ドライ感覚で楽しむルースニング
低番手で効率的に探る水中
里見栄正=解説
里川から始まるシーズン初期のフライフィッシング。状況によっては水面だけの反応にこだわらずに、水中の反応も探ってみたい。#3以下のタックルでドライフライと同じ感覚で楽しむ、早春のルースニングをレポート。
この記事は2016年5月号に掲載されたものを再編集しています。
《Profile》
里見 栄正(さとみ・よしまさ)
1955年生まれ。群馬県太田市在住。フライライン及びティペットコントロールを駆使したドライフライの釣りを得意としながらも、ニンフを使ったルースニングの釣りにも長ける。シーズン中は全国でスクールを行ないつつ、川をめぐる日々。シマノ社のフライロッドの監修も務めている。
里見 栄正(さとみ・よしまさ)
1955年生まれ。群馬県太田市在住。フライライン及びティペットコントロールを駆使したドライフライの釣りを得意としながらも、ニンフを使ったルースニングの釣りにも長ける。シーズン中は全国でスクールを行ないつつ、川をめぐる日々。シマノ社のフライロッドの監修も務めている。
初期はルースニングで
春らしい陽気を感じる日も増えてくる3月、里見栄正さんは地元からも近い北関東の川へ足を運ぶことが多くなる。とはいえ、解禁当初はまだまだ1日をとおしてドライフライの釣りが楽しめるような状況は少ない。日によっては、魚が積極的にエサを捜し回っていないような状況が多く、1℃でも水温が上がってほしいと思うのがこの時期の釣りだ。

そんな状況を里見さんはルースニングで楽しんでいる。もちろんライズが見られれば水面勝負に移行するわけだが、その日その場所の魚影、食い気などを探る方法としても、とても効果的なスタイルだという。
そんな釣りで里見さんが使用しているのは、自身で監修を務めたフライロッド『Asquith(アスキス)』#2/3。#3フローティングラインを合わせ、全長17~18フィートのリーダーシステム(リーダー6X・12フィート、ティペット7x・5~6フィート)で釣り上がる。
ニンフでもドライでもそのラインシステムは、ほぼ同じ。ルースニングではティペットをU字に曲げて落とすようなことはしないが、基本はナチュラルドリフトで、ポイントを手返しよく探っていく。
ねらう流れもドライフライの場合と同じ。なかでも流心脇の比較的流れが緩いレーンや瀬尻、反転流など、魚がエサを捕食しやすい流れに重点的にフライを落としていく。

メンディングとドリフト
ルースニングでは、上流を向いた魚がフライをくわえた際にアタリが出やすくなるよう、フライよりインジケーター先行で流すことが大前提となる。そのためにはインジケーターよりも上流側にフライが落ちるようにしっかりとターンさせて落とす必要がある。「ドライ同様、ナチュラルに流しつつ、できるだけ魚にフライを見せる時間を長くするように意識しています。いくらインジケーター先行で流しても、フライを引っ張りながら流下していくような状態はNG。インジケーターとフライの間のティペットが、”伸びてはいるがテンションが掛かっていない“といった状態で流下するのが理想ですね」

インジケーターを先行させるために、ドラッグを回避させるメンディングは、ドライフライと逆の下流側に行なう。もしくはロールキャストの要領でタルミを作ってフライ、インジケーターと同じレーン(の下流側)にフライラインが残るようにメンディングすれば、ドラッグが掛かって流れから外れることもない。

ちなみにクロスに近い位置で釣っていて、手前の流れの速さによって、どうしても上流側にメンディングを入れる必要がある状況もある。
そんな時は、手前のラインを上流に打ち返しても、インジケーター下流のライン(リーダー) 30cmほどは動かさずに、同じレーンに残しておく。そうすることで、手前の流れをかわしても、できる限りインジケーター先行の形を維持できる。
また里見さんは、膝上ほどの水深の流れでは、インジケーターをフライから70cmくらいの位置にセットしていた。
「システムの形を整えて流せていれば、タナが水深より長くても、意外と根掛かりするようなことはありません。特にヤマメは底近い場所の流下物を積極的に捕食するような魚ではないので、ウエイトを巻いたニンフとはいえ、中層、もしくはそれよりも上のタナをトレースしてくるようなイメージです。それでも流速があり、フライが浮いてしまうような状況ではウエイトを重くして調整しています」
この日も里見さんはブラス、タングステンのビーズヘッド、そしてレッドワイヤ入りのパターンを用意して対応していた。



ルースニングに適したロッド
ルースニングでもドライフライ同様メンディングを用いる場面は多く、そのようなライン操作を快適にするためには、やはり低番手ラインが扱いやすい。流れの中でラインの抵抗が少なく、より小さい動作で水から剥がしやすくなるというメリットがあるからだ。
「このほかの低番手ラインのメリットとして、いつもと同じ感覚で振ってもラインスピードが遅くなるので、よりソフトなプレゼンテーションに向いているということができます」

それでは一方で、タングステンのビーズヘッドなどを付けたニンフ、インジケーターが投げづらいのでは…との疑問も出そうだが、『Asquith』ではそういった矛盾点も解決している。
里見さんが考えるルースニングに適したロッドというのは、一言でいえば「バットからスムーズに曲がる、軟らかめだがトルクのあるアクション」。
「インジケーターのシステムを投げる場合は、トラブルを少なくするためにも極端なナローループを作ることはほとんどありません。ウエイトのあるフライを投げるためにも、ロッドティップを回すようにしてワイドループでフライを届けることが多いので、スペイロッドのように全体的に曲がって、ロッドの負荷をより感じられるようなアクションが使いやすいと感じています」

こういった要素は、『Asquith』開発段階から意識していた部分だという。基本的には渓流のドライフライの釣りにコンセプトを置いているが、ニンフの釣りに必要な要素もちゃんと盛り込まれている。
もちろん、これらのファクターはドライフライ用のロッドとして考えた際にもプラスとなるもの。「強靭(トルクフル)にしてしなやか」。これは里見さんがデザインするロッドのテーマのひとつであり、地よい釣り味の実現にも大きく貢献している要素である。


適度な重みを与えるフラット仕上げを採用した「スパイラルX」のブランクスはアクティブフェルールの精度とあいまって、直進性はもちろん、リーダー・テイペットを曲げる、固めるなど、ラインの操作性を高めてくれる。
●「J731」は、やはりラインが軽い分、メンディングも楽にこなせるモデル。7フィート3インチという長さは、ルースニングには若干短めに感じるかもしれないが、バット部をやや強めに設定。ある程度抵抗のあるフライや、トラウト類も寄せるキャパシティーを持っているので、ヤブ沢から山岳渓流まで、幅広いフィールドで使える。
●「J762」は、ラインナップ中最もオールマイティーに使えるモデル。ヘビーウエイトのニンフも投げやすく、特に重いフライや、風のある日などは#3ラインを合わせると釣りが快適になる。ロッドは長さと強さが比例する関係上、このモデルが最も”軟らかい”と感じやすい。
●「J803」は、遠投能力を高めるために、ある程度強い設定にしてあるものの、しっかりとバットから曲がるようなアクションはそのまま。里川のコイも寄せられる力がある一方、7寸ほどのヤマメでもしっかりと釣り心地を味わうことができる。今では北海道釣行にも欠かせない1本。
(里見)
問合先:シマノ(☎0120・861130) fishing.shimano.co.jp
2018/2/26