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エド・ワードが語るスカジットキャスト

自由の結晶

東知憲=聞き手 FlyFisher編集部=写真
このキャストには最大限の可能性がある。
ヘッドの長さもキャストを始めるためのラインの置き場所も、「これが決まり」というルールはない。
モダン・スペイキャスティングの一角を成す、アメリカ北西岸生まれのスカジットキャスト。
オリジネーターが、そのルーツを熱く語る。


(株)F・M・Lフィッシング事業部=協力
http://fmlec.com/


この記事は2012年3月号に掲載されたものを再編集しています。

ガイド業がもたらした撓倖


FF エドさんのバックグラウンドを聞かせてください。

エド・ワード(以下EW) 空軍で働いていた父が釣り好きだった影響で、4歳の時に初めて魚を釣りました。その後、フライに興味を持ったのは12歳頃だったでしょうか。引退前の父が最後に勤めていた基地がミシガンにあって、そこにスティールヘッド、サーモン、さらにはほかの魚も実に豊富にいたのです。

やがて私は海軍に入り、ワシントンに移ることになったのですが、その土地がやはり気に入って、フィッシングガイドになることを決めました。結局、私も本当に好きなのは釣りだったのですね。ワシントンではスティールヘッドなどのガイドをやり、夏にはアラスカやカムチャッカにもよく出かけました。

もともと釣りはスピニングリールから始めて、ベイトリール、それからフライフィッシングのシングルハンド、ツーハンドと、自分がより面白いと感じるものに移ってきました。あるものができるようになると、次のチャレンジがしたくなります。

それは魚も同じで、バスがトラウトになり、やがてサーモン、スティールヘッドになっていったわけです。

FF ツーハンドでスティールヘッドというのは1つの到逹点になりますね?

EW そうですね。フライフィッシングを始めると、まず「魚が釣りたい」と思うようになります。すると次には「大きな魚が釣りたい」と思うようになる。そしてさらに次になると、今度は「セレクティブな魚が釣りたい」、あるいは「難しい魚が釣りたい」と思うようになります。

最後はどうなるか? よく知られたこの段階に、ジョーン・ウルフが4番目として付け加えたのが、「また魚が釣りたいと思うようになる」でした。

私自身、本当に長くスティールヘッドの釣りをしてきて、今はまさにそう感じるようになっています。ただし、私の場合は「ツーハンドで」というひとことが加わりますね(笑)。なぜならそれくらい、ツーハンドのキャスティングというものは楽しみが多いものだからです。

エド・ワード/Ed Ward
キングサーモンやスティールヘッドのフィッシングガイドをしながら、80年代後半から90年代にかけて、太く短いシューティングヘッドにシンクティップを接続したシステムを効果的にキャストするスカジットキャストを確立。DVD『SkagitMaster Featuring Ed Ward』で一躍日本でも知られるようになる。OPSTプロスタッフ


「自由」が生んだキャスト


FF スカジットキャストについて伺いましょう。そもそもこのキャストには、何らかのプロトタイプがあったのでしょうか?

EW それについてはまず、簡単なヒストリーからご紹介しましょう。

80年代に、スカジット・リバーによく知られた釣り人のグループがありました。その中心にいたのがフェンウィックのデザイナーであり、のちにセージのロッドもデザインしたジム・グリーンです。ほかにはハリー・レミア、ボブ・ストローベル、アル・バーなどがいて、彼らはスカジットやその近くで釣りをしていました。

そしてジムがセージとつながっていた時、80年代の半ばに、ヨラン・アンダーソンがセージのヨーロッパ向けのツーハンド・ロッドについてのアドバイスをすることになりました。それでヨランがアメリカに来ることになった。もちろん、セージのロッドを川でテストするためですね。

細かいところは確認したわけではありませんが、ロッドをデザインしたのがジムであり、その関係でハリーやボブがヨランとそのキャスティングを知ることになったようです。そしてすぐに、その有効性に気付いたのでしょう。「これはスカジットでのスティールヘッディングにも使えるぞ」とね。

しかしヨランは数日もすれば帰国してしまいますから、あとは自分たちでやってみるしかないわけです。しかし少なくともショートヘッドによるアンダーハンド・キャスティングというアイデアは彼らの中に残った。

