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釣り人が集う場所が生まれつつある

下田郷を語る04:加藤 俊さん

FlyFisher編集部=写真と文
吉ヶ平フィッシングパークの入口「吉ヶ平山荘」。釣り人が集うコミュニティが生まれつつある、という

アウトドアライフストア「WEST」新潟店に勤務する加藤俊さん。
下田の渓流域「吉ヶ平フィッシングパーク」についてお聞きした。


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Slow & Steady Shitada


幅広いフライフィッシングを楽しむ加藤さん。写真はモンゴルのタイメン


加藤 俊(かとう・しゅん)
新潟県加茂市出身。芦ノ湖にある親戚のボート店で10代からアルバイトを続け、フライフィッシングも覚える。現在はフライフィッシング+キャンプを提案し、新潟県の渓流へ足繁く通う。アウトドアライフストア「WEST」新潟店に勤務
WEST HP https://www.west-shop.co.jp/


大きなドライフライで楽しめる


―― 加藤さんはもともと湖の人だったのですね。

加藤 そうなんですよ。ずっと芦ノ湖のボート屋でした(笑)。オフシーズン本栖湖や東山湖行ったりとか。そこから20代半ばで新潟にもどって、WESTでキャンプとフライフィッシングの担当を兼任ということになりました。そういう中で、釣りだけでなく泊まりながらフライフィッシングが楽しめるようなスタイルを自分の中で拡張していったというところですね。

―― 五十嵐川水系の渓流の釣りについてお聞きします。まず、あの辺の渓流はどんな感じなのでしょうか?

加藤 実は中越って、新潟県の中ではちょっと渓流の乏しい地域ではあるんですよ。県北の下越だと三面川や荒川ですとか。魚沼までいくと奥只見とかも絡んでくるんですけど、中越の三条方面っていうのは、山もそれほど深くはないし、渓流エリアとして考えると本当は水量にもそれほど恵まれた土地ではないんです。

しかしその中でも、守門岳っていうのはとりわけ三条近辺でもすごく積雪の多い山で、大きな雪庇ができることで有名なんです。守門岳の雪庇って、東洋一と言われているんですよ。

だからやっぱりそこだけ極端に雪解けが多くて、保水力の高い川なんです。だから守門岳が唯一、その地域の釣りを支えるというところがあります。もちろんほかにも小さくて可愛い渓流はあるんですけど、水量の安定感に欠ける部分がある。だから北と南のビッグネームに対して守門が孤軍奮闘しているような感じがあるような気がしますね。

―― よい渓相が続く区間が長いという印象を受けるんですけれど、昔からメジャーな区間だったのでしょうか?

加藤 僕が新潟に戻ってきた15年くらい前はちょうど一番悪い時期だったみたいです。僕も7、8年くらい前だったかな、吉ヶ平がオープンする数年前ですけど、だいぶ上のほうまで釣り上がったんですけど全然釣れなかったんです。確か釣れたのは2、3尾くらいだったかな。水はすっごい綺麗だし、渓相も素晴らしい川なんですけど。何年かにいっぺんは「何か釣れるかな」っていう感じで行ってみるけど、「やっぱりいないなあ」っていう感じになっちゃうんです。

―― なるほど。

加藤 それよりも前の話とか、古い本を読むと、やっぱり立派な川なので、それなりに魚は獲れていたようですけどね。ただ僕が新潟に戻ってきてから、吉ヶ平ができるまでは、いい思い出はないですね。素晴らしい川ですけど釣果に対するいい思い出はないです。


「吉ヶ平山荘」裏の流れ。フィッシングパーク以前はそれほどよい思い出はなかったというが……


―― 吉ヶ平フィッシングパークの釣りについて教えてください。

加藤 オープンが6月1日で、年にもよりますが6月でもまだフライフィッシャーが入るには水量が多いかなっていうこともあります。川を渡るにしても、渡れなくはないけどまだ不安が残る感じといいますか。

―― それでもドライフライで楽しめる?

