誘惑する尾ビレ

開拓者、杉浦雄三さんにインタビュー

FlyFisher編集部=写真と文

魚はそこにいて、何かを食べているのは間違いない。
問われるのは、近寄り方、プレゼンテーションの正確性、フライの着水音……。
フライフィッシャーのウデが問われるエキサイティングな瞬間だ!

この釣りの魅力を、開拓者である杉浦雄三さんに語っていただいた。


《Profile》
すぎうら・ゆうぞう
1972年生まれ。愛知県高浜市在住。プロショップ「TEAL」を運営しながら、浜名湖のサイトフィッシングを開拓し続けている。本流のウエットフライフィッシングにも精通している一方、6月からのシーズン中は浜名湖でガイドを行なう日々。





クロダイを見つけられても簡単に食ってこなかった


–– 浜名湖のクロダイを釣り始めて何年くらいになりますか?

杉浦 13~14年くらいですね。

–– この釣りを始めるきっかけはあったのでしょうか?

杉浦 浜名湖のクロダイはルアーのポッパーで釣れるという話を聞きまして、だったらフライでもいけるんじゃないかってやったのが最初だったんです。実際試してみると、確かに釣れたんですが、ポッパーの釣りはすぐに飽きちゃったんですね。まあ……、投げてリトリーブするだけなので。

で、すぐにサイトフィッシングにチャレンジするようになりました。ポッパーで真剣にやったのは1年くらいで、後はサイトで苦労しながらずっとやってきたっていう感じですね。

–– まさかクロダイがテイリングするなんて思ってました(笑)?

杉浦 いやいや(笑)、ポッパーって朝と夕方しか釣れないから、たまたま昼寝してたら浅い場所でテイリングしてるのが見えたんですね。あれ?ボラかな、と思って近づいていったら……全部クロダイだったんです! 

テイリングするなら、底にある何かのエサを食べているんですから絶対に釣れるはず、じゃないですか。ならば釣ってやろう、と思って始めたんです。その時それは誰もやってなかったので、みんな笑ってましたけど。















そこで最初は浅瀬を歩きました。とにかく歩きましたよ、もうひたすら(笑)。どういう潮の時にどういう場所でテイリングするのかまったく未知でしたからねえ。ロッドを持たずに怪しいところを1日歩き倒したこともありました。

でも……、クロダイを見つけられても、簡単に食ってこないんですよ。思いのほか。どんなフライが釣れるのかも未知でした。最初は、海外で使うような、普通のクレイジーチャーリーで釣れるだろう、くらいに思っていたんですよ(笑)。

でも、ぜんぜん簡単じゃなかったです。

いろいろやって一番最初に釣れたのは、クラウザーミノーでした。ほんとそれまで全然釣れなくて、1年間やってその1尾だけでした。たったの! それが唯一。白のクラウザーで、秋口に釣れたんです。今思えばハゼを食べていたんですね、その時期は。

でも、それから少しずつ結果が出てきて、フライも今のような形になってきました。サイズもだんだん小さくなって。でもフライはリアルすぎるとあまり釣れないみたいで、だから「シュリクラ」のようなシュリンプにもクラブにも見えるようなやつに落ち着きました。

それがこの釣りを始めて3年くらいたった時だったですかね。その頃には、なんと! 年間100尾くらい釣れるようになってきたんです!!

僕はプライベートで年間100尾以上を3年間続けられるようになったら、ガイドをしようと決めて釣りをしていました。だから結局ガイドをするまでに6年くらいかかってるんですよね(笑)。















フライは形や色よりもサイズとウエイトが重要


–– フライパターンはどのように固まってきたのですか?

杉浦 浜名湖で知り合いが釣ったクロダイの胃内容物を何度か見せてもらったことがあるんですが、やっぱりエビとかカニとか貝とか、いろんなものを食っているんです。

ただ、サイズには統一感があるように見えました。それぞれの個体が、それぞれ固有のサイズのエサを食べているというんでしょうか。エビだろうがカニだろうが中身は別なんですけれども、とにかくサイズはほとんど統一されているんです。たぶんその時一番多いエサを食べているんだと思うのですが、理由はよく分からないです。

色についてはまちまちでした。だから、たぶんそれっぽい色であればいいなぁという感じで、オリーブだったりブラウンだったり。むしろ保護色というか、釣っている底の色に合わせる感じです。

