ノッテッドリーダーという愉しみ方
好みのテーパーを見つけるヒント
森村義博=解説 自作したノッテッドリーダー。リーダーの作製もフライタイイング同様、試行錯誤、創意工夫する楽しみがある自分好みのテーパーさえ見つけてしまえば、経済的で、使い方の融通も利く自作リーダー。もちろん、理想のデザインを見つけるためには試行錯誤が必要になるが、それもタイイングと同じく、釣りを豊かにする要素のひとつ。ここでは長年ノッテッドリーダーを愛用している森村義博さんに、作成時の考え方と愛用のテーパーデザインを紹介してもらった。
この記事は2015年7月号に掲載されたものを再編集しています。
《Profile》
森村 義博(もりむら・よしひろ)
1956年生まれ。静岡県三島市在住。地元狩野川をホームグラウンドに、毎年九州や東北地方の釣り場へも足を延ばす。フライフィッシングを始めた時から自作のリーダーを使って釣りを楽しんでおり、基本的にフィールドが変わってもリーダーのテーパーを変えることはない。
森村 義博(もりむら・よしひろ)
1956年生まれ。静岡県三島市在住。地元狩野川をホームグラウンドに、毎年九州や東北地方の釣り場へも足を延ばす。フライフィッシングを始めた時から自作のリーダーを使って釣りを楽しんでおり、基本的にフィールドが変わってもリーダーのテーパーを変えることはない。
まずは参考レシピを見つける
フライフィッシャーの釣りの嗜好、フィールドはさまざまだ。そして、その好みの数だけリーダーシステムがあるといっても過言ではないだろう。しかし、既製品に表示されているヘビーテーパー(テーパーが急でターンオーバー性に優れたもの)、スローテーパーなどといった言葉は、これからノッテッドリーダーを自作してみようと考えている人たちにとっては、いまひとつ参考にならない。
まずは、数値化されたテーパーデザインのレシピをインターネットなどで入手するのが近道。そしてバット部からセカンド(ティペットのひとつ前のセクション)までの各セクションの役割を理解することで、ノッテッドリーダーはぐっと身近なものになると思う。
写真は、以前オービス社で販売していたリーダーキットの、テーパーレシピ。手探りでテーパーを作るよりも、まずはネットなどの情報を参考にしてみるのがおすすめ
結び目を複数作るため、バット部は細く長く設定
現在僕が使用しているノッテッドリーダーのテーパーデザインは1種類のみ(図A)。開けた河川でのマッチング・ザ・ハッチの釣りを中心に、同じようなフィールドでのブラインドフィッシング、ソフトハックルやニンフを使用した釣りにおいても扱いやすいテーパーデザインとなっている。図A
まず、バット部は100cmと長めに設定。直径は0.37mm(0.015インチ)。一般的にリーダーバット部の適度な太さは、フライライン先端径の60%程度といわれる。各種4番ラインの先端径の平均はおよそ1mmほどなので、その比率からしても4番ラインにつなぐバットとしてはかなり細めだ。しかし、素材に比較的硬めの「マキシマ」を使用しているため、ターンオーバー性はよい。
森村さんがリーダー製作に使う「マキシマ」のライン。適度な硬さと巻き癖の付きにくさが特徴
この100cmの間には当然ノットがないため、バット部に無駄な水流を受けることもない。通常ドラッグの回避はラインコントロールのほか、リーダー・ティペットにスラックを入れるなどして回避することになる。
しかし、本流域のマクロなヨレの多い複雑な流れや、ダウンクロスで釣る場合には、柔らかいバットが水流に揉まれやすく、かえってドラッグが掛かりやすくなることも多いと感じている。
ノッテッドリーダーでは基本的に、バットからサード部分までは徐々に細く、短くしていく。「マキシマ」という硬いラインに加え、数種類の太さをつないだ結び目はさらに硬くなる。バッ卜径を細くして全体をスローテーパーにしながらも、この硬い結び目それぞれがターンオーバー時に推進力のある基点となり、リーダー全体が強いターン性能を発揮してくれるという利点がある。
基本的にすべての連結は、比較的結び目がフラットに仕上がるブラッドノットで行なっている。もちろん、一度作成すれば、傷がつかないかぎり6ポンド部分から上は交換の必要がない
セカンド部でターン性能を調整
そして最もノッテッドリーダーの特徴を実感できるのがティペットをつなぐセカンド部。実は、ノッテッドリーダーではこのセカンドの長さを調節することで、ターンオーバー性能を変化させることができるのだ。セカンド部を通常の20cmにすればスムーズなターンオーバー性を発揮するのだが、この部分を5cm延ばして25cmにするとターン性能はやや落ちる。さらに通常より10cm長い30cmにすると、さらにターンさせにくくなる。
図A(既出)
これはティペットにパワーが伝わりにくくなるということ。あえてパワー伝達のバランスを崩すことにより、ティペットにスラックを入れやすくなり、結果ドラッグも回避しやすくなる。
もちろん、ターン性能が落ちるといってもコントロールできないほど悪化するわけではない。逆に、ターン性能が欲しい風の強い日には通常の20cmが扱いやすいということになる。
テーパーリーダーにセカンドセクションを作る
リーダー全体をイチから作成することに抵抗があるという人は、市販のリーダーをベースに“セミ”ノッテッドリーダーを作るという方法もある。テーパーリーダーはティペットの交換や傷ついた部分をカットすることによって先端が徐々に短くなっていくので、現場でのリーダー交換の手間からセカンドセクションを設ける人も多いようだ。
ドライ、ニンフ、さらにはウエットフライまで、同じテーパーデザインで対応するターン性能は、セカンドセクションの長さで決まる
しかし、すでに完成されたテーパーデザインに手を入れるため、いい加減なつなぎ方をするとバランスが崩れ、かえって有効な機能を失なってしまうケースも多い。
先にも書いたように、ティペットをつなぐセカンドを40、50cm、あるいはさらに長くとってしまうとターンオーバー性が大きく損なわれてしまうといった弊害を起こしやすい。
以前作ったテーパーのレシピはすべてメモにして保管している。かつては、ターン性能を求めてWF構造のリーダーを作成したことも
フライフィッシングを始めたころから、ノッテッドリーダーに親しんできたという森村さん。以前使用していた『Stren』のリーダーマテリアル
ちなみに、6X・12フィートのテーパーリーダーをセミ・ノッテッドにして、バランスを崩さない程度にセカンド部を作る場合、まずはリーダーの先端を4Xほどの太さのところでカットする。そこに5Xを25cmほどつなぎ、その先にティペットとして6Xを任意の長さ(80cm程度)接続する。
それだけでもリーダーとして充分機能するとともに、現場でリーダー部分まで交換するケースは減るだろう。ティペットの交換でセカンド部が短くなってきたら、その部分ごと替えればリーダーヘのダメージは最小限に抑えられる。
2018/5/3