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本流におけるリールの重要性

フッキングに一役買うドラッグ性能

安田龍司=解説

本流フライフィッシングの名手、安田龍司さんの釣り方は大きく分けて2種類ある。
「スイングの釣り」と「ナチュラルの釣り」だ。

いずれもダウンクロスのポジションで行なうが、ものすごく単純にいうと
「スイングの釣り」は多くの人が実践しているとおり
ラインが受ける水の抵抗によってフライを斜めに横切らせる釣り。
「ナチュラルの釣り」は、ラインはできるだけ流れと平行にして、
立てたロッドを倒していくことによって、フライを流れに沿ってナチュラルに近い形でドリフトさせる釣りだ。

そして、特にスイングの釣りにおいては、リールの性能は非常に重要だと安田さんは力説する。
渓流の釣りではただのイト巻きとも表現されるフライリールだが、本流では考え方が違うようだ。

《Profile》
安田 龍司(やすだ・りゅうじ)
1963年生まれ。愛知県名古屋市在住。九頭竜川水系において、サクラマスを河川環境の指標として川を守る活動を行なう「サクラマスレストレーション」代表。ストリーマーやウエットフライの釣りを得意としており、各地の本流釣行の経験も豊富。正確な釣りのテクニックに裏打ちされたタイイング技術にも定評がある。
●サクラマスレストレーション http://sakuramasu-r.org/

魚がフライをくわえる、ということ


今回訪れたのは秋の犀川
水は予想以上にクリアだった

ーー 安田さんのおっしゃる、「本流で魚のアタリに気づかない」というのがイマイチ飲み込めません(笑)。

安田 魚のアタリというよりも、魚がフライをくわえているのに釣り人が気づかない、ということなんです。もっと厳密にいうと、魚の口の中にフライが入っていることがこちらにはわからないことが多い、ということなんです。

ーー はあ。

安田 では、魚がフックに掛かる段階を分解してみましょうか。まずは当然ながら魚の口にフライが入ります。この段階でフックが刺さっているかどうかは微妙です。その後何らかのきっかけで魚が反転して、ラインが受ける水の抵抗などでフックが引かれることで、初めて刺さっていきます。ただ、この抵抗がラインとロッドを通して釣り人の手元に伝わるにはかなりのタイムラグがあるということを言いたいんです。

ーー 魚がハリが刺さる前にパッと離してしまったら、こちらはまったく気づかないと。

安田 そうです。僕の印象では釣り人がちゃんとわかるアタリは、実際に魚がフライを口にしている数の10分の1くらいなんじゃないかと思っています。渓流のウエットフライで、ダウンで釣れる時でも、魚がフッキングして水中でキラキラ反転しているのに、手もとに伝わってきていないということが何度もありますし、そんな経験をしている人は多いと思います。ルアーでも同じようなことが起こるので、ラインが太いフライの場合はもっとひどい(笑)。まして本流で30mもラインを出しているならなおさらです。

ーー この川には魚がいない!って思うのではなくて、魚がフライをくわえたのにわかっていないこちらが悪いということですね。

安田 そこまでとは言いませんが(笑)、自分としても、10分の1しか感知できていない、と思っています。スイングの釣りではロッド立てず、ラインが受ける水の抵抗でフッキングさせますが、ナチュラルの釣りの場合は、縦にフライ送り込んでいるので、アタリだと思ったらすぐ合わせます。ラインの抵抗をフッキングにあまり利用できませんので。アスキスはアユザオなどの技術が入っているので、感度は高いのですが、それでも軽く感じたアタリはなかなかフッキングできませんし、フッキングしたとしてもバラしやすいですね。小さなアタリをできるだけ早く感知できるに越したことはないですが、こればっかりは……。自分がロッドを立てる動作が、先端のフックまですぐに伝わっているかわかりませんしね。

「スイングの釣り」。グリップに注目

グリップを軽く保持しているのみ。ラインに触れずにフライをスイングさせていく

こちらが「ナチュラルの釣り」。ロッドを立て気味に保持して、流れに合わせて倒していくことによってよりナチュラルにフライをドリフトさせる

ナチュラルの釣りの場合はドリフト中にラインを握る

ーー 本流でのフッキングは、いきなりガガン!とくるものとばかり思ってました……。 思っている以上に繊細なんですね。

安田 そのガガン!は魚がハリに掛かってしばらくして、首を振っているような信号だと思います。スイングの釣りの場合は、魚に必要以上の違和感を与えずに反転させて、走らせながら水の抵抗でジワリとフッキングさせていく、というイメージで行なっています。だからスイング中、僕はラインにはいっさい触れていません。フッキングの初期は必要以上の抵抗をかけてしまうとフックが口から抜けてしまうというか、魚が違和感を感じて離してしまうので、まずはラインとリールに任せて、それから徐々にブレーキをかけていくイメージです。

ーー 魚を走らせっぱなしにするのではなく、徐々にテンションをかけてハリを刺していくと。

安田 最初はラインを出させてからグーッとフッキングさせます。ラインを抑えてブレーキをかける感じです。フッキングしたな、と思ったら念のためロッドを立てて合わせる、という感じです。ただ、この方法だと、クリックタイプのリールなら、魚が反転したら手にある程度ショックがきたり、大きな音がしたりしますけど、ディスクドラッグで非常になめらかなリールだと、逆転した時の初期の抵抗に気づかないことがあるんです。特に瀬の中で釣っていたりすると起こります。この場合、魚がいつまでもフライをくわえて走ってくれればいいですけれど、そのままだとフライを離すことも多いです。だから魚がくわえたタイミングがわかりやすいように必要最低限のラチェットは必要だと思います。

スイング中に軽いアタリ!

