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海人スタイル奄美

挑み続けるライン

「アトランティックサーモン」の軌跡

FlyFisher編集部=写真と文

アトランティックサーモンというラインはダブルハンド用、スイッチロッド用、シングルハンドとバリエーションを増やしてきた。
2020年はシングルハンドでフローティングの#4/5、そして中禅寺スペシャルが発売される。
その名のとおり、ヨーロッパ市場向けのラインが、どのように日本向けに進化してきたのか。
ティムコ社のライン開発担当、中峰健児さんにうかがった。


中峰健児(なかみね・けんじ)さん。1968年生まれ。千葉県千葉市在住。ティムコで輸出営業を担当するが、輸入業務やライン開発、スクールも手掛ける。湖の釣りが得意

さまざまなラインアップが充実してきたアトランティックサーモンシリーズ。シングルハンドが予想外(?)に人気を博している


もともとはヨーロッパ向けのラインだった


—— まずはこのシリーズが生まれた経緯をお聞かせください。

中峰 サイエンティフィックアングラーズ社(以下SA)がヨーロッパ市場向けに3つのラインを出したんです。そのうちの1つが、「アトランティックサーモン」。ツーハンド用のシューティングヘッドです。それと「アトランティックシルバー」という、シングルハンド用のシューティングヘッド、あとスペイのフルラインでした。

その時に「日本でも売れるかい?」って何本かサンプルがSAから送られてきたんです。そこでそれぞれを実際に試したところ、まあ当時からフルラインはちょっと下火でもあったので、これは日本じゃ売れないかなと思ってやめました。残りのシューティングヘッドに関しては、シンクレートのバリエーションがあるのはいいかなと思ったんです。アトランティックサーモンシリーズはフローティングからS3/S4までいろんなシンクレート、シンクティップがありました。それは面白いんじゃないかなと思って日本でも販売を始めたんです。そうすると、「アトランティックサーモン」が想像以上によく売れたんです。

僕は当時湖をやっていたんですけど、特注のレイクスペシャルなどを使っていて、アトランティックサーモンはどうかな?と思っていたのですが、意外と市場の反応がよかった。調べてみると、みなさんの多くが湖で使っていたんです。さらにいろいろ調べていくと、ペリーポークとかシングルスペイっぽくとか、いろんな投げ方で投げられたということも理由だったようです。僕も遅ればせながら使ってみると、確かに使いやすい。それで、もうちょっと幅を広げたいなって思ったのが始まりです。

当時一緒に出した「アトランティックシルバー」というシングルハンド用のラインは、フローティングとインター、S1/S2の3種類だけだった。番手も6~8しかなくて、ヘッドも長いし、販売した数は限定的でした。

これが「アトランティックサーモン」というラインが日本に入ってきた経緯です。

—— そもそも名前のとおり、アトランティックサーモンを釣るためのラインだったわけですよね。

中峰 そうです。「アトランティックサーモン」はダブルハンド用だから本当にアトランティックサーモンを釣るためのものでした。「アトランティックシルバー」っていうのはシングルハンド用ということで、グリルス、シートラウトとか。多分そういう魚をねらう感じだったんでしょうね。

—— これは、たとえば御社でいえばループのラインに近しいというか、あれのSA版みたいな感じなんですか?

中峰 そうですね。スカンジラインなんですけど、ループのラインはテーパーが異なっていて、ベリーがストレートなのが特徴なんですね。正しいキャスティングをすると、それがしっかりテンションを維持してスパーンと飛んでいく。オーバーヘッドも使いやすい。

ですが、もうちょっと一般的な、いわゆるアメリカでスカンジと呼ばれているようなラインはヘッドの重心がもっと後方にあって、後ろのほうが持ち上がって前に飛べば、あとは細い先端もついていってくれるよねっていう……、この説明はちょっと極端ですが、そんな感じのデザインなんです。だからどなたでも扱いやすい、より幅広い層に受け入れられやすいラインだと思います。

