小渓流のウエットフライ・フィッシング

夏こそ水面直下をスイングしてみる

稲田 秀彦=解説
こんな里川でもウエットフライの活躍する場面は多い。フロータントを付けたり、逆U字に落としたりなんてことはないので、気分転換に試してみるのもおすすめだ

日中の気温が高い日など、ドライフライへの反応が悪くなる時には実はウエットフライが効くことも。いつもの渓流で使う低番手ロッドで水面直下をスイングさせる、気軽なウエットフライ・フィッシングを解説。
この記事は2011年9月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
いなだ・ひでひこ
1972年生まれ。長野県安曇野市在住。渓流のドライフライからマッチング・ザ・ハッチ、日本海のソルトウオーターなどの釣りを幅広く楽しむ。夏場は山岳渓流のイワナ釣りが増える。

夏こそウエットフライを

「実はこんな暑い日の日中などに、ウエットの釣りが効果的なんです。朝夕はドライフライに反応する魚でも昼間には出てこないことがよくあります。そんな場合にウエットフライを流すと、意外にあっさりと釣れることがあります」

稲田さんはドライフライで釣り上がっていて、エルクヘア・カディスが沈んだ時に頻繁に魚が反応したことがあった経験から、渓流でウエットフライをよく使うようになったという。では、実際にどんなタックルで、どんな流し方をしているのか、訪れた長野県の里川で、さっそく釣り方を見せてもらった。

タックルとシステム

当日は#2ロッドを使用。ラインもフローティングの#2で、普段使っているドライフライ用のタックルをそのまま流用した。

「アクションもドライフライ向けのものでまったく問題ありません。あえて欲をいえば、水中の釣りはドライより大ものが出やすいので、ある程度バットが強いものが理想といえるかもしれません」
稲田さんのタックル。ロッドはドライフライ用の#2。フライはダークカラー、ライトカラー、沈みやすいタイプ、浮力の高いタイプなどさまざまなバリエーションを用意


フライは、1本より2本のほうがアピール力が高いという考えのもと、稲田さんはドロッパーシステムを使用。

リードフライは9フィート4Xのリーダーに直結で、枝スはリーダーより1ランク太い3X。基本的にフライ先行で上流から流すため、極端にリーダーを細くする必要はないという。

リードフライとドロッパーの間隔は、一般的な渓流では60㎝ほどで、川幅が広くなったり、水深が深くなったりすれば、より広い範囲を探るために間隔をさらに広げる。

一方、山岳渓流のような落差の大きい釣り場では小さいスポットにフライを落としていくため、間隔を短めに設定しているという。

「ドライフライの釣りからいつでも切り替えられるシステムなので、フライボックスの片隅にウエットフライを忍ばせておけば、役に立つ機会は意外と多いはずです」

効果的なフライ選択

稲田さんが渓流でドロッパーシステムを使う場合のフライサイズは両方とも#14ほど。ただし、その際カラーの選択には注意している。

稲田さんの経験によればヤマメに対しては黄色や赤などの派手なカラー、イワナに対しては地味なカラーのフライが効果的だという。

また、浅瀬にいるヤマメをねらう場合、ドロッパーにイエローなど視認性のよい色のフライを結ぶと水中をスイングしていくようすが確認できる。

これはどのようにフライが流れの中を動くのか目で追うことができるので、渓流ウエットフライのビギナーにおすすめだとか。
派手な色のウイングを付けたフライで浅瀬を流せば、フライの動きが分かる。時には、魚が食いつく瞬間も見えることがあるという

このほか、夏場であればアトラクター的な要素がなくとも、ピーコックなどを巻いてテレストリアルの要素を盛り込んだパターンだけでも通用する場合が多いとか。

しかし渓流では、ウエットフライを流している日中でもライズが見られる場合ももちろんある。そんな場合にはボディーハックルを巻いた沈みにくいパターンをドロッパーに使用すれば、通常のウエットフライよりも表層近くを流すことができるので、上を向いている魚も反応させやすいと稲田さんは話す。

