もっと、日本の渓流のために。
10年を経て、定番シリーズがリニューアル
FlyFisher編集部=写真と文2009年にティムコより発売されたロッドシリーズ、「Jストリーム」が2019年にリニューアルされる。コンセプトは前作と変わらず「日本の渓流のために」であるが、何をどう、変更したのだろうか。
シリーズ開発の中心人物である、嶋崎了さんにうかがった。
新生Jストリームの詳細はこちら!(ティムコのサイトへジャンプします)
嶋崎了(しまざき・りょう)
1965年生まれ。江戸川区在住。フライ歴35年。
渓流を中心に、本流、湖もオールラウンドに楽しんでいる。
ティムコ社フライ用品開発担当として、『TMCバイス』、『TMCアジャスタブルマグネットボビン』、『Jストリーム』シリーズなど主要製品を数多く手がける。 フライフィッシャーONLINEでは「嶋崎了のフライタイイング基礎知識」を連載中
基本のコンセプト
ーー 初代Jストリームの発売が2009年でした。
嶋崎 そうですね、約10年になります。最初のシリーズは好評をいただいたのですが、2019年はティムコが創業50周年ですし、ウチの軸となるロッドなので、新たに作り直そうということになりました。
ーー 前回は「日本の渓流のために」というコンセプトでしたが、今回はいかがでしょう?
嶋崎 それは今回も同じです。日本の渓流で使いやすいロッドをさらに目指しています。
ーー 前シリーズとの違いをお聞きする前に、まずは基本のコンセプトについてもう少し説明していただけますか。
嶋崎 ティムコに入る前の私の話ですが、国産よりも外国製のロッドが好きだったんです。外国製のほうがかっこいいし、性能もよいと思っていましたら。その後ティムコに入社して、ユーフレックス(ティムコオリジナルのロッドリシーズ)に触れるようになりました。実際に使うようになってから、日本の渓流だと海外のサオって強すぎるのかなって思い始めたんです。私が開発担当になってもう20年以上になるのですが、そこで気づいたのは、やっぱり海外の対象魚、ニジマスやブラウンなどはイワナ、ヤマメに比べるとサイズが大きいということなんです。当たり前の話なんですが(笑)。海外では、いくら小さい川で釣るといっても、魚は日本に比べると大きめですから、それを止めるパワーが必要になります。そうするとロッドも強くなりますよね。
ですが、日本のイワナ・ヤマメは30cmなら大きいほうじゃないですか。たまに40cmとか釣れるかもしれませんが、本当に稀なケースです。そうすると対象魚って18~25cmくらいになりますよね。そういう視点で見直してみると、海外のロッドって強いなと。投げたりするのは楽なんですけれど、魚が掛かってから、たとえば、細いイトで狭い渓流でやりとりするなら、切れそうだと感じると思うんです。ロッドがヤマメやイワナの動きについていってくれないから。それが、ニジマスとか大きくて強い魚だったらいいんでしょうけれど。あと、日本では細いイトで大きめのフライを使ったりすることもあるし、そういう経験が私の中で溜まってきたら、もっと安心して取り込めるロッドのほうがいいんじゃないか、と思うようになりました。そして、それをコンセプトの基本にしています。
Jストリーム開発メモ01
2017年6月23〜27日:山形県北部、秋田県南部793(7フィート9インチ3番)のファーストサンプルのテスト。まずはベースとなるブランクスを模索する。このベースを軸にほかのスペックのアクションを決めていく。最初の感触はよかったが、いろんなサイズの渓流へ行ってぐあいを確かめたい。一応ウエットまで試している。
ーー 具体的にはどのように設定したのですか?
