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オーバーヘッドという選択肢

ダブルハンドOHの利点と使い分け

安田龍司=解説
オーバーヘッド・キャストとスペイ系キャストを使い分けることで、より探れる流れの幅が広がる

ダブルハンド・ロッドを使った本流域の釣りでも、キャストスタイルを柔軟に使い分けることで、より釣りが楽になる。ここでは、オーバーヘッド・キャストの利点とその使い分けを紹介。
この記事は2016年3月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
安田 龍司(やすだ・りゅうじ)
1963年生まれ。愛知県名古屋市在住。九頭竜川や北海道などの本流釣りのテクニックには定評がある。シマノ社のツーハンド・ロッドの監修を務めており、キャスティングを教える機会も多い。九頭竜川水系において、サクラマスを河川環境の指標として川を守る活動を行なう「サクラマスレストレーション」代表。

安田龍司さんのダブルハンドのキャスティング動画はこちら!
【ダブルハンド/オーバーヘッドのキャスティング】

ダブルハンドで投げる

近年、河川、湖、海など多くのフィ—ルドにおいて、ダブルハンド・ロッドで釣りを楽しむ人が増えている。これは優れたキャスティング能力と実釣能力、そして釣りの楽しさが理解されてきたためと思われる。

私も本流ではほとんどの場合ダブルハンドを使用している。深くウエ—ディングした状態からでも遠投が容易なこと、1日中キャスティングを繰り返しても疲労が少ないこと、フライをドリフトさせる能力が高いことなどがその理由。

ちなみに、最新のロッドではその能力がさらに進化している(私自身開発に携わったシマノ社のフライロッド『アスキス』も前述の性能を全体的に高めている)ので、よりハ—ドルは低くなっていると思う。もちろん、フライラインの進化も見逃せない要素の1つといえる。

しかし、実際の釣り場ではそのキャスティングスタイルはさまざまだ。大きく分ければ、水面の抵抗を利用するスペイ系のキャストとフォルスキャストを行なうオ—バ—ヘッド・キャストがある(水面の抵抗を利用するキャスティングにはいくつかのスタイルがあるので、ここではスペイ系として記述させていただく)。

それぞれに特徴とメリットがあるが、ここではオ—バーヘッド・キャストを中心に考えてみよう。

オーバーヘッドのメリット

まず、実釣時の利点を紹介していきたい。第一に、オーバーヘッドはショートヘッド・ラインであっても、充分な飛距離を得られるということ。最近のシュ—ティングへッド・ラインは従来の長さのおよそ2分の1ほど、6~7mが主流となっているが、その短さであっても遠投が容易で、広いポイントでもねらった流れにフライを届けやすい。

そのため本流であっても比較的ライトラインの釣りが可能となる。次に、キャスト時に速いラインスピ—ドを得られるということ。本流では流速のある場所に深くラインとフライを沈めなければならない場面が多い。そんな時、ラインのシンクレ—卜やフライのウエイトで対応するのが一般的だが、それだけでは不足する場合もある。

そこで、川の流れの中で底方向に沈み込む流れである「沈み波」を利用するわけだが、ラインスピードが遅いとねらった「沈み波」を捉えることが難しいので、素早くポイントに届くキャストが必要なのだ。

また、距離に対して若干強めのパワ—でキャストすればラインをオーバーターンさせることができる。そうすればラインの先端から着水するので、フライをスム—ズに沈めやすくなる。
ラインスピードを上げる、方向転換が用意など、スペイ系キャストとは異なるメリットを持つオーバーヘッド・キャスト

速いラインスピードは、遠投や風に対しても有利であり、メリットは大きい。もちろん、オーバーヘッド・キャストは必要に応じて遅いラインスピ—ドにも問題なく対応できる。

3つ目のメリットは、方向変換が簡単であるということ。流れの中でのキャスティングでは、急にキャスト方向を変えなくてはいけない場合がある。前述の「沈み波」をねらう時、それは常に移動していくので、瞬時に判断して若干の方向変換を行なう。

もちろん、ライズを発見すればそれに対応する必要もある。そんな状況でオーバーヘッドの場合は、適常のバックキャストからすばやく方向を変えてフォワ—ドキャストに移ることができる。

これはル—プの乱れにもつながるので大きく角度を変えることはできないが、多くの状況で使える、スペイ系キャストとは違った対応力がある。

ピックアップやフォルスキャストは自分の身体やロッドにラインがぶつからないよう、利き手側に若干ロッドを倒して行なう。バックキャスト時は極力ゆっくりとした動作を意識する。速すぎるターンはトラブルのもと

ちなみに、オーバーヘッド・キャスト時にロッドや自分にラインやフライが衝突したり、リーダーが絡まったりするなどのトラブルを避けるために、私は次のことに注意している。
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