速乾性を巻く。

水を弾き、よりドライに釣るためのパターン

北角勝、天海崇、田中祐彦、小野田祥一=解説
ボディーのグースバイオットは水切れもよい

タイイング時のちょっとした手間が、実は浮力のあるフライとなって、スムーズな釣りを約束する。濡れても沈まない、夏用フライを巻く4つのヒント。

この記事は2012年8月号に掲載されたものを再編集しています。

ドライフライが沈んできたかなと思ったら、その都度水分を取るなどのケアをして、キャストし直さなければ、フライ本来の効果が得られない。しかし山岳渓流の連続した落ち込みを探る釣りや、雨中の釣りなどといった、通常よりもフライが沈みやすい場面では、その手間が煩わしくなることもしばしば。

フロータント云々ではなく、実は、フライのマテリアルや構造にちょっと気を遣えば、そんな問題は解消することが多い。たとえば水を吸収しにくいマテリアルを使う、フライの水切れをよくする、素材自体に浮力のあるマテリアルを取り入れる、中空構造にして浮力を持たせる……といったものだが、これらの方法を用いたフライなら、フォルスキャストだけで浮力を取り戻すことができ、また、魚を釣りあげた際も、その後すぐに浮力を復活させやすい。

もちろん、これらのフライにもフロータントを塗布すればさらに高い浮力を得られるわけだが、その効果を最大限に発揮させるという意味でも、タイイング時のワンポイントが大きな意味を持ってくる。ここでは、そんな浮力の持続性にこだわった、エキスパートたちのヘビーローテーション・パターンとともに、タイイングのコツを紹介する。

その1~水を吸収しにくいマテリアルを使用

グースバイオット・パラシュート(Flies by Masaru Kitakado)
●フック……ダイイチ1190 #12~18
●スレッド……TMC16/0各色
●テイル……ディアヘア・ナチュラル
●ポスト……カーフテイル・各色(視認性のよいもの)
●アブドメン……グースバイオット・ラスティースピナー
●ソラックス……ダビング材・各色
●ハックル……コックネック・各色


普段は鬼怒川水系の中規模渓流を中心に釣行する北角勝さんの場合、高活性でコンスタントにフライに反応がある時には、1尾ごとにフライを替える煩わしさを減らすため、特に水切れのよいパターンを選んでいるという。

この場合の水切れのよいパターンとは、ボディーにグースバイオットやストリップドピーコックなどを使用したもの。これらはフリューがないぶん水を含みにくい。また、ヘッドセメントや瞬間接着剤でコーティングすることによって、さらに水分を吸収しにくいボディーを作ることができる。

また、ボディーに限らず、パラシュートのポストにもちょっとしたこだわりがある。シンセティック素材が一般的ななか、北角さんはカーフテイルを使用。これは水分を含んでからの処理(息やキャスティングで水分を飛ばす)をする際に、カーフテイルのほうが水切れがよいと感じているからだ。もちろんこの場合も、グースバイオットなどを巻いたボディーにすれば、さらに使い勝手は上がる。
ハックルスタッカー(Flies by Masaru Kitakado)
●フック……ダイイチ1190 #12~18
●スレッド……TMC16/0各色
●テイル……ムースボディーorコック・デ・レオン(フックサイズに応じて変更)
●アブドメン……グースバイオット・ダークタン
●ソラックス……ダビング材・各色(ボディーカラーに合わせる)
●ハックル……コックネック・各色(モノフィラに巻いてからアイ方向へ折り返して固定)


このほか、ハックルに関しても同様の配慮がある。特に繊細なシルエットを表現したい場合には、ハックルを普通にシャンクへ巻くのではなく、シャンク上に留めたモノフィラにハックルを巻いてから折り返す方法をとっている。このほうが、ハックルファイバーが上側だけを向いている状態を作れるので、普通に巻いて下側のファイバーだけをカットしたものより、水切れがよく、水面へ張り付くように浮かんでくれる。

CDCはたしかに釣れるマテリアルだが、一度水を含んでしまったり、魚のヌルが付いたりすると、充分に乾かさなければ元の浮力を取り戻すことは難しい。一方、ハックルが上側だけに向くように取り付けたパターンでは、ほとんどその手間がかからない。
正面から見た状態。ハックルファイバーは上半分に集まっている

スタンダードパターンや、パラシュートパターンに比べれば、多少タイイングに手間はかかるものの、釣り場でのメンテナンスは少なくて済む。北角さんは降雨時や多少ラフな水面で、繊細なパターンを使いたい場面などに活用しているという。

その2~フォームを取り入れて、浮力と撥水効果を持たせる

エルクヘア・カディス(Flies by Takashi Amagai)
●フック……TMC102Y #13
●スレッド……モノスレッドS・ブラック
●ハックル……コックネック・グリズリー・コーチマンブラウン
●オーバーボディー……フォーム材・ブラック
●アンダーボディー……ピーコックハール
●リブ……ミラージュティンセル
●ウイング……エルクヘア・ナチュラル


浮力の高い素材自体をフライに取り入れるという方法もある。栃木県在住の天海崇さんはエルクヘア・カディスのボディーに、軽くて柔らかいフォーム材を使用している。

これによって浮力、フロータント材の処理をしなくても、常に最低限の浮力が確保されるので、おもに増水時の水量が豊富な時にねらう流れの速いフィールドなど、水中にフライが揉まれやすい状況でも安心して使うことができるからだ。