加藤 そうですね。一昨年の6月頭くらいに、友達とキャンプしながら行ったんですよ。1日目、僕は水が多い想定でニンフでやって、ちょこちょこ釣れてたんです。

仲間はまあ初心者だったんですけど、ドライでやっていてそんなにうまくいかないながらも釣れてましたね。水が多い時期なので、僕は緩いところに絞ってニンフを流していったんですよ。で、初日の後半からちょっと違うなと感じてきて、間違えて流心に投げたらいきなり釣れたりして。

で、次の日は天気もよくなって、ちょっと大きめのドライで流心流していたら、ヤマメがバンバン釣れたんです。年によって違うかもしれないんですけど、デカめのエルクヘア・カディスや#10のアダムズとに、流心からバコーンと出てくるので気持ちのいい釣りができました。

渡渉に支障が出るようだったら諦めたほうがいいですけど、「ドライを流すくらいにはちょっと多いな」と感じる水量でも、遠慮せずに流していいと思います。

あんまりセレクティブなところもないので、「このパターンが効く」みたいなのもそれほどないです。新潟の釣り自体が、それほどセレクティブになるような時が少ないんですよね。


大型のドライフライでも楽しめる


―― それはどういう理由ですか?

加藤 僕らの行動範囲の中で、という話になりますけど、テレストリアルがメインで、まとまったハッチとか、季節どおりにハッチするような虫がそれほど多くはいないんです。カディスとかも少ないですし。「これじゃないと釣れない」っていうのは、マダラ系が絡んだ時くらいですかね。

でもねらえるほどのタイミングもないから、皆は思い思いの釣り上がりパターンでやっているような印象ですね。釣り上がる技術とかのほうが重視されているという感じです。

―― それは雪代で水量がドーンと多くて、いきなり渓流の盛期に入るみたいな感じだからですか。

加藤 うん、そういう感じですね。ちょうど関東だとライズを釣るいい時期、3月4月のあの時期がない、みたいな。まあ一部の川ではライズとかもあるんですけど、全般的にいえるようなことではないと思います。

だから、極端に言うと2週間同じパターンで釣る川はないですよね。だから4月1週目によかった川へ5月に行っても全然状況が違う、入る場所も変わってくる。

だからポピュラーな釣り場っていうのがないんですよ。たとえば山梨の忍野なんかだとポイントの名前もついているし、みんなで話すじゃないですか。「どこどこのポイントであのパターンで~」みたいな。新潟の川ってそういうのがないんですよ。

でも、吉ヶ平では、そういうコミュニティ的なのができつつあるんです。吉ヶ平はとりあえず魚はいますし、水が多くても釣れてくれるっていう。


守門川おすすめフライパターン


エルクヘアカディス ●フック……バリバスIWI S-2000 #10〜12
●スレッド……8/0ラスティーダン
●ボディー……ピーコックハール
●ボディーハックル……コックネック・グリズリー
●ウイング……エルクヘア・ブリーチ

水量の多い解禁直後によく使用するパターン。増水時のセオリーに反して吉ヶ平の大型イワナは流心から出ることが多いので(もちろんヤマメも)、流れの強さにひるまずに使いたい。


ブラウン・アントパラシュート ●フック……バリバスIWI F-2000 #16〜18
●スレッド……14/0ブラウン
●ボディー……ファインナチュラルダビング・ラスティースピナー
●ウイングポスト……TMCハイビズドライウィング
●ハックル……コックネック・コーチマンブラウン

夏の渇水時期や、魚がスレ気味の場合の釣り上がりに使用している基本パターン。反応が渋いときは、このパターンに固執せず、同じくらいのサイズの浮き方の違うフライも
ローテーションして反応のよいものを捜していく


スペントダン ●フック……バリバスIWI F-2000 #16〜20
●スレッド……14/0オリーブグレー
●アブドメン……ストリップドピーコック
●ソラックス……スーパーファインダブ・キャリベイテス
●ウイング……TMCエアロドライウィング・ダークダン
●インジケーター……CDCシナモン

