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フライフィッシングショップ ビギナーズ・マム

スレて賢くなった魚をいかに釣るか。

「特集ラインシステム」補足編

稲村喜久=写真と文


※各ラインシステムのイラストは現在発売中の『FlyFishier MAGAZINE 2021 Mid Summer号』をご覧ください。


スレた魚には細いティペットとマイクロニンフ


C&Rエリアでにおいて、スレて賢くなった魚たちを「いかに釣るか」という課題で行き着いた私なりの答え。それは♯22〜32というミッジサイズのニンフを使ったニンフィングである。このサイズのニンフ(ラーバ)は魚種、サイズを問わず、シーズンを通し常食されているもので、実際「こんな極小サイズのニンフ」が、かなり効果的であることを実感している。

ただ、このサイズのニンフを使用したルースニングで問題になるのは、使用するティペットの太さ。♯30クラスのミッジフライのアイのサイズを考慮すると、妥協して0.3号(8X)であり、理想的には0.2号(9X)までは落としたいところ。

ティペットは細ければ細いほど水流の影響を受けないことから、絶対強度と使い勝手さえ無視すれば、仕掛け的には理想といえるのではないかと考えている。

ただ、マイクロニンフ使用時にマーカーに出るストライクに関しては、特に微細なものが多く、またティペットも細いことから、マーカーが絡むトラブルが多発した。

長いマーカーを工夫




そこで、まずはマーカーから見直すことにした。マーカー自体の浮力が発端となる「違和感」を少なくさせるため、浮力を有するシューティングラインやテンカララインを、リーダーとティペット部に介することで「長いマーカー」として見立てることで流用した。

しかしながら、安定した浮力や視認性の問題で、結果的には誰でも使えるようなものにはならず、試行錯誤の末にようやく現状のマーカーが完成した。そしてそれは、今までには無かった全く新しい形状となった。

考案したマーカーの特徴は「高い視認性」。一般的な渓流用のマーカーも実際の流れに乗せてみると「小さい点」でしかないのだけれど、このマーカーは全長16cmほどある(今現在は改良の末に8〜12cm)ためよく見える。当然のことながら、これだけよく見えるとストライクもハッキリと把握できるようになる。

魚がフライをくわえこんだ際、浮力的な抵抗もほとんどないことから、マーカーは一気に水中に引き込まれることになる。よそ見をしていると一瞬で視野から消え去るマーカーに、慌ててしまうこともしばしばだ。

もう一つの売りは「投射性」。フライキャスティングにおけるマーカーの存在は、フライ本来の華麗なキャスティングを阻害し、トラブルの元凶ともなる。マーカーそのものの空気抵抗により、ねらったところへのプレゼンテーションはあきらめざるをえない部分でもあるが、このマーカーではストレスなく、本来のフライキャスティングに近いフィーリングでキャスティングできる。そのため、かなりタイトなポイントへの積極的なアプローチが可能となった。

また、マーカー自体に、かなりの収縮性があるのでショックリーダー的な効果も絶大であり、極細のティペットの合わせ切れも防いでくれる。

流れに浮かんだヒモ状のマーカーは、沈んだ先端部の形状からフライ(ショット)のドリフト状態も把握できたりと、よいことずくめである。

唯一デメリットがあるとすれば、それはタナの調整だろう。マーカーの移動ができないために、ティペット側の長さは再結束で調整をするしかないのだが、それを差し引いても得られるメリットのほうがはるかに圧倒的だ。

違和感を感じて吐き出すまでにフッキングさせてしまう


ルースニングにおいては、マーカーに動きが出ないストライクというのも多い。これはほとんどの場合、フライ〜ショット間、もしくはフライ〜マーカー間に生じたスラックが原因となるのだが、このスラックが、魚が感じ取る「違和感」を緩和させてくれていることも、また事実であろう。

この矛盾を解決する手段として、私の導き出した考えは「魚が吸い込んだフライに違和感を感じ吐き出すまでの時間を少しでも稼ぐ」ということと、「魚が吐き出しきるまでの過程で、口の中のどこかにフライをフッキングさせてしまう!」ということだ。

魚の感じる違和感を少しでも「ボケさせる」ことを期待し、ここで使用するティペットは、低伸性で感度の高いフロロカーボンは使わず、あえてナイロンを選択している。

フライは「軽いこと」と「水絡みがよいこと」に加え、抜群のフッキング性能を誇る「ナノスムースコート」を施したフックを使用。これらがこちらの思惑どおりに機能しているかどうかは不明なものの、当初の予想を超えてストライクの数を増やすことはできている。

このマーカーで注意すべき点はプレゼンテーション直後の初動、そしてそれに続くメンディングなどのライン処理が重要となる。

基本的にマーカーから手前のリーダー〜フライライン〜ロッドティップは、必ず浮かせておかねばらないので、フロータントの塗布はかなり頻繁となる。

5回ドリフトをして1回は塗布し直すほどの頻度になることから、フィンガーガードにフロータントを常に染み込ませておき、どのタイミングでも即座に処理できるようにしている。

強度は充分


冒頭で述べた0.2号(9X)のティペットに、強度的な不安を抱く方が大半だと思うが、上野村冬季ニジマス釣り場におけるハコスチ(スチールヘッドをベースに引き味最優先で開発された釣用ニジマス)でも、エッグヤーンなどの完全に飲まれやすいフライでない限りは、そこそこの確率でランディングできるので、一般河川で掛ける尺ヤマメくらいであれば問題ないはずだ。



とはいえ、これはティペットの強度だけの問題ではなく、それにつながるマーカー、リーダー、フライライン、ロッドにいたるまでを全体として見た場合、どこか1ヵ所に負荷が集中することのないような「スムースなバランス」が取れることで実用となるシステムであることはいうまでもない。

2021/9/15

最新号 2024年6月号 Early Summer

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