ウエーダーを洗ってみる。
シーズン中の汚れを落とす
FlyFisher編集部=写真と文
ウエーダーを洗ったことはありますか? 使い続けて「くたびれてきた」ウエーダーも、効果的な手入れをすれば、昔の履き心地が戻るかもしれない。
この記事は2009年12月号に掲載されたものを再編集しています。
ウエーダーは洗ってもよいのか?
ウエーダーを手入れしてみようと考えると、思いつくメンテナンスといえば「洗う」ことくらい。だが、そこで疑問が浮かぶ。そもそも、ウエーダーって、洗うものなのだろうか? 試しに周囲に意見を求めてみても、裏返して干すのは当然として、洗ったことがある、日常的に洗うようにしているという人は非常に少なかった。「渓流で使うのだから、干すのは当然として、洗濯までする必要はないのでは?」という考えの人がとても多い。
だが、シーズンをとおして水のきれいな場所にばかりに行くとは限らないし、川からの出入りの際に土や泥がこすれるように生地に染み付くこともある。そこで、まずはウエーダーを洗うことにそもそも意味があるのか、ウエーダーメーカー数社の担当者に問い合わせてみた。
すると、「何より大切なのは裏返しての陰干しなどの日常的なお手入れ。だが、強い汚れがある時には、洗うことにもたしかに効果がある」という回答が得られた。

