爽快! 吉ヶ平フィッシングパーク
充実の自然渓流型管理釣り場
FlyFisher編集部=写真と文7月下旬、新潟県三条市を流れる管理釣り場「吉ヶ平フィッシングパーク」に、秋田のフィッシングガイド、渋谷直人さんが訪れた。この釣り場では、渋谷さんは昨年秋の「FLY FISHING EXPO下田郷」にて上流部で軽くロッドを振ったことがある程度。今回はエリア下限から上限まで、びっちりと釣ったあと、話を伺った。
渋谷直人(しぶや・なおと)
1971年生まれ。秋田県湯沢市在住。バンブーロッド・ビルダー。地元の伝統工芸である漆塗りの職人として生活しながら、自ら制作するバンブーロッドと全長20フィートを越えるロングティペット・リーダーで尺ヤマメを追い求める。鋭い観察眼から生まれる理論やフライパターンも注目に値する。
●公式ホームページ www.kawatsura.com/
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入渓前、八十里橋より上流を望む。区間内の駐車場は山荘の前のみになり、あとは徒歩で移動する。「魚、見えませんね……」。この時点で先行者を3人確認できた
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入渓点は橋付近にある。このような看板が設置されているので、見逃すことはないだろう
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エリア下限の7号堰堤。ここより上を釣り上がる
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7号堰堤より下流の流れ。ここもキャッチ&リリース区間になる。魅力的な渓相が続く
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エリアはバーブレスフックのみ使用可能
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7号堰堤より下流の流れ。ここもキャッチ&リリース区間になる。魅力的な渓相が続く
下流はワイルドな大渓流
―― 改めて今回、吉ヶ平フィッシングパークを釣ってみていかがでしたか。
上流区間は昨年の秋、イベントで見たのですが、今回初めてエリアの下限から上限まで全体を釣りました。
下流のほうが意外と大渓流でしたね。区間がスタートする7号堰堤から最初の橋、千年悠水橋を超えるあたりまででしょうか。その上流は少し規模が小さくなってくる感じです。全体的に上は開けているし、フライフィッシング向きの渓相ですよね。
下流エリアは大渓流的な釣り場というか、あくまでも自分の感覚なんですけれど、魚は細かいポイントにめちゃくちゃいるということでもないのですが、魚は決まったところにいるという感じといいますか。水深のある深瀬をメインにミスらなければ一投でポンとでる。典型的な大もの釣り場という感じです。最初に釣ったヤマメも、一番いい岩盤のプールの流れ出し部分についていましたし、渓相だけでなく、魚の挙動も自然渓流の雰囲気があります。
また、放流の状況にもよるのでしょうが、密度も濃くなくて通好み、といえるのではないでしょうか。しかも千年悠水橋の手前で釣れたイワナはネイティブっぽかったですし、ワイルドな感じで「管理釣り場」という感じではまったくないですよね。川の規模が小さくないので、増水すると危険なところもありそうなので、注意が必要なくらいだと思いました。
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開けている、いわゆる「大渓流」な流れ。フライフィッシングに向いたシチュエーション
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この区間初釣行の渋谷さんはまずは深い瀬をねらっていく
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まずは大きなポイントにフライを流す
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先行者がいない自然渓流ならば好ポイントになる、プールの流れ出し
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最初の1尾はこのあたりで出た
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べんじょあぶをがっぽりくわえたのは重量感のあるヤマメ。32cm
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理想的なポイントに付いて、理想的にフライをくわえてくれた
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「想像以上の魚です」と渋谷さん
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引き続き釣り続ける。川の状況を把握するため、細かいイントにもフライを落としていく
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どんな魚がどこにいるか把握できていないため、小さな石の前もていねいに探る
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するとイワナがヒット
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成魚放流されたものなのか不明だが、野生味充分の魚
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千年悠水橋付近。濡れた足跡を確認したので、対岸のみにねらいを絞ってい
先行者がいる状況を楽しむ
―― 千年悠水橋から上はもう少しコンパクトになりますね。
そして魚影が多くなってくる印象ですが、釣り人のプレッシャーが高くなって、沈み石の裏側だったり、スリットだったり、キャッチ&リリースエリア独特、といいますか、人が歩いた後の着き場に魚がいる感じでした。そこから最後の堰堤したまではびっちりいる感じですね。放流されている魚の質も想像以上でした。
僕が釣った時は、吉ヶ平山荘の裏のプールに魚が溜まっているようでした。今回は時間の関係で、フライを変えずにそのままサッと釣ってしまいましたが、時間をかけてフライを変えながら釣っても楽しいでしょうね。魚はたくさん見えていましたから。
―― 山荘で券を購入する時に名前を書くので、自分の前に何人入っているかが事前にわかりますが、今回は8人でした。
橋の上から川を見た時にも3人ほどいらっしゃったし、途中で追いついちゃいましたからね(笑)。
川の規模にもよりますが、自然渓流だとしてもそれほど先行者を気にする必要はないと思っています。複数人をガイドするとよくわかるんです。ひとりが歩いた後でも釣れることは本当にたくさんありますから。ということは、人が釣った後は釣れないと思い込むのはよくないし、時間帯によっても出てくる魚も違いますし、がっかりすることはないんです。
小さいポイントなら、魚はちょっと逃げても15分くらいで戻ってきてエサをとり始めるものです。小さいポイントというのは、隠れ家とエサをとる場所が近いので人が歩いても比較的短時間で復活します。逆にプールだと時間がかかりますが。だからこうした釣り場では特に小さいポイントは逃さないことは重要だといえます。
