”軽い”サイトニンフィング
ねらった層にニンフを届ける戦術
森村義博=解説トラブルを減らして、ねらうポイントを増やす。シンプルにして軽やかな、流れを読むニンフィング。
この記事は2013年1月号に掲載されたものを再編集しています。
《Profile》
森村 義博(もりむら・よしひろ)
1956年生まれ。静岡県三島市在住。解禁から狩野川に通い、ソフトハックルを使ったダウンストリームの釣りで本流育ちの良型アマゴをねらう。サイトの釣りにおいては忍野のほかフリーストーンの流れで行なうニンフィングが得意。
森村 義博(もりむら・よしひろ)
1956年生まれ。静岡県三島市在住。解禁から狩野川に通い、ソフトハックルを使ったダウンストリームの釣りで本流育ちの良型アマゴをねらう。サイトの釣りにおいては忍野のほかフリーストーンの流れで行なうニンフィングが得意。
「見釣り」と呼んでいた頃
私のサイトフィッシングのルーツはオフシーズンの管理釣り場である。35年も前のことだから、その頃はサイトなんて洒落た言葉はなく、仲間内では「見釣り」と呼んでいた。長めのティペッに極小のスプリットショットを付け、ユスリカのピューパを模したフライや小さなフェザントテイルをマスの鼻先に流し込んで釣る方法だ。
スプリットショットをホワイトのマーカーペンで着色したり、リーダーとティペットの結束部の前後数センチをピンクのマーカーペンで塗ったりして、極小フライのおよその流下位置を知る目安にしていた。
水生昆虫を模したフライはマスに飽きられることが少なくよく釣れた。しかし、スプリットショットを取り付けた釣りゆえ、ドライフライのようにスパッ、スパッと打ち込んでいくような軽快感はなかった。
それどころか、キャスティング時のラインコントロールがむずかしい、ナチュラルドリフトさせにくい、ショットの落下音で水面を荒らしてしまう、たびたびティペットが絡むなどの弊害も多かった。
よく釣れたといっても、オーバーストックともいえる魚の数に助けられていたのが実情だったが、釣りたいと思うマスを特定し、そこへ全神経を傾けるという濃密な時間が何より楽しかった。
スプークれないシステム
それからずいぶん長い時間が経ち、僕のサイトフィッシングのスタイルもいろいろ変化してきた。もっとも大きかったのは、スプリットショットとマーカーを外したことである。忍野のようなチョークストリーム・タイプの川では流れの筋によって遅い速いといった変化がそれほどあるようには感じないが、見た目以上に水面付近の流れは速くて重い。何も考えずにニンフを落とすと、思った以上に速く流れてしまい、フライを沈めるには相当な距離が必要だと感じる。
だがそんな流れの中でも、限られた範囲で魚の鼻先にしっかりと届けられる流れの筋というのは存在する。その見極めは川の状況によって常に変わってくるのだが、まずは数センチ単位で流れの筋を細かく変えてみる、あるいは立つ位置を変えるといったちょっとした流し方の違いを試してみることで、フライの沈み方が変わっていくことに気付く。
フライにスプリットショットを付けて強制的に沈めるシステムだと、その繊細な流し方の違いを試しにくいのだ。
また、ウエイテッドニンフだけのシステムで釣りをするようになって、キャスティングに軽快感が出たことにより、これまで難しいと思っていたポイントにもフライを入れられるようになって、渓流でもねらえる場所が大きく広がった。
対岸のブッシュ際に定位して水面に興味を示さない魚や、遠くにいるターゲットに対するアプローチも容易になるのである。木々などの障害物に引っ掛けてフライをロストすることも大幅に減った。
その際はティペットを含むリーダーの全長を16フィートとこれまでより少し長めにして、先端を6x前後にしつつ、ドライフライの時と同じ長さに揃えることでニンフとドライフライの釣りを切り替える作業がスムーズになった。
要するに、さまざまな面倒やトラブルから解放されたのである。ちなみに長めのティペットは、ドライフライの釣りにおいてはドラッグを防ぎ、ニンフの釣りでは軽いフライを速やかに沈めてくれる利点がある。
2024/11/1