そもそも、ウエーダーに使用される透湿防水生地は、「外からの水を通すことなく、内側からの汗を外に出す」という構造を持っている。
代表的なゴアテックス(GORE-TEX)の場合、その基本構造は、ゴアテックスメンブレンと呼ばれる1枚の透湿防水性能を持ったフィルムを、表側と裏側からほかの生地で挟むという形をとっている。そして、一体化された生地そのものは、ファブリクス(GORE-TEXファブリクス)と呼ばれる。
ウエーダーのカタログによく見られる「3レイヤー」や「5レイヤー」というのは、このファブリクスがそれぞれ3層構造、5層構造(耐針性がより高い)になっているという意味だ。
そして、レインジャケットやテントなど、ウエーダー以外の透湿防水生地を使ったアウトドアウエアやグッズにおいては、生地全体の撥水性や透湿性を維持するために、メンテナンスの一環として購入後も洗濯や撥水処理をするのが常識的な方法になっている。
だが、ことウエーダーに関しては、洗う方法はあまり紹介されない。そこには、相応の理由があることも各社への問い合わせで分かってきた。
A社 担当Sさん
「撥水性を回復する、透湿性をよくするという目的で、透湿防水素材のウエーダーを洗うことに効果があるのは間違いありません。ただ、ウエーダーというのは各部のシームから、ストッキングブーツとの接合部まで、非常にデリケートな加工をして作っているものなので、その部分にダメージを与えてしまうようだと洗濯がかえってマイナスになってしまう恐れがあります。
そのため、メーカーとしては積極的には洗濯を推奨していません。基本的には外側の汚れがひどければゆすいでいただく程度で、あとは川から上がったら裏返して陰干しにし、特に傷みやすいネオプレーンのソックス部分を直射日光に当てっぱなしにしないうちに取り込むなど、基本的なメンテナンスをしていただければと思っています」
B社 担当Yさん
「洗うこと自体にはやはり効果があるでしょう。ウエーダーの外側に泥汚れや魚のヌメリが付いた時はやはり洗いたいものです。その際は、ぬるま湯に家庭用の中性洗剤を少量溶かし、軟らかめの濡れたスポンジや布でやさしく手で押し洗いするとよいと思います。
生地を傷つけるおそれのある、硬いタワシや軽石などはダメです。内側は匂いがついてしまってどうしても気になるというなら、同じように洗ったうえでしっかり陰干ししてください。
ただ、ウエーダーというのはもともと素肌に履くものではないですから、内側はそれほど汚れているわけではありません。気にし過ぎることはないと思います。あとは、撥水スプレーを外側に処理するのは効果的ですが、内側にかけてしまうと逆効果になりますので念のため」
「撥水性を回復する、透湿性をよくするという目的で、透湿防水素材のウエーダーを洗うことに効果があるのは間違いありません。ただ、ウエーダーというのは各部のシームから、ストッキングブーツとの接合部まで、非常にデリケートな加工をして作っているものなので、その部分にダメージを与えてしまうようだと洗濯がかえってマイナスになってしまう恐れがあります。
そのため、メーカーとしては積極的には洗濯を推奨していません。基本的には外側の汚れがひどければゆすいでいただく程度で、あとは川から上がったら裏返して陰干しにし、特に傷みやすいネオプレーンのソックス部分を直射日光に当てっぱなしにしないうちに取り込むなど、基本的なメンテナンスをしていただければと思っています」
B社 担当Yさん
「洗うこと自体にはやはり効果があるでしょう。ウエーダーの外側に泥汚れや魚のヌメリが付いた時はやはり洗いたいものです。その際は、ぬるま湯に家庭用の中性洗剤を少量溶かし、軟らかめの濡れたスポンジや布でやさしく手で押し洗いするとよいと思います。
生地を傷つけるおそれのある、硬いタワシや軽石などはダメです。内側は匂いがついてしまってどうしても気になるというなら、同じように洗ったうえでしっかり陰干ししてください。
ただ、ウエーダーというのはもともと素肌に履くものではないですから、内側はそれほど汚れているわけではありません。気にし過ぎることはないと思います。あとは、撥水スプレーを外側に処理するのは効果的ですが、内側にかけてしまうと逆効果になりますので念のため」
何で洗えばよいか?
ウエーダーの素材や構造を改めて理解してみたところで、方法さえ間違っていなければ、洗うこと自体は効果的なメンテナンスになり得るということが分かった。ただ、ここでもう1つ疑問がわいた。実際にウエーダーを洗うのに使えそうな洗剤を捜そうと、アウトドア専門店などを訪れてみると、それぞれに効能をうたったさまざまな専用洗剤が売られている。
そして、インターネットで透湿防水素材の洗い方を取り上げたサイトをのぞいてみると、「合成洗剤はダメ」、「中性洗剤はダメ」、「柔軟剤が入っているのは絶対にダメ」、「○○社の◎◎が最適」などいろいろな書き込みがある。
いったい、透湿防水素材とは、そこまで扱いが難しい素材なのだろうか? そこで、今回実際に洗ってみようと思っているウエーダーの生地製造元のひとつである、ジャパンゴアテックス株式会社(JGI)にも問い合わせ、詳しい話を伺ってみた。
――ウエーダーを洗おうと思うのですが、まずゴアテックスを採用したウエーダーは洗ってもよいのでしょうか?
基本的には問題ありません。ゴアテックスファブリクスの表生地には、生地全体の防水性と透湿性を機能させるための撥水処理が施されていますが、汚れの付着などによりこれが一時的に低下してしまうと、ウエーダーが重くなったり、一時的な透湿性低下の原因になります。そのため、汚れたまま長期間保管されるよりは積極的に洗って汚れを落としてください。
――おすすめの洗い方、あるいはお手入れの方法はありますか?
大きくは日常的なメンテナンスの方法と、次の使用までに時間がある場合のメンテナンスをご紹介させていただきます。
まず「シーズン中で、近いうちに使用機会がある場合」であれば、水道水で表側の汚れを洗い流し、必要に応じて裏側(身体に接する側)も洗い流してください。あとは、充分に乾燥するまで履き口を下にして、日陰で吊り干ししていただくのがよいと思います。
次に、「シーズンが終わり、次の使用まで時間がある場合」ですが、この時はまずピンホールや破れがないかを確認していただき(万一あれば補修)、外側に関しては、一般の衣料用洗剤を規定の量より少なめに水に溶かし、スポンジなどに含ませて汚れを落としてください。
内側については、同じく洗剤を薄めた水に漬け置き洗いしてください。洗剤が残らないように、充分にすすいでいただくことが大切です。あとは履き口を下にして日陰で吊り干しし、完全に乾いたことを確認してから高温多湿を避けて日の当たらない場所に保管することをおすすめします。
さらに撥水性が低下している場合は、アイロン掛けによる熱処理や市販の撥水スプレーによる撥水処理をおすすめします。アイロン掛けをする際は、表生地に当て布をして、低温でアイロンを掛けていただくと表生地の撥水性が回復しますよ」
――いわゆる専用洗剤でなくてもよいわけですか?
そうですね。専用をうたっている商品をお使いいただくのは自由ですが、ジャパンゴアテックスとしては特定の洗剤でなければ機能が低下するということをアナウンスしているわけではありません。
「柔軟剤や漂白剤は生地に悪影響を及ぼすからそれらの成分が入っている家庭用洗剤はダメ」ということもよく言われますが、それらの成分がある程度入っているというレベルの通常の衣料用洗剤であれば、しっかりとすすぎ洗いさえしていただければまず問題ありません」
いざ、WASH UP!
メーカー各社からのアドバイスも参考に実際に手洗いしてみた。作業自体は「洗う」→「すすぐ」→「陰干しする」というシンプルなもの。最終的には自己責任で、ベストに近いと思われる方法を試してみた。ここでは屋外で作業したが、家庭であれば風呂場で作業してもよいだろう。

A ①軟らかいスポンジ&歯ブラシ、②一般家庭用洗剤(液体石けん・弱アルカリ性)、③ゴム手ぶくろ(手の保護)
B 防水・撥水スプレー(透湿防水素材に使用可とされているもの)
C 大型の衣装ケース(洗濯用のタブとして)
[洗う際に注意したポイント]
・透湿防水生地を傷めないよう作業は手洗いで行なう
・洗剤は薄めて使う
・洗い以上にすすぎを重視
・内側はシーム部分やストッキングとの接合部は必要以上に洗わない
・洗い終わったらしっかり陰干しする
・透湿防水生地を傷めないよう作業は手洗いで行なう
・洗剤は薄めて使う
・洗い以上にすすぎを重視
・内側はシーム部分やストッキングとの接合部は必要以上に洗わない
・洗い終わったらしっかり陰干しする










2017/9/25