また、多くの人は手前側を釣っているので、流れの中心から向こう側をターゲットにすればまだまだ釣れると思います。ほとんどの人が右利きですから、普通はこっちからやるよね、ということが想像できるじゃないですか。先行者がいるのが確実だったら、その逆をやればいいわけです。手前を捨てられるので逆にポイントを絞りやすいかもしれません。
右岸から釣り上がる人が多い場合は、実は右岸ギリギリのポイントもサオ抜けになりやすいものなんです。左岸に立ってバックハンドで右岸ギリギリを流すと釣れることもよくあります。
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渋谷さんの上に見えるのが千年悠水橋。入渓前にはこの橋の上から魚が見えたのだが……
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先行者がいる場合、小さなスポットこそしっかりねらいたい
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バックスペースは充分なので、ストレスなく釣り上がることができる
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が、細かいスポットからは反応はない。「大きな魚は基本的につかないですからね」
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増水後という状況もあって、水量は豊富
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とにかく対岸をねらう
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このあたりで先行者に追いついてしまったので、ちょっと時間を開けるために粘ってみる
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時間を開けたことが奏功したか、先ほどと同サイズのヤマメがヒット
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サイズがサイズだけに重い
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なかなか止められない
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重い!
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やっとのことでランディング
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先ほどと同じく凛々しいオス
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上に見えるのが、八十里橋
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小さなスポットからスッと出てきたのは……
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またもや重量感のあるヤマメ
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「このサイズと連続的にやりとりできるフィールドは貴重です」
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バイバイ
―― 今回のフライはべんじょあぶ1本で通しましたね。
夏だったらテレストリアルで充分だと思います。秋になると水生昆虫やテントウムシ、カメムシも絡んでくるかもしれませんね。
フライも先行者が使っているものを予想しながら、違うパターンを選ぶというのも楽しいですしね。ある形状のフライが妙に釣れないとなれば先行者が使っている可能性があるわけですし。形状、シルエット、浮き方、素材、色、サイズなど変更点はいくらでもあります。たとえばビートルだったらボディーが玉なのか細身なのか、ボストの素材もハックルの質でも結果は違ってくると思っています。
まあそれも、この釣り場くらいのクオリティーを規模があれば、ということになりますよね。管理釣り場といってもあのサイズのヤマメでやりとりできる、というのはとても貴重なのではないでしょうか。
今回の釣りでも、本来はそんなところに尺ヤマメはつかない、という小さな場所からも大型のヤマメ出たりして、いろいろなレベルの人が楽しめるキャパがありそうです。
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写真ではわかりにくいかもしれないが、ダウンで右岸の巻き返しをねらってヒット
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やっとランディングしたら……
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大型イワナだった
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鳥に噛まれた跡が猛者の風格を醸す、グッドサイズ
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引き続き対岸をねらう/p>
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吉ヶ平山荘まで釣り上がってきた
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上流に見えるのが樽井橋。そのさらに上流がエリア上限の1号堰堤
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上流部は川幅が狭まってくるが、同じように大型ヤマメがロッドを絞った
吉ヶ平山荘裏のプールでもヒット!
こちらはスクールの模様です
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こちらは7月に開催された三条市主催「渋谷直人渓流ロングティペット・スクール」の模様。当日、大雨で大増水という状況で、急遽吉ヶ平山荘内でのレクチャーに変更
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タイイングも行なった
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キャスティングやプレゼンテーションに注目しがちだが、ロングティペットを扱ううえでとても重要なのは、釣り以外の所作。トラブルのない、セッティング方法や、キャスティングをスタートさせるまでの動作などをじっくりと解説
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午後、雨が上がったので、キャスティングのレッスン。バックが倒れすぎないように矯正中
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山荘の前は広々とした芝生スペース。キャンプ場なのだが、あまりの悪天候のため無人だったのが幸いだった
大雨の中、なんとか終了。お疲れ様でした!
2022/8/6