ウエットフライが得意なポイントと流し方

ヤマメ、イワナねらいで、渓流でウエットフライを使う場合、最も代表的なポイントとなるのが流心脇の若干流れが緩いレーン。

川が比較的浅い場合は流心を流してもよいが、ある程水深があり、流速もあるようなポイントでは脇の流れ(白波の切れたあたり)に魚が付いている場合が多いという。
流心脇のレーンにロッドを倒しながらフライを送り込む。稲田さんの場合ラインを出す距離は平均して10mほど

そしてそんな場所こそ、ウエットフライが得意なポイントといえる。そのような場所にフライを流す場合、まずダウン&アクロスで流心を横切るようにキャストする。その後流れに対して斜めになっているラインをメンディングで並行に修正する。

すると徐々にラインが流心を流れながら手前側の緩い流れに寄ってくる。その際にフライが自然に流れるようにロッドを寝かせるようにしてラインを下流に送り込んでいく。

特にアクションを付ける必要はなく、流れに任せるように送り込んでいくのがコツだ。

そのため、最初からねらったポイントにキャストするのではなく、あらかじめ自分の釣りたいポイントを想定したうえで、上流から流し込んでいかなければならない。


「フライがフライラインに引っ張られないように、キャスト後すぐにメンディングを入れて川の流れに対してラインをまっすぐにしなければなりません。流している途中でラインの形が変わったらその都度メンディングする必要があります」

釣り下りでは常にフライとラインが一直線になっている状態が理想なのである。

また、もう一つ見逃せないポイントは沈んだ石の周り。川の流れから外れている場所でも水面が乱れているような場所には魚が付いている場合が多いので、見逃さないようにしよう。1度流してアタリがなくても、2〜3回探ってみると反応を得られる場合もある。
ドロッパーに食いついた1尾。フライが流れを横切る時はドロッパーが先行するので、こちらに魚が掛かる確率のほうが高いという

このほか、稲田さんは高さのある堰堤や大きな落ち込みといったポイントではアップで釣る場面もあった。白泡の中にキャストし、ミャク釣りのようにロッドを立てて流す。その際フライラインは極力水面に付けずにリーダーとティペットだけでナチュラルに水中を流していく。
堰堤下をアップストリームでねらう。リーダーのみを水面に付けて白泡の中を探る。フライは流れに揉まれるままに流しても、ラインを張っていればアタリが感知しやすい

基本的にアタリは向こうアワセ。直接手もとに「コツコツ」と伝わってくるものもあれば、「ガツン」と急に引き込まれる場合もある。フッキングしないような小さいアタリが続いた場合でも無理に合わせたりせずに、確実なアタリがあるまでそのまま流し続けるようにしよう。

2本のフライをトラブルなく投げるために

ドロッパーシステムは魚へのアピール力が高い反面、慣れないとトラブルも起こりやすいシステムだが、ワイド気味のループでフライとラインの間隔を取ってキャストすれば絡まりにくい。
ドロッパーシステムでトラブルを防ぐにはワイドループがよい。ゆったりとターンさせて水面に落とそう

そしてフライを綺麗に流すために必要なのが、しっかりとリーダーをターンさせて着水させるということ。ターンしないまま流し始めると、フライ同士が絡まってしまったり、すぐにラインに引っ張られてしまったりしてトラブルのもとになる。そうなればもちろん食いついてくれる魚はいない。

フォルスキャストの回数をなるべく少なめにしてプレゼンテーションするということも一つの手だ。ねらったポイントへスムーズにフライを送り込むための動作は、キャスティングから始まっているといえる。

2017/8/28

最新号 2017年12月号 Fall

特集は「川を読む」。秋田県の役内川を例に、まさに「ここに尺ヤマメがいた」というポイントをピックアップ。流れのようす、底石の入り方、水面の波立ちぐあいなどなど、良型が付く場所の特徴を解説します。 また伝説的ともいうべきリールの名品「ボンホフ」と、その製法を忠実に踏襲しようと試みた男の物語を収録。道具に対する釣り人の情熱と愛を感じる内容です。 そのほか、イワナが浮いてフライをくわえる瞬間までばっちり見えるような源流釣行、北海道のアメマス事情、またキューバやオーストラリアのソルトゲームなども掲載。渓流オフシーズンの今だからこそ、じっくり読みたい一冊です。
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