ダンケルド&マーチブラウンを巻く
ウエットの定番2本
安田龍司=解説
安田 龍司(やすだ・りゅうじ)
1963年生まれ。愛知県名古屋市在住。ストリーマーやウエットフライの釣りを得意とし、
地元中部の長良川、福井の九頭竜川、北海道の尻別川や十勝川など各地の本流河川でサツキマス、サクラマス、ニジマスなどを長年ねらう。
豊富な釣りの経験と、正確で無駄のないテクニックに裏打ちされたタイイングの腕前も非常にレベルが高い
この記事は2014年2月号に掲載されたものを再編集しています。
古典パターンを再現しつつ、丈夫でよく泳ぐ、釣り場で信頼できるフライに仕上げる
鮭鱒類を刺激する鮮やかなオレンジ色のハックルと、美しいブロンズマラードのウイングの組み合わせから、日本でも抜群の人気を持つダンケルド。高校生の頃、初めてこのパターンをカレンダーの写真か何かで見たという安田さんも、まずはその見た目に魅かれたという。その後、実際に巻くようになると、ウエットの釣りばかりしていた20代にはメインフライのひとつになった。当時はまだ国内の本流をウエットでねらう人も少なく、この目立つフライはアマゴ(サツキマス)にもニジマスにも効果が高かった。ただし、本当に機能するフライに仕上げようとすると、気を付けるべき点もいくつか見えるようになり、なかでも間違えないようにすべきポイントは「ハックルとウイングのボリュームのバランス」だという。全体にオーバーボリュームのフライは、まず釣果が不安定になる。さらに、特にフックに軽めのものを使った時は、ボディーハックルが多めでウイングが少なめだと水中でフライがひっくり返りやすい。安田さんはウエットフライ全般に関して、経験的に大きめのウイングになるほど、巻き上がったフライの見栄えはよくなる一方、魚の反応は落ちると考えていることもあり、「ウイングは厚くしすぎず、ハックルは巻き過ぎない」点を必ず押さえるようにしている。ただ、ウエットは流れを受けた時の生命感も非常に大切。そこでハックルは少なめを意識して付けるものの、ファイバー自体は「おそらく普通の人より長め」にすることが多いそうだ。具体的には、ダンケルドのボディーハックルは、ストークの片側のファイバーは必ずむしる。また、流れの緩い場所でも使いやすいボディーハックルが多めのものがほしいと思った時には、その分、ウイングを片側2枚(合計4枚)にして厚みを持たせるなどの調整を行なっている。
一方のマーチブラウンは、「いかにも釣れそうな虫っぽさを備えたウエットフライ」として、バリエーションに加えるために巻くようになったというパターン。派手なフライや地味なフライにはそれぞれ役割があり、安田さんの場合、後者の性能を持つものとしては、一般的に人気のあるシルバー・マーチブラウンよりも、このマーチブラウンのほうが「釣れるべくして釣れる」性能をより感じている1本だという。ウエットフックにアップライトウイングで巻くものがカゲロウのイマージャーとしては本来のパターンだが(ここではそのパターンを紹介)、大きめのフックサイズにホリゾンタルウイングに巻けば「日本ではヒゲナガのイマージャーのイミテーションとしても非常に効果的」というバリエーションになる。
『ダンケルド』編
●フック……TMC7999#4 ~ 8●スレッド……TMC スレッド16/0 オリーブ
●タグ……ミラージュ・オパールSM
●テイル……ゴールデンフェザント・クレストフェザー
●ボディー……ダンビル・マイラーティンセルSIZE14
●リブ……ユニフレンチ・オーバル・シルバーXS
●ボディー&スロートハックル……メッツ・マグナムハックル・クリームオレンジ
●ウイング……ブロンズマラード
●チーク……ジャングルコック
スレッドは細い16/0を使用。太りスレッドを使うよりも全体を繊細に仕上げることができるが、ブロンズマラードのウイングを取り付けの際は、切れやすいマテリアルのため、慣れないうちは8/0などそこだけ一段階太いものを使ってもよい
ブロンズマラード(右下)は、使用する部分の大きさが左右でそろったフェザーを用意することが大切。その際は、マテリアルは一袋だけ買うのではなく、予備を多めに買っておき、最終的には自分でベストなペアを作るようにするとよい