しかも、スカジットキャスティングのひとつのテクニックであるペリーポークでも投げやすかったり、このラインはどっちつかずというか、いいとこどりともいえるデザインだったんです。キメラ的で、非常に面白い位置づけでした。

アトランティックサーモンのスペック


まずはシンクレートのバリエーションを増やした


—— SAもまさか湖で使われるとは思ってなかったでしょうね。

中峰 そうですね。まったく想定してなかったと思いますよ。しかもこれをペリーポークで投げるっていう発想は……(笑)。そもそも湖に立ち込んで釣るというのは海外ではあまりみられない釣り方ですからね。

ただ、日本で人気があるのはフローティングで、たとえば安田龍司さんが今のSAの九頭竜スペシャルを出す前は、アトランティックサーモンのフローティングを使って、ロングリーダーのサクラマスの釣りを確立させたわけですし。

湖で使うとなれば、ラインナップにあった中でフルインター。それからS1/S2。当時はS3/S4なんて非常に投げにくいという声があったんです。それプラス、一番使いたいS1/S2とかのシンクレートを芦ノ湖で使ってみると、、もうちょっと沈まないほうがいいな、とかも感じていました。

なので、日本向けにカスタムするまず最初のステップとしてアトランティックサーモンの中に、テーパーやウエイト、長さの設定は同じで、スローインターをラインナップしました。後端がスーパーインター、普通のインターよりも沈みが遅いものにして、先端はインターにする。これが第一歩でした。

それともうひとつは、当時は#6/7という番手(26g、400グレイン)までしかなかったんですけど、やはり日本もある程度低番手化が進んでいたので、もう一ランク下の340グレインの#5/6っていうのを作りました。

その次に、インタークリア。後端がインターで先端がクリアインター。これで、フローティング、スローインター、フルインター、インタークリア、S1/S2、これが日本ではボリュームゾーンになりましたね。

—— やはり実際は湖での需要でしたか?

中峰 調査をしたわけではないんですけど、あんまり川でメインで使っているという声は聞こえてこないですね。おそらくほとんどが湖で使われているんじゃないかなと思います。

アトランティックサーモンのページへ

次は短くなった


—— それで、次はアトランティックサーモン ショートになるのですね。

中峰 そうです。やっぱりもともとは14、15ftのサオに合わせて作ってあるラインなんですよ。

当時うちは既にJスイッチというロッドを出していたので、スイッチロッドに合うくらいの長さがほしいなということで出したのが「アトランティックサーモン ショート」なんですよ。340グレインっていうのはもうアトランティックサーモンでやっていたんですけど、ラインの長さだけで考えたら、スイッチでいうと、#8/9に相当します。ロッドが11ftしかないので、ラインももっと短いほうが扱いやすいんじゃないかと思っていました。

なので、まずはスイッチロッドに合うシリーズをアトランティックサーモン ショートという名前でやりました。だからアトランティックサーモンショート スイッチというのが一番最初なんですよね。これはもうばっちりマッチしまして、スイッチロッドでの釣りの幅を広げてくれたんじゃないかなと僕は思っています。

—— これも湖で使う想定ですか?

中峰 湖でもいいし、おそらく川で使ってる方もいると思います。でも多くは湖で使われているんだろうなと思います。

たとえば湖でも、2、3人しか立てないような小さなポイントってあるじゃないですか。けっこう木が後ろに被っているような。そういう場所だと、僕はスイッチロッドばっかりです。手前約15m以内ポイントになるような場所はスイッチが非常に強いと思いますね。ダブルじゃ近いし、シングルだとちょっとめんどくさいっていう時ですよね。

