夢に近づくロッド、『Asquith』。
福井県/九頭竜川のサクラマス
安田龍司=文 浦 壮一郎=写真 九頭竜川はもちろん、今年は日本海側の河川の多くでサクラマスの好釣果が聞こえてきた九頭竜川のサクラマス自然再生産を増やす活動を行なう「サクラマスレストレーション」の代表を務め、自身もこれまでに多くのサクラマスを手にしている安田龍司さん。シーズン中のシマノ『Asquith』ロッドの使い分け、そしてラインシステムについて聞いた。
この記事は2016年7月号に掲載されたものを再編集しています。
2月、福井県・九頭竜川のシステム
2月1日の厳寒期から始まり、融雪による増水期を経て、5月末の渇水期まで続くサクラマスシーズン。やはり状況に合わせてロッド、ライン、フライを使い分け、柔軟に対応することが好結果につながるようだ。最近私が季節状況に合わせて使用するシステムについて、紹介してみたい。2月は融雪が始まるまでの期間、水量はそれほど多くはなく、ニゴリは少ない。またサクラマスはフレッシュランが中心となる。そこでタイプ3からタイプ5のラインを中心に使用し、比較的大型のフライをある程度沈めて釣ることになる。
このような状況で使用するシステムは、次のようなものである。
ロッド◉Asquith(アスキス) 14フィート#8、15フィート#8
ライン◉STS-R 450〜550グレイン タイプ3〜5
リーダー◉フロロカーボン2/0X〜1/0X 9フィート
ティペット◉フロロカーボン 1/0X〜0Xを4フィートほどリーダーにプラス
フライ◉7〜10㎝の各種ストリーマー
『Asquith』の魅力のひとつに、オーバーヘッドにもスペイにも対応できるということが挙げられる。実釣においてキャスティングを使い分けられることは、より幅広いポイントを攻略できることにつながる
春以降のタックルとラインの使い分け
3月は融雪による増水が続く日が多く、それに伴いニゴリも入る。そのため増水の程度に合わせて、比較的岸寄りをねらうか、深場をしっかりと沈めてねらうことになる。サクラマスはフレッシュランと、遡上して少し時間が経過した個体が混在している。ロッド◉Asquith14フィート#8、15フィート#8
ライン◉STS-R 450〜550グレイン タイプ3〜7、STS 500〜550グレイン タイプX
リーダー◉フロロカーボン 2/0X〜1/0X 9フィート
ティペット◉フロロカーボン 1/0X〜0Xを4フィートほどリーダーにプラス
フライ◉7〜10㎝の各種ストリーマー
4月は融雪増水が少し残るが、徐々に水量が減りはじめ、それに合わせてニゴリも薄くなってくる。サクラマスはフレッシュランと遡上して時間が経過した個体が混在している。この時期は水量の変化も大きく、ストリーマーもウエットフライも効果的で、逆に迷いの原因になったりもする。
ロッド◉ Asquith13フィート6インチ #6、14フィート #8、15フィート#8
ライン◉STS–R 450〜550グレイン タイプ2〜7、九頭竜スペシャル 400〜460グレイン、アトランティックサーモンSI〜S2
リーダー◉フロロカーボン 2/0X〜1/0X 9フィート、サーモンリーダー 2/0〜0X16フィート
ティペット◉フロロカーボン1/0X〜2Xを4〜6フィートほどリーダーにプラス
フライ◉5〜8㎝の各種ストリーマー、#6〜8(TMC7999)各種ウエットフライ
5月は農業用水の取水量が増え、例年水量が非常に少なく、GW前から始まる代掻きの影響で前半かなりニゴリが強い。サクラマスは遡上後時間の経過した個体が中心となり、ウエットフライが効果的なシーズンとなる。
ロッド◉Asquith12フィート6インチ #6、13フィート6インチ #6、14フィート #8
ライン◉九頭竜スペシャル 340〜460グレイン
リーダー◉サーモンリーダー 2/0〜2X16フィート
ティペット◉フロロカーボン 1X〜3Xを4〜8フィートほどリーダーにプラス
フライ◉#6〜8(TMC7999)または#8〜10(TMC784)各種ウエットフライ
キャスティング時の写真を見ていると、『Asquith』は軟らかいロッドに思えるが、それは決してパワー不足であるわけではない。高い反発力によってラインスピードを上げることができ、キャスティングは非常にスムーズである。ねじれに強いブランクスによりラインの直進性も高い。また感度が高く、水中のようすをイメージしやすいのも、釣り人にとって大きなアドバンテージになる
高感度だからこそできる釣り
このように季節や状況の変化に対応してロッド、ライン、フライなどを替え、釣り方も変わるサクラマス釣りだが、大まかにいうと、水量が多い時はサクラマスの活性も比較的高い。大型フライを沈めてリトリーブする釣りが効果的で、目立つフライとアクションを最初に試してみる。次に、水位の変化が小さい状態が数日続く日は、たとえ2月、3月であったとしても、ウエットフライとインターミディエイトからタイプ2くらいのラインを組み合わせて、スイングの釣りを試してみるとよいことがある。シーズン終盤では水量が少なく、水温も高くなるので、フローティングラインと小型ウエットフライが効果的で、リーダーは細く長いほうがよい。
安田さんがキャッチしたサクラマス。筋肉の塊のような魚だが、『Asquith』によりそのパワーを吸収し、余裕を持ってファイトすることができる
Photo by Ryuji Yasuda
またできるだけ軽いラインで静かに遠投できれば、それだけ確率が高くなるのはいうまでもない。さらに河原を歩く時、水中を歩く時も音には細心の注意を払いたい。フライをキャストする前に警戒されてしまっては、自分だけではなく、周囲の釣り人の確率まで下げてしまう。
近年、早期からウエットフライを楽しむ人々が増えているが、これは小型のフライでサクラマスをねらう釣りが非常に楽しいからだろう。しかし一方で、大勢の方が同じようなフライで同じような釣り方をすると、サクラマスの反応が若干悪くなり、ショートバイトが増える傾向も見られる。
真のある強さながら、柔軟に曲がりを楽しめるロッドに仕上がった
その対策として、『Asquith』の高感度を活かしてスイングスピードを正確にコントロールし、それと合わせてドラッグ性能に優れ、滑らかに逆転するリール『Asquith 7/8』のドラッグをできるだけ弱く設定して、サクラマスに違和感を与えないようにしている。また、近年私はすべてのフライでバーブを潰してバーブレスフックとして使用している。これは当初サクラマスへのダメージを最小限に抑えるために始めたのだが、結果としてフッキングがよくなり、バラシも減り、サクラマスの傷も小さくすることができた。
安田さんが本流のサクラマスねらいで使うフライたち
広い流れのなかをスイングする小さなフライをサクラマスがくわえ、反転する時にリールからラインがジィーと出ていく瞬間。そして一呼吸置いてアワセをしたロッドに、サクラマスの重量感が伝わる時……。これは本当に楽しいものだ。
シーズン後期に有効なフローティングラインと小型フライを使い、表層を静かにスイングさせる釣りは、九頭竜川に限らず、各地のサクラマスが釣れる河川で有効と思われる。そしてサクラマスと出会えたならば、取り扱いには細心の注意を払いたい。記念撮影は素早く済ませ、秋に産卵してもらえるようにリリースしよう。サクラマスが命をつなぐことができるように。
● 問合先 シマノ
0120・861130
九頭竜川の本流には、やはりロマンがある
2017/7/18