そのような状況の中で、私自身は80年代半ばからスティールヘッドの釣りをしていました。最初はシングルハンド・ロッドです。そしてスカジットやソークを釣っている時に、クラシックバーという有名ポイントで、ハリーとボブの2人に出会いました。

私は深くウエーディングして、3回か4回のフォルスキャストで60フィートくらいを投げる釣りをしていました。でも、同じポイントに入っている自分よりずっと年上の2人が、見たことのない感じで両手を使って、60~70フィートのキャストをしているわけです。すぐに「これは自分よりもいいやり方だ」と思いました。それで彼らに話しかけたのです。

その後、私がスペイロッドを買ったのは1987年の秋だったと思います。その頃から、特殊なことをやってはいるけれども、とてもオープンな思考をする釣り人たちと次々にスカジットやその周辺の川で出会うようになりました。いろいろなことがまさに同時に起こったのです。

FF その中でスカジットキャストはどう生まれたのですか?

EW オリジナルタイプのスペイキャスティングでは、水面に多くのラインを付けないことが好まれます。つまり、タッチ&ゴーなのです。もちろん、ダブルスペイではより多くのラインコンタクトが発生しますが、それでもその時間は最小限にするべきで、待ってはいけない、避けるべきものであるとされる。

しかし、私たちはそもそもスペイキャストがそういうものだとは知りませんでした。それでラインを一度水面に置いて、待ってからキャストしていたのです。それを今はサステインドアンカーと呼んでいますが、自分たちは同時にラインを短くもしていたので、結果的にその組み合わせがうまくいった。

使うラインが短くなるほど、サステインドアンカーは効果的になりますからね。そのことに気が付きました。

そして今にしてよかったと思うのは、当時はフォーマルなインストラクションというものが何もなかったことなのです。ほかの人間のやっていることを正しい、正しくないという権威が誰もいなかった。とても自由だったのです。

私たちにしても、たとえば初めの頃のキャスティングは、むしろ「間違っている」スタイルだったと思います。けれども、その間違ったやり方を、新しいキャスティングを形作るところまでやり続けることができた。それがなければ、このキャストは生まれませんでした。



大きなフライを投げる


FF なぜ、タッチ&ゴーではいけなかったのでしょうか?

EW このキャスティングが、そもそもイントゥルーダーという大きなフライを投げるためのものだったからです。

スカジット・リバー、そしてその支流であるソーク・リバーでは、シーズンの90%は水が濁っています。そして、スティールヘッドはそのどちらにもちょうど半々で遡上します。

私たちには「イントゥルーダー・クラン(一族)」と呼んでいる釣り仲間がいて、ソークをねらうことが多いのですが、ニゴリの中で魚を釣るためには、まずフライを大きくしたいと考えました。その時にトラディショナルなスペイキャスティングなどのタッチ&ゴーのキャストだと、フライが大きくなりウエイトが増すほど、キャストがしにくくなってしまうのです。

基本的な物理として、1フィートあたりのラインが重くなるほど、投げられるフライは大きくなります。そこでラインについては、たとえば54フィートで600グレインといったショートベリーのスペイラインを短くしていく発想で考えました。

そして短いラインで大きなフライをサステインドアンカーのキャストで使うようになると、それまでトラディショナルなスティールヘッド・フィッシングではあまり釣り場とされてこなかったところもねらえるようになりました。高いバンクや大岩のあるところ、あるいはバックスペースがなくて足もとから急に深くなっているようなところですね。

初めは大きなフライを使うためにラインを短くしたのが、実際はそれによってDループも小さくなる。そういった要素がどんどん重なっていきました。

イントゥルーダーのシャンク後端にはモノフィラで極小のループが付けられている。アイに入れたティペットをそのループに通してからスティンガーフックに接続することで、フッキング後にボディーとフックが分離する構造を実現。その際、シャンクとスティンガーフックの接続部にはシリコンなどのチューブも被せているが、細軸のシャンックに外れやすいチューブを使うことで分離を確実にしている

FF 「イントゥルーダー」というのはフライのパターンですか?

