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嶋崎了のタイイング基礎講座02

パラシュートパターン編

嶋崎 了=解説

きれいなフライを巻くためには


スクールなどで「きれいなフライを巻くコツはなんですか?」とよく聞かれます。

この質問に私は、「きれいなフライを巻くコツは、きれいに巻こうと思うことです」と答えています。

たとえばテイルがまっすぐつかない、とします。ならばまっすぐ取り付けられるまで練習しましょう。

タイイングでもほかのことでも同じですが、上達するには繰り返すしかありません。

まずはていねいに時間をかけて1本を巻くことをおすすめします。

そうして数をこなしていけば、必ずきれいなフライを作ることができます。

この記事では、基本的なパターンを巻くコツを解説しながら1本を完成させていきます。

初心者の方々にわかりやすいように、ある程度言い切るような表現で解説していくので、ご容赦ください。

第2回目はパラシュートです!

パラシュートパターンの特徴



エルクヘア・カディスと並ぶ日本のど定番。

日本の渓流での使い勝手と有効性の高さはエルクとともに双璧をなします。

投げやすい、浮力の持続性が高い、よく見える、釣れると4拍子揃ったパターンです。

しかも、タイイングも難しくありません。

ただし、スクールなどでよく見受けられるのは、ハックルがきれいに巻けないケース。

この問題の解決策のひとつは、ウイングポストを固く、ハックルを巻きやすい状態にすることが挙げられます。




【マテリアル】
●フック……113YBLH 10〜16番(スタンダード系フック全般)
●スレッド……ベネッキウルトラファインスレッド各色
●ウイングポスト……ハイビズドライウイング各色
●テイル……テイリングパック各色
●ハックル……コックネック各色
●ボディー……スーパーファインダビング各色


ウイングポスト
現在、もっともよく使われているのは化繊系のポスト材です。見やすく撥水性も高いのでおすすめです。パラシュートウイング用として売られているものであれば問題ありません。

獣毛やCDCなど天然素材も使われますが、まずは化繊のマテリアルから始めるのがよいですね。


テイル
ハックルからとることもできますが、今はテイリングパックという専用のものがあるので、そちらを使ったほうが簡単にきれいに巻けます。

購入時は、ファイバーに反りがなく、まっすぐなものを選びましょう。


ハックル
コックネックやコックサドルが基本です。ファイバーがまっすぐでストークがしなやかなものが巻きやすいです。


ボディー
ここではダビング材を使用しています。ドライフライなので、専用の繊維が細かいものが使いやすいです。

フォックスやマスクラットなど天然素材のアンダーファーも非常に優れたマテリアルなので、そちらも試してほしいです。

ボディーで魚にアピールする場合もあるので、さまざまな素材を試してみてください。


実際に巻いてみましょう




フックをバイスにセットします。

シャンクは水平に、ジョーにしっかりと挟んでください。





下巻きは、テンションをかけてしっかり巻きます。

密にきっちりと巻く必要はありませんが、これから乗るマテリアルが動かないようにするためにしっかり巻きましょう。





まっすぐなハックルファイバーを選びます。

取り付ける長さはシャンクよりも少し長めです。分量は15〜20本くらいでしょうか?

