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LIFE IS FLY FISHING

第八話 氷白玉ぜんざいフライの必要

阪東幸成=写真と文


毎年イエローストーンに行く直前になって、慌ててフライを巻き始めるわたしだけれども、そんなドタバタの中でもひとつだけ決めていることがあって、それはその年の新オリジナルフライを巻くことだ。

今年の新人SOW #10 は甲子園で準優勝したS稜高校のO川投手並みの即戦力で、連日連夜の先発に耐えてくれて助かった(ちなみにSOWはスモーク・オン・ザ・ウォーターの略です)。

わたし自身のオリジナルパターンだが、あまりに有名フライからの剽窃部分が多くここで紹介するのが憚られる。

わたしから技術的な話を聞こうとする人はいないだろうが、それを承知で、ことイエローストーン周辺のフリーストーンの川に限って、という条件付きでアドバイスしたいことがある。

イエローストーン周辺のフリーストーンというのは、たとえば公園外の通称ローワー・マジソンやギャラティンなどの川をイメージしてもらえればよい。

エラそうに「わたしのオリジナル・パターン」と書いたけれども、じつはオリジナルパターンであることこそが何よりも重要なのだ。

イエローストーンに行くとなると、大概の釣り人は経験者に何を巻いていけば良いのかを尋ねたり、ガイドブックを参考にしたり、ショップ(たとえばブルーリボン・フライズやトラウトハンター)のホームページ、あるいは人気のYouTubeを閲覧する。その結果、世界中から集まってくる釣り人たちの使うフライが近似してくる。




確かにハッチマッチの釣りであれば、それでもよいかもしれない。

特定の虫を食べているのだから、似ていることが最も重要だ。これまで開発された幾多の名パターンで多くの状況に対応できるはずだ(マッチ・ザ・ハッチの場合でも、目新しいフライが有効であることに変わりはないとしても)。

けれどもアトラクターフライを同じ土俵で語ることはできない。

季節を問わず、イエローストーンのフリーストーンで最もよく使われている御三家フライは、おそらく各色各サイズのスティミュレーター、ハンピー、ウルフだろう。もちろんサイズを下げて、アダムスやエルクヘア・カディスという万能パターンという釣り人も多いと思う。

イエローストーンは魚も多いが釣り人も多い。六月末からのハイシーズンの人気釣り場では、おそらく一日あたり最低百回は彼らの頭上をフライが通過しているはずだ。

マジソンの$3ブリッジの魚たちは、頭上を流れ下るフライを見て、

「またスティミュレーターってか! ちょっとは考えろよ。オレたちよりデカい脳ミソ持ってんだからさ」

とか、

「ヘイ、そこの日本から来たオジさん! このイエローハンピー沈み掛けてるわよ。そろそろフロータント付け直した方がいいんじゃない?」

と呟いているにちがいないのだ。

今年の当たりフライをショップで買って流しても、

「イイ加減にして! もう、タピオカは見たくもないの」

というのが、今どきのイエローストーン娘の偽らざる心境なのだ。

だからこそ、氷白玉ぜんざいの出番なのだ。

まるっきり目先を変えたジャパニーズスイーツなら手が伸びるのだ。

暑いことだし。




日本の釣り人の腕前は、だいぶ以前から地元イエローストーンの釣り人の間ではよく知られている。キャスティングも上手いし、魚をよく釣る、と。

それはおそらく事実だろう。

しかし数多くの友人たちを案内した経験から言わせてもらうと、彼らが魚をよく釣る最大の理由はフライだ。

虫の羽化があるときはハッチマッチが基本だし、シーズン初期もしくはほかの釣り人の痕跡がない場合は、定番フライが真骨頂を発揮するだろう。

しかし季節が進んだ七月上旬以降、イエローストーンのフリーストーンで最も効果的なフライは、地元のフライショップの店員が薦めるフライではない。

米国では自分でフライを巻かずに、ショップで買うふらい人のほうが圧倒的に多いから、釣り人の多い釣り場では、売れているフライが釣れなくなるという逆転現象が起こる。

だからまず第一にするべきはスティミュレーター、ハンピー、ウルフ、アダムス、エルクヘア・カディスを封印することだ。

フライショップで薦められるポイントへは行ってはいけないし、薦められるフライは使ってはいけない。

古今東西の釣り場ガイドと同じく、垂れ流しされる情報に価値はないのだ。

魚たちが初めて見るジャパニーズフライ、それもすれっからしのヤマメを釣りあげるために日本のふらい人が苦心して開発した最新フライは、イエローストーンでもその威力を存分に発揮する。

いつものフライと、ついでに古今東西初の釣れる釣り場ガイド『ウルトラライト・イエローストーン』をバッグに入れていきさえすれば、爆釣まちがいなし!





《Profile》
阪東幸成(ばんどう・ゆきなり)
アウトドア・ライター。バンブーロッドにのめりこみ、1999年に『アメリカの竹竿職人たち』(フライの雑誌社刊)を著す。2017年にふらい人書房を立ち上げ、以降『ウルトラライト・イエローストーン』『釣り人の理由』など、自身の著作を中心に出版活動を行なっている。最新刊は『ライフ・イズ・フライフィッシング シーズン1』。



ふらい人書房ホームページ
www.flybito.net

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