ここでは#4サイズのフックを使用。シャンクいっぱいにスレッドで下巻きをしたら、フックポイントの真上を目安にタグになるミラージュを取り付ける。ここではアイ寄りのシャンクがテーパードループになっているサーモンフックを使用しているので、その部分は特にスレッドをしっかり掛けて閉じるようにしておく
フックポイントからバーブまでの長さと同じくらいの幅でタグを巻く。タグは初めに前から後ろに向けて隙間を空けないようにしながら巻きすすめたら、後半はそのまま後ろから前に向かって折り返して巻いて、最後にフックポイントの真上あたりのシャンク下側で留めて余りをカットする
ゴールデンフェザントのクレストフェザーを1枚、上向きに反ったテイルになるようにシャンクの真上に取りつける。テイルは短かすぎない写真くらいのバランスが美しい
テイルは長さが決まったら、前側の余りはすぐにカットせず、ちょうどシャンク前側のテーパードループの段差があるところまでスレッドでしっかりと巻き留める
下処理をしたハックルを、ちょうどテーパードループによる段差が出来ていて細くなっているシャンクの側面に写真のように巻き留める。この時、安田さんはあらかじめボディーハックルとスロートハックルが一度に巻けるようにハックルを処理している(詳しくは次の写真を参照)
左が何も処理していない状態のハックルで、右が5の工程を行なうためにあらかじめ余分なファイバーをむしって下処理をしたハックル。下処理をする際、ボディーハックルにする部分は表を手前に向けて左側のファイバーをむしっておく。ファイバーはスロート部分でゲイプ幅の2倍になるくらい(やや長めのバランス)が安田さんのおすすめ
スレッドを一度前に戻したら次にリブになるオーバルティンセルを留めるが、その際、オーバルティンセルは直前に留めたハックルのストーク部分を左右から挟むように取りつける。結果として、ティンセルは長めのループ状に取りつくことになる
スレッドを前に戻したら、先端を斜めにカットしたボディー用のマイラーティンセルを、あとでヘッドを作る場所のすぐ後ろのシャンク下側に留める
ゴールドの面が表に出るようにして、フラットティンセルを前から後ろ、後ろから前とシャンク上を一往復させて隙間なく均一に巻き、最後にシャンクの下側で留める
ループ状になっているリブのオーバルティンセルを、2本がねじれず平行な状態を保つようにしながら、等間隔で後ろから前に6回転ほどで巻き、最後にシャンク下側で留める
レール状になっている2本のリブの間にハックルのストークを埋めるようにしながら、ボディーおよびスロート部分が一体となっているハックルを巻いていく
スロート部分はこのように仕上げており、ハックルストークを最後に留める時もシャンクの下側で処理し、このあとウイングを平滑な場所に巻き留められるようにしておく
フェザーのうち、ウイングとして使用できる部分は写真で選り分けているあたり。つまりブロンズマラードのフェザーは、巻きたいフライの大きさに合ったものをあらかじめ選ぶ必要がある
ブロンズマラードは、まずストーク(ステム)を残したまま左右のペアを切り出す。切り出したものは、この状態では先端が比較的急な角度で反った状態になっている
下処理を終えたうえで、フェザーの裏面同士を合わせてペアにしたブロンズマラードのウイングをシャンクの真上に取りつける。この時、マラードウイングはシャンクに対して立ち過ぎないように取り付けたいが、その際のコツは次の写真を参照
ウイングを取りつけたあと、ヘッド部分をある程度スレッドで巻いて形を整えたら、チークになるジャングルコックのフェザーを両サイドに取りつける
ジャングルコックの余りをカットし、さらにスレッドを巻いてヘッドの形を整え、最後にヘッドセメントを二度塗りしたら完成『マーチブラウン』編
●フック……TMC7999#6 ~ 10●スレッド……TMC スレッド16/0 オリーブ、ウルトラストロングスレッド
●タグ……ミラージュ・オパールSM
●テイル……ヘンフェザント・テイルのファイバー
●リブ……ラガータン・バーニッシュトフレンチティンセル・オーバル・X ストロング・ファイン
●ボディー……ヘアライン・ファーダビング・ヘアズイヤー
●スロートハックル……パートリッジ
