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第5回 アント

5段階で尺ヤマメにアプローチ

渋谷直人=解説

ドライフライで魚が釣れない時に最も気になるのが、やはりフライがマッチしているのかどうか……。今回はシーズンを通じて渋谷直人さんが使用するアントパターンを、そのシチュエーションごとに解説します。
この記事は2017年3月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
渋谷 直人(しぶや・なおと)
1971年生まれ。秋田県湯沢市在住。地元の伝統工芸である漆塗りの職人として生活しながら、自ら作り上げたバンブーロッドでヤマメを追い求めている。
●公式ホームページ www.kawatsura.com/

最も多い流下物のひとつ

東北に限らず、シーズン中最も頻繁に渓流に流下しているのが、アリ類ではなかろうか。フライフィッシングでも当然重要になってくるわけで、さまざまなパターンが今まで世に送り出されてきた。

色はブラックが多いが、シナモン系もあるし、ムネアカオオアリのような一部分だけ色違いの種類もいる。シナモンが有効だったことは記憶にあるが、近年は基本的にブラックのみで対応しており、不足は感じていない。

パターンとしては、大きく5つに分けている。『アントパラシュート』、『ソラックス・フライングアント』、『ぶら下がりフライングアント』、『全浮きフライングアント』、『べんじょ☆アブ』(スペントアント)だ。これらのサイズとローテーションなどを組み合わせれば、かなりのシチュエーションに対応できるだろう。

釣り上がり用の『パラシュートアント』

『パラシュートアント』に関しては、#11〜15サイズは釣り上がり用として割り切って使う。ちなみに『べんじょ☆アブ』は#9〜11は本流のハッチが少ない時の釣り上がり用。

上記2種のこのサイズは、僕はライズしている渓流の尺ヤマメに対しては使わない。アリが多く流下する日の、ブラインドフィッシング用フライである。

もちろん夏期、瀬の中などからフライに反応してくる際には尺ヤマメも釣れないことはない。だがライズしているのが見えているような時、渓流域の尺ヤマメは、別の釣り方をしなければならないことが多いのだ。
アントパラシュート
フックはTMC212Yの#11~15。ボディーはスーパーファインダブで、その上から瞬間接着剤でコーティングしている。頭と胴の盛り上がりが重要。ハックルはブラックのコックネック

何を食っているか分からないライズには……

ブラインドではないライズの釣りでも、最終的に何を食っているかの分からない場合は、アントパターンの出番だ。渓流魚は、アリ類を嫌うことがほぼない。本流のライズでさえ、メイフライパターンで釣っても、ストマックからはアントが数匹入っていることが多い。

逆にライズを繰り返しているヤマメのストマックは、アリのみが入っていることは珍しくない。その場合は必ずといってよいほど羽アリである。

この羽アリの大量流下は、シーズン初期にはムネアカオオアリやオオヤマアリなどの大型が多い。季節が進むにつれて、中小さまざまな羽アリが大量に発生する。それが禁漁になるまでポツポツ続くのが、アントパターンが有効であり続ける要因だと思う。

そのため見えているヤマメのライズフィッシングでは、まずティペットは7〜8Xのフロロカーボンを結ぶ。そしてアントパターンのローテーションを考えつつ、タイミングを見計らってキャストをする粘りの釣りを実践するのだ。

次はこのライズでの対戦の流れを、使うパターンごとに解説したいと思う。

最初に結ぶ『ソラックス・フライングアント』

アントパターンは、まずお尻と頭をしっかり作ることが重要。足と羽は中央の胸から出ているので、そこの間の部分にハックル(レッグ)やウイングを作るイメージだ。これはすべてのタイプで共通である。

巻く時は野暮ったくならないように、すっきり巻き上げたい。わざわざ足を付けたり胸の盛り上がりまで表現したこともあるが、実感としてはまったく効果は感じなかった。

シンプルが一番で、サイズどおりのボリューム感が重要である。何のフライでもそうだが、シルエットのイメージを重要視しなければならない。
ソラックス・フライングアント
水面には、ボディーが水平に近いような状態で接する。サイトで最初に結ぶことが多い。ハックルはヘンネックのブラックで、上下をカットしている。ハックルは多すぎないことが大切。フックサイズは#17~23


釣りの話に入ると、東北の渓流においてサイトでねらえるヤマメがいたなら最初に結ぶのが『ソラックス・フライングアント』である。フロータントはドライシェイクスプレーを、ハリ先以外に付ける。だいたい#17〜19を、ライズしているヤマメに見せて反応を確認する。

このパターンはボディーが水平に浮き、フックポイントは水中に入る。これで逃げなければ、フックポイントをヤマメは気にしていないことを意味し、#23くらいまでのこのパターンで勝負がつくことが多く、実際に最も多用している。