ラインをデザインしているうちに僕が見つけた計算式っていうのが、ラインはロッドレングスの2.5倍がよい、ということなんです。11ftだったら27.5ft。8.5mくらいですね。それは今でも僕の中では黄金比になっています。オーバーヘッドでも投げられるし、水面を使っても投げられる、アンカー切れしにくい。それは多少テクニックによるところもありますけどね。というわけでアトランティックサーモン ショートは、スイッチロッド用としてデビューしました。

そして、1年か2年経ったあとに、アトランティックサーモン ショートのダブルハンド用というのを出しました。そのころは要はダブルハンドでも長もの、たとえば14とか15を使う人も、12ftくらいの短いものを使う人と多様性が出てきました。ちなみに僕たちはざっくりと13ftを境に「長い」、「短い」を分けていますけど。

アトランティックサーモン ショートのスペック


当然本流だとロッドが長いほうが流れをまたいで釣る時は有利というのもありますし。手前をスイングさせるなら短いほうがいいし。湖の場合は絶対的な飛距離を求めないのであれば、風や取り込みを考えると短いほうが有利かなと思います。

だからダブルハンド用のラインとしては、ショートとノーマルと、2通りの選択肢があるわけです。でも実はここに来て、ここ1、2年くらいかな、またちょっと湖でも長いものを使う方も増えてきました。これはもう好みの問題なんですが。

正直な話、もう全部アトランティックサーモン ショートに移行して、オリジナルのアトランティックサーモンはお役御免かなと思っていたんだけど、やはり根強い人気がありますので。ドライフライをダブルハンドでやる方もいらっしゃるので、そうするとフローティングの場合だとロール打ったり、アワセをしたり、メンディングしたりっていうのは短いのよりも長いほうがやりやすいのかなっていう。とくに湖では。この辺はお客様のニーズが本当に多様化していますね。

—— シンクレートと長さのほかにはテーパーはいじっていないのですか?

中峰 全長とウエイトとベリーとテーパーの長さはこちらからある程度指定してします。でも基本的には非常にシンプルなテーパーなんですよ。

ただひとつ難点は、ウエイトを維持しながら短くすればするほど、つまり先端の径とベリーの径のギャップが大きくなればなるほど、ラインって暴れやすくなります。それを解決するためにちょっとテーパーを変えて、先端を少し膨らませました。とくにフローティングとか、モノコアを使うクリアインターだとかは、そういう調整は必要になります。

—— この形のテーパーは、ターンオーバーせずにくしゃくしゃと着水しがちじゃないですか?

中峰 確かにラインが長いとその傾向が起こります。とくにオリジナルのアトランティックサーモン フローティングなんて、上手い人が投げてもそうなりやすいし、僕らが使ってもそう。先端のティップがくしゃくしゃってなりやすい。これは構造的にどうしようもないと思います。でも、アトランティックサーモン ショートは短くなったので、そこは解消されています。

シンクレートは日本で需要があるフローティング、スローインター、それからインタークリア、S1/S2、S2/S3っていう。ただS3/S4とかの速く沈むやつは湖だとなかなか使う場面がないのですが、少数ですが、川で深く沈めるために使ってる人がいらっしゃったので作りました。

アトランティックサーモン・オリジナルの時はS3/S4っていうのは「投げにくい」って酷評されていたんです。ただショートに関しては僕はいけるんじゃないかと思っていました。さっきお話した黄金比よりもっとギュッと短くしたんですね。それで投げやすくなって、たとえば夏場のすごくディープな釣りだとか、川で使ったりするのにはすごく投げやすい。本当に使えるS3/S4ができたなと思っています。

