目指すのは直線的なアッパーレグ
ループの上側を直線的に保てば……
加藤 力=解説
ループを作るうえで最も重要なことは、ループの上側を直線状に保つこと。必要以上にラインスピードを上げず、できるかぎり力を抜いて遅めのスピードを心掛けることで、トラブルなく、ロッドティップの動きを制御しやすくなる。
この記事は2016年3月号に掲載されたものを再編集しています。
《Profile》
加藤 力(かとう・つとむ)
1971年生まれ。愛知県名古屋市在住。「加藤毛ばり店」を営みながら、キャスティングインストラクターとして、精力的にスクールなどを実施している。渓流からソルトまでさまざまなフィールドのフライフィッシングに精通している。
●加藤毛ばり店 www.katokebari.com/
加藤 力(かとう・つとむ)
1971年生まれ。愛知県名古屋市在住。「加藤毛ばり店」を営みながら、キャスティングインストラクターとして、精力的にスクールなどを実施している。渓流からソルトまでさまざまなフィールドのフライフィッシングに精通している。
●加藤毛ばり店 www.katokebari.com/
加藤力さんのキャスティング解説動画はこちら!
【フライキャスティングの基本】
【フライキャスティングの基本】
ラインの長さでストロークを変える
渓流シ—ズンが始まってからの僕の釣行は、長良川のミッジングから始まり、翌週にはツ—ハンド・ロッドを持って犀川に足を運ぶ。そして3月1日には蒲田川でマッチング・ザ・ハッチの釣りを楽しんでいる。さらにこの時期になるとシーバスの活性も高くなるので、渓流の合間を縫って海に出かけることも多くなってくる。そんな感じで、解禁から初夏までは2週間ごとにフィ—ルドと対象魚が増えていくのが毎年のパターンだ。そこでキャスティングの話になるのだが、こんな時期は番手が変わっても身体の動きが混乱しないように、できるかぎりロッドのアクションを統一して、フォームを変えなくてもよいタックルを選択している。
僕のキャスティングでは、ラインの長さに応じてストローク(肘の前後の押し引きの長さ)とアーク(ロッドのスター卜位置とストップ位置が作る角度)を調節している。
ホールのいらない10m前後の短いラインでは、身体の前でロッドを動かすが、さらにラインが長くなってきたら徐々に脇を開いて前後のストロークを長くしていく。ロングキャスト時には身体をロッドハンド側に大きく開くようにしながら、肘を先行させるイメージで、身体よりも後方のスペースを大きく使う。
このように必要に応じて振り幅を可変させるスタイルでは、ショ—トキャストの場合のストロークはわずか数センチほど。一方30m以上のラインをキャストする時には1m以上ロッドハンドを前後に移動させるようなフォームを取り入れる。
特にストロークを長くとるキャスティングでは一見動きが大きく、力任せに投げているように見受けられがちだ。しかし長いストロークではラインスラックを取り除いてからリストを返すような動きになるため、パワーロスが少なく、力を入れなくてもラインを飛ばせる省エネキャストだといえると思う。
またこのスタイルは身体から離れた位置でル—プを作ることも容易で、ヘビーウエイトフライやシンキングラインなども安全にキャストできるという利点がある。
カの入れすぎには注意
ビギナーの人で、フライキャスティングは肩の力を抜いてリラックスして行なうとよいと教わった方も多いだろう。その理由はふたつ。ひとつはラインスピードを上げるために必要以上に力を入れてロッドを振ると、ロッドティップの軌跡を管理しにくくなるのだ。的確なループを作るためには何よりもアッパーレグ(ループの上側)を直線状に描くことが欠かせないが、それが難しくなる。ル—プの形が崩れてしまうとせっかくのパワーが伝達しなくなる。

もうひとつは、キャストの勢いが強すぎるとラインがオーバーターンしてしまうということ。これによりスラックが入り、同様にループの形が維持できなくなる。そうなると、飛ばそうと思えば思うほど逆効果になる。
そんな症状を自覚したら、ロッドのティップ部分のみを曲げる気持ちでキャストしてみてほしい。力を抜いて、ループの形を確認しながらロッドを曲げてやれば、ループは素直に展開してくれるはず。

アッパーレグを直線に
僕が自分のキャスティングで最も気を遣っている点といえば、可能なかぎりラインスピードを落とすということ。キャスト中ラインが落下しない、ぎりぎりのラインスピードで投げることを意識している。これによりラインコントロールに余裕が持てるのでアキュラシーを高められる。コントロールできないような高速キャストではフライやリーダーで水面を叩くことも多く、魚釣りにおいては何のメリットもない。ループの形を整えれば整えるほど、ラインスピードの遅いキャストが可能になるはずだ。


ちなみに僕にとっての「よいループ」とは、前述したようにアッパーレグが直線を描き、しつかりとラインが飛んでいく方向に向かっていくループ。アッパーレグが大きな曲線を描く、スラックが入る、ねじれているなどの症状が出ていれば、当然ラインはスム—ズに伸びていかない。

キャスティングの練習では、ループの先端の幅を意識する人が多いように感じているが、先端の幅は状況、必要に応じて調整するもので、その部分の広さを意識するより、まずはアッパーレグをまっすぐに整えるようにしたほうが、より効果的な練習ができると思う。
ちなみにアッパーレグが円弧を描くとループ先端が広くなることも覚えておきたい。
2018/6/22