕食物を確認すると、おお~っ!エラブタとアカマダラの比率が逆転しています!
1尾目のヤマメの数メートル上流、同じレーンでライズしていたヤマメですから、時間が進むにつれてアカマダラの流下が増えたようすが良く分かります。

1尾目のヤマメをキャッチしてから30分後、2尾目のストマック。あきらかにエラブタからアカマダラに捕食がシフトした様子が如実に表れていると思う
2尾目のヤマメ。いいところにフッキングしてくれた

マダラの流下

同行者の誘いで、イブニングは[忍野フィッシングマップ:ポイント写真07]通称:江戸屋堰堤下流の橋に移動しました。

ドリフトさせているフライが目視しづらい逆光の水面
ボトムカットしたスタンダードアダムスを使用した

急激に気温が低下しマスの活性は低い様子ですが、ライズがまったくないわけではないので釣ってみることにします。が!時間的に逆光で水面のギラつきがひどく、フライはまったく見えません。
安定したライズは自分の前に1つと、同行者のまえに1つあるだけなので、万全を期してフライ交換することにします。

選んだのは、順光でも逆光でもかろうじて視認性を確保できる意味で便利なスタンダード・アダムズです。
サイズはエラブタもアカマダラも同じ20番くらいなので、迷う必要はありません。
ダウンでフライを何度か送りこみ、うまく流れているなと思えるドリフトに、マスは素直に反応してフライを咥えてくれました。

釣れたのは、鰭の欠損した放流の面影が強い小さなニジマスでしたが、捕食内容は興味深いものでした。
なんと!この日2度目のヒラタカゲロウが確認され、エラブタとアカマダラに交じって、黄色いウイングが特徴的なホソバマダラも捕食されていました。

1尾釣れたあとは、安定したライズも見当たらなかったので、ロッドを捕虫網に持ちかえて飛んでくるメイフライを片っ端から捕まえてみました。
ホソバマダラの数はまだまとまっていなさそうですが、いくつか捕獲して確認することができたので、今後に期待したいところです。
今年は春先のオオクママダラも例年になく良いハッチに恵まれ、マダラ全般が「当たり年」なのかも?と、都合の良いことばかり思いながら納竿しました。

ライズの主。本日2度目のヒラタカゲロウが…
そしてもう1種、あやしい翅の色をした捕食物は…
良く目立つ、黄色いウイングが特徴のホソバマダラ

[ 使用タックル ]

ロッド:R.L.Winstom AIR2 9’ #4
リール:Hardy L.R.Hライトウェイト 150周年モデル
ライン:DT-4
リーダー:10ft 4X
ティペット:フロロカーボン 6X
フライ:コンパラダン#20, スタンダードアダムス#20など

2022/5/27

つり人社の刊行物
初歩からのフライタイイング
初歩からのフライタイイング 2,750円(税込) A4変型判148ページ
本書は、これからフライタイイングを始めようとする人に向けた入門書です。 解説と実演は、初心者の方へのレクチャー経験が豊富な、東京のフライショップ「ハーミット」店主の稲見一郎さんにお願いしました。 掲載したフライパターンは、タイイングの基礎が…
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初歩からのフライタイイング 2,750円(税込) A4変型判148ページ
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最新号 2024年12月号 Early Autumn

【特集】マスのきもち

朱鞠内湖のイトウ、渓流のヤマメ、イワナ、忍野のニジマス、九頭竜川サクラマス本流のニジマス、中禅寺湖のブラウントラウトなど、それぞれのエキスパートたちに「マスのきもち」についてインタビュー。

色がわかるのか、釣られた記憶はいつ頃忘れるのか、など私たちのターゲットについての習性考察していただきました。

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「タイトループ」セクションでは国内のグラスロッド・メーカーへの工房を取材。製作者たちのこだわりをインタビューしています。


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