アトランティックサーモン ショートのページへ

シングルハンドへ


アトランティックサーモン ショート シングルハンドは新たな流れを生みつつある


—— 次はシングルの登場ですね。

中峰 そうです。いよいよシングルっていう話になってきます。

最初はシングルハンド用をやろうと企画したのではなく、スイッチ用のもっと軽いのがほしいなと思っていたんです。

最初にやったアトランティックサーモン ショート スイッチは、ティムコのスイッチロッドでいうと5~8番用しかなかったんです。ロッドには当時も4番があったし、そのあとは3番も出したのですが、4番とか3番でシューティングヘッドが必要なシチュエーションってあんまりないなと思って、やってなかったんです。でも5番のスイッチ買った方はいろんな選択肢があるのに、4番を買った方はフローティングしかないっていうのも寂しいので、4番、3番で使えるアトランティックサーモン ショート スイッチの3番、4番に相当するものを作ろうと思ったんですよ。

でも、ウエイトが220グレインとか190グレインになるんですよね。14gとか12gです。図面を引いている時に、「12gって、普通のシングルハンドの6番でヘッド作った時と同じくらいだな。シングルハンドでも使えるんじゃないかな」とふと思って、スイッチの3番、4番用と、シングルハンド用とで、どっちのほうがニーズがあるか天秤にかけたんですよ。それでシングルハンドじゃないかなと思ったんです。

—— 中身は同じだけど、売り方というかコンセプトを変えるということですか?

中峰 いえ。スイッチとなると11ftくらいの長さがあるから、ヘッドが長くなりますが、シングルハンドで考えた時に、せいぜい9ftじゃないですか。だから9ftロッドに合わせて作るということです。そこで、スイッチの低番手というのはやめて、短いシングルハンド用を作ろう、となりました。

僕が頭の中でいろんなシミュレーションをして、ここでいけるだろうっていうのが4~6番、160、190、220グレインっていうセッティングだったんです。とりあえず一番使えそうなところのS1/S2で試作をやったところ、メチャメチャ簡単に投げられることに驚きました。これはいいんじゃないかって思ったんです。

じゃあスイッチロッドで投げられないのかっていうと、ちょっと気をつければ実は投げられるんです。これはいろいろ使えるかもって可能性を感じました。

その時に、9ftのシングルハンドをベースに、だいたいみなさん何番を持っているんだろうかって考えると、おそらく一番多いのが6番。それプラス、やっぱりシングルで湖を釣ると考えると、8番ほしいよねってなりますよね。スタートは4番、5番、6番だったんですけど、そこでちょっと軌道修正して、5番、6番、7番、8番を作ろうとなりました。7、8番はスイッチ用の5、6番と重さが被っちゃうのですが、長さが違うので、そこはいいかなと思って。

ということで5、6、7、8ロッド用っていう番手でフローティング、スローインター、S1/S2、S2/S3の4種類。要は合計16アイテム出したのがちょうど1年前です。

アトランティックサーモン ショート シングルのスペック


—— プリント版FlyFisher 2020年3月号Early Springでも、湖でシングルハンドを使う記事を北海道在住のライターである西井堅二さんにまとめていただきました。西井さんがこのラインをすごく推していて、「すごく使える!」っておっしゃっていたのですが、正直企画段階ではピンときてなくて……。

中峰 たぶんそのニーズっていうのはまったく顕在化していなかったと思うんです。これが今回の一番面白い部分なんです。

でもおかげさまで人気があるんですよ。僕自身も驚くほどです。

昔から湖やってた人はみんなシングルハンドだったんですよね。それがいっときの流れでダブルハンドが出てきて、スイッチが出てきてってなりましたけど、今また「シングルでやってみよう」っていう流れに戻ってるのはあると思います。

西井さんも「魚は本当は岸に寄りたがっている」ってあの記事で書かれていましたよね。それって僕の経験からも確かだと思うし、多くの人の実感でもあるのではないでしょうか。それならシングルハンドのほうが……ね。水面へのインパクトも少ないし、静かですし。

あとはもうひとつ、5番でも6番でも、シングルハンド・ロッドならほとんどみなさん1本は持ってらっしゃるわけじゃないですか。そうすると気軽にチャレンジできるということもあったと思います。

アトランティックサーモンだけでなく、SA本社のラインナップとティムコオリジナルのラインナップを比べてみると、中峰さんの仕事がいかに的を射ているかよくわかるはず。自身も熱心なフライフィッシャーだからこそ


—— 投げ方は、シングルハンド・スペイでやる感じですか?