EW  ひとつのファミリーと言えばいいでしょうか。

たとえばスペイフライというのは、特定の1つのパターンではありませんよね。異なるマテリアル、色、あるいはフックで巻かれていても、スペイフライはスペイフライです。

イントゥルーダーもそれと同じ。そしてそのコンセプトが何かと言えば、大きく、できるだけ少ないマテリアルで、よりよくアクションするように巻かれたフライということになります。

スティールヘッドの釣りで使われる大きなフライの典型にジェネラルプラクティショナー(GP)があります。でも、GPは大きなサイズに巻くと重くなる。しかも、GP自体は実はあまりアクションがありません。水中を泳がせてみると分かりますが、実際に動くのはテイルの先だけ。つまり見た目はシュリンプでも、動きはシュリンプになっていないわけです。

私たちのほしいフライはそうではなかった。

FF 動きがほしいと。

EW イミテーションではなくインプレッション。サイズが大きく、さらに生命感のあるフライをどうしたら作れるかを考えました。ただし、マテリアルが多すぎるとキャストは難しくなります。ですので、マテリアルはミニマム。けれども動きは大きくしたい。

その結果、まずフックに巻くハックルの後ろに、ディアヘア、ポーラーベアなどを使う、ショルダーもしくはステーションと呼ぶしっかりした部分を作りました。それによりシャンクに巻かれたハックルが支えられ、フレアすることでフライのサイズが大きくなり、水中での型崩れも防いだのです。

またこのステーションがあると渦状の水流が周囲に生まれるため、ハックルに素晴らしい動きが生まれます。そしてハックルの前には軟らかなマテリアルを巻きました。

さらに、少ないマテリアルで大きなサイズのフライを巻くことで、光が差し込んで抜けて行く効果も得られたのです。生きたエビやイカを水中で見ると透明感があります。そして内臓の部分は青色か紫色に見える。動きはもちろん、こうした色味や質感の深さも出せたのがイントゥルーダーというフライでした。

意外な発見


FF イントゥルーダーは日本でも非常に注目されました。

EW このフライの最初の目的は、すでにご説明したように、ソーク・リバーという特定の釣り場で、いかにスティールヘッドを手にするかでした。しかし実際に使い始めてみると、実は別の発見があったのです。

スイングの釣りでは通常、魚からのアタリは「引かれて、引かれて、それから重さが乗る」という感じで出ます。

ところが、このイントゥルーダーを使ってスイングをすると、まったく違う非常にエキサイティングなテイクが出るのです。フライがひったくられ、いきなり走り出すようなテイクです。それが我々を病みつきにしました。

どんなフライにもそれが利く最適なコンディションというものがあります。つまり、魚を釣ることが最優先なら、いつもイントゥルーダーである必要はないのです。しかし、我々はシーズンをとおしてイントゥルーダーを使います。それはなぜかといったら、テイクが違うからなのですね。

スティールヘッドをねらってフライをスイングさせ、水中のようすをイメージする。その時は座禅を組んでいるかのように静かに集中し、とてもリラックスした状態です。ところがそのゼロの状態から、突然のハイになる(笑)。

よく誤解されるのですが、イントゥルーダーを使うのは、それが最もプロダクティブな釣れるフライだというわけではないのです。

FF 接続されているスティンガーフックは径も細く小さいですね。

EW そのとおりです。それで充分スティールヘッドは釣れるのです。

大切なのは、しばらく待ってしっかり重さが乗ったところでセットフックすることです。するとフックのベンド部分に重さが掛かるので、まず伸ばされません。

スティールヘッドを釣っていて、よく2、3回のヘッドシェイクで外されてしまったという人がいますが、その場合はアワセが早すぎることがほとんどですね。

イントゥルーダーのタイイングをOPSTスタッフ仲野靖さんが解説。合わせてご覧ください


2×2種類で95%はカバーできる


FF キャストの話に戻りますが、スカジットキャストにはいくつかのバリエーションがありますね。

EW メインのキャストは4つです。アップストリームとダウンストリームのCスペイ。それにアップストリームとダウンストリームのペリーポークです。この4つができれば、95%の状況には対応できます。

まれに風がアップストリームに吹いていて、アンカーが置きにくい時にだけダブルスペイも使いますが、基本的には岸のどちらに立っているかと風、それからキャスティングに使えるスペースの関係から、4つのうちのいずれかを選択しています。

たとえば左岸からのキャストの場合、アップストリームの風が吹いていれば、私は右利きなので、利き手側にラインを置くアップストリームのCスペイかペリーポークを使います。逆にダウンストリームに風が吹けば、ダウンストリームのCスペイかペリーポークを使います。