小型のブラウンがフライをくわえた


決定的な道具としてのアスキスリール


アスキス7/8。2サイズ展開のうち、大きいほう。もうひとつは渓流用がラインナップ

ーー リールはフッキングに非常に影響がある道具なんですね。

安田 そうなんです。リールの機能として決定的に欲しいのは、回転初期がなめらかであること。そのことによって、魚がフライをくわえて泳ぎだした時に違和感を与えない。その滑り出しのところがなめらかでないと、魚にショックというか違和感が伝わって、首を振ってフライが口から外れてしまう、ということが起こりやすいです。

ーー スイング中のドラッグの強さはどれくらいですか?

安田 バックラッシュをしないというのが大前提ですけど、その状態で、スイング中の流れの抵抗でラインが引き出されない程度のゆるさ、に設定しています。ただ、ちゃんとフッキングした後は、ドラッグを少し閉めます。サクラマスでも大きくなればラインを引き出しますから、そのままでは走られた時に、最初のドラッグセッティングのままだと弱すぎるので。また、プールを釣る場合と瀬を釣る場合だと瀬のほうが強めのセッティングになります。

強い流れの中でスイングさせる場合はドラッグ設定も若干強め

ーー この設定はニジマスだと変わるのでしょうか?

安田 実は、ニジマスはスイングで釣るよりもナチュラルで釣ることのほうが多くなるんです。スイングとナチュラルの中間という釣り方も増えてくるので、この場合はこちらから積極的に合わせます。スイングの釣りと区別するためにドリフト、という言葉を使いますが、ドリフト中はランニングラインを握っていますし、ドラッグももう少し強くします。ニジマスのほうがサクラマスより口が硬いし、フッキング初期にダッシュしたり暴れることが多いので、ドラッグが弱いと即バックラッシュしてしまいます。ナチュラルの釣りは魚がフライをくわえたらラインを引き出してほしいというふうには考えていません。ただ、渇水期の釣りではどうしてもフライが小さくなるじゃないですか。そうなると当然ティペットも細くなって、そういう状態ではやっぱりイトは切られやすくなるので、ドラッグはなめらかなほうがいいですよね。

ーー 九頭竜川だと一番細いティペットは何Xくらいを使うのですか?

安田 細い時は4Xまで落とします。

ーー 本当ですか!

安田 僕は5月の通常水位だと3Xか2.5X(1.7号)くらいが一番多いですね。風が強いと仕方がないので2Xくらいまでにします。でも3Xは非常に使用頻度が高いです。そのためにもリールのドラッグのなめらかさは重要です。ニジマスでも渇水した時とか大型のフライで釣れない時では、ウエットフックでも8番とか10番まで落とします。そうすればティペットも当然2Xとか3Xになりますから。それでもし大きいのが掛かったらスムーズなドラッグは必要だと思います。

本流の釣りとはいえ、繊細なパターンを多用する

安田さんの定番ともいえるピーコックソードをウイングに使ったパターンは秋でも有効

ーー アスキスリールはどのような経緯でデザインされたのでしょうか?

アスキスリールの背面。外見は非常にシンプル

安田 形そのものはシマノのデザインですが機能的なことはいろいろと要望は出しました。まず防水ドラッグであること、そしてとにかくなめらかであること。だけど、自動巻きにならないように、魚がラインを引き出した時にわかるように必要最小限のラチェットが付いています。それから7/8サイズはラインがリールのフレームからはみ出ないようにリムがついています。

リムが作られたスプールは細いランニングラインが巻き込まれにくい

ーー 防水ドラッグは本流でも必要ですか?

安田 ツーハンドの釣りって湖でも川でも基本的に深く立ち込んでいるので、リールが水に浸かっている時間って思いのほか長いんです。その状況を変えるわけにはいかないので、ツールのほうでそれに対応するしかないから、防水ドラッグなんです。ドラッグシステムの中に水が中に侵入すると、当然シルトなどの微粒子が入ってくるので、性能が劣化したり、いろんなトラブルが起きますから。メンテナンスフリーにもなりました。

ドラッグは完全に密閉され、メンテナンスフリー

ーー 自動巻きとはどういうことですか?

安田 キャスティングしている最中にスプールが勝手に巻き取り方向に回転してしまうことです(笑)。これだとキャスティングするたびに距離が短くなってきてしまいます。なめらかなリールほど、たくさん巻き取ってしまうことになります。アスキスリールは極めてなめらかなので、ラチェットはそれを抑制するためにの役目もあるんです。

ラチェットは、キャスティング中のスプールの回転防止と、アタリがわかりやすくするため、というあまり聞いたことのない理由で取り付けられている

ーー なるほど……。ウエットフライでのリールの役目はかなり大きいのですね。ですが、ランニングラインを持たずにフライをスイングさせるのは、最初は勇気が必要かもしれません(笑)。

安田 一度うまくいった経験をすれば躊躇しなくなりますよ(笑)。ぜひ試してみてください。

2018/11/1

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