中峰 そうですね。湖だったらジャンプロールです。でも、実は上手く投げられないっていう人も多いんですよ。今の問題はそこなんです。シングルっていうことは、短いサオを効率的に使わないと飛ばないので。これは今後もスクールをやって解決していきたいと考えています。

ただ、ここまでできたのは群馬在住の下澤孝司さんがいたからこそなんです。企画をしたのは確かに僕です。でも下澤さんと一緒に投げてみたら、僕のキャスティングがいかに効率的じゃないかっていうのを思い知らされたんですね。

最初に下澤さんに「シングルハンド・スペイってどうやってやるんですか?」って聞いた時に、いろいろ教えていただいんたのですが、僕がイメージしていたのとは全然違ったんです。まあ、釣りだから、ある程度飛んで、トラブルなく釣りができればいいんですが、より効率よく投げようと思うんだったら、正しい理論と実践をしたほうがいいのは当然ですよね。僕がキャスティングを習得するっていう部分では、下澤さんなしには語れません。

↓下澤さんのキャスティング解説動画はこちら。

下澤孝司氏が解説する「SAアトランティックサーモンショート・シングルハンド」のキャスティング

実釣解説 SAアトランティックサーモンショート・シングルハンド

SAアトランティックサーモンショート・シングルハンドで釣る


―― そして2020年です。

中峰 今年は2年目になって、もうちょっとシンクレートを増やしたんです。それと、あと4/5番も作りました。本当は一番最初はシングルの4、5、6番だった企画が路線を変えたとお話しましたが、昨年、もう1回シングルハンドの4番用を考えていろいろやってみると、確かに軽いし、たとえば管理釣り場だったら圧倒的にこっちのほうがメリットは大きいなと思ったんです。あとは低番手になれば当然細いイトが使える。6Xティペットで、バックがないところで20m投げたら、釣れそうな感じがしません?

—— なるほど。

中峰 あと、S3/S4というシンクレートもシングルだからこそありかなと。ボートからオーバーヘッドでもスペイでも、ぽーんと投げて沈めてもよいですし、岬の突端に立って15mくらい投げて一気に沈めて、手前のブレイクをなめるように釣ってもいいですし。

—— S3/S4っていうのは、タイプ3とタイプ4っていうイメージでよいのでしょうか?

中峰 そうです。先端がタイプ4。今多いんですよこういうの。とくにスペイラインの場合は後ろが太くなって、後ろに重心があるから、均一なシンクレートだとなおさらベリーから沈みやすい。そのバランスを取るために先端のシンクレートをひとつ上げるっていうのは常套手段ですよね。

—— シングルに関しては、具体的にはどういった場所で真価を発揮しそうですか?

中峰 僕は、阿寒湖なんかはもうシングルでいいなと思っています。アメマスはそんなに走るわけじゃないし、近くで釣れるわけですし。シングルで静かにやったほうが釣れる。屈斜路湖でも6月にやりましたけど、バックがギリギリあるところ、9~10mのヘッドじゃ後ろの木に引っかかるけど、7mしかないから全然オーバーヘッドでも引っかからない。あとシングルは掛かったらバレにくいと思います。やりとりも楽しいし。イト細くてもいいですし。

メリットは多いですよ。いくらラインが短いといってもダブルハンド用だと9m、シングルハンド用は7mしかないので。2m分ってけっこう近くまでリトリーブできるんですよ。それと、ラインが細くなると、コアとコーティングの比率の関係で沈むスピードが遅くなるんです。ダブルよりもシングルのほうが沈下は遅くなるります。ということは、よりゆっくり、精密にタナをリトリーブできる。シングルのS2/S3っていうのはダブルのS1/S2に近い。

あとはオーバーヘッドでもできるし、スペイでもできる、っていうのが大きいですよね。同じウエイトだったら飛距離はオーバーヘッドのほうが当然上なので。バックとれるんだったらオーバーヘッドで投げて、とれないんだったらスペイで、という使い方ができます。

—— 湖だったら中峰さんは何番を使うんですか?