ダブルスペイを使う必要がほとんどないのは、ダウンストリームのペリーポークとダウンストリームのCスペイが大変対応力に優れたキャストだからです。

特にペリーポークは素晴らしいテクニックです。ラインを畳む場所を自在にコントロールできますし、向かい風にも充分にパンチを利かせた狭いループでラインを飛ばすことができます。軽い番手のロッドでも、またソルトウオーターでも使えます。

クリニックに参加してもらえれば、ラインやフライの置き場所についてより詳しくレッスンできます。1つのパターンが覚えられれば、あとは好きなように応用できる。

ダンプ(ラインを畳んで置く動作)がどこでなければいけないとか、そういうことはまったくありません。状況に応じて自在に変えることが大切であり、それには最初にキャストを機能させる筋道をきちんと押さえておけばよいのです。

レッスンでいつも伝えるのは、基本的な動作だけ覚えてしまえば、あとはこのキャストの自由度の高さにすぐに気付くということです。ペリーポーク、それにCスペイもそうですが、これらは本当に自由度が高い。レッスンではそれを体得するための、最初のメカニズムを伝えています。

ユーチューブなどの動画でよく見せてもらっていますが、日本のシーバスフィッシングでもペリーポークが使える場面は多いと思います。

私は冬場にテキサスの海で釣りをすることがあるのですが、海ではスイッチロッドを使ったスカジットキャストがとても有効です。風速は穏やかな日で15マイル。普通なら25マイルくらいですが、あたりは開けていて風をさえぎるものはなく、フライはよく沈むクラウザー。シングルハンドだと自分の頭にフライがヒットする可能性もある(笑)。でも、スイッチロッドでスカジットキャストを使い、風向きに合わせたキャストをしていれば非常に安全で快適です。

ウイードがたくさん生えているような釣り場でも、スイッチのようなツーハンド・ロッドを使っていると、ラインをストリップしている間にウイードが引っ掛かったなと感じた時に、次のキャストに移る前にスナップTで楽にウイードを飛ばして外せる。

たとえば40フィートかそれ以内で何度もキャストを繰り返すというシチュエーションであれば、シングルハンド・ロッドのほうがずっとメリットがありますが、それを超えて75フィート、80フィート、90フィートの飛距離を出したいとなったら、ツーハンド・ロッドでのスカジットキャストの釣りには非常にメリットがあります。

シーバスもそうなのでしょうが、自分たちもフレッシュウオータードラムという魚をねらうボートの釣りをウィスコンシンでやっていて、その時にボート上の2人がどちらもスカジットで釣りをすると、とても安全なのです。ある程度水面に近いところに立つ必要はありますが、スカジット同士なら前の一人はこっち、後ろの一人はこっち、するとボートの上にフライをまったく通過させずに釣りができます。

私たちにとっても、スカジットキャストを利用した釣りというのは、まだまだ進化の途上にあるものなのです。このシステムで新しい場所を釣ってみると、本当にエキサイティングな発想があります。

Dループを作る前にラインを一度水面の上に寝かせ、そこからラインをはがす時の抵抗を利用してロッドを曲げようとするのがスカジットキャスト最大の特徴。ラインが水面に引っ掛かっている状態を一定時間維持するため、これをサステインドアンカーと呼ぶ

スイングによる攻略


FF スカジットによるスティールヘッド・フィッシングですが、スイング以外に二ンフを送り込むような、ナチュラルなドリフトはやらないのでしょうか?

EW スカジットラインは太く硬めなので、ニンフ的な釣りにはあまり向かないと思います。ニンフィングにおいては細かなメンディングが役立つことがありますから、もう少ししなやかなラインのほうがよいでしょう。そうした操作にスカジットラインは基本的に不向きですね。

FF やはりスイングの釣りだと?

