落ち鮎パターンをフライでねらう方法
秋のシーバスパターンとして有名な落ちアユパターンをねらうのコツは◯◯です
升田 龍兵=解説
落ちアユを捕食しているリバーシーバスには、ナチュラルドリフトが効く。
そんなシチュエーションで効果抜群の、石川発特大フォームフライ。
この記事は2013年11月号に掲載されたものを再編集しています。
フライを見切るシーバス
アユ釣りの盛んなフィールドでは、9月になると弱った落ちアユが流れ始め、それらはシーバスにとって格好のエサになる。河口から数kmほども上流で、派手に水面を荒らしながら盛んに捕食を繰り返す姿も珍しくない。そういった状況では、もちろんマッチング・ザ・ベイトの釣りが効果的になるのだが、フライのシルエットやサイズはもちろん、その流し方もかなり重要な要素になってくる。石川県出身の升田龍兵さんは、それらの条件を満たしたアユパターンを、フォームを駆使して作成している。
フライの大きさは13㎝前後。フォーム材をまさにアユの形に成型し、そこに大きめのバスバグ用フックを通しているので、そのボリュームはかなりのものだ。当然浮力も抜群。ボディーは油性ペンで色を塗り、アユの特徴である追い星を描き込んで、実物とそっくりの見た目に仕上げている。横浮きの状態でプカプカと流れる様は、まさに死んだ(または瀕死の)落ちアユそのものだ。

以前から地元からも近い手取川や九頭竜川の下流部で、落ちアユをねらって遡ってくるシーバスをねらっていた升田さん。フライをここまで本物に近づけて仕上げているのには、理由がある。
「このフライはおもに9月中旬から出番の多くなるパターンです。アユ自体は、冷水病のもの、弱った稚アユなどシーズンを通じて流下があると考えられますが、落ちアユの時期も半ばになると、渇水期にも重なり、フライを見切るようなシーバスも増えてくるんです。しかし、見ていると流れてくる本物のアユにはしっかりと反応している。そこでリアルさを高めたフライを作ろうと思ったのがきっかけです」

さっそく使用してみたところ、かなりの好反応。それまで使用していた大きめのフローティングミノーなどと使い方を変えていないにもかかわらず、見に来たけれど途中で引き返すなどといったパターンが格段に減り、魚がいるのに釣れないという状況が少なくなったという。
ナチュラルドリフトで丸呑み誘発
しかし、リアルさだけが釣果のキーというわけではない。その流し方も重要な要素なのだ。基本的にこのフライは、落ちアユを追うリバーシーバス専用のフライなので、使用するのは流れのある川の下流域がメイン。そういった場所で渓流のドライフライのように、アップクロスでキャストし、アクションは全く加えず、ナチュラルドリフトで流していく。落ちアユの釣りでは、シーバスが弱って水面を流れる個体だけを選んで捕食していることも多いのだ。
手前に早い流れや巻いている流れがある場合は、メンディングやカーブキャストを駆使して対処。ポイントが続いている場合は、自分の横を通過しても、さらにラインを送り出しながらダウン&アクロスでドリフトさせて反応を探る。そんな状況でアタックしてくるシーバスは、かなり派手に水面を割って飛び出してくることが多い。
「このフライのコンセプトは、実は派手なバイトを誘うことなんです。こんな大きなフライなので、アクションさせて食わせると、フッキング率は当然落ちます。そのためにも、ナチュラルドリフトが重要になってくるのですが、ドラッグフリーで流れているときに派手に出た魚は、50㎝ほどのサイズでもしっかりとこのフライを丸呑みにしてしまいますよ」


そんな反応ばかりをねらっているので、たとえフックが上を向いた状態で流下(ボディーに対してフックが軽めのため、キール状態で浮かぶこともある)しても気にしないという豪快さ。
シーバスが付いているのは、おもに流れがあり、エサの流下が多いポイント。瀬やプール、岩盤際などが有望な場所だが、あまり流れのない場所に入っていることは少ない。

升田さんの場合は、落ちアユの時期、まずは河口から数えて2番目の瀬から探り、そこで釣果が出ればさらに上流の瀬へとポイントを広げていく。もちろん実績のある場所では、直行することもあるが、初めての川でロッドを出すときも、このポイント選択法は効率がよいという。
フォームを大胆に使用
フライの構造は意外にシンプル。ライターなどで熱溶着できる厚めのフォームを張り合わせて、ボディー部を作成している。しかし、ただ魚の形に切り出したものを張り合わせただけでは、平べったい形になり、キャスト中に回転しやすくなってしまう。そのため腹の部分に、フォーム材の切れ端を詰めるなどして、全体にある程度丸みを持たせた仕上がりにしている。
頭の部分(エラから前)は、ボディーより薄めのフォームで別に切り出して製作している。その内側にフックシャンクを通し、横向きになるようホットグルーなどの接着剤で固定する。シャンクにはあらかじめシェニールを巻いておくと接着剤が付きやすく、強度も高くなる。
フックシャンクに頭部を固定したら、そのエラの内側にボディー部分を差しこみ、ホットグルーで接着する。こうすることで、ちょうど横向きに浮いたアユのエラの部分からフックを出すことができる。

最後に油性ペンで背面、腹面、追星をカラーリングしてアイを付ければ完成。フォーム自体に色のノリはよいが、色を付ける場所にはあらかじめホワイトで下地を塗っておくと、さらに色が出やすい。

ちなみに全体にある程度丸みを持たせた作りにすることにより、投射性を向上させるだけでなく、水面の上で滑らず、フライ自体にドラッグ回避効果を持たせることができるという利点もある。

2023/11/2