嶋崎 初代モデルをデザインする時に、まずはスペックをいろいろと分けました。長さと番手と使われそうなフィールドの規模を定義したんです。たとえば、6フィート6インチから7フィート3インチまではショートロッドという部類に入る、とか。7フィートって一般的にはショートロッドという認識だと思っています。では7フィート3インチってどうかなって考えて、中間のレングスとすると短いなと。じゃ7フィート3インチまでショートロッドとしてカテゴライズしてしまおうって、(笑)そういうふうに分けていきました。さらに長さとフィールドのマッチングも考えました。6フィートの3番というスペックは本流では使わないですよね。もちそんショートロッドで本流を楽しんでる方も知っていますが、一般的とはいえません(笑)。逆に8フィートの4番となると、渓流でも本流でも使う、と考えられます。
Jストリーム開発メモ02
2017年7月25〜28日:山形県の渓流2017年のテストサンプルはまだ793のスペックしかないので、前回と同じブランクでテスト。普通に使えて対応力があるサオだと実感。
Jストリーム開発メモ03
2017年8月7〜20日:山形、新潟、福島の渓流落差のある山岳渓流での793のテスト。イワナをねらっていたが、29cmのヤマメが釣れた。小さい巻き返しを中心にねらう場合の使い勝手を確認。やっぱり近距離向けのサオかなととも感じた。この釣行は5河川くらい行ったが、全体的に増水気味。
渓流用ロッドのスペックとは
嶋崎 常識的に一番短いフライロッドって4フィート4インチくらいなんですよ。過去のスペックを見ていくと。でもそれは極端な長さですよね。で、ここから先が一般的な長さになります。
5フィート5インチ〜6フィート6インチ
ボサ川から小渓流での使用が一般的だと思いますが、上級者になるとショートロッドで開けた河川を釣り上がる方もいます。フライフィッシングの面白さには投げることも含まれるからでしょうね。尺イワナを想定したパワーが必要で、このくらいのであれば8番くらいのフライも投げられるし、開けた渓流でもちょうどよくなると思いました。ショートであればあるほど軟らかいアクションは仕事してくれません。マニアックに楽しむのであればベロンとしたアクションでもいいのですが、それはベーシックではありませんよね。私が理想とするロッドは、尺クラスの魚を掛けてもブッシュなどの障害物に入りこまれないパワーがあって、そこそこ空気抵抗がある大型のフライでもキャストできる強さを持っている、ということでしょうか。そのためには柔軟でありながらも強いティップ、投げる時も魚が掛かってる時でも暴れない柔軟かつスムーズなベンディングを描くミドル、バット部はキャスティングの妨げにならない程度の強さのバット、といった構成です。ブッシュが多い小渓流ではロッドを振り回せないことが多く、ショートストロークのキャストでもロッドが曲がりフライをスローに楽に運ぶことができる強さやアクションが理想だと思っています。ただ、このくらいの長さだとグラファイトではなくバンブーやグラスに分があると思います(笑)。
6フィート6インチ〜7フィート3インチ
これもバンブーやグラスにちょうどよい長さですが、グラファイトでも充分よいサオができるレングスだと思っています。日本の渓流で使うなら、ガチガチにならない程度の強さとしなやかさがほしいです。パラポリックアクションでもティップアクションでもどちらともいけます。個人的な好みは、グラファイトであれば特性を生かしたシャキッとしなやかなミドル気味のファーストテーパーです。7フィートを超えてくるとアクションもさまざまでバンブーやグラスとともにグラファイトの特性も活かせるうようになると感じています。個人的には、これくらいの長さのロッドで小渓流から大渓流を釣り上がるのが楽しくて、最近の釣りでは出番が多いです。
7フィート4インチ~7フィート9インチ
日本の渓流で釣りをしたい方におすすめする最初の1本は、7フィート6インチ4番です。このスペックは狭い小渓流やボサ川を除いた渓流域ではもっとも汎用性が高いと思います。個人的にも知らない川を釣る時などは、この長さの3番か4番を選択することが多いですね。バンブー、グラス、グラファイトと、それぞれアクションも強さも多種多様で様々なアプローチで作られているスペックですし。どのような提案するか作り手の意思が出やすいと思います。汎用性、専門性と、どちらにも偏らせることができる長さだと思います。
7フィート9インチ~8フィート3インチ
バンブーやグラスの中にもよいものはありますが、長さ的にはグラファイトに分があると思います。最近ではSグラスのように弾性率の高いUDグラス(グラス繊維の方向が一方向のプリプレグ)を使用すればこのレングスでも張りのあるよいグラスロッドができるようになりましたけど。ちなみにティムコにロッド工場があった時代に作っていたグラスマスターは、SグラスのUDグラスで作られたロッドで感覚的にはグラファイトライクなグラスロッドという感じでした。張りのあるグラスロッドは投げやすく、使いやすいとよく聞きます。最近だとエピック社のものが有名で人気も高いですよね。