EW というよりも、それが私たちの選択なのです。インジケーターを使った釣りではなく、スイングで釣りたい。ウキを見ているよりも、すべてを感じながら釣りたいのですね。

アタリというのは、生命のあるものとつながったという実感です。

スイングの釣りをしている時、底を取るようなことはしません。スティールヘッディングの釣りというと、底を引きずってくるようなイメージを持たれることがあるのですが、たしかにそのような釣り方をしていると、アタリと根がかりの差が明確でないこともあります。

でも、やりたいと思っているのは、底は切らずにその上をきれいにスイングする釣りなのです。魚が興味を示す範囲で、なるべくその上を釣っていく。ですから基本的にフライは底に当てません。

そのようなスイングで釣っている時には、流れを受けたラインの重さがランニングラインを押さえている指先の一点に乗ります。それは継続的なものですが、慣れればそのテンションだけでスイングの状態が分かる。速すぎるとか、遅すぎるとかですね。

そして魚がフライを捉えると、イントルーダーであればそこには何の邪魔も入らず、強烈なアタリが出るわけです。それはまさに、ピュアでクリーンなテイクになります。魚の挙動すべてが感じられ、即座に「生きものだ! 来たぞ!」と分かるわけです。

これは石かな? それとも根がかりかな? といったことは起きないんですよ。スイングの釣りが本当に面白いのは、まさにその部分なのです。

川には魚が労せずして体を置ける場所というのがあります。そうした場所にいる魚はよそ見をせず、自分の上流を双眼鏡で見るように観察している。その視界の中にフライが最もアピールする側面部分を、適切なスピードで通すのです。そのためにはフライの姿勢や深さが指先のテンションから理解できるように、自分を上達させなければいけません。

FF スイングのベースとなる具体的な流し方を教えてもらえますか?

EW そうですね、そのためには2つの典型的なスイングを説明しましょう。

まず1つは、「最も速いスイング(FASTEST SWING)」もしくは「フライの側面を見せるスイング(BROADSIDE)」と呼ぶものです。

これらは基本的に速い流れがある場所か、もしくはそれよりも若干流速が落ちるくらいの流れでやります。あまり緩い流れでやるとラインが底に付いてしまう。そのうえで、ラインの途中にはL字の部分を作り、そのL字部分が流れを受けることで、フライに動きが生まれるようにします。この場合、プレゼンテーションキャストはおもに対岸方向です。

もうひとつは「プラグのようにフライを流すスイング(PLUGGING SWING)」です。これは名前のとおり、ドリフトボートからプラグでねらうアングラーの流し方に近いものですね。この場合、キャストはまず下流に向けて行ない、そのあとラインを上流側にメンディングして、フライを上流から吊すような状態にします。投げる角度は流速によって決めますが、緩い流れであればより上流に、速い流れであればより下流にします。

ラインはまっすぐにするのが基本で、流れ始めるとどうしても弓なりに張ってきますから、その分はメンディングする。プラギングスイングは流速の遅いところか、もう少し速い程度のところでやるのが基本です。あまり速い流れでは機能しません。

実際はこの2つの間に無限のバリエーションがあります。あとは釣り場の状況に応じて、その中から最適なスイングを選択していくのです。

FF スイングの釣りで心がけていることは?

EW キャストしたラインは、どうしても完全なストレートにはなりません。ですので、着水したらまずタルミを取ることが大切です。それによりフライを即座にこちらに向ける。もちろん、ラインをたくさん手繰らなければならないようなプレゼンテーションキャストは論外です。

ブロードサイドの場合、フライとコンタクトが取れ、側面を上流側に向けながらスイングを開始したら、その後はロッドティップの位置を徐々に低くしてフライの動きに追従させます。その間は、一定速度で常に同じラインテンションを感じていることが大切で、速すぎれば軽くなり、逆に引っ張りすぎていれば重くなる。フックのアイをこちらに向けて、魚に常にフライの側面を見せることを意識して、もうこれ以上ロッドティップを低くできないというところまで来たら、最後はロッドティップを反対側に返すか、あるいは下流側にメンディングしてフライをそのまま泳がせます。

フライはなるべく早く沈めたうえで、岸に向かって徐々に浮き上がってくるようにします。泳がせる層は水深の半分より上、岸に近づいてきている時で少なくとも3分の1以上の層にあるようにキープします。それによって、なるべく長い間フライを泳がせ続けるのです。スイングをコントロールすることは、キャストと同じくらい重要だと思っています。

スイングなんて簡単だという釣り人の場合、実際には流れの中のほんの一部しか釣っていない人がほとんどですね。でも、本当はスイングこそ最も複雑で奥が深いスティールヘッディングのアプローチなのです。

短くなるラインシステム


FF ラインシステムについて伺います。現在、長さに関して最適の目安のようなものはありますか?