対岸の僅かな深みや、バンク際で静かにライズする魚は意外な大ものであることが多く、同時にかなりスレている場合がほとんど。パラシュートに無反応な時はすぐ出番になる食わせパターン


フェザントテイル・ニンフ ●フック……バリバスIWI S-2000 #12〜16
●スレッド……8/0ブラウン
●ウエイト……レッドワイヤ015を3〜4回転
●リブ……コパーワイヤ
●テイル……フェザントテイル
●アブドメン……フェザントテイル
●ソラックス……コパーワイヤ
●ウイングケース……フェザントテイル

釣り上がりに使うブラックニンフに対し、こちらは定位している魚をサイトフィッシングで釣る場合に使用する。スレた魚には静かに素早く沈むフェザントテイルが、やはり効果的


ピーコック・ブラックニンフ ●フック……TMC3769 #10〜14 
●スレッド……8/0ブラック
●ビーズヘッド……サイクロプスビーズ・ブラス 7/64〜3/32
●ウエイト……レッドワイヤ015を6〜8回転
●テイル……マラブー・ブラック
●ボディー……ヘアラインダビング・ブラック
●リブ……ゴールドワイヤ
●シェルバック……ピーコック

スカッドタイプの汎用ニンフ。増水時のドライでは難しい場合インジケーターと組み合わせてウキ下50〜80cmで使用する。多少の雨でも釣りになる川なので濁りの中でもアピールできるニンフを用意したい


―― 6月以降は例年どうなっていくのでしょうか?

加藤 やっぱり8月に入ると水も減ってくるし、人気の川なのでまあ関東ほどではないですけどセレクティブになってくるので、魚がいても食わない時が出てきますね。そうなってくると小さいフライが効きますよね。

あと夏場は、アブが出ると思うので、防虫対策をしっかりしていきたいですね。まあウエットウェーディングで気持ちいいくらいですよ。

―― そのまま後半は失速していく、という感じですか。

加藤 いや、やっぱり活性が上がってきますね。ひと雨降るごとに新鮮な水が入ってくるので、すごく魚が元気になってきますね。

雨が降るとイワナの尺とかがバンバン釣れるっていうのもあります。水の出方にもよりますけど、後半はだいたいいいと思います。

前に魚沼の人たちに「守門に行くよ!」って言われたことがありました。魚野川の近辺に住んでる人たちですよ。びっくりしますよね、わざわざ守門まで(笑)。

―― タックルは特別なものは必要ないですよね?
加藤 4番の8フィート前後とかで全然いいと思います。新潟の渓流としてはけっこう大きいほうだと思いますけど、大丈夫です。

―― フライフィッシングだけでなくキャンプもありますね。

加藤 山荘の横の広場は小ぢんまりとしているけど平日は空いてます。仲間を誘って最初に行った時は、「川の音がすごいね」みたいな話をしていたんですけど、慣れるとこっちのほうが寝られるんだよね~みたいな感じになってきました(笑)。川の音を聞きながら寝られるキャンプ場ってなかなかないかもしれないですね。

あと、新潟県では貴重な管理されたC&Rエリアなので、しかもそれでイワナの川っていうのは珍しい。実はこっそりヤマメもデカいのがいるし(笑)。

先ほども少し言いましたが、みんなが川のポイントとかの話を共有できるっていうのがいいと思います。地元の人がそういう話ができて、集う場所というのになってきてるような感じがします。

「あそこの淵にいるあの魚でしょ?」みたいな話ができるようになる可能性があると思います。

三条市って、今注目されている元気な地域だと新潟県民も思っているので。こういったところで、フライフィッシングとか、自然に対するかかわりが生産的な動きになるというのは、素晴らしいと思います。

これをサンプルケースとして新潟県内に移植していければいいですよね。同じようなことができる川はたくさんあると思っています。


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2021/3/15

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今回はキャスティングとリールと大きく2つの特集を組みました。

 ご存知のとおり、フライキャスティングはキャスターそれぞれに
理論と動作が存在するといっても過言ではありません。
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