フォームを加えることによりフライ自体は若干重くなるが、一方で風のある状況でもコントロールがきくといったメリットも生まれる。フォームはオーバーボディーとして使っているので、上からボディーハックルを巻きつけるが、フォームがつぶれるほどきつく巻いてしまうと、内部の気泡が逃げ、浮力が減少してしまうので注意。

ちなみに、ウイングにエルクヘアを使う場合は、ナチュラルのほうが油分が多く、あらかじめ水を弾く性質を持ち合わせている。これに対してブリーチしたものは、油分も取り除かれているため、撥水効果は少ない。ヘアやCDCといった素材では同じマテリアルでもナチュラルカラーのほうが撥水がよいということを頭に入れておくだけでも、フライの浮力は変わってくる。
Tanaka’sフライ(Flies by Hirohiko Tanaka)
●フック……TMC100 #10
●スレッド……6/0ブラック
●オーバーボディー……フォーム材
●アンダーボディー……ピーコックアイ
●ハックル……コックネック・ブラック
●ウイング……エアロドライウィング・タン


鬼怒川水系のほか、C&Rエリアのニジマス釣りも積極的に楽しんでいる田中祐彦さんも、ラフな水面での釣りや、渓流での釣り上がりに使うフライには、簡単に浮力を得られるフォーム材を用いている。特にボディーを囲むようにフォームを取り付けたテレストリアルパターンは、フロータント処理に神経質になることもないため、使い勝手もよく、実績が高い。大きなニジマスを掛けても、そのまま次のキャストが始められるのが魅力だ。
下から見ると、フォームがボディーの両脇を回り込むような状態になる

棒状のフォームは後方がベンドに刺さっているため、スレッドで固定しているのはアイ部分のみ。そのため、フォームがつぶれず、より浮力を持った状態で取り付けることができる。この方法は、固定箇所が少ないが、しっかりと形を維持してくれるので、フライの大小を選ばず、ビートルなどのシルエットを作る際におすすめだ。強い流れに揉まれてもふたたび浮かび上がるほどの浮力を持つが、これに長くて柔らかいハックルを組み合わせることで、水面への接し方が柔らかくなり、姿勢も安定し、さらにフッキングの精度も上がると感じているという。

その3~少なめのマテリアルで、水分を飛ばす

ファジー・シルエット(Flies by Shouichi Onoda)
●フック……TMC100SP #10~16
●スレッド……8/0タン
●テイル……コックネック・ブルーダン
●ハックル……コックネック・ブルーダン


フライのマテリアルを極端に減らしてしまうという方法もある。鬼怒川水系の本流から上流部までをホームグラウンドにしている小野田祥一さんの場合、釣り上がりの際にはフライに余計な水分を含ませたくないため、マテリアルはハックルだけという超シンプル構造のフライを作っている。

あえてボディーを作らず、ワンマテリアルにすることにより当然水切れはよい。また、フロータントと合わせて使えば、水面を自在に転がしたり、滑らせたりすることも可能だ。あらかじめ浮力剤での処理は施しておくが、たとえ沈んでも、数回のフォルスキャストで、ほぼフライは乾いてしまう。

ハックルはフライが水面に高く浮くよう、硬めのファイバーを選び、1回転ごとに後ろに撫でつけるようにして巻き付け、後方に傾くようにするのがコツで、これによりフライの空気抵抗を減らすことができる。小野田さんは、日中の釣りではハックルを薄め(4~5回転)に巻いたもの、イブニングでは視認性を高めるために厚め(7~8回転)に巻いたものを使用している。

ちなみにこのフライ、はじめから特定の虫をイミテートしているわけではないので、何にでも見せることができるのが特徴。そのため汎用性の高いパターンが使いやすいブラインドの釣りに便利なのだ。

その4~空気を内包させて水を染み込みにくくする

ADWヒゲナガ(Flies by Takashi Amagai)
●フック……TMC9300 #8
●スレッド……ユニコード
●タグ……ミラージュティンセル
●ボディー……シールズファー・各色
●ウイング……エアロドライウィング・タン
●ハックル……コック・デ・レオン


このほか、フライに中空構造を持たせて、高く浮かせることで水を吸い込みにくいフライを作ることができる。天海さんは、よりストレスなくフライを浮かせたい場合、エアロドライウィングを使用して、空気を内包させた構造を作っている。

エアロドライウィング1束を2号のラインで強く結び折り返し、2つになった束を8本にほぐし(1束は4本に分けられる)、バルーンのような形にして巻き留める。形、方法ともに島崎憲司郎さん考案の「マシュマロピューパ」と同じ手法だが、これをウイングに用いることによって、視認性が増すほか、ボディーの形をしっかりと魚に見せることが可能になる。

普段はイブニングのヒゲナガの釣りに活用しているパターンだが、インジケーターフィッシングのマーカーのような浮力が得られるので、ニンフィングのマーカーとしても使うことができる。

2017/7/24

最新号 2017年12月号 Fall

特集は「川を読む」。秋田県の役内川を例に、まさに「ここに尺ヤマメがいた」というポイントをピックアップ。流れのようす、底石の入り方、水面の波立ちぐあいなどなど、良型が付く場所の特徴を解説します。 また伝説的ともいうべきリールの名品「ボンホフ」と、その製法を忠実に踏襲しようと試みた男の物語を収録。道具に対する釣り人の情熱と愛を感じる内容です。 そのほか、イワナが浮いてフライをくわえる瞬間までばっちり見えるような源流釣行、北海道のアメマス事情、またキューバやオーストラリアのソルトゲームなども掲載。渓流オフシーズンの今だからこそ、じっくり読みたい一冊です。
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