中峰 一番つぶしが効くのは8番ですね。ただ、疲労度からすると、8番ってちゃんとスペイで投げようとすると僕はまだけっこう疲れます。まあ7番でもいいし、本当に風がなくて静かだったら6番でもいいと思います。阿寒湖だったら6番、5番でもいいかな。

たとえばユスリカとかがハッチしていて、表層でやる時はフローティング、スローインターの6番でもいいと思います。でも、やっぱりS2/S3とかを沈めてガンガン引くんだったら8番のほうがいいでしょうし。


ご当地ライン


―― そしてご当地ラインというか、スペシャルラインも出しましたね。

中峰 アトランティックサーモン ショートはこのラインナップでいいかなと思っていたのですが、北海道でガイドをやっている杉坂隆久さんと釣りをする機会があって、彼に「チェンジャブルティップ、ほしいんだけどなあ~」って言われて。1ウエイト限定でやろうとなったのが、朱鞠内スペシャル。

アトランティックサーモン 朱鞠内スペシャルのページへ
杉坂さんの考えは、1ボディーでチェンジャブルティップにしたほうがパパッと変えられるでしょ、っていう。僕はヘッドごと交換する派なんですが。ティップ交換のほうがいいという人も多くいらっしゃいますよね。

商品としては2種類、インタミボディーでツーティップのシャローバージョンと、タイプ2ボディーでツーティップのディープバージョン、つまり4通りの組み合わせができます。

—— みなさん朱鞠内湖で使ってるのですか?

中峰 朱鞠内湖で使ってる人がほとんどだと思いますが、本州でサクラマス用に使ってる人たちもいます。15ftくらいのサオで、8、9番。これもけっこうどういう投げ方しても飛びます。それこそタイプ6のティップでガーッと沈めといてスイングさせる、とか。一部では「三面スペシャル」とかって言われたりもして、何名かはそうやって使っているんじゃないでしょうか(笑)。

—— 中禅寺スペシャルは、朱鞠内の軽いバージョンということなんですか?

中峰 そうです。朱鞠内スペシャルはアトランティックサーモン・ショートよりもさらにちょっと短くしたのですが、中禅寺スペシャルのスペックはまったく同じ。ティップは朱鞠内スペシャルと共通にしていて、ボディーが軽くなっています。

アトランティックサーモン 中禅寺スペシャルのページへ

—— とにかく「アトランティックサーモン」という名前だけが残っている感じですね(笑)

中峰 そうですね(笑)。商品名だけが妙に残っちゃいました。アトランティックサーモンを釣るための、「アトランティックサーモン」ができるかもしれません。「アトランティックサーモン・スティールヘッドスペシャル」とかも(笑)。

—— このオリジナルのアトランティックサーモンは、まだ世界では売ってるんですか?

中峰 いえ、もう売っていません。ヨーロッパのほうでは、そのあとに「UST(アルティメットスカンジテーパー)」っていうふうにリニューアルしましたし、それもさらにUSTショートとかに進化しています。

アトランティックサーモンなんて、ヨーロッパからしたら「そんなのまだ売ってるの?」っていう感じだと思いますよ(笑)。ヨーロッパのサケ釣り用のラインが日本の湖にマッチしていたなんて、普通は想像もつきませんからね。

まあ、シングルハンドのラインが本当に浸透するにはもう1段階、僕らの努力が必要だとは思っています。「やっぱこのラインじゃないと、この魚は釣れなかったよね」っていうことがもっと増えてほしいですね。

2020/3/5

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