ドライフライのテイルは虫の尻尾ではなく、浮力を得るために付いていると考えましょう。その機能を得るために量、角度、長さ、位置を調整します。

実際の留め方はまず、シャンクの真上に軽くスレッドを3回転くらいして長めに留めます。

次にテイル材の先端側と根もと側をしっかりとつまみ、アイ側へゆっくりとひっぱり、長さを決めます。逆方向へは引っ張れないので注意してください。

この作業で短くしすぎてしまったら、またスレッドを外して留め直しましょう。

また、シャンクを真上からちゃんと目で見て確認しながら作業するときれいに留められます。





テイル材は付け根ギリギリでカットしてもよいですが、次の工程でボディーを凸凹にしないために、シャンク全体にあまりを巻き込んでいます。





ウイングポストを取り付けます。

取り付ける位置はフックの種類やフライの目的によっても変わりますが、テイルから見て、8:2の位置に取り付けるのが基本です。

ハイビズドライウイングを使う場合は、12番以上は4束、14番前後は3束、16以下は2束が目安になります。

今回はウイング材を二つ折りにして留めています。

これが最もオーソドックスな方法で、ボディーを細く仕上げたいときにはこの方法を使います。

だだし、しっかりと固定しないと完成したあとに動きやすいので、壊れやすくなってしまいます。

ここでは、わかりやすいように普段の倍の長さを使っていますが、慣れるまではこのくらいのほうが巻きやすいと思います。





ウイングを束ねて直角に立てます。

しっかりとギュッギュッとテンションをかけて巻くことを心がけましょう。





ハックルはフリューが多い部分は使わないようにします。

ストークはしなやかで切れにくいものを選んでください。油分が抜けて弱くなっている古いハックルは使わないようがよいと思います。せっかく作ったフライが壊れやすくなってしまうからです。

パターンにもよりますが、ハックルのファイバーの長さはシャンクの80%くらいがよいでしょう。

ハックルを巻く厚さを予測して、ストークをポストの根元に留めます。




8
ストークをウイングポストの添わせ、スレッドを上に巻き上げ、巻きしろを作ったら、巻き下げます。

スレッドが巻いてある部分がハックルの巻きしろになります。

そして、最後にさらに抜けにくくするために、ハックルのストークを折り曲げてシャンクに添わせて留めています。

ポストはスレッドのテンションをしっかりとかけ、平らに固く、を意識してください。




9
ダビング材は少しずつ縒りつけるのがコツです。足りなければ途中で足せますが、つけすぎたものを取り除くのは難しいのです。引き算ではなく、足し算で考えるのが失敗しない秘訣です。

写真のようにスレッドをシャンクの中央付近に留めておいて、シャンクから1.5cmほど間を空けてダビングを始めます。

スレッドを余らせてダビング材を固く縒りつけます。





スレッドを後ろへ巻きすすめ、ちょうどダビング材を縒り付けた部分がシャンクの後端にきます。

これがボディーの後ろをきれいに作るコツです。



10
ボディーをウイングの前まで巻きます。

ボディーとハックルは平らに巻くように心がけましょう。

なるべく吸水しないようにきつく巻きます。




11
ハックルを巻きます。

基本は裏を下に向けて、できるだけ密に巻きます。

上から5〜6回転巻き下げてきて、ポストの根もとにスレッドを3〜4回転巻きつけてしっかりと固定します。

きれいに巻くコツは、ハックルプライヤーを使っても素手でも構いませんが、ハックルをピンと水平に張った状態をキープすることです。

この時、テンションを絶対に緩めずに、均等な力で巻いてください。途中でテンションが弱くなると、ハックルの方向が崩れることがあります。

また、巻き下げてくるうちに、ハックルファイバーが2〜3本くらい噛んでしまいますがこれは仕方がありません。そういう暴れたファイバーはあとで抜いたりカットします。

この作業の際に、ハックルの素性がよくでます。ファイバーがカーブしているものは噛んでしまい巻きづらいので、ファイバーはまっすぐなものを選びましょう。

よいハックルを使えばタインングは簡単になります。




12
そのまま逆回転でハーフヒッチをしてスレッドをシャンクに留めます。

1回目はハーフヒッチャーにスレッドを1回転させて結んで仮留め。

2回目はハーフヒッチャーにスレッドを2回転させてきつく留めます。

3回目も同じく、スレッド2回転でハーフヒッチをして完全に固定します。

ハーフヒッチは1回ごとにギュッギュッと増し締めをしてください。




13
ハックルのあまりをカットします。

このとき噛んでしまったり不揃いなハックルを抜いて整えます。

次に、ウイングをカットします。

ウイングとハックルの長さのバランスはこれくらいが適性だと思います。

ウイングは長すぎると見やすいですが、キャスト中に回転しやすくなりますので、いろいろ試してちょうどよいバランスを見つけてください。

ヘッドセメントや瞬間接着剤は、アイの付け根とハックルの根元に少量滴下します。

乾燥したら完成です。



今回のまとめ


パラシュートは、日本の渓流でもっとも使われているパターンです。

垂直に立ったよく見えるウイングポストは、さまざまな色が存在する渓流においても視認性に優れ、水平に巻かれたハックルは、浮かせやすいことが大きな理由でしょう。

ハックルは質と量と長さを変更すれば、ライトなものからボリューム感溢れるパターンまでいろいろと巻くことができます。

皆さんも、状況に応じたバリエーションを巻いて楽しんでください。



2020/5/15

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