加賀フィッシングエリア爆釣フライインタビュー
栃木県の加賀FAをホームにしている栗田さんに話を聞いた
栗田洋二=解説 編集部=写真栗田さんがタイイングをされるうえで、一番気をつけていることは何ですか?
釣れるハリを作るっていうことです。人よりも1尾でも多く釣りたいなということですかね(笑)
その「釣れるハリ」とは具体的にどういうことでしょうか?
それは人によって違うでしょうけれど、私にとっては酎久性は重要です。パターンとしてはあんまり悩まないほうだと思います。まあオリーブと茶があればだいたいどこの釣り場でも間に合うかなという感じで、5投してなにもなければフライを替えるのではなく、場所を移動してしまいますから。
耐久性を上げるための工夫はどのようなものがありますか?
具体的には、ゼリー状の瞬間接着剤を使うようになってからじゃないのかな。本当にフライが丈夫になったのは。
魚の口からフックを外すときなどに壊れてしまったら手返しが悪くなりますからね。
でも本当に数が釣れるという時には手前で釣れないとダメなんです。遠い位置で掛かったんじゃ、寄せてくるまでに時間がかかってしまうから。だから本当に大釣りするなら、リーダーが入る寸前になってから掛かる、という場所を見つけることも結構重要です。ヘッドが入る寸前で掛かるというのが理想ですね、私としては。
シールズファーについてはいかがですか。やはり天然素材がよいとか……。
水中に入っている時のきらめきですよね。化学繊維ではやっぱりあの雰囲気は出せないと思っています。それを扱いやすいようにいろいろ処理をしているんです。ダビングもツイスターを使ったこともあるのですが、私の場合耐久性が落ちるんですよね。使っているうちにファーが抜けちゃったり。あと、ボディーが全体的に固くなっちゃう。ボディーを太くしたくもないので、自分はダビングがいいですね
柔軟剤を使うというのは衝撃でした(笑)。
着ているものでも柔軟剤で軟らかくなるって聞いて、そういうことならこれに使ってもいけるかな、と思って(笑)。でも最初にやった時に色が落ちちゃって
それで酢で煮るように……。
それは染色屋さんに聞きました。「色が落ちちゃって違う色になっちゃうんだ」と相談したら「色止めにはお酢が一番いいんだよ」って教えてくれました。だからハックルでも何でも、色止めするのならお酢ですね。
お酢は何でもいいのですか?
何でもいいですよ。黒酢ならなおよい、とかそんなことはないです
柔軟剤もなんでもよいのですか?
はい。そこまで細かくは決めていませんが、2日、48時間は漬けています
2日……。それはダビング材を軟らかくして、細いポディーを作るためということですよね。その後、突いていらっしゃいますが、ゴマみたいにすっちゃうとダメですか。
すったら切れちゃいます。極端な話、粉のようになっちゃいます。今まですり鉢は2回くらい壊しちゃいました。でも丼ではダメ。丼くらいの大きさのすり鉢が一番いいですね(笑)
ボディーを巻いた後、毛羽立たせることもありませんね。
昔はニードルで掻き出すようなこともやっていたんだけど、もう今はハックルが取れちゃうということはほぼなくなりましたから。
ハックルはコックサドルがメインなのでしょうか?
どっちかというと今使っているやっはヘンのネックですね。ただ、ヘンだと短すぎて、ゲジゲジのボディーハックルには巻けないんですよね、アタマの部分だけ巻くならともかく。
ハックルをスレッドに巻きつけてからシャンクに巻いています。あれはハックルのファイバーが均等にシュッと出ているより釣れるということもあるのですか?
いえ、釣れるということよりも丈夫なほうが重要ですね。ボディー材はゼリー状の瞬間接着剤でくっつけてあるから丈夫と。ボディーハックルの耐久性を上げるためには、スレッドにグルグル巻きつけるんです。でも安いスレッドだったら切れちゃうかもしれないですね。フライを丈夫にするためにスレッドは高くてもよいものを使っています。
最もメインで使うフライはどれになりますか?
だいたい#12のゲジゲジですね。
あのフライはなぜテイルがついていないのでしょうか?
テイルばっかりかじられてフッキングしない、という水中映像を見たんです。昔つり人社さんから出した、私が出演したVHSビデオで(笑)。あれは本当に勉強になりました。私が引いているフライの水中映像で、そこでは魚にテイルがかじられているのですが、私にはそれがまったく伝わってこないんです。水中でそんなことが起きているなんて思いもよらなかった。だったらテイルいらないなって思って。
テイルはなくても平気でしたか?
そのほうが数は伸びました。要するに魚が食う時って、フライの動きが変わった時なんだと思うんです。フライがスーッとただ動いている状態から、ちょっと変化した時。だから私は一度のリトリーブで早く引いたり、ゆっくり引いたりして常に変化を意識しています。でも本当に釣れるのは、フライが止まった時。そこからちょこっと動いた時だと思います。
ということは、動きが変わりやすいフライを意識されているということですか
ウェイトの入ったフライは自分ではほとんど使わないですね。動きが変わりにくいと思っているので。フライの深さはラインで調整しています。一度のリトリーブでさまざまな深さを探るイメージですかね。
ハックルがランダムに向いているのをパイプでクセづけしています
あれはハックルを寝かせるためです。特に硬いファイバーのハックルだと、フライが回転しちゃいます。魚の口の掛かりどころを見て、から上アゴに入っている場合は、フライが回転しているなと分かります。フライの回転のヨレはリーダーにも出るし、ひどいのはラインにも出ちゃう。それは防ぎたいですから。コックのサドルなどそういうことは多いですよね。毛が硬いから。だから巻いたらチューブに入れておくんです。ずっとそのままフライボックスに入れておいて、取り外して使います。ヘンならばそういうことはあまりないですけどね。
あとはUVですよね。
自分では釣れると思っています。最初はお尻のオレンジの部分に赤を使っていたんですよ。でもオレンジのほうがアピール度が高いってことで、今はオレンジですね。その上にケイムラをだいたい5回くらい重ね塗りします。それくらい塗るともう全然、艶が違いますね。3回くらいじゃまだまだです(笑)。薄く塗るのを5回。漆を塗るようにね。
天候にかかわらず、UVマテリアルを使いますか。
そうですね。UV使って違いがあるかといったらそれはわからないし、そんなに影響ないかもしれないけど、やったほうがいいんじゃないかなとは思ってます。濁っているところでは特にいいと思いますよ、UVは。
フライのサイズについてはもう決まっているのですか?
#14、12ですね。もう自分としては、このゲジゲジは完成したと思っています。自分でもフライを巻くのにもう迷わなくなりましたね。これがあればもう大丈夫だと。だから正直言って、いるいろなフライを巻きたいとは、もう思わないんですけど、毎日最低5本、このフライを巻く、という日課を続けているんです。ただ、自分でもいまだにフックは悩んでいます。いつももっとバレない、伸びない、バランスのよいフックを探しています。
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栗田洋二さん。フライ歴50 年以上
2024/12/9