話をグラファイトに戻しますと(笑)、このスペックの守備範囲は渓流から本流域までと幅が広いんです。ブラインドの釣り上がりからマッチング・ザ・ハッチまでを考慮しなければならなくて、制作側からすれば悩みが多いです(笑)。渓流か本流どちらを優先させるかでかなり違ったロッドになりますし。また、8フィート3インチの3番というスペックは、岩井渓一郎さんのI’s3(アイズスリー)がやはりロングティペット・リーダー対応の黄金比だと思います。グラファイト素材でロングティペット・リーダー向きのアクションを作る場合は8フィート1インチから8フィート4インチくらいが作りやすく扱いやすい長さだと思います。もちろん開けていない渓流域では7フィート9インチなどで長いリーダーシステムを扱いますが、キャスティングスペースに制約がなければロッドは長いほうが楽に扱うことができます。
8フィート4インチ~8フィート8インチ
このスペックには一発必中のライズの釣りや本流域を釣り上がるなどの要求があると思います。開けた渓流で使用するので風に負けない強さも必要となってきます。個人的にこのスペックを使うのは、春先の本流域の釣りか、盛期の本流域でのイブニングくらいです。3番と4番の使い分けは対象魚とフライのサイズ、それから風の有無でしょうか。ただ、これ以上長くなると強風時はつらくなるし、釣り上がるには疲れてしまうと思います。
あと、話はまた逸れちゃいますけど、スクールなどで多くのフライフィッシャーの方と接していてなんとなく感じているのですが、ロングティペットを使っている人というのは、全体の5~10%くらいだと思っているんです。その考え方でいくとほかの85~90%の方は違うわけで、その方たちはどんな釣り人なのか、ということもロッドアクションを設定するうえで考慮しています。時代もありますしね。たとえばロングティペット、とまでないかなくても、全体的には以前よりもティペットが少し長めになってきています。そういう釣りに使いやすいのは、どんなアクションなのか、とか考えています。
ーー このカテゴライズはかなり的を射ている感じですね(笑)。
嶋崎 かなり考えましたから(笑)。対象魚のことも考えましたよ。あくまでも私個人の経験を基準にしていますが。
ーー といいますと?
嶋崎 対象魚としてのイワナとヤマメの比率です。本州でいえば、春先はヤマメのほうが対象魚としては多い思うんです。5月くらいまでは。それ以降はイワナのほうが多くなるんじゃないでしょうか。まあ春先の、3~5月だとイワナ4でヤマメ6くらい。それ以降の渓流シーズンになると、イワナ7にヤマメ3くらいだと思っています。というのは、私自身、最近はヤマメを追いかけるという釣りスタイルじゃなくなってきていて、釣れればいいや、くらいの気持ちで適当に川を選んで釣ることが多くなりました。そのやり方だと、ヤマメってなかなか釣れないんです(笑)。ヤマメって追いかけなければ釣れない魚なんだなと改めて感じています。ヤマメオンリーの川って滅多にないですし、渓流域に限ってみれば、イワナのほうが圧倒的に多いと思います。そうするとイワナを釣っている方のほうが多いんじゃないかなって思っています。まあイワナが多いからロッドのアクションを変えるということはないんですが、なんとなく意識はしますよね(笑)。
ーー それぞれねらうポイントが違いそうですからね。
Jストリーム開発メモ04
2017年9月9日:山形県の渓流そろそろこのブランクでいくか決めなければいけない時期。だいたいよいと思っているが……。
Jストリーム開発メモ05
2017年9月15日:新潟県の渓流仕上げの時期。2017年シーズンの締めくくりは尺イワナだった。新しいJストリームの方向性はこのアクションでいこうと決める。来シーズンはこれをベースにほかのレングスを展開していく。
Jストリーム開発メモ06
2018年5月14〜16日:岐阜県の渓流2018年初めてのテスト。前年の記憶を再確認するために793を使う。
嶋崎 あとはロッドに求めることをキャスティング、メンディング、フッキング、ファイト、ランディングと5項目に分けてもみたんです。改めて考えると、この5つの要素をすべて満たすことはなかなか難しいんですよね。だったら、目的をある程度明確にして、どこを削るか、または特化させるか、ということを考えなくてはならないと思うんです。中部と東北では川の形態が違ったりするから、なおさら難しいのですけれど。
ーー あちらを立てればこちらが立たず、ということですか。