EW そうですね。すでにお話したように、このキャストについてはまだまだ発展の余地があると思っていますので、オリジナルといえるものはたしかにありますが、あまりそればかりに固執してほしくはないというのが本音です。

たとえば私自身についていえば、スカジットキャストで扱うラインの全長はどんどん短くなってきていて、今では最短でロッドの1.75倍くらいで釣りをする場合もありますよ。それはたとえば、海でフライを自分のすぐ近くまでストリップしてきて、ガイドに入ったらすぐに次のキャストに移るような場合です。

ただ、それは極端な例ですので、かなりタイトにやらないとコントロールは難しくなりますね。

標準的な長さとしておすすめするのは、ロッドの長さの2.75~3倍です。それくらいが最も投げやすく、多くのシチュエーションをカバーできます。また、この場合の長さというのは、ティップとボディーを合わせた全長のことです。最も長い場合で3.5倍まで。それ以上にしてしまうと、このキャストの特徴であるコンパクトな操作がやりにくくなります。

FF ティップ部分はどれくらい取っているのですか?

EW シンクティップは15フィートだと長すぎると感じており、だいたい10フィートにしています。私たちは釣りの70%以上をシンクティップで行ないますが、その際のシンクレートについては、タイプ7またはタイプ8といった重いものしか実際は使いません。

つまり、このメソッド自体が短く重いシンクティップを使うことを前提としているのです。

FF それはなぜですか?

EW 何よりもまず、最初の2~3フィートの深さを素早く沈めたいと考えています。その時に、たとえば15フィートのシンクティップにノーウエイトのフライというシステムだと、プレゼンテーションキャストをしてから下流45度くらいの位置にラインが来るまでの間、実際は手前のラインよりフライが上という状態になりがちなのです。ですが、それでは釣りになる範囲が非常に狭くなってしまう。

スティールヘッドという魚は、横方向に対して非常に長くフライを追う習性があります。見つけたフライをずっと追跡してきて、最後にやや浮上するようにくわえるのです。

つまり、フライを着水と同時にスムーズに沈め、早い段階でスイングを開始させられれば、それだけ釣れるチャンスが増える。そのためにまずフライにはウエイトを入れ、シンクティップは短く重いものを使います。

決して底まで沈めようとする必要はないのですが、中層にいる魚をねらうのであっても、着水と同時にとにかくスムーズにフライを沈めることが大切なのです。

現在、OPST(OLYMPIC PENINSULA SKAGIT TACTICS)からエド・ワード自らがデザインした専用のラインとシンクティップが発売。さらに「マイクロスカジット」として低番手シリーズの展開も始まりさらにスカジットキャストの射程をさらに伸ばしている。

FF リーダー部分はどうしていますか?

EW シンクティップを使う場合は、リーダーは3フィートほどなので、システム上はほとんど考慮しなくてよい長さとなります。ただし、フローティングのティップを使う場合は別です。この時は、私たちも10~12フィートのナイロンリーダーを使うことが多いので、リーダーの長さもライン全長に含めて考えたほうがよいと思っています。

FF アンダーハンド・キャストのシステムと同じ考えですね。

EW そのとおりです。

ただし、フローティングのシステムで釣る時も、あくまでヘッドにティップを接続するという方法を選んでいます。つまり、スカンジヘッドは使いません。その理由はシンプルで、スカンジヘッドがタッチ&ゴーキャストで投げた時に最適なパフォーマンスが出るように設計されているラインだからです。

ただ、スカンジラインを作っているメーカーに、とても素晴らしいスカジットヘッドを作っているところが多いのも事実ですよ(笑)。

1つのスタイルをマスターする


FF キャスティングのインストラクターという立場にもなるわけですが、その際に考えていることや感じていることはありますか?

EW どんなスタイルのキャストであっても、たとえば人によってロッドに掛かるテンションの好みというのは違います。軽くロードするのが好きな人もいれば、重くロードするのを好む人もいる。また、その感覚の表現が人によって違ってくるので、話がややこしくなります。

たとえばヨラン・アンダーソンは誰がなんといおうとアンダーハンド・キャストの第一人者ですが、そのキャスティングストロークは非常にコンパクトですよね。彼とは実際に話をし、川を案内し、ともに釣りをする機会がありましたが、あのテクニックを習得するのにはかなりのトレーニングが必要だったはずです。

