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フラットのクロダイは待ち伏せてねらう

静岡県/浜名湖のサイトフィッシング

杉浦 雄三=文
口の硬いクロダイは、しっかりとフッキングさせたと思ってもランディングまで気が抜けない。魚がフライをくわえてしっかりと重みを感じたら、追いアワセを入れてやるとよい

6月からの時期は、浜名湖の浅場にはアサリや小エビなどを食いに多くのクロダイたちが入り込み、ウエーディングでのスリリングなサイトフィッシングが成立する。ここでは、そんなフラットの釣りのヒントを解説。
この記事は2016年8月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
すぎうら・ゆうぞう
1972年生まれ。愛知県高浜市在住。プロショップ「TEAL」を運営しながら、浜名湖のサイトフィッシングを開拓し続けている。本流のウエットフライフィッシングにも精通している一方、6月からのシーズン中は浜名湖でガイドを行なう日々。

夏、シャローに群れるクロダイ

6月以降の時期は、水温さえ上がれば、クロダイたちは次々とフラットに上がってくる。浅場で捕食する時間も長くなり、日に日にテイリングを目にする機会も増えてくる。

初期の段階ではシマハゼやアサリ、巻貝などがメインの捕食対象だが、7月からはサイマキ(クルマエビの仔)やカニも増え、どんどんその行動はアグレッシブになっていく。
思い切りロッドを絞り込んだ、コンディション抜群の48cm
Photo by Yuzo Sugiura


7~8月のフラットでは、数十尾からなるクロダイの群れがボトムを漁る光景を目にすることも。この季節は1年のうちでも浅場に入ってくるクロダイのサイズが特に大きく、50㎝を超える魚も珍しくなくなる。そして、それが全てサイトフィッシングでねらえるのは、やはり他の釣りで体験できない魅力である。

まずはテイリングを捜す

浜名湖の釣りは、まずはクロダイの姿を捜すところから始まる。もちろんブラインドでねらうこともできるが、フラットが広大すぎるので、歩き回って魚影を見つけてからキャストしたほうが効率よく、何よりも一部始終が目の前で展開するので興奮度が高い。
浅場でボトムのエサを漁っているクロダイのテイル。こんな状況はチャンス大。波を立てずに忍び寄り、最小限のフォルスキャストでフライを落としたい

クロダイはその日によってフラットへ上がってくる時間帯が違うのだが、これはその日の水温や潮の動きにも関係している。浜名湖は海とつながった内陸部に入り組んだ汽水湖。通常の潮の動きとは若干ズレが生まれるのは厄介だが、水位が動くスピードはポイントが変わるスピードということができる。
浜名湖のフラットは広大。時には魚の通り道を予測して、待ち伏せしてみるのもよい。この時はちょうど先のテイリング地点をフライが通過中。ストロークの長いリトリーブで相手の興味を誘う。この緊張感がたまらない

クロダイを捜すうえで一番大切なのは、魚を見つけるまでやたらと動き回らないこと。それとむやみなキャストをしないことだ。相手はかなり神経質。ブラインドフィッシングで楽しんでいる人も多いが、シャローに集まっている時は、逆に魚を散らしてしまうことにもなりかねない。
浅場を動き回って底のエサを漁っているクロダイ。どこか愛嬌のある魚でもある

クロダイは水路(チャンネル)や水草のあるところを必ず経由してフラットへ上がってくるので、慌てずに待つということも浜名湖のサイトフィッシングでは重要になる。さすがに広い範囲を捜し回るのは厳しいので、ねらいを付けたフラットで待ち伏せする作戦だ。

テイリングなどして浅場で動き回っているクロダイは比較的見つけやすいので、魚影を確認したらすぐにキャストに移る体勢を整えておきたい。

前述した水路、水草に加えて、潮目、中州などがある場所はクロダイの通り道になっていることが多いので、要チェックだ。

水温上昇時に潮が動く時がチャンス

クロダイは夏の魚なので、水温は温かいほうが活性も上がり、釣りやすくなる。時間帯でいえば、昼前後に上げ潮や下げ潮が来る時が釣りやすくなると感じている。
サイトフィッシングでは、掛けた時の喜びもひとしお。相手の動きが一部始終見えることも少なくない

水温が上がり、魚たちの活性がピークを迎える陽の高い時間帯に潮の動きが加わった時は、やはり見逃せない。釣り人も気合いが入るが、フラットに入ってくるクロダイたちの気合いもどこか違うように感じる。

それまでなら無視されてしまうような位置に落ちたフライでも、追いかけて来てでも食いつこうとする時がある。さらに、普段なら一度で止めてしまうアマ噛みでも、活性の高い時にはフライをくわえ込むまでしつこくアタックしてくることも……。
杉浦さんが浜名湖で使用している「シュリンプ&クラブ」パターン。フラッシャブーのブラックカラーを長めに留めているのがポイント。ラバーレッグを留めたパターンと併用している
ハマロン
●フック……カン付伊勢尼8~9号
●スレッド……ヴィーヴァスGSP 50D・ブラック
●ウエイト……ダンベルアイ5/32インチ
●レッグ……フラッシャブー・ブラック
●ボディー……TEALベイトボディー・グレーブラック
●テイル……EPファイバー・RUST
●ウイング……ゾンカー・レッドブラウン
●スロート……モルフォファイバー・パープル


クロダイ用のパターンでは3種類のウエイト(ダンベルアイ)を用意。左から5/32インチ、1/8インチのダンベルアイ、XSサイズのボールチェーンアイを用いている。水深によって使い分け、右にいく(軽くなる)につれて、浅場で使用するようにしている
シュリクラ
●フック……がまかつ カン付チヌ5号
●スレッド……ユニコード8/0 チャートリュース
●テイル……ブラウンバード・マグナムラビットストリップ・フレッシュ、クリスタルフラッシュ・チャートリュース
●レッグ……ラバーレッグ・オレンジブラック
●アイ(ウエイト)……ダンベルアイ・ブラック 5/32インチ(もしくは1/8インチ、XSサイズのチェーンボールアイ)
●ボディー……EPファイバー・ライトオリーブ、ブロンズ


最後に、浜名湖へ釣行するうえで注意してほしいことがある。浜名湖では毎年のようにアカエイの毒バリよる被害が出ている。歩行時は足もとに注意し、なるべくエイガードのような毒針対策をしてフラットで釣りをしてほしい。
杉浦さんのガイドでは、湖全体に散らばるフラットをボートで移動する。釣り場の水深は膝下ほどだが、浅場に潜んでいるエイには注意

それとアサリ漁などによる立ち入り禁止区間(期間限定の立ち入り禁止区間もある)なども多いので、ポイントに入る前には周辺を確認しておきたい。

そんな場所ほどテイリングが見られたりするものであるが、ルールを破れば釣り自体が制限されてしまう可能性だってある。最低限のマナーをもって、これからが本番のフラットを楽しんでほしい。

2017/8/14

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