嶋崎 そうなんです。まずはキャスティング性能としては単純に近距離ねらいと遠距離ねらいではパワーもアクションも変わってきます。さらにはアキュラシー性能を求めるかでも違ってきますよね。また、キャスティングはスタイルもあるじゃないですか。私は大きく2つキャスティングスタイルがあると思っていて、一応「回転系」と「ストローク系」とに分けています。回転系は腕の上下動が大きいというか、肩を中心にしてグリップを回転させる感じ。沢田賢一郎さんなど、そういった方々が主に使っていた方法だと思っています。ストローク系とは、逆にグリップを前後させるスタイルです。いろんな方のキャスティングを見ていると、最近はストローク系のほうが多いと感じていますが、このスタイルによっても心地よいアクションって変わってきますよね。
メンディング性能はティップを効かせて近くのラインを置き直す場合と、バットパワーをいかして大きくメンディングするかで変わります。フッキング性能はミッドからバットのパワーがしっかりしていないとちゃんと刺さらないし、ファイト性能では、渓流魚のクイックな動きに追従するティップとミドルを持ち、それをバットでしっかりと受け止められることが重要だし、ランディング性能はファイト性能とラップしますが、大きなイワナを掛けても、石の隙間に潜られてバレた、というのはよく聞く話ですよね。それをできるだけ防ぐには、やはりバットパワーが重要です。
まあ、要するに必要とされる距離を投げられて、魚を弱らせずにスムーズな取り込みができるロッドがよいということになると思うのですが、この5項目のバランスをうまくとるには……、まず釣りのシチュエーションをはっきりさせることですよね。
ーー 使うフライサイズも影響しそうですね。
嶋崎 しますよね。今回、2番ロッドに関しては、フックサイズ12番以下くらいがオススメです、という感じで作ったんです。それ以外はだいたい8番くらいまでは投げられるように作っています。なんでも使える、という感じですね。本州、九州だとフライサイズって10番くらいまでがほとんどだと思うんです。8番くらいを使う人は稀だと思いますね。無理すれば使えますよ、という感じにしています。8番が余裕で使えるようなロッドだと、逆に強すぎるんだと思います。あんまり快適じゃなくなってきますよね。
Jストリーム開発メモ07
2018年6月6〜7日:秋田県の渓流763(7フィート6インチ3番)の初テスト。なんか違う、使いにくい印象。思っていたよりも軟らかい。スペック的にもう少し強いほうがよいのでは?
Jストリーム開発メモ08
2018年6月12〜15日:新潟県の渓流引き続き、763のテスト。すでに方向性を決めた793と使ってみて比較する。やはり弱い。もう少し強めにしなくては。
Jストリーム開発メモ09
2018年6月20〜23日:新潟県の渓流一応違うバーションの793をテスト。793は実は5バーションあって、違う強さのものを試してみた。その後804をチェック。いいヤマメが釣れた!
Jストリーム開発メモ10
2018年7月16〜17日:山形県の渓流763のバージョン違いをテスト。これは悩みに悩んでいる。次回へ持ち越す。1日じゃ決まらない。
Jストリーム開発メモ11
2018年7月25日:群馬県の渓流人に使ってもらって印象を確認する。信頼できる友人の意見はかなり貴重。
Jストリーム開発メモ12
2018年8月11〜14日:山形県の渓流803をテスト。キャスティング性能をチェック。釣りはグラスロッドでも行なってみる。792(7フィート9インチ2番)のバリエーションごとの振り比べもやってみるがどれもうまくいかない。793の弱いバージョンを792として使えないかチェック。
そして、新生Jストリームはどう変わったのか
ーー 前置きが長くなってしまいましたが(笑)、今回の新生Jストリームはどのようなラインナップになるのでしょう?
嶋崎 今回発売を予定している機種は792-4(7フィート9インチ#2、4ピース)、763-4(7フィート6インチ#3、4ピース)、793-4(7フィート9インチ#3、4ピース)、803-4(8フィート#3、4ピース)、804-4(8フィート#4、4ピース)の5本です。さっきお伝えしたカテゴライズを基準にそれぞれのスペックにあったフィールドを想定して、アクションを設定しています。先ほども話に出たI’s3(アイズスリー)などは、岩井渓一郎さんの釣り方に特化したスペシャルロッドですが、Jストリームは、現行モデルも、新モデルも、それぞれの釣りのシチュエーションに特化したスペシャルロッドといってもいいかもしれません。
ーー 全体的には、今までとどこが違うのでしょうか。
嶋崎 現行モデルはスローパラボリック的なアクションで構成されていたのを、今回はファースト気味に変更しています。その理由は繰り返しになりますが、ストローク系のキャスティングの人が多いからです。そういうスタイルでキャストしやすいようにバットを残して、上が曲がるように変更しています。現行モデルは、アクション的に弱いという話もあったので、ちょっとパワーを強くしてあります。10%とか20%くらいでしょうか。
ーー アクション変更には一般の方の意見もある程度反映されているのですね?