そのヨランは、ハンドルの真ん中からロッドを曲げるといいます。もちろんそれは正しく、実際にそうなっているのですが、私個人としては、アンダーハンド・キャストの時はまずティップで曲がりを感じ、それが結果的にハンドルまで伝わってくる感じがします。

それに対して、スカジットキャストで投げる時には、ティップを通りこして最初からバットが曲がる感覚なのです。もちろん、どちらのスタイルでもハンドルの中までロッドを曲げるのは同じなのですが、スタイルが違えば、このような感じ方の部分での違いというのも出てくる。

何を言いたいのかというと、つまりそのスタイルのよさを理解する前に、自己流で違うスタイルのキャストをミックスはしないほうがいいということなのです。スペイならスペイ、スカジットならスカジット、アンダーハンドならアンダーハンド。まず1つのスタイルをしっかり身に付けることが大切ですね。

それができたら、自分の考えでミックスするのもいい。でも途中でミックスしてしまったら、結局どのスタイルのよさも理解できません。

スカジットキャストのメリットのひとつは、キャスティングのストロークが長いことだと思います。動きはコンパクトなのですが、その中でロッドをロードしている時間は長い。

FF それだけ身に付けやすいと?

EW そうですね。このキャストをまったくやったことのない人であっても、たとえば45分間レッスンさせてもらえれば、まずスカジットキャストで釣りができるようになってもらえます。

FF そのほかにアドバイスは?

EW ロッドについては、どんなアクションでもキャストは可能ですが、おすすめするのはフルフレックス、少なくともミドルセクションがよく曲がるロッドです。柔軟なロッドはスカジットキャストの中心的な課題であるロードの感覚が得やすく、スイープを開始するなりロードを「実感」することができます。ロッドに重さが乗って、キャスト中にずっとそれが持続している感覚ですね。そのフィードバックが得やすい。

そしてもうひとつ、ぜひお伝えしたいのは、キャストの練習ではまずは短いラインで、短い距離のキャストを完璧にできることを目差してほしいということです。そのほうがずっと上達は早い。力に頼るのではなく、テクニックで投げる感覚を磨いていく。

スカジットキャストはこのことが非常に理解しやすいキャストなのですが、だからこそ誰にでもできるものでもあります。

スティールヘッドをねらうなら、近くを釣ることは非常に大切です。

現在、多くの人はいかに遠くを釣るかを目差していますが、最近は対岸ばかりねらう人が増えたおかげで、自分のスタイルも大きく変わりました。たとえばロッドは12フィートや12フィート半を選択し、50フィートのキャストと正確なスイングで釣っていくことがよくあります。

仮に120フィート先を釣ったとしても、そこでフライが正しくスイングすることはほとんどないからです。

FF 近距離をしっかり釣れていない?

EW たとえばモーターボートに乗って川を見てみると分かるのですが、スティールヘッドの好む流れを作る大きめの石というのは、多くの川で岸から70~80フィートのところにあります。どんなに広い川でも、その先はむしろ魚の好まない小砂利になっていることが多い。

スキーナは川幅が300ヤードくらいある大きな川で、たとえば15フィートの10番くらいで釣りをしたくなるかもしれませんが、私たちは12フィートの7番で、60~70フィートのキャスティングとスイングをしっかりやることを重視しています。それで1日に5尾や6尾、あるいは10尾のスティールヘッドが実際に釣れる。ねらうべき場所がきちんと分かっているからです。

FF スティールヘッドをねらうアプローチはニジマスにも有効ですか?

EW もちろんです。ベイトフィッシュに付いている場合は間違いないでしょう。虫を食べている場合もまったく同じとは言いませんが、それでも私なら「とにかくやってみたらいい」と考えますね。

日本ではフレッシュランのチャム(シロザケ)は釣れるんでしたっけ? たとえばアラスカでは、チャムにもこの釣り方は効果的でしたよ。フライはピンクで、その時にねらうのはあくまで海から遡上して間もないフレッシュな魚になりますが。

ほかにも、キングサーモンでも同じように、遡上してまだ時間がたっておらずボトムよりも表層を泳ぐような魚には、このスイングによるアプローチがとても効果的です。

EW 日本のレインボーにもとても興味がありますよ。特に北海道ではぜひ釣りをしてみたいですね。
イワナ、ヤマメ、イトウ。自分にとって新しい魚は、いずれもぜひ釣ってみたいと思っています。

2017/12/14

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