だからフライはワンパターンで、ほとんどシュリクラオンリー。サイズも全長で2cmくらいとほぼ統一です。



関連記事:「フラットのクロダイは待ち伏せてねらう」

ただ、今僕が一番こだわっているのフライのウエイトです。はっきり言って、パターンの形とか、色とかより、フライの重さのほうが重要です。だからチェーンボールアイとかそれよりも軽いものとか、ウエイトのバリエーションを揃えています。水深や生えている水草の量によって使い勝手が大きく変わりますから。最近はウイードガードも付けるようになりました。

あとは、たまに群れを釣る場合に、同じフライだと飽きられちゃうので、3つくらいのパターンをローテーションすることはあります。

リーダーは全長12フィート


–– リーダーシステムも以前にくらべて短くなりましたね。

杉浦 クロダイは警戒心がすごく強いって言われていますが、捕食のスイッチが入ってしまえば結構周りを気にしない、というのが実感です。

昔は警戒されないためにフライラインとフライの間が遠いほうがいい、と思っていたので、リーダーは長かったんですが、実は魚をスプークさせるのはラインよりもフライの着水音です。いくらリーダーを長くしても、フライがボチャンと落ちれば魚は逃げてしまいます。

だったらリーダーは短くして、位置も含めて着水を正確にコントロールできるようがいいんだと思っています。フライが軽くなっているのもそういう理由があります。

結局、サイトフィッシングのコツって、魚を見つけたらすぐに、いい位置にフライを落とすことじゃないですか。リーダーが長いとトラブルも増えるし、すぐに投げられないし、思ったところに落とせない。だから今は全長で12フィートくらいで、長くても14フィートくらいですね。

ラインも今は7番を使っています。6番だと風が出た時に難しくなりますし、8番だとちょっとパワーがありすぎる感じです。









「膝下くらいの水深」が鍵


–– 初期の頃はテイリングよりも、泳いでいる魚を見つけるサイトフィッシングの比率が高かったと思いますが。
杉浦 そうですね。今はテイリングを釣る比率のほうが高いですね。今では6~7割はテイリングねらいです。結局テイリングしているやつは興奮して、食い気もあるので比較的釣りやすいんですね。簡単に見えますし。

–– でもテイリングって結局ライズと一緒で、いつでも起こるわけじゃないじゃないですか 。杉浦さんはテイリングが起きる場所を見つける秘密ってありますか(笑)?
杉浦 まずはタイミングでしょうか。潮の上げ始めと、落ちるギリギリのタイミング。要するにフラットから水がなくなる寸前の1時間とか2時間がいいんです。

その次はフラットに一度水がなくなって、また水が入ってくる時。水深にしたら自分の膝下くらいですね。その水位が一番長く続く潮回りだったり、場所だったりを選べばいいと思います。

いわゆる潮の上げか下げかとかあまり関係なくて、膝下の水深、ということだけ覚えておけばいいと思います。





まあでも……、最初は多分釣れないと思うんです。だけどフラットをゆっくり歩くことをまず心がけてください。ガイドしていると感じるのですが、歩くのが速い人が本当に多いんです。そうすると見える魚も見えなくなるし、ポイントを荒らすことにもなります。あっちでテイリングしてたらすぐに近くに行きたくなるのは分かるのですが、我慢してゆっくり移動することが大切です。

すべてがうまくいかないと結果がでない釣り


でもやっぱり、テイリングはライズと一緒で、フライフィッシャーの技量が問われるじゃないですか。

魚がいるのは分かっていて、エサを食べているのも分かっている。あとはこっちがフライを選んでうまく投げてやればいい、っていうシチュエーションはやっぱり興奮しますよね。釣れなかったら全部自分のせい。そこは魅力だと思います。

















2017/10/9

最新号 2017年12月号 Fall

特集は「川を読む」。秋田県の役内川を例に、まさに「ここに尺ヤマメがいた」というポイントをピックアップ。流れのようす、底石の入り方、水面の波立ちぐあいなどなど、良型が付く場所の特徴を解説します。 また伝説的ともいうべきリールの名品「ボンホフ」と、その製法を忠実に踏襲しようと試みた男の物語を収録。道具に対する釣り人の情熱と愛を感じる内容です。 そのほか、イワナが浮いてフライをくわえる瞬間までばっちり見えるような源流釣行、北海道のアメマス事情、またキューバやオーストラリアのソルトゲームなども掲載。渓流オフシーズンの今だからこそ、じっくり読みたい一冊です。
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