嶋崎 実際いろんな意見を聞いてきて、現行のJストリームに関して、私は、レーシングカーを作っちゃったんだなって思ったんです。10年くらい前ですから。その頃、ちょうど秋田のバンブーロッド・ビルダーでロングティペットの名手、渋谷直人さんと出会って、影響を受けたというか(笑)。多くの方がご存知のとおり、渋谷さんは恐ろしく上手だし、自分でもロッドを作っているので本当によくわかっています。彼と一緒にたくさん釣りをして、その影響が現行モデルにも出ているのだと思います。より専門的なサオを作っちゃったんですよね。だから使いこなせる人にとってはよかったかもしれないですけれど、持て余しちゃうというか弱すぎると感じる人も少なくなかったんです。そこで、今回の新しいJストリームは、扱いやすいレーシングカー、というところを目指しました。
Jストリーム開発メモ13
2018年9月7〜8日:山形県の渓流連日の雨で釣りがままならない。そんな中、スーパーなヤマメが釣れた!
Jストリーム開発メモ14
2018年9月10〜12日:山形県の渓流好きな川だが水が少ないのか、時期が遅いのか、魚の活性は低かった。763をテスト。暗礁に乗り上げそうな792のバージョン違いも振り比べる。
ーー 素材いかがでしょう?
嶋崎 変わっていないんです。使用しているカーボンシートの種類は現行モデルと同じなのですが、表面の仕上げ方法を「アンサンド・フィニッシュ」に変更しています。今までの仕上げ製法は「サンディングフィニッシュ」といって焼きあがったブランクスの表面にあるテープの跡が少し残る程度削り、そこに塗料を塗ってフラットにする仕上げ方法です。製法は各メーカーにより違いますが現在のほとんどのフライロッドはこのフィニッシュです。今回のJストリームに取り入れたのはもう1つの仕上げ方法で「アンサンド・フィニッシュ」です。こちらは焼きあがったブランクに巻きつけられているテープを剥がした後にできるテープの跡を、削らないのが特徴です。アンティークなイメージなのか現代ではほとんど使われていませんが、今でも一部のロッドに用いられています。ポピュラーなものだと初代のオービスのスーパーファインシリーズやスコットのGシリーズですね。私、アンサンド好きなんです(笑)。
Jストリーム開発メモ15
2018年9月16日:群馬県の渓流803のテスト。間違って4番ラインで釣ってしまい、難儀した。
Jストリーム開発メモ16
2018年9月18〜20日:福島県の渓流コンディションが悪く魚がまったく釣れない。どこ行っても釣れなかった。こんな状況もテストには好都合、と自分に言い聞かせる。
Jストリーム開発メモ17
2018年9月28〜30日:山形県の渓流禁漁間際に今年よかった川を再訪。あいにく人だらけで、釣れなかったが新しい川を見つけられた。来年につなげたい。小さい川は763で、大きめの川は803で釣った。
ーー 好き嫌いで選んだわけではないですよね(笑)?
嶋崎 同じブランクスを2つの製法で仕上げた場合を比べてみました。アンサンド・フィニッシュのほうは塗装を薄くできるので軽いうえに、グラファイトを削らないために返りが速く反発力に富んだ軽快なアクションに仕上がりました。一方サンディングフィニッシュはカーボンの繊維量が減り塗装も厚く重たくなるため、反発力が減りました。もちろん、それが悪いわけではありません。表面の塗膜が厚いぶん、トルクのような力がキャスティング時に生まれやすく、軽快さは損なわれるものの、力強い柔軟性のようなものが生まれます。
今回のモデルのイメージはアンサンドのほうが適していると判断したので、そちらを選択しました。たとえば現行モデルが、曲げてから0.5 秒くらいで戻ってきていたのが、今回のは0.2秒くらいで帰ってきますよというイメージですね。現行モデルと比べると同じブランクスでもロッドのブレが少なくキャスティングの精度が上がったと感じています。素振りだと、若干弱いなって感じる方もいるかもしれませんが、ラインを乗せてキャストするとシャキッとした感覚を味わっていただけると思いますし、実際の釣りで使っていただければ、アクションが変わったことはもっと実感していただけるはずです。なんといっても釣りをしていて楽しいロッドに仕上がったと思います。
新生Jストリームの詳細はこちら!(ティムコのサイトへジャンプします)
2018/12/5