●ウイング……ヘンフェザント・センターテイル
ボディーはヘアズイヤーをダビングボディーで巻くが、その際はウルトラストロングスレッドとマルチグルーを使用する、丈夫で密なボディー作成法を使用。
ウイングに使用するヘンフェザントのテイルは、左右のファイバーの長さおよび柄が同じいわゆるセンターテイル(写真左)を用意するのがベスト。ない場合は左右のペアを用意する
テーパードループを閉じながら、シャンクいっぱいに密に下巻きをしたら、ダンケルドと同じ要領でミラージュのタグを巻く
ヘンフェザントのテイルからファイバーを3~4本切り出し、シャンクの真上に写真のようなバランスで取りつける(前側はテーパードループの先端位置まで取り付ける)
テイルの前側の余りをカットしたら、テーパードループによる段差が出来ているシャンクの側面部分に沿ってリブになるオーバルティンセルを取りつける
上側から見るとこのような状態。これによりシャンク全体の段差が少なくなり、あとの工程が滑らかに処理しやすくなる
16/0スレッドを一度前側でハーフヒッチしカットしたら、次にウルトラストロングスレッドに取り替える。滑りやすいウルトラストロングスレッドは、初めの数㎝をリブと同じようにシャンクの側面に巻き留めるとよく、最後にシャンクの後方に移動しておく
ウルトラストロングスレッドに均一かつ密にヘアズイヤーのダビング材を撚り付ける
後ろから前に向けて、太くなりすぎないようにダビングボディーを巻いたら、ウルトラストロングスレッドをヘッドの位置でフィニッシュし、スレッドをふたたび16/0に替える
オーバルティンセルのリブを等間隔で巻き、シャンクの下側でスレッドで留めたら、ニードルやブラシを使いダビングボディーのヘアズイヤーを均一に掻きだす
下処理したパートリッジのフェザーを、写真のような状態でボディー直前のシャンクの下側にスレッドで取りつける
スロートハックルになるパートリッジは、水中での動きを重視してダブリングしながら1回転もしくは1回転半と少なめに巻く。最後はやはりシャンクの下側で留めること
ヘンフェザトのウイングは、使用する部分を決めたらストークからファイバーを切り出し、それをダンケルドのマラードウイングの時と同じように、先端をある程度そろえるように下処理する。その際、ヘンフェザントのウイング(クイルウイング)のほうが、根もとがよりばらけやすい性質があるので、先端の長さをそろえつつ、根もと側も指の中でファイバーをずらしてなるべく互いがくっつくように調整してやる
下処理の終わったヘンフェザントのウイングはこのような状態(写真は左右のペアを重ねたもの)
クイルウイングをボディーの前に取りつける。取り付け方のコツはダンケルドのウイングの時と同じ
スレッドでヘッドを作り、余りをカットしたら、ヘッドセメントを二度塗りして完成
Tying Tip 01
丈夫でスリムなダビングボディーを作る簡単技
マルチグルーを利用したダビングボディーの製作では、「ウルトラストロングスレッド(ベネッキ)」を使うのがおすすめ。撚りの入っていない白色(無色)のスレッドで、まずボビンホルダーから10~15㎝ほどを出したら、その表面にしずくが出来ない程度にマルチグルーをサッと塗る(①)
次に、ダビング材となるヘアズイヤーをその上に張り付けるが、その際は袋からファーを出す時に、いきなり多めの量を摘まみ出すのではなく、親指と人指し指で強めにこするようにしながら、手前にあるファイバーをほぐしつつパッケージから取り出すようにする(②)
あとはその要領で取り出したファーを、一定の幅でていねいにマルチグルーを塗ったスレッドの上に乗せ、上下から軽くつまんで仮留め(③~④)
その後は、ボビンホルダーのパイプ部分、もしくはそのすぐ上の部分のスレッド部分を指の腹に乗せ、もう片方の手でボビンをコマのように回転させてやると、スレッドが勢いよく撚られていくのに合わせて、繊維のギュッと締まった形のよいダビングボディーの元が出来上がるのでそれを仕上げに指でよりつける(⑤~⑥)。マテリアルが足りなくなったら途中で追加することも、多く付け過ぎたら、余りをスレッドの上を滑らせて取り除くことも簡単だ2025/12/22