ドラックが掛かってしまったり、すっぽ抜けしたりしてこのパターンに対して警戒心を抱かれたら、すぐに次のパターンに変更する必要がある。フライを見て逃げ気味になったら、次のステージだ。

アピール度が高い『ぶら下がりフライングアント』

次に結ぶのが、ぶら下がりタイプのフライングアント。これは全体が水に入るので効果は絶大である。シルエット的には同様だが、レッグとなるハックルはヘンハックルを使用し、ウイングには数本のブラウン系ズィーロンを使っている。

フロータントはCDCのポストのみに付けて、他は唾液で濡らして水に馴染ませる。ほとんどの場合ヤマメは、ソラックスタイプの後に流すと大きなリアクションを見せてくれる。

サイズは#19を使うことが多いが、なるべく数投で決めてしまいたいフライなので、キャストとドリフトは失敗が許されないくらいの気持ちで挑むことにしている。

これが見切られたりドラッグなどにより失敗したりすると、再びフライチェンジしなければならない。この状況まで引っ張ってしまうと、フックの存在で逃げるようになっていることが多く、最終手段でもある次の手に進むことになる。
ぶら下がりフライングアント
フックは#17~19。ウイングはズィーロン。ブラックのヘンネックを後ろ向きにV字状になるようにセットしている。魚に見せる部分と、釣り人が見たい部分を分けているので、CDCのナチュラルホワイトをインジケーターとして付けている

最後の手段『全浮きフライングアント』

『全浮きフライングアント』は#19〜23に巻くことが多く、ソラックス部分はカットせず、フロータントもフックポイントまで全体に付ける。これでナチュラルドリフトさせれば、ほぼ逃げることはなくなる。

だがその反面、なかなか気づいてくれないという問題もある。これが長期戦を制するコツでもあり、この状況まで進めればフライを食わせるタイミングが必ず訪れる。

ヤマメが気づいてくれないことに焦らず、じっくりと対戦することが肝要。魚が見てくれるタイミングに合わせてフライをドリフトすることに集中する。いずれタイミングが合うと、ゆっくりとライズフォームどおりに食ってくる。

ここまでが一連のサイトフィッシングであるが、バラしたりしない限りは、逃げてもかなりの確率で同じ場所に戻ってきてライズするのが普通だ。長期戦になればなるほど、その間隔は短くなる。
全浮きフライングアント
魚に気づかせないくらいのイメージで使うフライ。ハックルはブラックのコックネックで、カットはしていない。薄めではあるが、ファイバーを暴れさせるのがコツ。サイズは#19~23


フライやティペット、人間にも慣れるし、ヤマメ自体も釣られない自信が付いてくるように見える。そうなった時こそ、釣るチャンスが訪れる。そこまで釣りの流れを作ってあげられるか否かが、この釣りの極意ではなかろうか。

決まった場所にいるヤマメを知っていてねらうなら、午前10時半くらいからねらったほうがよい。これはアリなどの陸生昆虫が動き出すのが太陽の高い時間帯だからである。確実に14時くらいまでライズ頻度は増え、15時半を過ぎると頻度が減ってチャンスは少なくなる。

このように虫の活性とライズが連動していることも、フライ選択と同様に考える必要がある。そうしないと、思うような対戦に持ち込むことは難しい。テレストリアルでも時間帯は重要で、尺ヤマメを本気でねらうなら当然持つべき心構えだと思う。

ワンポイントのアクセント『べんじょ☆アブ』(スペントアント)

このような対戦のなかで、スペントパターンも混ぜるとさらに効果的なことは分かっていた。だが意外に食わせることは難しい。

湧水の川のような場合は、スペントパターンが圧倒的に効果的だが、東北でそのような場面に出くわすことは、ほぼない。

しかし『べんじょ☆アブ』の場合、その効果はてきめんなのである。おそらくこのような水面への接し方で流れてくる羽アリが多いのだろう。サイズは#17が、サイトフィッシングではよく活躍してくれた。
べんじょ☆アブ
フックはTMC212TRの#9~17。写真は大きめだが#17を使うと、羽アリを模すこともできる。サイトの対戦におけるローテーションでは重要なパターン


ウイングは最初浮かせてみて、反応しだいで沈めてみるのがよい。ローテーションに組み込む場合は、『全浮きフライングアント』を使う前までのタイミングで、ランダムに投入してみるとよい。

効果がある場合は、すぐ追うようになる。これもなるべく数投の範囲で決めたいパターンの1つなので、失敗したらすぐに交換することが大切だ。

2018/4/24

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